クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第5話 欺瞞の悪魔・前編 |
(酒井不動産・社長室・夕方)
ギューーーーン! スタッ!
ハク:到着です。時間も調整されて“夕方”になってますね
ミク:今回は終了時間付近のオフィスなのね。メイコ母さんのスーツ姿も格好いいなぁ。でも、母さんもアノ通り、スタイルいいから、また“セクハラ”なの?
ネル:うーん、なんか違うみたいだよ
ネルがそう思った理由は、社長室での酒井社長とメイコの会話であった。セクハラのような“やりとり”も無く、単に仕事の連絡をしているだけだったのだ。こっちのメイコは、社長の秘書なので、主なる仕事は社長のスケジュール管理や接客だった。
メイコ:以上が、明日の予定になります。
社長:わかった。今日は特にこれから仕事もないが、私はこれから個人的に友人と飲むので、キミは定時で上がって良いよ
メイコ:わかりました。お言葉に甘えさせていただきます
社長:ここのところ、忙しかったからね。家で十分休むと良いよ
メイコ:はい。それでは、お先に失礼致します
社長:はい、お疲れ様
こうしてメイコは何のトラブルもなく、あっさり社長室を退室してしまった。
ミク:あ、あれ? なんの問題もなかったね
ネル:ハクの力でワープした先が、必ずしも“現場”ってわけではないからね
ハク:とにかく更衣室に移動してみましょう
とにかく4人は、メイコの跡を追う事にした。
(酒井不動産・更衣室)
同僚:お疲れー!
メイコ:お疲れさま。私は珍しく定時上がりなんだけど、そっちも?
同僚:うん。不況の影響でオフィスの光熱費削減で、定時なのよ。残業代で稼げないけど、まぁ骨休みと思ってるわ
メイコ:そうね。私の部署は社長の仕事管理だから、ちょっと最近は忙しかったのよ。でも今日は定時だから、ゆっくり休む事にしたわ
同僚:そうね、じゃあ、お先に!
メイコ:お疲れー!
こうして先に来ていた同僚も着替え終わって退室し、メイコも同様に着替えと仕度が終わって、帰宅したのだった。
ミク:ありゃ? ここでも何の問題も無かったね
ネル:うーん。多分、“会社では問題はないんだよ”って事を、事前に知っておくために、まずここから始めたのかも
ハク:予備知識ってことね
ミク:ま、まぁ、会社とか仕事場での問題だと、私たちも正直やりにくいからいいんだけどね
テト:(^-^)/
ネル:ということは、問題があるのは、“家”って事だね。あ、勿論、ミクの家じゃないからね
ミク:うん、わかってる。私の家の母さんは、専業主婦だからね
ネル:じゃあ、家が目標地点だけど、そこまでメイコさんを追跡しようか
こうして一行は、今度は退室したメイコを追いかけ、家まで追跡したのだった。
(メイコが住んでいるマンション・夜)
ガチャ
メイコ:ただいまー・・・って、一人なんだよね・・・
こっちのメイコは一人暮らしをしているのだった。部屋の中はきちんと片付けられていた。しかし、問題になりそうな人物、物品などは見あたらなかった。
***
ミク:あれ? 部屋も綺麗だし、一人暮らしだから問題だと思うような人物もいないし、ペットもいないし・・・
ハク:問題になっている“原因”って何なんでしょうね?
ネル:もしかすると“一人暮らし=カレシ探し”とか?
ミク:それはないよ。私の世界の方とクロスリンクしているから、母さんの問題がカレシってのは、おかしいよ
ハク:そうね。カレシ関係でもないとすると、一体、問題ってなんなのかしら?
その“理由”は、すぐに解ることになった。
チリリリリリリーーーーン!!!!
メイコ:はぁ〜、またか〜
ガチャ
メイコはやる気のない態度で受話器を取った。
電話の声:咲音様のお宅でしょうか?
メイコ:はい、そうです。ご用件は?
電話の声:はい。当社から咲音様へ、化粧品のご優待販売のご連絡なのですが
メイコ:結構です
ガチャン
メイコ:はぁ〜、これで何度目よ、あの会社。いらないって言ったのに・・・
ミク:・・・なるほど。メイコ母さんの問題って、“迷惑電話”なのね
ネル:しかも“何度目”って言っているから、相当の頻度でかかってくるわけだ。こりゃきついわ
ハク:でも、はっきり断っているから、この程度に悪魔が関わっているってのは、ちょっと考えにくいんだけど
ミク:うーん、そうね。これまでの現場の危機的状態から考えて、“迷惑電話の現場”ってのは、ちょっとインパクト低いかも
ネル:こっちの世界限定だと思うけど、迷惑電話以上に“困る”問題ってなんだ?
チリーーーーン!
メイコ:はぁ、今度はなんだろ・・・
ガチャ
メイコ:はい、咲音ですが・・・
電話の声:咲音さんですね、こちら○○署の交通課の者です
メイコ:! 警察・・・ですか?
電話の声:はい。実は、あなたの弟様の件でのご連絡なんですが、時間取れますか?
