ごちゆり2 ココvリゼ |
「どーしたの、リゼちゃん?」
「コ、ココア!?」
休日一人きりで買い物をしていて、洋服を見つめながら迷っている時
不意にココアから声をかけられてビクッとした。
敢えて近場の店じゃなくて隣町まで足を延ばしたというのに。
予想外過ぎて驚いたドキドキがしばらく収まらなかった。
「どうしてここにいるんだ」
私の問いにきょとんとした表情でこう答えた。
「歩いていたらいつの間にか」
えへへっと淀みのない爽やかな笑顔に引き込まれそうになるのを
堪えて私は溜息を吐いた。
「なんだ、迷ったのか」
「そうともいう!」
「威張ることじゃないだろ」
「それはそうと、リゼちゃんはお洋服を見に?」
「え、まぁ・・・そうだけど」
「わぁ、かわいいねえ」
「こらっ、勝手に見るな!」
気が緩んだところでココアが私の持っていた洋服を手に取って
嬉しそうに眺めている。
それを見ていると本来私が自分用にと思ってみていたものなのに
気が付けばココアに似合いそうだと考えてることばかり。
「そういえばあまりリゼちゃんこういうの着てるの見たことないなぁ」
「そりゃ・・・似合わないからな」
「えー!そんなことないよ!」
私の言葉に猛反撃をするココア。ちょっと怒った表情をして手にとった服を
私の前に当てるようにしてみると。
「ちゃんと似合うよ。ねぇ、ちょっと色々試着してみようよ」
「え、今からか?」
「当然!私もちゃんと見てるからね」
「それが嫌なんだって」
「えー、どうして。友達同士だから問題ないでしょ?」
「うぅぅ・・・」
そりゃ通常、友達同士なら何の気兼ねもないかもしれないが私にとってココアは
ちょっと特別というか違った気持ちで見てしまっているから緊張しすぎてどうなるか
わからないのが怖いのだが、そんなことココアに言えるわけがない。
私の気持ちを知って引かれでもしたらそれこそ憂鬱になりかねない。
「ほらほら、いくよ。リゼちゃん!」
「あ…もう!」
私の葛藤を知りもしないココアは遠慮なく私の腕を掴んで引っ張っていく。
店員に人懐っこい笑みを浮かべて私に似合う服がないかと相談を持ちかけていた。
この子のコミュニケーション能力はすごいものがある。
私も悪い方ではないがココアは別格、誰とでも仲良くできる。たとえ初対面だとしても。
誰に対してもそんな感じなのだ。だからもし私のこの気持ちがココアにとって
勘違いの部類だとしたら怖いのだ。
振られて離れられたらと思うと胸がすごく痛くなる。
どうしてこうなってしまったんだろう。最初の頃はちゃんと職場の仲間で友達という
関係だったのに。そこで止まっていてくれれば幸せだったのに。
何でもっと先を望んでしまったのだろう。
「リゼちゃん?」
いくつか可愛い服を用意して試着室に持ってきてくれたココアが俯せ気味の
私の顔を覗き込んできた。
仕草の一つ一つが可愛くて胸が締め付けられる気分になる。
「大丈夫?」
「あ、あぁ・・・」
着にくいものはココアがサポートしながら着させてくれる。普段ならどんな着付けでも
問題なくできるのだが、こうも集中できない上に意識がココアに向けられるとそうもいかなくなる。
「かわいい〜」
「・・・」
着なれない服を着させてもらい、褒められる。とてもうれしいことなのに苦しい・・・。
ココアの体が密着して彼女のぬくもりを感じて、匂いを感じて・・・。
彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうになるようにじっと見つめていた。
「リゼちゃん、具合悪そう?」
「どうして?」
「だって顔がすごく赤い・・・。熱でもあるのかな?」
そういって私の額にココアの額が当てられそうになった瞬間。
私でも気づかないうちに私は・・・私の唇はココアの唇と重ねるように触れていた。
一瞬びくっとなるココアの体。だけどすぐに力は抜けて少しの間軽いキスを
