義輝記 星霜の章 その十四 |
【 一刀の苛立ち の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営付近 にて ?
華琳「…………敵陣営の動きは、あれから一日……何も無かったわね?」
桂花「斥候には、かなり遠くに見張らして、敵陣営の動きを当たらせていますが、動きはありません!」
華琳「………私もまだまだね。 颯馬の策謀の凄さばかり目に入り、その過程を見誤るなんてねぇ? 今まで一度も、そのような失敗は無かったのに……」
秋蘭「華琳様も人の子、間違いも御座います。 問題は、その失敗を繰り返さない事です! 歳久殿に謝罪する事が肝要かと!」
桂花「しかし、王である華琳様が、頭を下げる事でしょうか? どちらかと言えば、島津側の謝罪が必要ではないか………と存じます!」
華琳「…………………」
曹兵「ほ、報告します! 晋軍! 前進して、此方に渡河する準備を始めた模様! 同時に、別働隊も先に渡河を開始! 此方に向かう様子です!」
華琳「全軍に命令を! 黄河の岸に木の杭を打ち込み、敵の渡河の遅延を図れ! 発石車の準備、移動を北郷隊に命じ、何時でも発射できるように手配を伝えよ!」
曹兵「はっ!」
華琳「桂花! 一部の隊に、重要物を陣営より運び出す事を命じなさい! 秋蘭は、敵本隊の行軍を、なるべく時間が掛からせるように、弓兵を持って遅延工作を行いなさい!!」
桂花、秋蘭「「 はっ! 」」
華琳「私は、全部隊に指示を出し対応する! 以上!」
★☆☆
? 曹操軍 右翼 ?***《 兵数…… 十万 》
右翼大将……諸葛孔明 (朱里)
北郷一刀、張儁乂、紫、袁本初、李曼成、于文則
島津義久、島津義弘、島津歳久、島津家久、顔良
****************
曹兵「敵別働隊! 二里(約830b)範囲内に入りました!」
味方の兵の敵来襲の報告が聞こえる! その声を聞き反応した者が二人!
儁乂「北郷様は此処へ! 私達が迎撃してきます!!」
紫「…………コクッ」
一刀「───駄目だ! 俺も行く!」
俺は、血相を変えて──二人に同行する事を強く求めた!
儁乂「しかし、貴方は我々の主! 貴方に……もしもの事があれば!!」
一刀「頼む!!! もぅ……左校達のように見捨て、自分だけ逃げるなんて出来ない!! あんな……自分の信念に背く事など──したくないんだぁ!!」
儁乂「………北郷様。 私達は……貴方様が大陸に平和を齎す方だと信じて、行動しております。 そのために私達は戦場で死しても本望! 屍を乗り越えて、家族達の幸せを築いて頂きたいのです。 左様な感情など無用と……」
一刀「馬鹿を言うなぁ! 俺の為に君達まで亡くなって、誰が喜ぶんだ!? 少なくとも俺は悲しむぞぉ!! これ以上、身近な人が亡くなって、悲しむ俺が……他の人達を幸せにする事なんかぁ出来るものかぁ────!!!」
儁乂は、ちょっと考えた後…………紫に話す。
儁乂「……私に何かあれば、北郷様をお連れして戦場を離脱しろ! 北郷様が反抗するなら、多少痛めつけてもいい。 ──必ず二人で脱出するんだ!!」
紫「─────!」ブンブン!
儁乂「主命だ! 拒否も許さん! ………元気で暮らせ!」
紫「……………儁乂……さま」プルプル
一刀「紫ちゃん! そんな事させないよう……俺、頑張るから!!」
紫「………」コクリ
ーーーーー
斗詩「一刀さん! 別働隊が近付いてきます! 兵数五万! 歳久殿、家久殿達が、弓兵で一斉に攻撃を開始致しました!」
一刀「分かった! ───真桜! 沙和! 発石車を頼む!! 俺達は別働隊の進行を防ぐから!! 何かあれば、華琳達の下に行けぇ!!!」
真桜「隊長! 発石車は任せとき! だから……必ず戻って来るんやで!!」
沙和「絶対、無事で居て欲しいのぉ!!」
朱里「ご、ご主人様〜!」
斗詩「………お気を付けて!!」
一刀「………朱里も…斗詩も…真桜達も! また、必ず会おう!!」
ーーー
俺と儁乂達率いる五万の兵が、別働隊迎撃に向かう途中、麗羽が追い掛けてきた! 右翼の将として残してきたのだが……?
