真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第五十三話
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「何なのよ、これ…まさか、こんな事が現実に起きるなんて…眼の前で実際に見て

 

 いても信じられないわ…」

 

 そう呆然と呟いているのは、曹操さんであった。

 

 何故、彼女がそこまでになっているのかというと…。

 

「どうした、どうした、小娘ども!こんな程度でへばるようでは私に勝とうなんぞ

 

 百年経っても出来ないぞ!!」

 

 肩に斬馬刀を担いだ空様がそう叫んでいるその前に、夏侯惇・許?・典韋の三人

 

 が大の字になって転がっているからだ。

 

 一応、状況を説明しておくと、俺は命に言われて陳留の視察に来ており、空様は

 

 その護衛(という名目で勝手に付いてきただけだが)として来ていて、前に空様

 

 の大立ち回りを見た事のある曹操さんがそれについて話していたのに何故か対抗

 

 心を燃やしたらしき夏侯惇さんが手合わせを所望し、許?ちゃんと典韋ちゃんも

 

 手を挙げたので、三人と手合わせを行う事となったのである。最初は順番ずつと

 

 いう話だったのだが、最初に始めた夏侯惇さんがあまりにも劣勢となり、空様が

 

 挑発までした為、三人一斉に戦ったのだが…結果は見ての通り、三人は地に倒れ

 

 ふし、空様は汗一つかいていないという状況だったのである。

 

「おい、一刀。ちゃんと見ろ、首筋のこの辺りにちょっと汗をかいているだろうが」

 

 …ああ、はいはい。そうですねー。かいてますねー。でもナレーションにツッコ

 

 ミを入れないで欲しいですねー。

 

 

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「はぁっ、はぁっ、はぁっ………何故だ、何故こうもこの私が簡単に」

 

「…うっ、まさか春蘭様とボクと流琉の三人でここまで…」

 

「…………………し、信じられないです……世の中にこんな人がいるなんて」

 

 三人ともまるで化物でも見るかの如くに空様を見上げる。まあ、実際に化物って

 

 事でも良いような気もするが。

 

「ねぇ、北郷。一体何者なのよ?」

 

「名前は李通と『そんなのは知ってるわよ!』…知ってどうしようと?もしかして

 

 勧誘でもしようと?」

 

「…だとしたら、どうする?」

 

「やめておいた方が良い。あの人がそれを心の底から望むのなら止めやしないけど、

 

 幾ら曹操さんでもあの人をひれ伏せさせるのは無理だよ。無理やり幕下に加えて

 

 も逆にあなたが喰われるだけだ」

 

「へぇ…でもそう言われると逆に、ね」

 

 そう呟く曹操さんの眼は獲物を狙うかの如くに光っていたが…無理だな、多分と

 

 いうか間違いなく。この人は空様の恐ろしさを知らないからそう言えるだけだ。

 

 最初は自分が狩人のつもりでも、そう遠くない内に自分が獲物になってしまって

 

 いる事に気付くだろう。しかも、その時は既に終焉の時だ。

 

「何度も言うけど、あの人はやめておく事をお勧めしておく」

 

「…それは、あなたが取られたくないからかしら?」

 

 

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「…さっきも言ったけど、空様が望んだ事なら止めない。でも、空様があなたを選

 

 ばないという自信はある」

 

「空…様?」

 

 おっと、少し口が滑ったか。そういえば、曹操さんのお祖父さんは大長秋、お父

 

 さんも宮中の偉いお役人だったな。もしかしなくとも空様の事を知っている可能

 

 性があるし…これ以上は言わぬが花か。

 

「あの人は少々特別な存在という意味だよ」

 

 曹操さんはまだ何か聞きたそうな顔をしていたが、俺がそれ以上その事について

 

 はダンマリを決め込んだので、納得してない表情のままではあったが引き下がっ

 

 てくれたのであった。

 

「ところで…あっちの弓対決の方はどうなったんだろう?」

 

「そういえばそうね…ちょっと見に行ってみましょうか」

 

 ・・・・・・・

 

「これで何とか一勝一敗か…」

 

「二連勝で決めようと思っていたのに…残念ね」

 

