英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜ザクセン鉄鉱山〜
「え――――」
「あ、貴方は……!」
ミュラー少佐の登場にエリオットは呆け、マキアスは驚き
「―――お怪我はありませんか?レン姫。」
「うふふ、大丈夫よ。」
自分の方へと振り向いたミュラー少佐の言葉にレンは微笑みながら答えた。
「やれやれ…………よりにもよってレン姫に危害を加えようとするとは……そんなに早死したいのかい?」
その時聞き覚えのある呆れた様子の声が聞こえ、声に驚いたリィン達が声がした方へと振り向くとなんとそこにはオリヴァルト皇子がジョルジュやツーヤと共にいた!
「オリヴァルト殿下……!」
「ナイスタイミング。」
オリヴァルト皇子の登場にアリサは声を上げ、フィーは静かに呟き
「ツーヤさん、ジョルジュ先輩も……」
「お姉様達が無事で本当によかったです…………!」
ツーヤとジョルジュに気付いたリィンは目を丸くし、セレーネは安堵の表情をし
「凄いな……一体どんな技術で作られているんだ……?」
「ハア……やっぱりパテル=マテルを呼んだんですか、レンさん…………」
ジョルジュはパテル=マテルを興味ありげな表情で見つめ、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐いた。
「あれ……クロウは?」
その時クロウがいない事に気付いたエリオットは不安そうな表情をし
「クロウからはさっき通信でこっちに向かっている最中に出会った人形兵器に囲まれて、その際の戦闘で傷を負ったから傷を回復してからこっちに向かうって。まあ、クロウの話だとそんな大した傷は負っていないそうだから、大した事はないと思うけど。」
「そうですか……」
「……………………」
ジョルジュの説明を聞いたマキアスは頷き、レンは真剣な表情で考え込んでいた。
その後オリヴァルト皇子はミュラー少佐と共に帝国解放戦線の飛行艇の残骸がある大穴を見つめた。
「……あれがテロ組織が所有していた最後の飛行艇か。」
「ああ、恐らくは。詳しい検分は必要だろうが。」
「ふむ……」
ミュラー少佐の言葉に頷いたオリヴァルト皇子は考え込みながら後ろへと振り向いた。
「お、皇子殿下におかれましてはお迎え出来て光栄の至り―――」
領邦軍の隊長は緊張した様子でオリヴァルト皇子に挨拶をしようとしたがオリヴァルト皇子が制した。
「……挨拶はいい。それより状況を整理しよう。そちらの士官学院生達並びにレン姫の行動の正当性は私が保障する。異存はないかな?」
「も、もちろんでございます!」
オリヴァルト皇子の問いかけに隊長は慌てた様子で答え
「殿下……」
「はああっ……よ、良かったぁ〜……」
リィンはオリヴァルト皇子に感謝し、エリオットは安堵の溜息を吐いた。
「―――それと先程レン姫に危害を加えようとした件についてはレン姫に裁量を委ねる。君自身がやらかした事なのだから、勿論責任を取ってもらうよ?」
「そ、それは…………」
オリヴァルト皇子に見つめられた隊長は表情を青褪めさせ
「―――オリヴァルト皇子。それとは別件になりますが、パテル=マテルで飛行艇を撃墜しようとした所領邦軍が妨害をするどころかパテル=マテルを破壊しようとパテル=マテルに銃撃をしました。証人としてこちらのZ組の皆さんもそうですし、そちらのクレア大尉率いる鉄道憲兵隊も目撃しています。―――そうですよね、クレア大尉?」
「……はい。レン姫の仰る通り、領邦軍がメンフィル軍が保有する人形兵器―――”パテル=マテル”に銃撃を行っている所を私を含めたこの場にいる鉄道憲兵隊全員がこの目で見ました。」
「何?…………とんでもない事をしてくれたな。パテル=マテルはメンフィル軍が保有する兵器の中では戦艦―――”モルテニア”、”グロリアス”に次ぐトップクラスの兵器だ。その兵器を正当な理由なく破壊しようとしたのだから、正直国際問題に発展してもおかしくないぞ。」
「…………………」
レンとクレア大尉の説明を聞いて眉を顰めたオリヴァルト皇子は厳しい表情で領邦軍を睨み、領邦軍は隊長を含めた全員が表情を青褪めさせた。
「まあ、攻撃されたと言っても自己修復が可能なレベルですから大した事はありませんし、私としてもできればこのような些細な事を公にして国際問題に発展させたくはありません。この件と先程私の身を狙った件につきましては”ログナー侯爵家”の当主―――ゲルハルト・ログナー侯爵に直接抗議し、内密に”示談”で済ませようと思っているのですが。勿論、”賠償金”を頂く際”ログナー侯爵家”にノルティア州の領地を差し出させる要求はしませんので、その点はご安心下さい。」
「そうか……そういう事ならこちらとしても異存はない。その二つの件についての裁量はレン姫にお任せする。」
「フフ、ありがとうございます。―――そういう訳ですのでログナー侯爵に本日中に私自身が赴く事を伝えておいてくださいね?」
オリヴァルト皇子の答えに微笑んで会釈したレンは不敵な笑みを浮かべて領邦軍を見つめ
「か、かしこまりました……!」
レンに見つめられた隊長は恐怖の表情で敬礼をした。
「さらに鉱山所有者である皇族”アルノール家”の名の下にこの場の全ては私が預かる。領邦軍の諸君は速やかに撤退を。鉄道憲兵隊の諸君は私の指揮下に入ってもらうぞ。」
「仰せのままに、殿下(イエス・マイロード)。」
「ぎょ、御意……!撤退―――グズグズするな!」
オリヴァルト皇子の指示にクレア大尉は敬礼をし、隊長は敬礼をした後領邦軍と共に撤退した。
そして―――その後の事態収取は驚くほどスムーズだった。オリヴァルト皇子の指揮下、鉄道憲兵隊は忠実に職務を果たし……残されていた人形兵器は駆逐され、鉱員たちも無事、全員が解放された。
しかし―――事件がもたらした余波はそれだけでは済みそうになかった。領邦軍は明らかに、テロリストたちの行為を黙認するかのように動き……貴族派が牛耳る第一製作所による『鉄鉱石の横流し』の証拠もテロリストによって破棄されていた。
しかし……状況証拠は限りなく黒に近く―――オリヴァルト皇子はイリーナ会長の全面協力を受ける形で、厳正な調査を行うことを宣言するのだった――――
説明 | ||
第254話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 本郷 刃様 まあ、普通に考えたらえげつない裁量になってもおかしくありませんしねww(sorano) レンがどんな裁量にしたのかが気になりますね(本郷 刃) |
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