麗羽「ハァハァハァ………わ、我が君! 別働隊大将が分かりましたわ!! わたくし達を追い詰め、仲間の皆さんを殺害した……あの女が!!!」
一刀「つ、筒井順慶か───!?」
麗羽「歳久殿が……筒井順慶と確認しましたわ! そうなれば、我が君や貴方達だけでは不安ですもの! わたくしも……お供させて頂きますわ!!」
反対する俺を……巧みに封じ込め……俺達は死地に向かった!!
◆◇◆
【 順慶との対決 の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営付近 にて ?
俺達が動くと、敵別働隊が間近で止まり……一人の将が現れる。
紛れもなく……筒井順慶……その人!
順慶「あらっ? 貴方ですの……北郷一刀! それと……見慣れない方々! あぁ……服装からして、私に挑んだ愚かしい人達の仲間ですか! あの人達も浮かばれませんわねぇ? 命掛けで助けたのに、また私の相手………」
一刀「黙れぇぇ!! 俺や華琳達を……命掛けで救ってくれた……皆を悪く言うなぁ!! 俺が───左校や大洪達の仇、取らせて貰うぞぉ!!」
儁乂「私の名は『張儁乂』! 亡き先代達より北郷様に仕える者だ! 神の御遣いと名を騙り、我々を愚弄し続けた『筒井順慶』! 貴女を倒し、先代達に、あの世で詫びるがいい!!」
紫「─────おっちゃん達の仇!!」
麗羽「────────覚悟!!」
順慶「ふふっ……あの撤退する際に、泣き叫んでいた貴方が……よくぞ大口を叩ける程になって。 ですが、弱き者が何人集まって掛かって来ても、貴方達では相手になりませんわ! ───全軍、私の指示があるまで待機なさい!!
まぁ……折角の挑戦者ですもの。 私が一人お相手致しますわ。 皆さんは何人でも宜しいから、御自由にどうぞ…………?」
一刀「その余裕! 今の内だあぁ!! 麗羽! 軍勢の指揮を任す!!」
麗羽「はっ! お気を付けて!!」
ーーーー
一刀は『猿叫』という叫び声を上げ、蜻蛉の構えより迫る!
一刀「チエエェェェ─────ィイ!!」
順慶「相変わらず……煩い声です事。 それでは、わざわざ斬る行為を、私に教えているようなモノですわ?」
一刀の攻撃を読み、袈裟斬りの反対方向に、軽く体捌きで避ける順慶。
順慶「一撃一撃が重い分、避けられると……隙だらけですわね!」
身体が刀の動きで流れ、目では順慶を認識出来るが……対応が出来ない! 順慶は、一刀に打撃を与えようと、手刀を頭上に上げるが───!
儁乂「………貴女こそ、隙だらけですよ!」
順慶「こんな物など………えっ!?」
儁乂は、鎖で繋いだ『九節鞭』の先を、順慶に向かい投げ飛ばす! 先は携帯し易いよう、尖りが甘く出来ている。 ……とはいえど鉄製のため、重量もあり……当たれば一溜まりもない!
順慶は、自分の顔に向かってきた九節鞭を、薄笑いを浮かべつつ軌道より外す。 だが……軌道を外した九節鞭は、儁乂の手の動きに合わせ、軌道を修正して二度目の攻撃を仕掛ける!!
儁乂「私の武器は文字通り『九節鞭』! 相手が、どのように逃げようが追尾して行くぞ!!」
対処した九節鞭の先が……顔に近付くのを辛うじて避け、一刀への攻撃を一時諦める! そして、態勢を直して動こうとした時、後ろから殺気が──!