 少々汗だくな顔で安堵の息をつく夏侯淵とは対照的に涼しい顔で肩をすくめてい

 

 る紫苑がそこにいた。

 

「どうだ、そっちの方は?」

 

「あらご主人様、そちらこそどうだったのですか…って、聞くまでも無い事ですね」

 

 そういう紫苑の視線の先にはまだ疲労困憊の体でフラフラと歩いている夏侯惇達

 

 と涼しい顔で手を振っている空の姿があった。

 

「むぅ…これでは私まで負けるわけにもいかないな。決着をつけるぞ、黄漢升殿」

 

「ふふ、ならば最終対決ね。それでは参りましょう、夏侯妙才殿」

 

 

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「ところで二人は何の対決をしているのだ?あの大的に当てるのであろう事は分か

 

 るが…あんな大きな的ならあまり弓の心得の無い私でも当てられそうだが?」

 

 空様がそう不思議そうに聞いてくる。そりゃ、あれを見ただけではね。、

 

「ただ当てるというだけでは無いのですよ。つまり…」

 

 この対決のルールは、五回太鼓が鳴る間に何本の矢を放ち何本の矢を的に当てる

 

 かという勝負である。

 

 十本放てば一点、それから一本放つ毎に一点加算、的に当たればさらに一点加算、

 

 さらに中心の黒丸に当たったらもう一点加算という計算方式でどちらがより多く

 

 の点数を取るかを競う形になる。例えば十五本放って十本的に当たりその内二本

 

 黒丸に当たったとすれば、十五本放って六点・十本当たって十点・黒丸に二本で

 

 二点の合計十八点という事だ。それを三回やって二回勝った方の勝利というルー

 

 ルになっている。

 

 しかもこの勝負では公平を期する為に一般兵が使う弓のみ使用する事にしている。

 

 何張か集めた中から選んで使ってもらうという方式だ。さすがに二人ともに自分

 

 の得物を使われては、下手をしなくとも全て黒丸に当たるだろうからだ。弘法筆

 

 を選ばずとは言うものの、やはり自分の得物では無いので調子が掴めないのであ

 

 ろうか、二人の矢は黒丸を捉えきってはいなかったのであった。

 

「ところで一勝一敗ってどういう結果でなったんだ?」

 

「一回目は黄忠様が二十本放って十七本当てて十二本黒丸で四十点、夏侯淵様が十

 

 八本放って十五本当てて十一本黒丸で三十五点で黄忠様の勝利でした」

 

「二回目は黄忠様が二十一本放って十九本当てて十三本黒丸で四十四点、夏侯淵様

 

 が二十二本放って十九本当てて十四本黒丸で四十六点で夏侯淵様の勝利、それで

 

 一勝一敗です」

 

 そう答えてくれた集計係の兵士さんの声は少し震えていた。

 

 

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 うわぁ、レベル高ぇ…確か最初に兵士さんにやってもらった時は平均で十六点位

 

 だったはず。さすがは弓の名手同士の戦いか。

 

 しかし夏侯淵さんが随分疲労している感じに見える。おそらく一回目に負けた為

 

 にそれを取り返そうと二回目は何時も以上に集中したせいでかなり体力と気力を

 

 使ったようだ。対する紫苑はまだ余裕がありそうに見える。確かに2対0だろう

 

 が2対1だろうが勝ちは勝ちなのだから二連勝を狙ったなどというのは口だけで、

 

 あえて二回目を捨てて夏侯淵さんを疲労させる事を狙ったのだろう。

 

「秋蘭!まさかお前まで負けるなどとは言うまいな!?」

 

「…ふふっ、無論だ。姉者と華琳様の見ている前で負ける事などあり得ん」

 

「あらあら、だったら私もご主人様の見ている前で無様な負け姿など見せられませ

 

 んわ」

 

 そう言った二人の間には何だか本当に火花が散っているかのように見える。

 

「では三回目を『ちょっと待った』…どうされました、北郷様?」

 

 三回目を始めようと声をかけた兵士さんを押しとどめる。

 

「北郷様、もし私が疲れているからなどと思われているのなら心外ですよ」

 

