義輝記 星霜の章 その二十壱
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【 双方の事情 の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?

 

明朝……俺達は、準備を出来る限り整え……晋軍を迎え討つ準備を行う!

 

将も兵も緊張に満ちた顔を見せ、相手がどう動くかと油断無く凝視している!

 

 

平原より見える『晋』の旗。 勇壮な顔触れの鳥丸の騎馬隊。

 

隊列を整然に組み、此方を脅かすように迫る晋兵! 

 

 

そして…………近付くにつれ………ハッキリと分かる『筒井順慶』の満面の笑顔と能面のように表情を変えない『松永久秀』の両人。

 

その傍を少し離れた所を進む、眼鏡を掛けた『于吉』と明らかに敵意を込めた視線を送る『左慈』なる道士。

 

晋軍の持てる総力を結集した軍勢を……この場に現したのだ!

 

★☆☆

 

于吉「……左慈! 漸く、私達の悲願が達成する時が来たのですよ!」

 

左慈「………久々に暴れられるな!」

 

于吉「……この戦いが終わりましたら、私と結婚───!」

 

左慈「こんなシリアス場面に言う台詞じゃねぇぇぇ!」

 

于吉「そうですね! これでは死亡フラグ……おやっ? 結婚を不定されない!? では、勝利の暁には祝言を挙げてくれ────ブシャャャ!!!」

 

左慈の拳が……于吉の顔にめり込んだ。

 

左慈「味方が仲間に殴られたら動揺するだろうがぁぁ!! それぐらい判断しろぉ!! 後………結婚などふざけた事は、断固断る!!!」

 

于吉「そ、そんなぁぁ─────!?」

 

ーーー

 

久秀「………順慶、貴女は大丈夫なの? 先の曹操軍でかなり氣を消耗したそうじゃない。 そんな事しなくても、久秀達の計略に掛かれば……怨嗟の声を上げながら滅びるか、どのみち大陸崩壊の道連れになるでしょうに?」

 

順慶「………分かっていたのですが。 ついつい……日の本での……武士(もののふ)としての魂が頭をもたげ、本気になってしまったのですわ。 颯馬様の為、武将としての生き様など……捨てたつもりだったのですが………」

 

久秀「……別に……後悔はしてないんだ?」

 

順慶「えぇ! ……あの憎きメンマにはしてやられましたが、私の生き様に悔いはありませんわ! ………で、でも! 颯馬様は諦めませんわよ!!」

 

久秀「……ふ〜ん……」

 

順慶「……久秀……。 もしかして……最後になるかもしれませんが……最後の人生……貴女とつき合えて良かった……『 馬鹿言わないで! 』……?」

 

久秀「まだ、私達最大の目的……颯馬を奪う事を成し遂げてないじゃない! それなのに──何なの! すぐ死にそうな台詞は!?」

 

順慶「……久秀」

 

久秀「あの勝ち気で、久秀に……真っ正面から文句を言い放った、筒井順慶はどうしたの! 私が……宿敵と想定したのは……三人! 諸葛孔明、天城颯馬………そして、貴女よ! 筒井順慶!!」

 

順慶「─────!」

 

久秀「今頃になって仲良し小好し!? はっ! 馬鹿じゃない!? どちらが颯馬を奪還するまで争い合う!! それが久秀達の絆よ!」

 

順慶「………そうですわね。 いえ……そうですわ! 私達は私達での目的を目指し、最後まで競いましょう! どちらが勝てば敗者を蔑むのみ!」

 

久秀「そうよ! その通りよ!! 私達には馴れ合いなど不要なの!!」

 

順慶「…………もし、万が一、二人とも負けてしまいましたら……あの世で仲良くしましょう? 西方浄土はとても無理ですが……地獄行きの道連れにまで、この世の理を持ち込んでまで、いがみ合いたく無いですもの………」

 

久秀「………ふん! その時になれば……考えてあげて……もいいわよ……」

 

順慶「………ふふっ! 言質は取りましたわよ!?」

 

★★☆

 

颯馬「……………皆の準備は……完了したかい?」

 

俺は、近くに居た小太郎に聞く。 片膝を立てながら、俺の言葉が掛かるのを待っていた『自称 俺の嫁さん候補』の風魔小太郎。

 

小太郎「皆さん、覚悟を定め……将兵共々、颯馬様の采配をお待ちしています!! 颯馬様が、最後に勝利を得られると信じて───!!」

 

颯馬「………………」

 

後方を見渡せば、鶏洛山の麓に堅固な砦を造り上げてある。 土嚢と柵で囲んでいるが、三日間ぐらいは刻が稼げそうだ。

 

森の方も……中は隠れて見えないが、牛の鳴き声が聞こえてくる。

 

もう一つの策も………出来ているようだな………。

 

俺が満足感に満たさせれていると……小太郎が……懇願してきた。

 

兵達は、半里(約200b)後で待機、他の将達も心配そうに見ている。

 

小太郎「颯馬様……! 今しか……言えないから、伝えさせて下さい。 私と颯馬様が……無事に生き残れましたら……どうか……私を『女』にして下さいませんか……? あっ! 『女』というか『妻』にして欲しいんです!!」

 

颯馬「小太郎………!」

 

唐突に……何を言い出すんだ……と思うが、俺に潤んだ目で見上げて、必死に懇願する仕草に胸を打たれ、静かに聞いてみる。 因みに、俺のせいでは断じてない! 北条早雲殿が、何か裏を行った事は分かっているのだが………。

 

小太郎「私は……知っています! 颯馬様の正妻と認めているのは、光秀様だと! それに………天水の夜戦の後での光秀様との、む…睦事(むつごと)を存じてい────ムグムグッ!!」

 

颯馬「おっ、おいっ! 駄目だぁ! 秘密! 秘密にしてくれぇ──!!」

 

唐突に何を言い出すんだよ!と……慌てて口を塞ぐ俺!