紫「…………ぇぃ!!」
順慶「きゃあ!!!」
頭を慌てて下げると、短い短剣が頭の上を凪いだ!! 紫が頬を膨らませ、外した事に怒っている! 順慶は……三人より離れて様子を見た。
儁乂「北郷様! 大丈夫ですか!?」
一刀「あ、ありがとう!! 大丈夫だ! それに……敵は慌てている! これなら、勝機が見えるぞ!!」
★☆☆
順慶は、一刀の話を聞いて一瞬目を開いたが……口に片手を添え、さも可笑しそうに優雅な動作で笑っていた。
順慶「……うふっ! うふふっ! 面白い、面白いですわぁねぇ! その冗談! 誰が誰に勝てるのですって? ────北郷一刀! 貴方は……やはり、颯馬様にまだまだ及びませんわ? 素直に感情を出し過ぎですわよ!!」
一刀「何故、天城様と見比べる!? あの人と俺は、立場も過去も……生き方さえも全く違うのに!」
順慶「それはですねぇ………」スッ!
順慶の姿が消えた為、慌てて一刀の前に出てくる儁乂と紫!!
儁乂「来るぞ! 紫『ガッ!』ゴホッ───!!」
紫「儁乂──くっ!『ガキィ───ン』きゃあ───っ!!」
一刀の前に居た儁乂が、腹を蹴り飛ばされ、その横に居た紫は……咄嗟に気付き防御したものの、同じようにふっ飛ばされた!!!
順慶「颯馬様と貴方が………この世界を維持する鍵だからだ……と聞いたからですわ! あの颯馬様と貴方のような未熟者が!!」
一刀「儁乂! 紫──!」
麗羽「あ、危ない───っ!!」
一刀「はっ!?」
順慶は、既に一刀の後ろに回っている!!
順慶「………他人の心配をしている場合ですか? 北郷一刀?」
あの時……華琳達と共に蹂躙された……恐怖と悲痛の記憶が、一刀の頭の中に蘇る!!
一刀「チ、チエエェェェィイ───!!」
順慶「はっ! 甘いですわ……」
袈裟斬りで攻撃する一刀に瞬時に近付き、斬りの動作が終了した瞬間、軽く一撃を見舞う。 軽く……軽く撫でるような攻撃なのだが………。
一刀「ぐほぉっ────!!」
麗羽「我が君ぃ─────!!」
麗羽は叫ぶが──攻撃には参加出来ない! 何故なら、軍勢の指揮を任された身。 自分まで行って倒されれば、軍勢の崩壊が始まる!
即ち………曹操軍の負けである!!
麗羽は……断腸の思いで……様子を見ているしかなかったのだ!!
ーーーーー
儁乂「………ほ、北郷さ……ま!!」
紫「儁乂ぃ……さ……まぁ……」
二人共、あの時に致命傷は避けれた為、命は無事だが……あまりの打撃の重さに、直ぐに起きれそうもない!!
ーーーーー
一刀は痛烈な痛みの為────意識を失い前屈みに倒れる!
そこへ、順慶が倒れそうな一刀を抱き寄せ、肩に乗せて移動を試みた!
順慶「………さて、于吉との約束も……果たせそうですわね。 貴方は私が丁寧に運んで差し上げますわ!! 後は将が残っていますが、この軍勢に襲撃させれば問題無し。 それでは……『待って貰おうか!!』………誰!?」
曹操軍勢より、長い槍を持った少女が……ゆっくりとした足取りで、麗羽の横に立つ! 青ざめていた麗羽の顔に、うっすらと朱が戻った!
麗羽「星───っ! お願いです! 我が君が! 我が君がぁ!!」
星「………皆まで言うな。 よく頑張った! さて、ここからは私が相手をしてやる! 筒井順慶───!!!」
趙子竜……真名は星! 満を持しての登場である!
◆◇◆
【 順慶と星の死闘 の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営付近 にて ?