「そうじゃない、1対1で迎えた最終決戦だから少し内容を変えようと思ってね」

 

「何を変えるのです?」

 

「三回目は、矢の本数を十五本に限る事にする」

 

 いわばバレーボールの最終セットみたいな感じで少な目にする…と言っても及川

 

 しか分からないだろうからそれは割愛。

 

 

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「私はそれで構わない」

 

「私も…何本になろうとも私の有利は変わりませんわ」

 

「言ったな…その軽口、必ず後悔させて見せる」

 

 紫苑の軽口に夏侯淵さんは少々眉間に皺を寄せて反応していた。

 

「それでは改めまして…三回目、始め!」

 

 進行役の兵士さんの掛け声と同時に太鼓の音が鳴り、それに合わせて二人の矢が

 

 飛ぶ。さすがに本数が限られているからか、二人とも躍起になって射ようとはし

 

 ていないようだ。しかし、夏侯淵さんの表情は険しいままで紫苑はうっすらと笑

 

 みを浮かべているようにも見える位の余裕の表情であった。

 

「それまで!」

 

 五回の太鼓の音が鳴りやみ、進行役の兵士さんの掛け声と共に集計係の兵士さん

 

 が的に駆け寄り計算を始める。此処から見る限りでは互角に見えたのだが。

 

 二人もそれを固唾を飲んで見守っている。

 

「北郷、あなたはどっちが勝ったと思う?」

 

「俺としては紫苑の勝ちというしかないんだけど?そっちこそどうなんだ?」

 

「そうね、私も秋蘭が勝ったというしかないわね…でも、ほぼ互角に見えたは確か

 

 だけどね」

 

 やはり曹操さんもそう思うか…。

 

「それでは発表します!」

 

 結果を受け取った進行役の兵士さんのその声で、場が静寂に包まれる。

 

「黄忠様、矢の数十五本、当たり矢十五本、黒丸十三本、三十四点!」

 

 さすがは紫苑、ほぼ全てを黒丸に当ててきたか。

 

「夏侯淵様、矢の数十五本、当たり矢十五本、黒丸…」

 

 矢の数と的に当てた数は一緒、後は黒丸に当てた本数で勝負が決まるか…。

 

 

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「十二本、三十三点!よって三回目は黄忠様の勝ち!この勝負、2対1で黄忠様の

 

 勝利です!」

 

「何だと!?お前の眼は節穴か!秋蘭が負けるはずなど無いだろうが!!もう一度

 

 ちゃんと計算『春蘭!止めなさい!!』…華琳様〜、そうは仰られますが…」

 

 結果を聞いた夏侯惇さんは兵士さんに喰ってかかろうとするが、曹操さんがそれ

 

 を止める。

 

「ですが、華琳様…秋蘭が負けるなど、何かの間違いかイカサマに決まってます!」

 

「私もそう思いたくはあるけれど、ね」

 

 曹操さんはそう呟きながら夏侯淵さんの方の的に向かい近くでそれを見つめる。

 

「…最後の一本、わずかに黒丸から外れているわ」

 

 確かに曹操さんの言う通り、夏侯淵さんの放った最後の矢の当たった場所は黒丸

 

 から外れていたが…それは黒丸から2mm位しか離れていなかった。紫苑の方の矢

 

 は逆に黒丸には当たっていたがギリギリ入っている位だった…正直、これはほぼ

 

 互角と言って間違いない勝負であった。

 

「…くっ、最後の最後でしくじったか。私の負けです、黄漢升殿」

 

「いえ、こちらも危ない所でした。さすがはその名も高き夏侯妙才殿、私の方こそ

 

 良い勉強になりました」

 

「またこのような機会があれば勝負を受けていただけますか?」

 

「はい、喜んで。何時でもお相手仕りましょう」

 

 二人はそう言いあいながら、和気あいあいとなっていた。勝負は真剣だが、それ

 

 が終われば互いを称えあう…まさにノーサイドの精神だな。

 

 

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「ふふ…春蘭、秋蘭がああ言っているのだからこれ以上私達が何を言っても無駄な

 

 事よ。諦めなさい」

 

「…はい」

 

