地球防衛軍4 ジャベリン・カタパルト |
・ジャベリン・カタパルト
ジャベリンカタパルトはEDF技術研究部が開発したブレード射出装置である。フェンサー用に開発された装備で、バックパックの上部接続部分に連結するショルダーマウント式である。
2017年の戦いが終わってから、大出力の人工筋肉を搭載したパワーフレームの実用化により、生身の人間では持てないような装備を扱える新兵科フェンサーが誕生したことで数々の専用装備が開発されていた。
フェンサーの運用方法は大別すると2種類あった。ひとつはスピアやハンマーなどの近接装備とサイドスラスターを装備した近接戦闘型。もうひとつが機関砲や迫撃砲を装備した重火力型であるが、ジャベリンカタパルトは本来であれば後者の重火力型に位置付けられていた装備である。
ジャベリンカタパルトはフォーリニウム11を使った専用の特殊合金弾が用いられている。フォーリニウムシリーズは飛行ドローンやヘクトルから採取できるフォーリナー由来の合金の総称であり、フォーリニウム11は常に微弱なフォースフィールドを発生させている。
フォーリニウム11は硬く高い質量を持つため、技術研究部はフォーリニウム11の砲弾転用を計画した。フォーリニウムはフォーリナー兵器の残骸からしか採取できない素材であったが、世界中に無数の残骸が転がっており、また既存の資源採掘施設の多くが戦災で機能不全に陥っていたことからフォーリニウムの転用が決定した。フォーリニウム11は多くの残骸から採取できるため生産量も高かったのである。
フォーリニウム11は常温では個体なものの融点が低く、少しの熱で液体となってしまう。つまりフォーリニウム11は通常の弾丸と同じように炸薬を使って発射したら、すぐさま熱によって液体に変化し飛び散ってしまう。これでは弾丸としては使えない。
フォーリニウム11は微弱なフォースフィールドを発生させることから、弾丸として用いると加速度が得られやすい特徴がある。まず進行方向に向けてフォースフィールドが円錐状に発生し、空気を押しのけ気圧を低下させる。この気圧が低下した空間は周囲の空気や物体を吸引しようする上に空気抵抗が減ぜられているため、弾丸そのものが抵抗を受けにくいのである。つまりフォーリニウム11を使った弾丸は、理論上高い運動エネルギーを得やすいということになる。
そのため技術研究部は、針状に加工したフォーリニウム11を空中から大量に投下する試験を行った。火砲で発射すると溶けてしまうなら空中から投下すればいいという考えであったが、試験結果は失敗に終わった。断熱圧縮によって弾丸が空中で液体になってしまったからである。
低高度からの投下で融解する前に着弾させる試験も実施され、こちらでは一定の成果を収めたものの、爆弾ほどの効果はあげられない上に、低高度では投下する母機が地上からの攻撃を受ける可能性があった。最終的に空中からの投下であれば、普通の爆弾を使ったほうが効果的であるという結論が出された。
空中投下試験の結果から航空機による運用を諦めた技術研究部は、その教訓から歩兵単体による擬似的な低高度投下を再現する試験を実施した。
第1試作砲のフォーリニウム11弾頭射出装置は射出の際に高圧縮ガスを使うもので、短い射程ながらも低温のガスを利用し弾頭が熱によって融解はしないよう設計されていた。歩兵1人で扱うもので、その形状はグレネードランチャーに酷似していた。
この試験はある程度の成功を収めた。空中に撃ち出されたフォーリニウム11は曲射弾道で目標地点に命中。フォースフィールドによって空気を押し退けた加速と、弾頭の高い質量から地面に大穴を開けるに成功した。
だが素材の使用量と比較して得られる破壊力が吊り合ってないという意見もあり、弾頭に断熱材を搭載した戦車砲弾型が新たに試験された。だが断熱材が空気抵抗を生み出し加速が得られず、従来のタングステンや劣化ウランを使った砲弾のほうが破壊力が得られる上にコストもかからないことからこの計画は破棄された。
歩兵単体のフォーリニウム11弾頭射出試験は引き続き行われ、第2試作砲ではフェンサーが扱うことで決定した。この第2試作砲は完成形のジャベリンカタパルトとほぼ設計は同じである。
フェンサーのパワーフレームの出力を上げると機関部のバックパックが熱を持つが、その熱によって外付けされた弾倉内に満たされたフォーリニウム11を液体にする。液体化したフォーリニウム11を高圧ポンプで射出すると同時に、砲口を覆う冷却材によって射出されるフォーリニウム11を瞬間的に固体化させる。このとき砲口に固着しないように、メンテナンス時には専用の潤滑油を塗っておくようにする。
