英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜ルーレ市・ダイニングバー『F』〜
「あ……伝票!」
二人を見送ったリィンは伝票をクレア大尉が持っていったことに気付いて立ち上がり
「オゴられたみたいだね。一方的に情報を教えてもらった上に。」
フィーは静かに呟いた。
「はあ……今更追いかけるわけにもいかないし。借りを作ってしまったな。」
「オトナの女性って感じだね。サラより歳下みたいだけど彼女の方が余裕ありそう。」
「うーん、それは確かに。あ……」
フィーの意見にリィンが同意したその時、ARCUSに通信が来た。
「ARCUSに通信?」
「はい、トールズ士官学院、リィン・シュバル―――」
「―――ちょっと!何をやってるのよ!?」
通信を開始したリィンが名乗り上げる前に、聞き覚えのある女子の怒鳴り声が聞こえて来た。
「なんだ、アリサか。」
「な、なんだって何よ!?女の人に呼び出されて出かけたってホントなの!?」
「また懲りずに増やすつもりですか、リィンさん……!アイドスさん達どころかあたしの可愛い妹まで落としておいて、まだ足りないんですか!?」
「お、お姉様、わたくしは気にしていませんので落ち着いて下さい……!」
「なんだなんだ〜、色っぽい事になってんのか?よーし、よくやった!」
「よくやった、じゃなーい!」
通信から憤るツーヤを諌めるセレーネの声が聞こえた後、クロウの声が聞こえるとアリサの怒鳴り声が聞こえ
「あはは……フィーがついてるみたいだから変なことはしてないと思うけど。」
「ふう、いずれにしても単独行動は感心しないぞ?」
更に苦笑している様子のエリオットと溜息を吐いた後呆れた様子のマキアスの声が聞こえて来た。
「……戻る?」
リィンの通信を横で聞いていたフィーは口元に笑みを浮かべてリィンに尋ね
「ああ、そうだな。」
フィーの意見にリィンは苦笑しながら頷いた後、フィーと共にラインフォルト家のペントハウスに戻って行った。
〜ルーレ市〜
一方その頃、クレア大尉はレンと並んでレンが泊まっているホテルに向かっていた。
「……レン姫。そろそろ貴女の―――いえ、”仔猫(キティ)”が持つ我々にとって有益な情報を教えて頂きたいのですが。」
レンと共に歩いているクレア大尉は周囲に人があまりいない事を確認しながら、周囲を最大限に警戒してレンに尋ねた。
「ふふ、そうね。もうすぐホテルにもついちゃうし、”仔猫(キティ)”がお姉さん達に教えられる情報をさっさと開示するわね。――――先程”鉄道憲兵隊”が第一製作所の強制査察を検討している話だけど……―――あそこには”貴族派”の”本命”の兵器は量産されていないわよ?」
「!……………つまり、私達の目を逸らして開発している”切り札”があるという事ですか?」
レンの話を聞いたクレア大尉は目を見開いた後真剣な表情になって、誰にも気取られない為にレンに視線を向ける事無く前を見つめながら尋ねた。
「――――”機甲兵(パンツァーゾルダ)”。それが貴族派の”切り札”の名前よ。」
「”機甲兵(パンツァーゾルダ)”………………まさか人形兵器ですか?」
レンの口から出た聞き覚えのない言葉を聞いて考え込んだクレア大尉はレンに尋ね
「うふふ、名前を言っただけで一瞬で正体を推測するなんてさすがは”氷の乙女(アイスメイデン)”ね。でも、残念ながら不正解よ。”機甲兵(パンツァーゾルダ)”は確かに人形兵器と言ってもおかしくないけどレンの”パテル=マテル”と違って、戦車や軍用飛行艇みたいに”人が搭乗して操縦する”のよ?」
「!?…………………”兵器として”のスペックはどのくらいなのですか?」
レンの答えを聞いたクレア大尉は血相を変えた後真剣な表情で尋ねた。
「そうね……”仔猫”が調べた時点では大きさは約7アージュくらいで、積んでいる武装は接近戦用の武装ばかりで、遠距離用の武装は見かけなかったから”パテル=マテル”と比べれば火力も大した事はないけど、少なくとも帝国正規軍の主力である”アハツェン”や軍用飛行艇を軽く圧倒できるスペックね。しかも”機甲兵”の中にある”隊長機”と呼ばれている種類には”リアクティブアーマー”っていう特殊な防壁があって、その防壁を使えば”アハツェン”の砲撃も無傷で防げるわ。横流しの鉄鉱石の”一部”はそちらの量産に使われているみたいよ?」
