英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜シュバルツァー男爵邸〜
「ここがお兄様の実家ですか……立派なお住まいですわね。」
「ハハ、他の貴族達の家と比べれば大した事はないよ。(この門をくぐるのも……半年ぶりか……5歳から13歳までの8年、ここで過ごしたんだよな……忘れてしまいたい忌まわしい記憶もあるけど、俺にとってはそれ以上に暖かくて大切な場所だ。)」
実家を見つめるセレーネの言葉に苦笑しながら頷いたリィンは懐かしそうな表情で実家を見つめた。
「あ……」
するとその時扉が開き、自分の両親であるシュバルツァー男爵と男爵の妻、ルシア夫人が現れ、リィン達に近づいてきた。
「お帰りなさい、リィン。」
「よく戻ったな。」
「ただいま戻りました。父さん、母さん。その……こんな形で帰って来てしまって……」
自分を見つめる両親に挨拶をしたリィンは複雑そうな表情をした。
「え……」
するとその時ルシア夫人がリィンを優しく抱きしめた。
「フフッ、子供が家に帰るのに理由はいりません。こうして母親が子供を抱きしめる事にも……」
「母さん…………」
「父様、母様。兄様がいらっしゃったの―――あ、ああっ!?」
ルシア夫人の言葉を聞いたリィンが驚いたその時エリスが屋敷から現れ、状況を見て驚いた。
「エリス?」
「ズ、ズルイです母様!私は皆さんの前だったので我慢して―――」
「え?」
頬を膨らませてルシア夫人を睨むエリスの言葉を聞いたリィンは呆けた表情をし
「あ……っ!」
「フフ、全く……いつも素直なら安心なんだけど?」
すぐにリィンの目の前で恥ずかしい事を口にした事に気付いて顔を赤らめたエリスをルシア夫人は微笑みながら見つめた。
「か、母様……!」
「ハッハッハッ……何はともあれこうして家族がそろったんだ。エリゼがいないの非常に残念だが……お茶でも飲みながらゆっくり語り合おうではないか。」
「そうですね……」
シュバルツァー男爵の提案を聞いたリィンは口元に笑みを浮かべて頷き
「リィンの学院での生活を是非聞きたいわ。例えばそちらの綺麗なお嬢さんの事とかね?」
「え、えっと……」
セレーネに視線を向けたルシア夫人の言葉を聞いたリィンは口ごもった。
「フフッ、もしかして学院でできた恋人か?」
「フフ、わたくしはリィンお兄様とそんな関係になれたら嬉しいと思っていますが。」
シュバルツァー男爵に視線を向けられたセレーネは微笑み
「ちょっ、セレーネ!?」
「なっ!?抜け駆けなんてズルイわよ、セレーネ!」
セレーネの言葉を聞いたリィンは慌て、エリスはセレーネを睨んだ。
(アハハハハ!この後私達の事を知ったら、両親はどう思うのかしらね〜?)
(ふふふ、驚く事は間違いないでしょうね。)
(まあ、普通に考えれば4人もの女性を侍らしているようにしか見えませんものね……)
(フフ、さすがリィンの両親ね。二人からリィンに対する暖かい気持ちが溢れ出ているわ。)
一方ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアは冷や汗をかいて苦笑し、アイドスは微笑みながらリィンの両親を見つめた。
「クスクス、どうやら本当に色々あったみたいね?あなた、狩りの話はほどほどにしてくださいね?」
「ハハ……気を付けるよ。ああ、子供達の久々の帰郷だ。しかも息子は学友たちと共にユーゲント陛下よりお褒めの言葉を賜っている。せめてユミルのものを仕留めてもてなさなければな。」
「きっとみんな喜びます……!」
「さあ、入って。すぐにお茶の用意をしますから。リビングで寛いでくださいな。」
「はい。」
その後実家の中に入って行ったリィンとセレーネはルシア夫人が出したお茶をご馳走になりながら、シュバルツァー男爵夫婦に学院で起こった様々な出来事を話した。
「まあ……貴女がリィン達の手紙にあったルクセンベール卿の妹君だったの……フフ、私はてっきり学院でできた将来の伴侶を紹介する為に連れてきたのかと思ったわ。」
「か、母さん!?」
微笑みながらセレーネを見つめて言ったルシア夫人の言葉を聞いたリィンは慌て
「に・い・さ・ま〜〜〜〜〜!?」
エリスは膨大な威圧を纏ってリィンに微笑んだ。
「な、何でそこで俺を睨むんだよ!?」
「ギロッ。」
「う”っ。」
エリスにギロリと睨まれたリィンは唸り声を上げて冷や汗をかき
「フフ……―――お兄様。わたくしの事をご両親に紹介したのですから、ベルフェゴール様達の事も紹介した方がよろしいのではないですか?」
「そ、それは…………」
セレーネの提案を聞いたリィンは表情を青褪めさせて冷や汗を滝のように流し始めた。
「確か学院での生活や実習先で出会った際にリィンに力を貸してくれている異種族の方達だったか?できれば私達も挨拶をしておきたいな。」