順慶「まぁ、まぁ! まぁ──!! 私をコケにしてくれた趙雲が、この場所に来てくれるなんてぇ!!! この北郷一刀の捕獲といい、貴方の対決といい、今日は──なんて素晴らしい日なんでしょう!?」
星「私は最悪だ! 折角……徐州で購入したメンマの試食をしていたら、華琳様に見つかり、別働隊の対処に向かわされ……。 来てみれば、二度会いたくない貴公がいる………。 だが、主が拐かされ所に間に合ったのも奇縁!」
麗羽に……『そこの二人を連れて下がれ!』と指示し、軍勢も更に後方へと下がらせた星。 言動はオチャラケていたが、戦闘に対する意気込みは本物!!
順慶も、軍勢に自分達より離れるように指示する。
『近付いたら、死んでも知りませんよ?』と一言添えるのも忘れない!!
それぞれの軍勢が距離を開け離れて行く中、順慶と星が近付いた。
順慶「待っていましたわ! 貴女との対戦を!!」
星「……やれやれ……しつこい御仁だ。 私は、『二度と御免!』と断りを入れたのだがな」
順慶「貴女に無くても、私は会いたかった! 貴女を完全に破り、私の前で無様に這いつくばせ、涙を流して負けを認めさせる事が目的! 今度こそ、今度こそ……私が勝ってみせます!!!」
星「ふっ! 戦いたくなかったのだが……主の危機ならば───話は別だ! 全力を尽くすのが士としての務め! ────筒井順慶よ! 主を離せ!!
主達の受けた借り、キッチリ利息を付けて返してやる!!!」
順慶「………そうですわね。 このまま巻き込まれば容易く死にますでしょうね! 用が無くなれば、離れて貰いますわよ! 北郷一刀!!!」
順慶は、気を失った一刀を軽々片手で持ち上げると、前方に放り投げた!
星「─────!」ダッ!
順慶「引っかかっりましたわねぇ!」シュッ!
星が受け止めようと走れば、順慶が動き──星に攻撃を仕掛ける!
星「主────ぃ!!!」ボスッ!
星が受け止めたが、順慶はすぐ傍に居る!!
満面に笑顔を向けて手刀を振りかざす!! 間合いは一尺 (約23センチ) も無い!!! 星は、自分の身体を楯にして、一刀を庇う!!
順慶「趙雲! 討ち取ったり───ぃ!!」
勝利を確信した順慶は、勝ち鬨を上げた─────!
★☆☆
………ポタッ! ポタポタポタポタ───ッ!
ブシュッ───!!
身体から……血が吹き出した!
順慶の綺麗な顔にも血飛沫が付着し、血化粧に染める!!!
順慶「フッ、フフフフフッ!! 驚きましたわ! やるではありませんかぁ!! そこの───おチビさん!!!」
目を見開き、紫達の居る方を睨む順慶!
順慶の攻撃した右腕には、短剣が一本刺さっている!! その痛みで反射的に腕を引いた為、星達には攻撃が届かなかったのだ!!
無論、その短剣の持ち主も遣い手も……紫ただ一人!
しかし、指示したのは、紫の傍で一刀の無事に安堵する……張儁乂である。
順慶の一刀の扱い方、星への恨みの深さからして、このような手段を講じるのでは無いかと予測! 比較的元気な紫に、順慶へ短剣を投擲するよう命じたのだ!!
紫「儁乂様……当てたよ? 紫、凄い? 凄い!?」
儁乂「あぁ、凄いよぉ……紫……」ナデナデ
どや顔で自慢する紫に、力少なく撫でる儁乂………。
ーーー
しかし、順慶は刺さった短剣を抜くと、遠くに放り投げる! そして、腕に気を集中させると………刺された傷が無くなった。 気による瞬間的な治癒力である。 因みに、前の戦で毒煙を吸ったのに平気なのは、これのお陰である。
★★☆
星「麗羽! 一刀殿を……主を頼む! 武人の戦を汚す順慶に目にものを見せてやる! 我が愛槍《龍牙》とメンマの名に掛けて!!」
麗羽「分かりましたわ! 最後の方は意味不明ですが……納得してあげます! わたくし、物事に寛容ですから!」
星「一度、メンマの事で……じっくり話さなくてはいかんな? おっと、それでは任せた!!!」
麗羽「星……貴女も死んではいけませんよ? 我が君は、どの方が亡くなっても……悲しんで、重みとして背負う方ですので………」
◆◇◆
【 それぞれの 最終奥義 の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営付近 にて ?