メイコ:は、はい・・・あの、弟が何か・・・
電話の声:実は、弟さん、事故を起こしまして、今、その現場なんですが、示談が成立しましてね。その示談金“100万円”を今からご連絡する口座に振り込んでいただきたいんですよ
メイコ:!! あの、弟の声を聞きたいんですが・・・
電話の声:いいですよ
電話の声は流ちょうに答えて代わった。次に聞こえてきたのはメイコの弟の声だった。
メイコ:メイト! あんた、なにやったのよ!
電話の声:ごめん! 姉さん! 事故っちゃったんだよ!
ネル:・・・ミク、わかったよね、こっちのメイコさんが受けていた“問題”
ミクは手を握りしめて、ワナワナしていた。
ミク:ふ・・・・振り込め詐欺!!!!!
ネル:そう。ミクの世界では勧誘電話程度だったんだろうけど、こっちの世界では“電話による振り込め詐欺”にまで拡張されていた。完全に“悪魔”の力を利用している可能性が高いよね
ハク:そもそも警察が“示談話”を電話で持ってくる事はないのよ
ネル:でも聞き分けられない程そっくりの“弟の声”を使う事で、心理的に揺さぶって、振り込ませていたんだね
ミク:メイコ母さんの弟とか、それはいいとして、聞き分けられない程そっくりの“声”を用意するのは、現実的には無理
ネル:悪魔が力を貸しているとしか思えないよね
ミク:でも、今までと違って“現場に当人がいない”よね? “相手は電話の先”、どうしよう・・・
ネル:大丈夫。テトはもう準備しているよ
テト:(-_-)
ミク:え!? でも、当人、ここにいないんだよ?
ネル:それは発動してから、説明するよ
テト:ストップ!!!!
前と同じように今回も、ミク達4人は、ちゃんと動けるが、エリアは固まった状態になっていた。違うのは“当人”がここにいないことである。
ミク:いや、止めたのはいいけど、現実世界で問題になっている“現行犯逮捕できない電話を使った犯罪”って事でしょ?
ネル:でも、コッチの世界の場合、それが出来るんだな。ハク、準備はいい?
ハク:オーケー! “電流の流れ”はしっかり確保したわ!
ミク:で、電流の流れ?
ネル:電話は“音を電流の流れに変換して伝える”機械。ハクの“転移”の拡張能力として、“電流や流れているモノを伝わっていく”ってのがあるのよ。むしろ、“転移能力”が、この能力の拡張とも言えるんだけどね
ハク:相手の悪魔に逃げられるわ! 急ぎましょう!
ミク:わかった! 行こう! 犯人の所へ!
ハク:じゃあ、電流に入り込むよ!
シューーーーーーーーーン・・・
ハクの声と共に、4人は見えないくらい小さくなり、メイコが耳元で聞いていた受話器から侵入し、止まった電子の流れの“道”をたどって突き進み、犯人と思われる人物の“口元”の受話器の穴から飛び出して元の大きさに戻り、とある場所にたどり着いた。
(雑居ビル内・○○コーポレーション・電話部屋)
そこは、警察でも事故現場でもない、まるで“事務部屋”のような、比較的広いオフィスのような場所だった。出勤表、電話応対ボード、出勤カード、etc・・・。そこは犯罪をまるで“仕事”として扱っている場所だった。
ネル:ひどいな・・・
ハク:振り込め詐欺を“仕事”にしているなんて・・・
ミクは怒り心頭だった。
ミク:な・・・なんて所なの・・・
???:今回は見つからないと思っていたんだけど、あんたら、なかなかやるわね
止まっている“犯罪集団のリーダー”らしき人物が座っている椅子の隣に、ボンテージを着た女性らしき・・・いや、シッポの生えた女性の悪魔らしき存在が、フワフワ浮いていたのだった。
サキュバス:私はメイコ担当の、欺瞞(ぎまん)の悪魔、「サキュバス」。以後、お見知り置きを
ミク:・・・あんたとの戦闘の前に、この異常な場所のトップは、そいつ?
サキュバス:そう、“○○コーポレーション“って「ウソの会社」として雑居ビルに登録し、機材を搬入して、手広く”振り込め詐欺“をやらかしている犯罪集団。手口は電話専門みたいね。そこの「ナンバーカタログ」に、ターゲット、つまり被害者になる人の電話番号が、沢山書き込まれているわ
ミク:そういうのに、全部ひっくるめて力を貸したのは、あんた?
サキュバス:ざーんねんでした。今回は、元々の人間がどうしようもない連中だったから、私が貸したのは、“相手の関係者の声を完全に模写する力“だけよ。こいつとの契約はそれだけだけど、ここの全員にその力を与えたから、「ここの全員」が私の契約相手。まぁ、ぶっちゃけ言うと、私が消えると、こいつら全員だけでなく、契約者が依存しているここも全部丸ごと、消えてなくなるわね
ミク:それを聞いて安心したわ。今回は悪魔が消えれば済む問題じゃないと思っていたから
サキュバス:とはいえ、私も契約を受けた側、消える気はないけどね
ギューーーーーン!