この第2試作砲は成功であり、さらに弾頭を液体にできるため携行弾数が増える効果も得られた。
続く第3試作砲では射出時に発生する反動をポンプの作動に利用し、さらに弾頭を射出する方法が試された。フェンサーのバックパックにふたつの第3試作砲を搭載し、それぞれの装填機構を連結させ、片方の砲が射出する反動の圧力をそのまま反対側のポンプの作動に利用した。この試験は大成功であり、組み合わせることで秒間20発の高速連射が可能となった。
その後、融点の引き上げを狙いフォーリニウム11に他の金属を混ぜた特殊合金弾頭を使った第4試作砲を経て、ジャベリンカタパルトは完成した。ジャベリンカタパルトはフェンサー用の装備としてEDF制式採用装備として登録された。
しかし制式採用装備として登録されてまもなく、ジャベリンカタパルトの不遇な時代がやってくることになった。ジャベリンカタパルトはふたつの砲をフェンサーのバックパックの左右に取り付け、互いの装填機構を連結することで連射し、大量のブレード型砲弾によって面制圧を担う兵器として用いることが想定されていた。しかし冶金技術の向上に伴いフォーリニウム11が新素材として注目され始めると、需要が高まり価格が釣り上がってしまった。フォーリニウム11を大量に使用するジャベリンカタパルトにとって、弾薬製造費の高騰は致命的な問題であった。
フォーリニウム11を別のフォーリニウム素材、あるいは地球原産の素材で代替する研究は行われたものの成果を出せず、ジャベリンカタパルトは瞬く間に生産中止の憂き目にあった。そしてそのまま2025年の戦いへと突入した。
2025年の戦いで少数のジャベリンカタパルトが実戦投入されたが、投入直後は惨憺たる成果しか出せなかった。射程が短い上に攻撃中は移動ができず、パワーフレームの可搬重量の問題からシールドを持てないため、巨大生物の接近を許した際に防御や回避できず強酸の接射をくらう危険性が非常に高かったのである。
しかしジャベリンカタパルトはそのまま駄作兵器として歴史から姿を消すことはなかった。まったく別の使い方がある兵士によって考案され、それが次第に各地のフェンサーの間で広がっていくことになった。
ジャベリンカタパルトに使われる特殊合金弾はフォーリニウム11が主な構成材になっていることからフォースフィールドを発生させる。弾頭とそのフォースフィールドは空気をかきわけるため、射出直後の弾頭の真後ろは空気を押し退けたぶん気圧が下がっている。つまり弾頭を射出した直後にフェンサー自身がサイドスラスターを噴射すれば、減ぜられた空気抵抗の中をフェンサー本人が突き進むことができる。いわゆるスリップストリーム現象を利用できるのである。
さらにサイドスラスターを噴射する際の高圧ガスのほんの一部をポンプの圧力に回すことで、ジャベリンカタパルトを片方しか装備していなくともある程度連射が可能となり、ジャベリンカタパルトの連射とスラスターの連続噴射により凄まじい速度で機動することが可能になる。この高速移動方法は、スラスター噴射直後に感じる空気の壁を取り消す(cancel)ことから「ジャベリンキャンセル移動」、あるいはさらに縮めて「ジャベキャン」と呼ばれるようになった。
ただしこれはジャベリンカタパルトが本来想定していた正常な使い方ではなく、フェンサーの姿勢制御支援用ソフトウェアにはこのジャベキャンはサポートされていなかった。ジャベリンカタパルトの新たな使い道が技術研究部のパワーフレーム専門の研究班に伝わって初めてフェンサー用姿勢制御支援用ソフトウェアにアップデートが施され、ジャベキャンに対応した姿勢制御が機械的に補正されることとなった。これにより卓越した熟練兵以外でもジャベキャンができるようになった。
ジャベキャンは近接戦闘用の武器との相性が非常によく、主にスピアやハンマーなどの装備と併用された。
一方でこのジャベキャンには欠点もあった。もともとスラスターは緊急回避用に使用する装備であり、加速度こそ高いものの速度を維持することができない。それを強引に連続噴射させるため、急な加速と減速が連続し身体に大きな負担がかかってしまう。
さらに速度が高過ぎるため、少し間違えれば建物や木々にぶつかってしまう。またソフトがアップデートされたといっても、姿勢制御にはフェンサー自身の卓越した身体制御能力が必要であった。重量の問題からシールドを装備できないため防御力に劣ってしまうし、スラスターを連続噴射することから推進剤の消費量が格段に跳ね上がる。