順慶「…………邪魔が入ってしまいましたわね。 仕切り直しに───」
星「もはや、武人としての戦いをも忘れたか! 筒井順慶! 来い……相手をしてやる!!」
星が龍牙を構え、順慶に向ける。 例の如く腰を落とし、目を閉じて『気配』と『音』を感じて対処する『座頭市戦法』をとる。
順慶「そのような戦い方、怖くも何もないですわ!」
★☆☆
───!
────!
ーーーーー!!!!
星「 (………………順慶の気配、足音が近付くか。 間合いは三歩、私の目の前で止まる───!!! 気配が……四つに別れただと!?) 」
馬鹿な!?っと思い、目を見開くと………順慶が四人に!!
順慶「気を応用して作った『影分身』ですわ! 貴女は、気配と音で感じるのなら、気配を作り出せばいい! 足音は……今です!!」
順慶が命じると……晋軍の兵士達が、思い思いに足音を鳴らす!
万の兵士が鳴らすため、とてもではないが聞き取りは……難しい!
順慶「貴女の得意な戦法は、この通り封じ込めましたわ!!」
星「くっ!!」
順慶「さぁっ────覚悟なさい!!」
ーーーーー
四つの影、見極めが難しい攻撃、千差万別な動き、集中力を乱す足音!
星も槍を使い、影を一斉に横凪で払ったり、無数と思える高速の突きを繰り出すが、どれも当たらない。 しかし、本体は一人! 当たらないのは、瞬時に後方に下がったりした為で、他の影のように身体を透けて通る訳ではない!
だか、それを見極めるには……集中力が必要であり、姿身が一緒の順慶を探るには、時間が無さ過ぎる! ただでさえ、攻撃を受けるため防御の方へ意識を持っていかねばならぬ故、苦戦を免れない!!
順慶「ほらほらぁ! こっちですわ! こっち!」シュン!
星「ムッ! 『スカッ!』───くそぉ! これも影かぁ!!」
順慶「こっちですわ!」ブーン!
星「グッ!!」ザシュッ!
影は気だけで出来ているため、喋る事も攻撃を受けても負傷はしない。 だが、腹話術を使い喋るように誤魔化したり、本人が紛れているため、気が抜けない! そして……疲労ばかりが蓄積していく。
順慶「……趙雲。 今の状態を何と言うかご存知ですか?」
星「………はぁはぁ……はぁ?」
順慶「───無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁですわ!」
星「………そうか。 其処まで……言われるのであれば……止むを得ない! 我が奥義を持って、相手してやる!!」
そういうと、星は懐に手を伸ばし───『メンマ壺』を取り出した。
◆◇◆
【 星の秘奥義 の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?
星は、懐からメンマ壺を取り出し、一口食べる。
星「うむっ! 今までの疲れが、スカッと爽やかに吹っ飛んでいく!!」
順慶「メンマが栄養食? 有り得ませんわ! それが奥義でしたら、もう終わりですわね! これで止めを───!」
星「慌てるな! これを撒けばぁ……よっと! ほれっ!!」
星は、もう一掴みメンマを口に入れると、メンマを自分の周りに撒き散らす!
星「我が奥義『メンマ結界陣』! 順慶よ……これで御主の命運は、このメンマ達の犠牲と引き換えに終わるのだ………!!」
順慶「はっ? 何を馬鹿な事を! 貴女こそ、これで……終わりですわ!!」
順慶が影と共に攻める! 前面、左右を影に任せ、自分は後ろに廻る。
順慶「 (さらばですわ! 趙雲!!) 」
順慶達が攻撃を仕掛けた瞬間、クチョ!と小さな音が鳴る。
順慶が間合いを詰める為、一歩踏み出した足下には……例のメンマを踏みしめている!
星「───────そこぉ!!」
星の龍牙が……瞬時に獲物を定め、後ろの順慶の肩に刺さる!!