 それを見ていた曹操さんにそう言われ、夏侯惇さんは渋々といった表情でそれに

 

 答えていた。

 

「しかし、どちらの勝負もこっちから申し込んで両方とも負けというのは少し悔し

 

 くはあるけどね」

 

 曹操さんはそう言って苦笑いをしていた。実は、紫苑と夏侯淵さんとの弓対決も

 

 俺の護衛で紫苑が来ている事を知った夏侯淵さんの方から申し込んだ話であった

 

 のだった。

 

「後は…主君同士の対決という事で、どうかしら?」

 

「俺の負けです。ごめんなさい」

 

「…まだ何で勝負するとも言ってないけど?」

 

「いえいえ、俺なんかの実力じゃ曹操さんの足元どころか影すら踏めませんもので」

 

 俺があっさりそう引き下がると、曹操さんは興をそがれたような顔でため息をつ

 

 いていた。

 

「そう、それじゃ今回は諦めるけど…次はそうはいかないわよ?」

 

 …うわっ、怖ぇ。曹操さん本気の眼だし。しばらく曹操さんに近付くのはやめて

 

 おく事べきか?

 

 

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「華琳様、準備が整ったと桂花よりの連絡です」

 

 そこに曹操さんへ伝言を伝える人が来て、曹操さんの注意はそっちへいく…ふぅ、

 

 助かった。

 

「そう、それじゃ…ああ、そうだわ。北郷、この者が荀攸よ」

 

 荀攸?…ああ、そういえば俺の一言で曹操さんが家臣に加えたんだったな。確か

 

 に荀ケさんに似通った感じで少々可愛らしい人ではあるな。

 

「ちなみに、荀攸は男よ。こんな姿をしているけどね」

 

「えっ!?」

 

 マジか…何処からどう見ても女の子にしか見えないんだけど。服装は荀ケさんと

 

 同じというか色違いなだけな感じだし、猫耳フードもほぼ同じような感じだし…

 

 世の中は不思議だな。俺が言う台詞では無いかもしれないが。

 

「あ、あの…初めまして。荀攸、字は公達と申します。北郷様のお口添えのおかげ

 

 でこうして華琳様の下で働かせていただけております。本当にありがとうござい

 

 ました」

 

 俺の口添え?俺は荀攸って人はいないのかと曹操さんに言っただけなのだけど…

 

 もしかして?

 

「そうよ、あなたが思っている通り、荀攸はずっと私の下で働きたいと桂花に願っ

 

 ていたらしいのだけど…」

 

 おいおい、荀ケさんは本気で曹操さんの為に働こうって気があるのか?

 

「でも北郷様が僕の事を華琳様に推挙してくれたおかげでこうして…本当に北郷様

 

 には何と感謝して良いやら」

 

 荀攸さんはそう言って深々とお礼を言い続けていたが…正直、何処まで喜んで良

 

 いやら微妙だ。

 

 

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「でも、荀攸がいてくれているおかげで遠征の時とかも安心して留守を任せられる

 

 のよ。政に関しては我が配下の中で一番だし、彼の事を教えてくれた事は感謝し

 

 ているわ」

 

 まぁ、色々あったようだが曹操さんの所がうまくいってるのなら別に俺としては

 

 それ以上どうこう言うつもりも無いけどね。しかし、荀攸が男の娘ねぇ…輝里を

 

 連れて来なくて正解だったな。彼を見た瞬間に八百一の新作とか作り出しそうな

 

 気がするし。

 

「さぁ、話はそこまで。あなたを迎える為の宴の準備をしていたの。衛将軍殿、ど

 

 うぞこちらへ」

 

 曹操さんはそう大仰な感じに言うので俺は少々苦笑しながらもそれに従ったので

 

 あった。

 

 ・・・・・・・

 

「ふぅ〜っ…」

 

 宴が始まって一刻程して、俺は厠に出たついでに少し庭に出ていた。一応気配は

 

 探ったが、特に怪しい者はいなさそうだ。無論、曹操さんが俺をどうこうしよう

 

 などとは思っていないだろうが。

 

「あら北郷、主役がこんな所で何をしているのかしら?」

 

 そこに曹操さんが近付いてくる。

 