ミクは神威の力を。サキュバスは戦闘態勢に、同時に変身していた。
ミク:今回は、むしろアンタに同情するわ。こんな連中を消すためにアンタを倒す、って目的で戦うんだから
サキュバス:さーて、倒せるかしらね? さっきの与えた力なんて、ほんの一部。それに戦闘用スキルだけが、闘いの力ではないのよ?
ミク:何!
サキュバス:まぁ、それはおいおい解ると思うわ。じゃあ、行きましょうかね
ミク:言われなくても、成敗するわ!
ミクの怒りは想像以上だった。こちらの世界とはいえ、母に対応する人物を苦しませている人間に力を貸していた悪魔。リンレンの時と同様に、怒りに震えていたのだった。
ミク:かまいたち!!!!
ミクは相手の接近武器があるかもしれないという危惧からか、その場で刀を振り、かまいたちを使って遠距離攻撃をしたのだった。かまいたちの多数の刃がサキュバスに向かっていった。
サキュバス:ふーん、真空波の飛び道具ね。じゃあ、「トルネード」
ゴーーーーーー!!!!
サキュバスは何の焦りもしないで、軽く手を振り上げ、周囲に“竜巻”を巻き起こし、“回避不可能”=“必ず自分にやってくる”事を逆手にとって、やってきた全てのかまいたちを“無効化”して、消滅させてしまった。
ミク:そ・・・そんな・・・当たりもしないなんて・・・
さすがのミクの怒りも、萎えてしまった。相手は見かけとは違い、とんでもない能力をもっていたのだった。彼女が言うとおり、戦闘スキルだけが、闘いの力ではなかったのだ。
サキュバス:あ、イロイロ時間かかるとウザイから言って置くけど、この手の力は何使ってもダメだから。ついでに近接戦闘で斬りかかっても、“回避能力増大”で、全部避けちゃうから。あ、そもそも飛行能力で当たらないしね。物理系のモノを投げつけてもダメ。
ミク:そ・・・それなら、これなら!
ギューーーーン!!
ミクの周りを純白の光が包み込むと、ミクは、前回、ベルゼブブを討ち滅ぼした、“女神・めぐみ“、の姿に変身していた。
ミク:あんただって“悪魔”。ベルゼブブの話の通りなら、これでThe Endよ!
サキュバス:んじゃ、やってみ
ミク:言われなくても! 「サンクチュアリ」!!!
ミクの両手のひらから、輝く白い光線が、サキュバス目がけて、突き進んでいった! しかし、サキュバスは“回避、“対策”等、やらなければいけない事を全くやらず、空中でフワフワ浮いているだけだった。
当然、光線はサキュバスを直撃した。しかし・・・
パラパラパラ・・・
ミク:そ・・・そんな・・・そんな馬鹿な・・・悪魔なのに・・・
ベルゼブブの時は本体が消滅するほどの威力だったのに、サキュバスの悪魔の翼とシッポ、ボンテージが消えて、普通の水着に代わる程度の変化しかなかったのである。サキュバス本体はピンピンだった。
サキュバス:あら、ボンテージは想定外だったわ。んじゃ、それも含めて、ほれ
サキュバスは手のひらを体に沿って、動かすだけで、消えた翼とシッポとボンテージを復活させてしまった。
ミク:な・・・なんで悪魔のお前が、悪魔を討ち滅ぼす光でダメージを受けないの!?
サキュバス:翼とかボンテージとか能力は悪魔だけど、私の本体のベースは“人間の肉体”なのよ。だから、そういう光線でダメージがあるのは、後で追加したパーツだけ。本体直結の能力とか私本体はピンピン。悪魔にもイロイロなのがいるわけ。その光線、対応してなかったみたいね
ミク:そんなのあり!?
サキュバス:あり。そもそも悪魔の知恵や行動なんて、人間の悪意そのものなのよ。ベルゼブブは肉体まで全部悪魔だったけど、私は人間に限りなく近いのよ。さて、どうします? まだ隠している力があるなら受け付けるけど?
正直、最悪だった。ミクは自信があったスキルを全部無効化されてしまい、落胆から膝をついてしまった。
ミク:どうすればいいの・・・
(続く)
CAST
ミク:初音ミク
咲音メイコ(メイコ):MEIKO
妖精ネル:亞北ネル
妖精ハク:弱音ハク
妖精テト:重音テト
その他:エキストラの皆さん
説明 | ||
☆皆さん、現在飛び石連休中かもしれませんので、秋の夜長に、ボカロ小説でも、どうですか? ○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の” クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第5話です。 ○ちょっと現実にありそうな問題と、それとリンクするファンタジーの世界、それらをクロスリンクさせたお話です。 ○ちとオカルトも入りますが、そこら辺は今の流行って事で…。 ☆今回はメイコ編の前編です。ストーリー+戦闘編です。 ☆今回はストーリーはさらっと、主に戦闘をメインにしました。 |
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