順慶「えっ!? あっ! う、嘘ぉ……」ガクッ
三つの分身が姿を消す! 順慶が刺された様子を見て、晋軍の足音が止まる!
星「幻影は幻影に過ぎぬ! 実体しか体重は無いからな! メンマ達の力! 思い知ったかぁ!!」
星は、別のメンマ壺を取り出し、一本のメンマを口に咥える。
順慶「ま、まだ……これが──ありますわ!」
順慶は地面で拾った石を投げようとした。
前よりも強力に気を注入された石の投擲! 腕や足に当たっても、全身の気の流れが狂い………死に至らしめる! それ程の力を秘めた物を、順慶は作り出したのだ!
勿論、それだけの気を入れては、順慶も只では済まない。 それでも、自分を連続で敗北に落とそうとする将に──復讐したい! その一念だった!!
星「プッ───!!」
順慶「きゃあぁぁ! 目が痛い! 痛いぁ───い!!」ボトッ!
星は、咥えていたメンマを順慶に飛ばし────目に当てた!
順慶は痛がり、石を投げ捨てて目を押さえ、転げ回る!!
星「我が最終奥義……『飛翔メンマ』! このメンマは、先端に『董辛子』を塗ってある。 当たれば、体験している通りの結果になる代物だ! それにな……一度見た技など二度目と通用などしないぞ!! ……真の武人にはなぁ!!」
順慶「うぐっ〜!! 私がぁ! 私がぁぁ!!」
星「私に……この最終奥義を出させた事は、敬服しよう! しかし、様々な我々に対しての暴虐! 我が主の身柄を拘束した事! 更にメンマを馬鹿にした言動などの罪は絶対に許せ………ん!!!」グラッ ガクッ!
星は、それだけ言うと片膝を付く! それだけ順慶の攻撃は……星に負担を掛け、肉体的、精神的に追い込んだ証拠であった!!
ーーーーーー
────星は、麗羽達に順慶を捕獲するように指示を出すが、晋軍側が先に動き順慶を救出!
別働隊は、そのまま順慶を介抱しつつ、本隊に連れていった。 指揮官が居なければ、只の烏合の衆。 無駄に戦力を減らすより、一カ所に固まった方が、指揮系統や戦力的に妥当と判断したためであった。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
どうしても、書いておきたかった話があったため、合間を見つつ仕上げました。 星と順慶との最終決着は、これで終わります。
明日から、忙しくなるようですので、急ぎで投稿しました。
誤字等は……おいおい直していきますので。
また、宜しければ………お願いします。
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義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。 | ||
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コメント | ||
禁玉⇒金球様 すみません! コメント入れていただいたのが、一つ消えていました。 誤って消したのか、システムの不備か分かりませんが……お詫び致します。(いた) naku様 再コメントありがとうございます! 確かにそうなんですよね。 ですが……原作でも長坂の戦いで一騎討ちを鈴々と行う演出とかありましたので、多分『武人の戦い方の美学』があるんじゃないかなと想像しまして。 古い歴史に遡ると、正々堂々の一騎討ち行う描写が出てくるものですから。(いた) いえいえ、こちらは構いません。 一刀は素直に自分を表す主人公だと思います。 だけど、自分の行った行動が……後にどう影響を与えるか……考えて欲しいのです。 次回作ぐらいには……その後の事が出ますので。 多数意見の中で、このような意見を述べる事……勇気がいる事だと思います。 作者としては一刀を援護して頂くのは嬉しく思いますよ!(いた) ふかやん様 コメントありがとうございます! 一刀の想いは大事です。 しかし彼を守った者達の望みは何だったのでしょうか? それに星が死にそうなった事も忘れてはいけません。 一刀は対局を冷静に判断する精神を忘れて動いた為…批判が出たのです。(いた) …申し訳ありません。先程は無礼なコメントを送ってしまいまして。ですが私には一刀の切実な思いを否定するコメントが書いてあったことにどうしても納得できなかったものですから。改めて謝罪させていただきます。(ふかやん) …私にはそうは思いません。自分の為に誰かが命を落とし、今また自分の為に命を落とそうとするのが許せなくて戦おうとする。