ミドラ 盆踊り | 次 |
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親戚の集まりから抜け出して、緑のロング甚平に着替える。ボディバッグからシトロネラの虫除けスプレーを取り出して全身にふりかけて 外に出る。田舎の夕暮れは普段見るものよりも明るくて綺麗だなぁ。たまには田舎に遊びに来るのも良いな。虫除けスプレーを付けとかないと虫が飛んできてうっとおしくてたまらないけどね。 「んみゃ?」 田舎の親戚の畑には美味しそうなトマトやナスが実っている。畑の片隅には、私が前にバリ雑貨の店で買って持ってきた石のカエルちゃん達が無惨に倒されたり、草むらの中に埋もれてしまっている。みゃああ、せっかく綺麗に飾ったのに。 石のカエルちゃんを掘り起こすと、畑の土の中から勾玉、BB弾、割れた天然石のビーズ、緑の陶器の欠片なんかがジャラジャラ出てくる。昔、私がいらなくなって埋めたり投げ捨てたやつだ。みゃあ、これらを知らない人が掘り起こしたら、ここに古墳でもあったのかと思うんだろな(=^д^=) 掘り起こした石のカエルちゃん達を畑に並べ直して、がらくたを元通り埋め戻した後、近くのあぜ道をしばらく歩いていると川の方から盆踊りの音楽が聞こえてくる。みゃっ、今日は盆踊りの日か。田舎の親戚の家はパソコンがなくて退屈してたとこだし、ちょっと近くに行ってみるかな。 山道を下り、段々畑を飛び降り、少し離れた川原に来た。川沿いに屋台もちらほら出ている。 「あの、唐揚げ一つ、あと綿菓子も」 「はい、どうぞ!」 屋台で買い食いしつつ、提灯の灯りに照らされた櫓の建っている盆踊り会場の方に行ってみる。田舎の盆踊りだし、踊ってるのは年寄りや小さな子どもばっかりだ。よく見るとミランシャ姉が年寄りに混じって踊っている。私は汗をかきたくないし、大勢の人の中に入るのはイヤだから踊る気はない。 「ネコさん、しっぽ〜」 「みゃ…」 時々、近くの子ども達に尻尾を触られるが知らんぷりして広場の中央から離れ、広場の端っこに山積みにされてる巨大なトラックのタイヤに座る。踊っている人は日の丸の扇を持って踊り、私は緑の扇を持って眺める。緑の扇を持った手だけ盆踊りの真似して振る。みゃあ、提灯のオレンジの灯りは暖かみがあって良いなぁ(=*´Д`*=)づ<) 「みゃあ…」 「ん、ミドラも来たのか。参加したら飲み物貰えるのにミドラは踊らないの?」 ミランシャ姉が来た。ミランシャ姉は昼間からずっと出掛けていたみたいだけど、その辺の人間より筋肉質で力持ちだから手伝わされてたりしてたのかな。 「んみっ、見てるだけでいいよ」 「ふぅ、昼間に川原に来てたら、櫓組み立てるの手伝わされて、踊りにまで参加させられて大変だったよ。年寄りばっかりだからしかたいけど。まあ、飽きてきたからコーラかっぱらって抜けて来たけどな」 ミランシャ姉は私の隣にコーラを置く。炭酸入りのコーラは口の中がシュワシュワするからあんまり好きじゃないけど、のど渇いてたし飲もうかな。 「二本持ってきたから、それ飲んでいいよ。唐揚げ一本と交換な!」 ミランシャ姉は、私が食べ残してた唐揚げを取って、後ろの廃車に飛び乗る。この大型トラックのタイヤも廃車正月に来た時にはなかったから、多分この前の台風で上流から流されてきたんだろな。 「んっ、んにぃ〜この唐揚げ大きくてジューシーで美味しいなぁ〜♪ あと2〜3本は欲しいな〜」 ミランシャ姉は美味しそうに唐揚げを頬張って、嬉しそうに尻尾で廃車をバンバン叩く。太くて力強いミランシャ姉の尻尾を打ち付けられる度に、廃車の屋根やボディはベコベコ凹み、窓ガラスに蜘蛛の巣みたいなヒビが入る。 「みゃ、車が壊れるよ」(;=^人^=) 「みぃっ!? …ま、廃車だしいいんじゃない?」 「もう、崩れそうに……みゃああ!?」 私が廃車のボディを軽く押すと「ボコン」と大きな音が鳴って凹み、タイヤとドアが外れ、サイドミラーが落ち、窓ガラスが割れ、柱が折れて屋根が陥没し始めた。 「みぃっ!?」 ミランシャ姉は素早く飛び上がり、私が落としたペットボトルを踏み潰して着地する。踏み潰されたペットボトルは、キャップが吹き飛び、中のコーラが勢いよく噴射され、潰れた廃車にふりかかる。外れた廃車のタイヤは暫く転がり続けた後、川に落ち、流されて闇に呑まれて見えなくなった。 ついさっきまで原形を留めていた廃車は、二人の猫娘の手によって、あっという間にベトベトの甘ったるい泡まみれの鉄屑へと変貌した。 「みゃあああ…」((((;=°Д°=)))) 「んみぃぃ〜ごめんな。…ふぅ、廃車で良かった。誰かの車だったら大変だったな」 |
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