「そう言う曹操さんは?俺が主役なら曹操さんは主人になるんじゃないのか?」

 

「そうね、でももう主役も主人も関係無い感じで盛り上がっているみたいだけどね」

 

 確かに俺が厠に行く前の状況では、夏侯淵さんは紫苑とすっかり意気投合した感

 

 じで弓矢の話で盛り上がっていたし、許?ちゃんと典韋ちゃんは空様に懐いた感

 

 じになっていた。ちなみに夏侯惇さんは何やら一人で愚痴りながら酒を飲んでい

 

 たし、荀ケさんは壁際にいたまま近付こうともしていなかったが。

 

 

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「ちなみに私は北郷を探しに来たのよ」

 

 えっ!?…俺を?何で?

 

「そんなに私があなたの事を探したらおかしいかしら?」

 

「いや、その…曹操さんはずっと『馬鹿と男には興味が無い』とか言ってるって聞

 

 いていたもので」

 

「そうね、確かに『馬鹿な男』には興味は無いけど…あなたには興味があるわ」

 

 曹操さんはそう言うなり俺に身体を寄せてくる。

 

「へっ!?俺に…?」

 

「そう、初めて洛陽で会った時からずっと」

 

 洛陽で会った…ああ、瑠菜さんの遣いで義真さんの家へ行こうとしていた時の事

 

 か。そういえば、あれから大分経ったんだな。色々な事があり過ぎてあっという

 

 間だったけど。

 

「でも何で俺なんかに…?」

 

「そうね…最初は本当に女の勘、だったかしら?でも…その次に何進の屋敷で会っ

 

 た時、あなたは私と麗羽が同門だという事を知っていた。そしてその次には誰か

 

 の指図で突然洛陽からいなくなり、次に現れた時には陛下の傍近くにいた。そし

 

 て今や衛将軍として漢の中枢にいる。それだけの事をしてきたあなたに興味を持

 

 つなというのは無理な話だと思わない?」

 

 曹操さんはそう言ってさらに俺に寄ってくる…っていうか、近いんですけど!?

 

 

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「いや、それは…でも、曹操さんだって、今や?州の州牧として漢に欠かせない存

 

 在になっているんじゃ…」

 

「でもそれは私が本当に望んでいた物じゃない」

 

 今の立場は本当に望んだ物じゃない?…それじゃ、やっぱり。

 

「乱世の奸雄…って事か?」

 

「やっぱりそれも知っていたのね」

 

「でもあなたはそれと同時に『治世の能臣』とも言われたはずだ。今の立場はまさ

 

 しくそれじゃないのか?」

 

「でも私は本当は乱世の奸雄の方が良かった。でも、北郷が現れてくれたおかげで

 

 今じゃすっかり治世の能臣だわ」

 

 本当は乱世の奸雄が良かったって…今此処には俺しかいないけど、そういう事を

 

 はっきり言われるのはちょっと…。

 

「安心して、もう乱世を望んでいるわけでは無いから。でも…」

 

「でも?」

 

「北郷には少しだけで良いから私の事を知っていて欲しかっただけ」

 

 曹操さんはそう言ってウインクをしてくる…それがあまりにも可愛すぎて、一瞬

 

 思考がフリーズしてしまう位の。

 

「そ、そうか?そう言ってもらえるのは光栄だが…今の奸雄発言はもう二度と言わ

 

 ないように」

 

「ええ、分かってるわ。あなたも誰にも言わないでね」

 

「漢に対し逆心を抱かないと誓っていただけるなら」

 

「分かりました。では私、曹孟徳はこれからも漢王朝に対して変わらぬ忠誠を誓う

 

 事を此処に宣言します」

 

 

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 その仕草が何だか本当に選手宣誓のように見えてちょっとだけ笑ってしまう。

 

「…何がおかしいのよ?」

 

「ごめん、ごめん、何でもないから」

 

「さて、後は…あなたに対する口止め料ね」

 

 えっ…口止め料?