そんな想いを愚弄する資格が誰にあるのですか!?むしろそう言う事を言う方がおかしいと思います!!(ふかやん) naku様 星からの伝言です。 『メンマとは“勇気”の讃歌!! メンマの素晴らしさは勇気の素晴らしさ!! いくら強くても……順慶は“勇気”を知らん! だから、メンマに倒れたのだ!』 まぁ……メンマは別にして、元凶に間違いないです。 事も重大さを帯びていきます。(いた) Jack Tlam様 再コメントありがとうございます! 確かに白帝城……誰の意見も従わず、犠牲者を増やした孤独な皇帝ようなものです。 後に……この選択が一刀だけではなく、天城颯馬と愛紗まで巻き込まれてしまうとは……誰も考えないでしょうね。(いた) naku様 コメントありがとうございます 朱里「や、止めて下さい! 一刀しゃん!」 一刀「フッ……朱里の可愛い顔に免じて……復讐なんてしないよ……」 なんて〜なれば良かった?のですが……墓参りの回から繋げると……滑稽話になっちゃうので。(いた) ↓大いに同意。奪っただけ奪われる。奪ったから奪われる。奪わなくても奪われる。奪おうとすれば奪われる。それが乱世。でも『アッー!』はしなくても良いでしょう。史実劉備ですよ、これでは。制止しなかった朱里も朱里だが、周囲の意見に耳を貸そうとしてない一刀がまるで……白帝城フラグ立ててはいけません。中原だけどさ。(Jack Tlam) mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 一刀の謝罪の為の行為ですが……亡くなった者が納得する筈がありません。 自分達の行為を無にするような者では………あの世で怒られますもの。 しかも、一刀の命を狙う者は順慶だけではありませんから………。(いた) まあ、一刀は一刀の考えがあるのは良く分かりますが…指揮官たる者優先すべき事は他にもあるのではないかと。幾ら償いをと思ってもそれで一刀の身にもしもの事があったら悲しむのはその命を散らした部下達なのでしょうから。(mokiti1976-2010) 作者も書きながら歯がゆかったのですが……どうしても『一刀の気絶』が欲しかったので。 風の出番は、まだかかる予定ですが……最後に大舞台を用意しようかな?と考えてます。(いた) 禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 一刀の経験不足、未熟さは本人も充分承知しておりますが、自分の身代わりで亡くなった青州兵に償いたいとの心も動いております。 それが分かっているから、一部の配下はやむを得ず従っています。(いた) 華琳様が白と言えば、色は黒でも白にする。 そんな桂花を出してみたかっただけなんです。 桂花らしいと思ったもので………。(いた) Jack TIam様 コメントありがとうございます! 朱里の件は、慌ててウッカリ呼んじゃた状態です。 基本的に一刀は高校生と言うことで、正義感の強さ、罪の重さに悩まされながら立ち向かう……と言う脳内設定でしたので、こんな具合です。 確かに自分の手の届く範囲は、何とかしたいと考えてくれるんですが……経験が足りません。(いた) 一つはっきりしているのは……斬り合いにおいて何故に役立たずを連れてくるのか、一刀君の事です、覚悟あるとか志ではなくて適材適所を徹底しないのは愚の骨頂…提案した一刀も黙認した朱里も許可した現場指揮官も追従した配下も評価できませんな、一刀マンセーは出来ないので仮にこのあと活躍しても無謀で足を引っ張る感情的愚者達をどうみるのやら (禁玉⇒金球) 後は桂花。何故、島津側が謝罪しなければならないのか。間違いを犯したのは華琳なんだが。華琳様至上主義の(つまり、いつもの)桂花ですから、物語上仕方ないかもしれないけど。島津側に何か過失ありましたっけ?説明不十分?(Jack Tlam) 一刀は自分にできる限りのことは全部やるタイプの人間ですしね。でも、身近な人達を亡くしても誰かを幸せにすることはできると思いますが……まあ一介の武将ですし、いいのかな。君主だったらそんな発言をすることは許されませんけどね。それと……朱里、「ご主人様」という呼称は禁止されたんじゃなかったっけ?(Jack Tlam) |
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