「そうですね……その方達がリィンに力を貸してくださっているお蔭で、シュバルツァー家の爵位が将来上がる事も決まっているのですから、リィンにいつも力を貸してくれている事も含めて是非お礼を言っておきたいですね。」
「へっ!?シュ、シュバルツァー家の爵位が上がるってどういう事ですか!?」
「私も初耳ですが……」
男爵夫婦の話を聞いたリィンは驚き、エリスは目を丸くした。
「実は3ヶ月くらい前にメンフィル帝国から通達があってね。エリゼがリフィア殿下の専属侍女長としての仕事を立派に務めている功績と、リィンが友好を結んだ相手―――”魔神”と”精霊王女”という種族をメンフィル帝国に所属させた功績をたたえてシュバルツァー家の爵位を上げる事を決定した通達が来たのよ。」
「通達によればすぐにでも爵位を上げる準備は整っていたが、私はリィン達がシュバルツァー家を継いだ際に上げて欲しいと頼んだんだ。リィン達の手柄なのだから、それを受け取るのは当然リィン達だろう?」
「父さん…………」
「まあ、この人にとっては爵位が上がった際に与えられる領地も増えれば領主としての仕事が多忙になって、趣味の狩りをする時間が減るからもあるでしょうけど。」
「ハハ…………―――それと3週間前にリウイ陛下がイリーナ皇妃と側室であられるペテレーネ様とシルフィエッタ様とシルフィエッタ様のご息女であられるセオビット様、そしてリフィア殿下がエリゼと共にユミルに訪れて休暇を過ごした際にシュバルツァー家の爵位が更に上がる事も説明されたんだ。」
ルシア夫人の話を聞いて苦笑したシュバルツァー男爵は気を取り直して説明を続け
「まあ……!リウイ陛下達もこちらに訪れていたのですか……!」
「ハハ……何だ。エリゼは一足早く帰省していたのか……」
「父様、母様。シュバルツァー家の爵位が上がるとの事ですが、どの爵位に上がるのでしょうか?リウイ陛下のお話を含めればもしかして”伯爵”になるのでしょうか?」
シュバルツァー男爵の話を聞いたセレーネは目を丸くし、リィンは苦笑し、エリスは不思議そうな表情で尋ねた。
「フフ……リウイ陛下の話によるとメンフィル帝国はシュバルツァー家に”侯爵”の爵位を授けて下さるそうよ。」
「こ、”侯爵”!?」
「爵位を3段階も一気に上げるなんて、普通に考えれば絶対にありえない事ですよね……?」
「まあ……!フフ、じゃあお兄様は将来”侯爵”になられるのですから、エリゼお姉様より出世なされますね♪」
ルシア夫人の説明を聞いたリィンは驚き、エリスは戸惑い、セレーネは嬉しそうな表情でリィンを見つめ
「それに伴ってメンフィル帝国の直轄領になっている領地の一部をシュバルツァー家に任せて下さるそうだ。その中には”セントアーク”や”ケルディック”も入っているぞ?」
「……………………」
「かつて”四大名門”の一つ―――”ハイアームズ侯爵家”が治めていた”サザーラント州”の中心都市に加えてエレボニアの貿易の中心部として有名だった”ケルディック”までシュバルツァー家が治める事になったんですか!?」
「ええ。」
シュバルツァー男爵の説明を聞いたリィンは話の壮大さに口をパクパクさせ、エリスは信じられない表情で声を上げた。
「リウイ陛下からはすぐに軍を辞めろとは言わないが、リィンにはできれば将来に向けて領主として色々勉強して欲しいとありがたいお言葉を賜ったぞ?」
「まあ……!リウイ陛下からそのようなお言葉が……よかったですね、兄様……!リウイ陛下が養子である兄様がシュバルツァー家の跡継ぎである事を認めてくれた事にもなるのですから。」
「あ、ああ………(というか、俺が”侯爵”でセントアークやケルディックの領地経営をするなんて、想像もできないよな……ハハ…………)」
シュバルツァー男爵の話を聞いて嬉しそうな表情で自分を見つめるエリスの言葉にリィンは戸惑いの表情で頷いた後心の中で苦笑した。
説明 | ||
第257話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます ギギン様 さすがはリア充ですよねぇ!? THIS様 まあ、将来の苦労と比べれば大した事ないかとww 本郷 刃様 指摘に気付き、訂正しました。指摘ありがとうございます(sorano) 普通の魔神ではなく“七つの原罪”の1柱である魔神と精霊の王族ですからね、それも当然ですか・・・・・・そういえばリィンが12年間過ごしたと言って(考えて)いましたが、ディル=リフィーナの学校に通ったり訓練兵として出向していたのなら矛盾するような・・・?(本郷 刃) rリィン。苦労に見合うというか・・・すごいことになっているWW(THIS) |
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