数秒後には『月光下』の光が完全に消え失せた

小蓮「………………何だったの？」

春蘭「何も変わりがないようだが………」

春蘭はそう言うが、焔耶は得意そうに

焔耶「そうか？なら、お館を見るがいい！」

春蘭「一刀をか？」

秋蘭「…………………む？」

焔耶の言う通りに秋蘭は一刀を見ると、一刀に異変を感じ取った

太陽の逆光により一刀のシルエットだけ見えるのだが、形がどうもおかしいのだ

蒲公英「あれ？ご主人様に『尻尾』があるよ？」

明命「頭には……………はぅわっ!!?

お猫様の『耳』があります!!」

秋蘭「爪が…………『異様に長く鋭く』はないか？」

愛紗「しかも………少し髪が『伸びている』ようにも見える……………」

次々と一刀の変化が皆の口から出てくる

人間にはある筈のない場所にある動物の耳や尻尾、剣のように鋭い爪、誰もが目を疑った

思春「気づいたか…………だが、口と目も見てみろ」

流琉「目と口ですか？」

思春に言われて皆は一刀の顔付近に注目した

一刀「…………………」

一刀は口と目を閉じたままで『空立』をしていた

晩禍「なんだその姿は…………」

晩禍は眉を顰めながら言う

そこでようやく一刀は

一刀「……………言っただろう？進化だと」

ゆっくりと目と口を開いた

それを確認した雪蓮は

雪蓮「っ!!?一刀の片目が真っ赤!!

それに牙が生えてる!?」

驚きのあまり叫んでしまった

一刀の右目は血のように赤く、前歯の犬歯の部分にあたる歯は鋭く尖った牙となっていた

焔耶「狼の耳と尻尾に虎の牙、鷹の爪などが組み合わさっているのだ」

卑弥呼「最早キメラじゃのう……儂も知らんかったぞい？」

稟「私もです」

凪「自分もであります」

桔梗「儂もじゃ」

どうやら一刀の進化を知っていたのは思春と焔耶と自身の一刀だけであったようだ

一刀「さてと、時間がないからとっととやらせてもらうぞ？」

一刀は鋭い爪を構えて晩禍に言う

晩禍「ふん…………クソガキが何をしようと所詮クソガキだ」

一刀「へぇ?？随分と余裕……」

ﾌｫﾝ!!

ﾄﾞｶｯ!!

晩禍「ぐぅっ!!?」

一刀「だねっ!!!」

一刀は『龍走』も『空走』もしないで一瞬にして移動し、晩禍を殴りつけた

秋蘭「っ!!?な、何という踏み込みの大きさと速さだっ!!」

しかもそれだけではない

ﾄﾞｶｱｧｧﾝｯ!!

晩禍「がっ!!?」

ﾄﾞｶｱｧｧﾝｯ!!

晩禍「ぐおっ!!?」

ﾄﾞｯｶｱｧｧｧｧｧﾝｯ!!!!

晩禍「がはっ!!?」

一刀は軽く殴っただけなのに、晩禍は止まることなくあらゆる岩に体を打ち付けられていく

その度に岩は粉々に吹き飛ぶ

音々音「ど、何処まで行くのですかーーっ!!?」

一刀「……………俺もここまでとは思ってないよ」

一刀自身も唖然としていた

雪蓮「……あの進化の名は何て言うの？」

雪蓮の質問に思春は

思春「名前にはその由来もあります

その由来からご説明致します」

思春は目線を一刀に向けて話す

思春「…………その素早さ、鷹の如く……」

一刀「よっ!!」

ｼｭﾝｯ!!

晩禍「ぐっ!!?」

一刀は未だ飛ばされている晩禍の背後に一瞬で回り込んだ

今回も『空走』をしていない

思春「その凶暴さ、狼の如く」

一刀「はっ!!」

ﾌｫﾝ!!

ﾄﾞｶｯ!!

晩禍「ぐあっ!!?」

一刀は軽い蹴りを喰らわせたつもりだったが、又もや晩禍は吹き飛ばされた

思春「その獰猛さ、虎の如く」

ｼｭﾝｯ!!

一刀「せりゃっ!!」

ﾌｫﾝ!!

ﾄﾞｶｯ!!

晩禍「がっ!!?」

一刀は晩禍を追いかけ、鳩尾に一撃を入れ吹き飛ぶ晩禍を停止させた

思春「そして最後に…………」

一刀「はぁっ!!」

ﾌｫﾝ!!

ﾄﾞｶｯ!!

晩禍「ぐぉおおおっ!!?」

一刀はハンマーパンチをして晩禍を地面に叩きつけた

そして『空立』をしている一刀を見た思春は

思春「あの光輝く姿こそその所以………

その神々しさ、龍の如く…………

その頭文字を取って名付けられたのが…………」

思春「一刀の新たなる進化、『鷹狼虎龍(ようろうこりゅう)』です!!」

　　　　　　　　　　　……終……