 

「何のはn『チュッ』…もがが!?」

 

 俺が何の事か聞こうとした瞬間、曹操さんの唇が俺の唇を塞ぐ。

 

 それからどれだけそうしていたのか…もしかしたら数秒だったのかもしれないし、

 

 数分はあったのかもしれないが、曹操さんの唇がようやく離れる。

 

「これで今のは二人だけの秘密ね」

 

「えっ…えっと、その、うん」

 

「それと、今日から私の事は華琳と呼んで良いから」

 

 えっ!?それって真名じゃ…でも本人が眼の前で良いって言った以上は断る理由

 

 も無い。

 

「分かった、華琳。俺の事は一刀で良いよ」

 

「うん、これからもよろしくね、一刀」

 

 華琳はそう言って手を差し出してくるので握手をする…でも、どうよろしくすれ

 

 ば良いのだろうか?

 

「さあ、何時までも席を外したままにするわけにもいかないし戻りましょう、一刀」

 

 華琳のそう促されて俺は一緒に宴席に戻っていったのだが…結局、俺の中の疑問

 

 は解決出来ないままであった。

 

(本当に一刀ってこういう事に鈍いのね…でも、こうなった以上は私も手を抜く気

 

 は無いわよ)

 

 華琳はそう心の中で強く誓っていたのであった。

 

 

                                    続く。

 

 

 

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 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は…遂に華琳が一刀争奪戦に参加したというお話

 

 でした。さて、これに対し他の面々はどうするのか?

 

 乞うご期待。

 

 しかし孫呉は完全に盟友、曹操もこうなった事を考え

 

 ると、劉備陣営はどうしようとか考えてしまいます…

 

 もしかして、何も起こらないまま終わるかもしれませ

 

 んが。

 

 とりあえず次回も拠点です。さあ、次は誰にしようか

 

 な…?

 

 

 それでは次回、第五十四話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 今回の紫苑と秋蘭の対決の方法は大○ドラマに

 

    もなったある小説に出て来た物です。その中じ

 

    ゃ精々三十点位の勝負だったのですが…今回の

 

    点数は少々高すぎたかな?

 

 

 

説明

 お待たせしました!

 今回は拠点第三弾です。

 今回、一刀は視察の為にある場所を

 訪れています。

 果たしてそこで何かが起きるのか?