「”一部”ですか……残りについては心当たりはありませんか?」
「うふふ、それについても勿論知っているけど、”機甲兵(パンツァーゾルダ)”とは別のお話になるから、その情報については教えてあげられないわ。むしろ、お姉さんに”機甲兵(パンツァーゾルダ)”や”リアクティブアーマー”の話をしただけでも大サービスなのよ?」
「……………………………”仔猫(キティ)”はそのような情報をラインフォルトグループのどの部署から手に入れたのですか?」
レンの話を聞いたクレア大尉は自分の予想以上の兵器を隠し持っている事に厳しい表情で黙り込んでいたが、すぐに気を取り直してレンに尋ねた。
「うふふ、残念ながら”時間切れ”よ。」
「え…………―――あ…………」
レンが呟いた言葉に呆けたクレア大尉だったが、すぐにレンが泊まっているホテルの前に到着した事に気付いた。
「お仕事が忙しい中、他国の皇女のレンをわざわざホテルまで送ってくれてありがとう♪」
「いえ。私は軍人として当然の義務を果たしたまでですし、感謝をするのはむしろ私の方です。私がリィンさん達の前で口にした情報でも釣り合いが取れないくらいの大変貴重な情報を提供して頂き、誠にありがとうございました。もしルーレで何かあればすぐに鉄道憲兵隊にご連絡を。レン姫がルーレでの滞在を無事終えられるように、我々鉄道憲兵隊も出来る限りレン姫の御力になりますので。」
レンにお礼を言われたクレア大尉は敬礼をしてレンを見つめた。
「ふふっ、前向きに考えておくわ。レンの為にそこまで言ってくれたクレアお姉さんには”サービス”にお姉さんの最後の質問に対する答えに辿り着く為のとっておきのヒントをあげるわ♪」
「”ヒント”ですか……―――お願いします。」
「――――”ガレリア要塞”に”列車砲”が搭載された年は今から何年前だったかしらね?」
「え………………」
レンの口から出た予想外の問いかけにクレア大尉が呆けたその時、レンは両手でスカートを軽く摘み上げて上品に会釈をした後ホテルの中に入って行った。
「……”ガレリア要塞”に”列車砲”が搭載された年は1199年。今年は1204年…………レン姫が出したヒントは”今から何年前”。――――!”第五開発部”………!」
そしてレンが去った後レンが口にしたヒントを考え、答えに到達したクレア大尉は真剣な表情でRF本社ビルを見つめた。
〜同時刻・ルーレ市北部〜
同じ頃、街外れに帝国解放戦線のメンバーが誰かと通信していた。
「―――時は来た。それでは第三の花火を上げるとしよう。」
「うふふ、了解よ。」
「いっちょう派手にブチかましてやるとするか。」
通信機から聞こえて来た声にスカーレットと共に頷いた”V”はスカーレットと共に振り向いて帝国解放戦線のメンバーに号令をかけた。
「聞いた通りだ、てめえら!明日は俺達にとって真の意味での”正念場”になる!」
「”鉄血”の首を獲る最後にして最大の下ごしらえ……みんな、全力を尽くしましょう!」
「応!!」
二人の号令にテロリスト達は力強く頷いた!
そして翌日………………
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第241話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 匿名希望様 敵は殺すが基本のエウシュリー陣営が果たしてそれを許してくれるかどうか…… 本郷 刃様 まあ、確かに(sorano) というか思ったのですが、リィンはメンフィル兵ですからそっちの関係にも繋がりますので個人の判断で極秘事項にできると思うのですが・・・(本郷 刃) 解放戦線の一番怖いところは最後に首を獲れるなら死ぬことすら考慮に入れてくることなんだよなぁ。二次創作とはいえそこだけは曲げないでほしい。(匿名希望) |
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