続けていって私の気持ちが高揚しきった時、ココアから舌を入れられて
思わず声が漏れそうになった。
その声すら出ないようにしっかりと口が塞がれココアの舌が私をやさしく導くように
誘ってきたのを私は拒むことができずに触れ合い絡めあった。
くちゅっじゅぅっ
唾液が増えてこぼれそうになるのをココアが吸っているのか生々しい音が
私の耳に響いて頭の中が真っ白になってしまう。
これ以上のえっちな気持ちになる直前、ココアから口を離した。
瞬間、二人の口元の間に一筋の糸が引いて一滴床に落ちた。
「これでおしまいだね」
「・・・」
「リゼちゃん、もしかして怒った?」
「あたりまえだ・・・」
「あはは、ごめん。リゼちゃんあまりに可愛くて」
「ふざけるな・・・」
「うん、私もびっくりしたよ」
さっきまでの軽いトーンと違って急に真剣な声になるココアにびくっとする。
私の気持ちを知って引かれてしまったのだろうか。
「私だけかと思ったよ」
「え・・・」
「リゼちゃんのこと大好きなの。リゼちゃん一向に私に振り向いてくれないから」
「そんなことない・・・」
大して動いていないのに、大してすごいことをしているわけでもないのに。
どこかボロボロになったような気分で私は否定した。
ずっと前から働いていたお前をずっと視線を追っていたのを。
震える声でココアに・・・小さい声で伝えた。
「そっか、だったら早く気づいてあげられればよかったね。こんなに辛そうにしちゃって
ごめんね・・・」
まるで子供を慰めるようにやさしく抱きしめてくれるココアに身を寄せ
受け入れるその姿は母か姉に甘える子供のように見えるかもしれない。
だけどこの気持ちはそれとは違う恋という感情が満ちに満ちて溢れそうな
くらいのものだった。ようやくココアに通じた、そして受け入れてくれたのがうれしくて。
私の目からは涙がぽろぽろと零れ落ちていった。
「ココアさ、そういう気持ちあるならもうちょっと表面上に出してくれよ。
みんなと同じで怖かったんだぞ」
「えー、私としてはちゃんとアピールしてたんだけどなぁ」
「どういう?」
帰り道、歩きながら夕焼けをバックにして話をする私とココア。
これまでの気持ちの確認をしながら。
「前に仕事明けにリゼちゃんのカフェ・ラテにハートマーク描いたでしょ」
「それ、みんなにしてなかったか?」
「リゼちゃんのだけハート一つ分多くしたよ!」
「そんなの誤差の範囲だろ!わかるか!」
激しくツッコミを入れつつもあまりのくだらなさに思わず笑いがこみあげてくる。
それはココアも同じようで。ずっと胸につかえていたものが一気に吐き出されたようで
これまでにないくらいスッキリしている。
そして同時に安心と幸せな気持ちが胸にいっぱいに広がっていた。
「もう離さないからね」
「ん?」
ココアが私の手に自分の手を絡ませて握ってきて勢いよく言った。
「私は大好きなことに関してはすごい貪欲だから覚悟してね!」
「あぁ、それは私もだ」
前に自転車の練習のときにココアの実家にだって行ってやるとか比喩したことが
あったが、今は本当に挨拶して娘さんをもらいたいくらいの気持ちがあった。
まだ少し早いだろうけど近いうちにそれを実現させたいと思っている。
「あはは、リゼちゃん大好き」
「ココア・・・私も大好きだ」
言葉の後にもう一度少しだけ強く手に力を入れて歩いた。
この手を離さないように。もう苦しまないように、願いを込めながら。
お終い
説明 | ||
ココアの純粋なアタックに少しずつ惚れていってしまうリゼのお話。 友達でいたいのと恋人にもなりたいという気持ちに挟まれる 複雑な心…を目指したつもりです(´?????) デュフッ! ブログで書いたもの。ココチノを書いていたときにリゼもやってみたいと 思っていたので満足v |
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