 それではご覧ください。
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コメント
…ふむ、前作での曹操軍は、漢王朝存続を正当化する為の悪役に貶められたからなぁ…。今作では、スケープゴートを押しつけられたりしなければ良いな、とは思いますけどね…。(クラスター・ジャドウ)
七詩名様、ありがとうございます。荀攸は男の娘なだけで男色の気はありませんので悪しからず。そして…たまには華琳もこういう所を見せてみようかと。(mokiti1976-2010)
荀攸も一刀に惚れる方向ですかね?wここの華琳様はなかなかストレートですなwベネ!(良し)(七詩名)
禁玉⇒金球様、ありがとうございます。華琳はとっくに一刀に興味津々だったからというのもありますけどね。そして…確かにサボるならあの面々はいなしやすいかもしれません。(mokiti1976-2010)
牛乳魔人様、ありがとうございます。はい、今の所その三人だけです。そして命と瑠菜さんのアプローチはきっと段々と過激になっていくものと。星さんは…基本、原作のような流れですね。(mokiti1976-2010)
陸奥守様、ありがとうございます。確かに今の時代でも結構危険なのに、あの時代ですからね…空様は出産経験があるから別でしょうが。とりあえずその辺も考えておりますので。(mokiti1976-2010)
チョコボ様、ありがとうございます。それは間違いなく行われるのでご安心を…但し、すぐとは限りませんが(エ。(mokiti1976-2010)
華琳がこういう形で陥落したとか一瞬驚いて〇の穴が開いた。↓趙雲はそりゃ上はゆるくて軍師は軽くいなせて上級将軍は煙に撒けてサボりまくれるからですよ(禁玉⇒金球)
現在の一刀のお手つきは夢・空様・鈴音の三人かな?命と瑠菜様は早くしないと華琳にまで先越されちゃうよ。あと読み直して気になったんだけど超雲はなんで劉備の所に仕官したんだろうか…(牛乳魔人)
経験豊か過ぎる人たちを妊娠させないと色々な問題が起こるんじゃないかな。高齢出産は危険です。(陸奥守)
命ちゃんに是非、救済を!(チョコボ)
神木ヒカリ様、ありがとうございます。華琳は最初の頃から一刀に興味津々でしたからね。次に妊娠するのは…未定です(意訳・まだ決めてないだけ)。(mokiti1976-2010)
naku様、再びありがとうございます。ぶち抜くならとりあえず及川のでお願いします(マテ。(mokiti1976-2010)
きまお様、ありがとうございます。特にその見間違いに関しては気にしないので、筋肉ダルマはクーリングオフを適用しました。もうすぐそっちに返るものと。そして…空様の真名の事は、まあ、そういう感じかもしれません。でも睾○を的にするのは…本当にその内誰かしそうで怖いっす。(mokiti1976-2010)
観珪様、ありがとうございます。少なくとも華琳命の両巨頭はむしろ警戒感むき出しになります。そして、空様の強さはまさしく無理を通して道理を引っ込める的な物がありますね。(mokiti1976-2010)
M.N.F様、ありがとうございます。彼女の参戦によって命の心境や如何に!?という所ですね。(mokiti1976-2010)
summon様、ありがとうございます。女にも腐にも燃料投下完了っす。果たしてどれだけの炎になる事やら(オイ。そして…デレた華琳は確かに可愛過ぎですよね。(mokiti1976-2010)
D8様、ありがとうございます。はい、あくまでも敵だった前作とはうって変わっての一刀争奪戦への参加です。劉備は…まあ、瑠菜さんがいる限り近寄ってはこないかもしれませんね。荀ケは…それがばれた後しばらくは閨に呼ばれなかったとかいう噂も。(mokiti1976-2010)
Jack Tlam様、再びありがとうございます。はい、彼は見た目と服装が女性なだけで男です。そしてそれを知っても華琳は閨に連れ込んでいじめているようです。本人は喜んでいるようですが。そして…そんじょそこらのトラブルは一瞬で解決ですとも。(mokiti1976-2010)
氷屋様、ありがとうございます。何時の間に輝里の新刊を手に入れられたか(エ!(mokiti1976-2010)
カノン様、ありがとうございます。まあ、孫呉の面々は華琳より早く真名を預けている以上、何も無いというわけにもいかないかな?劉備勢は…本当にこのままフェードアウトしてしまいそうな気が(エ。(mokiti1976-2010)
やはり、このお方も参戦したか。こうなってくると次に妊娠するのは誰だろう。(神木ヒカリ)
追記、真名を口走ってしまったのは正体が知られる伏線かな?とりあえず何てものを的にしているんだと思った俺は腐っていますorz(きまお)
ごめんなさい、弓勝負の黒丸が○丸(○の中身はご想像におまかせします)に見えました、、、お詫びに筋肉ダルマ二人を送るのでハグされてください。(きまお)
一刀くんが華琳さまの下に行ったら、なし崩し的にみんなついてくるはめに……まぁ、そんなことはないとは思いますが。 しかし、空さまはフリーダムな上に強さも天元突破してらしたんですね、やっぱりww(神余 雛)
とうとうこの御方まで参戦してしまわれたか・・・命ェ・・・(M.N.F.)