様々な問題を抱えていたジャベリンカタパルトであったが、ウイングダイバーに匹敵する機動力が得られる点は運用上の多様性を発展させるものであった。装甲車や輸送ヘリなしで迅速な部隊展開ができることは、敵の側面に回り込んでの急襲や、苦戦中の部隊への救援など様々な状況で有効であった。
またこの機動力はフェンサーの生存性を高めることに一役買っており、戦争を生き延びた大半のフェンサーはジャベキャンを会得していたとされる。
なおジャベリン系兵装の開発チームはジャベリンカタパルトが意外な形で転用されたことに激怒しており、後に面制圧能力を強化したジャベリンストームを開発している。しかしジャベリンストームが思ったほどの成果をあげられない上に高機動運動には使えなかったことから、上層部の命令でジャベリンカタパルトの発展型であるツインジャベリンカタパルトが開発された。
・ツインジャベリン・カタパルト
ジャベリンカタパルトは開戦当初まったく不要な装備と考えられていたが、いざ実戦投入されるとジャベキャンの発見により一躍重要な装備となった。ジャベリンカタパルトは大量生産と同時に改良型の開発が始まったものの、できあがったのはジャベリンストームというジャベキャンに使えない代物であった。
これは開発者がジャベリンカタパルト本来の使い方を重視した結果であったが、軍はジャベキャンが使える改良型を求めており、ジャベリンカタパルトの正当な改良型の開発を技術研究部に求めた。
開発者は面制圧能力を活かす本来の扱い方にひどく固執しており、ジャベキャンは邪道とさえ発言していたが、軍側は開発完了後にジャベリンストームの改良に予算を出すことを約束し、これを受け入れた開発者はしぶしぶジャベリンカタパルトの改良を開始した。その結果できあがったのがツインジャベリンカタパルトである。
ツインジャベリンカタパルトはその名の通り、2発のブレード型砲弾を同時発射する連装砲である。連射性はジャベリンカタパルトと変わらないため、従来の2倍の砲弾を投射できる。
砲口の冷却材を砲身内部にも棒状に搭載する二重冷却によって、砲弾の内側に空洞を作るようにしている。これにより砲弾の液体消費量を減らすことに成功し、弾倉の大型化と合わせて実質的な携行弾数は2倍以上にも伸びている。また特殊合金の比率を変えて質量を増大させているため、1発当たりの破壊力はジャベリンカタパルトを上回っている。
しかしこれらの改良はジャベキャンを強化するものではなく、従来の面制圧能力の向上に他ならなかった。確かにジャベリンカタパルト本来の使い方である連続発射による面制圧能力は、ツインジャベリンカタパルトで大幅に強化されたと言えるだろう。しかしツインジャベリンカタパルトに求められていたのはジャベキャンであり、面制圧能力ではなかった。またこれらの改良によってジャベキャンにも影響が出てしまった。
改良によって携行弾数が増したとはいえ2発同時発射するため、ジャベリンカタパルトと比べるとジャベキャン可能回数は50回しか増していない。またジャベキャンをするとき弾丸が単発でも2発同時発射でも効果は変わらないため、同時よりも単発で撃つ方が効率がいいが、内部が複雑な構造であったため単発発射に改良できなかった。また砲身や高圧ポンプの複雑化は整備性の悪化をもたらし故障率も上がってしまった。
他にもジャベリンカタパルトの時点で地面に刺さった弾丸がジャベキャンに邪魔になる欠点を抱えていたが、ツインジャベリンカタパルトでは2発も発射するためさらに邪魔になり、自分で撃った砲弾にうっかり体当たりしてしまうケースが増加した。
これらの欠点は開発者の意地によるものと言っても過言ではなく、面制圧能力こそがジャベリンカタパルトにとって真に必要なものと信じて疑わない開発者がジャベキャンを軽視した結果であった。
軍は開発者にジャベキャンに特化したジャベリンカタパルトを開発するよう強制したが、戦局の悪化に伴い戦中に開発されることはなかった。
ツインジャベリンカタパルトは極一部の精鋭部隊にのみ配備され実戦に投入された。
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最終更新:15/12/13 公開再開。読みにくかった部分を変更。ツインジャベリンカタパルト追加。 | ||
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