輝里にも、命たちにも燃料が投下されましたねーそれとデレ華琳さまはやはり大正義。(summon)
今回はちゃんと曹操も参戦ですか。前作とは大違いですね。劉備軍は瑠菜さん派遣すれば大丈夫な気がするのは俺だけか。荀ケは自分のことしか頭に無くてむしろ曹操の邪魔をしている気が・・・・。稟も門前払いしてたし。(D8)
荀攸君はれっきとした男性ですよね?大喬みたいな両○具有じゃないですよね?もしそうだったとしたら……ブルブル……それはそうと。トラブルを起こすのは何も軍師とは限らないわけで……さっさと鎮圧されるのがオチでしょうけどね。次回も楽しみにしてます。(Jack Tlam)
新刊〜新刊だよ〜、内容が○刀×○攸の新刊だよ〜さぁ買った買った〜(氷屋)
華琳さんがこうなったら孫呉勢も参戦でしょう?あの面子から誰も出てこないなんて有り得んでしょう。ただ、『先生怖い』ぐらいでそもそも出番がロクに無い劉備勢(特にメンマ)は、このままフェードアウトかな?というか命様の春は?(カノン)
yoshiyuki様、ありがとうございます。大丈夫、間違いはしません。何故なら荀攸を連れ込む時は確信犯ですから(エ。あくまでも一族とはいえ男を推挙する気にならなかっただけです。そして…秋蘭が負けたのは間違いなく経験の差によるペース配分の失敗ですね。(mokiti1976-2010)
たっつー様、ありがとうございます。それは間違いなく。そう遠くない内にまた新作があるかと。そして少なくとも順番は命の方が先になると思われます(確率80%)。(mokiti1976-2010)
Jack Tlam様、ありがとうございます。五胡は本編でも語った通り、劉焉が密かに乗っ取りをかけてますので間違いなく。劉備軍は…とりあえず輝里の八百一ではわあわを骨抜きにすればどうとでもなるかと(エ。(mokiti1976-2010)
流星ハリマエ様、ありがとうございます。誘惑をするだけなら他にも一杯いますしね…むしろその妻に喧嘩を売った形になるのが危険という所でしょうか?(mokiti1976-2010)
エドガー様、ありがとうございます。遂に華琳フラグ解放です。でもきっと一刀にとっては何人いようが無問題じゃないかと(適当)。(mokiti1976-2010)
naku様、ありがとうございます。今回、華琳はかなりぶっちゃけましたね。傾国は…まあ、無理っすね。皇帝一家、特に空様が何だかんだと側にいますので。男の娘の挿しつ挿されつは…輝里の妄想の中のみで(オイ。(mokiti1976-2010)
h995様、ありがとうございます。そう、あくまでも彼女は乱世が起きてそこで自分がのし上がる事が望みだったのですが…今の漢ではそれは出来ないという事で、唯一乱世な一刀争奪戦に名乗りを上げた可能性が(エ。(mokiti1976-2010)
桂花は華琳様が、自分と間違えて荀攸を閨に連れ込むことを心配しているのですよ。 秋蘭殿、負けたのはとs ではなく経験の差でしたね。(yoshiyuki)
華琳が逆心を抱かないとなると、今後何か問題を起こしそうなのは……五胡の中に残っているであろう過激派、五胡以外の異民族、恋姫世界ではほとんど名前の出ない交州勢、倭にいるであろう天照(小説版参照)、それと劉備軍になってしまいますねえ。でも、劉備軍が暴れる理由なんて……別に桃香自身がどうこうするつもりがなくても、家臣が暴走するか?(Jack Tlam)
魏の王様、漢帝国の夫を誘惑しその妻にケンカを売る(黄昏☆ハリマエ)
遂に華琳フラグ建てたか…彼は無事生涯をまっとうできるのだろうか。(エドガー)
まぁ曹操については、史書である後漢書において「清平の奸賊、乱世の英雄」、つまり乱世では飛躍するが治世ではまともに生きられない人物と評されたと記されているので、華琳の感性が能臣より奸雄を望むのは無理ないでしょうね。それに、当人がそれを望まなくても部下に推されてやむを得ず起った、なんて例は歴史上結構ありますし。(h995)
いた様、ありがとうございます。いえいえ、一刀はあくまでもノーマルなのでそれはありませんよ。但し。輝里の妄想と八百一の中では展開があるかもしれませんが(エ。(mokiti1976-2010)
とうとう………男の娘も出てこられましたか。 やはり、一刀がお召し上がりになるのかな?(いた)
一丸様、ありがとうございます。確かに華琳が可愛いのは事実ですね。あまりにも可愛すぎて理性が飛ぶのも分からないではないです。(mokiti1976-2010)
nao様、ありがとうございます。そうですね、デレた華琳の破壊力は大きい物がありますね。さあ、これからどうなる?(mokiti1976-2010)
華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!華琳が可愛い!!・・・はっ・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
華琳が争奪戦に参戦ですか〜デレた華琳はかわいいなぁ〜!(nao)
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真・恋姫†無双    華琳 

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