 

ま……まさか、聞かれた……とか?

 

将達を見ると……真っ赤な顔した光秀!

 

色々な反応を示す義輝以下将の皆様方………。

 

ーーー

 

光秀「なっ!? /////////////////// 」

 

信長「ほぅ〜! 私が酔っていた時にのぉ───!」

 

義輝「戦が終われば問い詰めようぞ? 信長よ!」

 

長慶「か、一存ぁぁ!! 知っていたのか!?」ギュ〜ッ!

 

一存「ぐっ!? ね、姉さん、首ぃ〜締めるぅなぁ──!」

 

愛紗「───────!」

 

凪「……………」キュッ

 

左近「……………そうか」

 

鹿介「…………天城殿………」

 

ーーー

 

周りから見える顔の表情や動作で、大概……何考えているのか分かるけど……俺は……彼処に戻ると……どうなるのだろう…………?

 

小太郎「───だから、だから! わ、私も……お願いしたいのです! 颯馬との絆を残して欲しい! 自称ばかりで……ただ、颯馬様を心配するだけの『娘』だなんて………もう、嫌なんですよ!!」

 

俺は、そんな小太郎の告白を……どこか他人事のように聞いていた。

 

 

◆◇◆

 

 

【 孫呉と何進 にて 】

 

? 豫州 汝南郡 にて ?

 

雪蓮達が交州の問題を片付け、三万の兵を引き連れ官渡へ出発する間際、何進大将軍より先触れが来た。 

 

何進軍、五万の精兵を連れて合流したいとの旨だった。

 

一日程待ち、何進軍が合流……その中に異民族の姿を見いだすが、何進の説明と迷吾や阿貴の神妙な態度、前に出会った益州の将達と真名を呼ぶやり取りを見て、初めて安堵。 

 

そのまま、西側へ向かい『豫州 汝南郡』に進行した。

 

汝南は、麗羽や美羽の関係で、孫呉や何進を歓迎し駐屯していた晋軍を追い出して、拠点とする事が出来たのだった。

 

ーーーーー

 

冥琳「何進大将軍! 本当に宜しいのですか?」

 

何進「あの颯馬の考えた策なら……間違えは無かろう! それに、お主達が颯馬の身の上が心配しているのは……傍目からしてもよぉく分かる。 いやはや、彼奴には……男女共に魅了されるな! はははははっ!!」

 

雪蓮「やあぁ〜ん! 私と颯馬がお似合いだなんてぇ! 何進大将軍もお分かりじゃないぃぃ!! ねっ! ────冥琳? 蓮華? 小蓮?」

 

蓮華「姉様! どこをどう拝聴されれば、その意味合いに取れるのですか!! されど……何進大将軍の御好意、大変有り難く思います!」

 

小蓮「ぶぅ───! 何それ! そんな事、一言も言ってなんかないよ!?」

 

冥琳「………颯馬から頼まれた策は、孫呉で集めた『雑草の種』を使用して行ってもらう単純な事です。 別段……難しい事もありません! 後……雪蓮! どうしたらそう聞こえるか……問いたださせてもらうぞ!!」

 

桔梗「しかし……万が一、不手際があれば……天城殿や閣下に迷惑が掛かる。相手が大陸崩壊を企てる兇賊達であれば尚更! 誰ぞ、良き軍師が居てくれでば…………」

 

穏「ではではぁ、穏が何進大将軍の軍へ同行します〜!」

 

何進「おぉ! よろしいか!? 陸伯言よ!」

 

穏「確かに〜何進大将軍の将の皆様方は、武に優れた方は多いですが、軍師の方がいらっしゃいません〜! ですから、私が御一緒すれば、万が一の不測の事態でも、対応できると思いますから〜!」

 

ーーー

 

迷吾「……おいっ、ここは桃源郷か……? ここの将の胸や尻は桔梗姐者や紫苑姐者達、焔耶達と甲乙付けがたい……!」

 

阿貴「……馬鹿か貴様は! 一番後ろの白髪の美女が……俺等を注視しているぞ? 我々は、元々漢民族から蔑まれている者だが、何進様のお陰と桔梗様、紫苑様達のお力添えで傍にいられる。 ─────その事を忘れるな!」

 

迷吾「───変な真似をしたら『即・悪・斬』で……あの世行き確定だろ! そんな事は分かっているぜ! 何進兄者に世話になるのに、んな真似出来るかっていうんだ! だかな……すぐ傍にあると……こう……疼くんだよ!」

 

 

祭「お主等………!」

 

迷吾、阿貴「「はっ、はいっ! なんでしょうか! 美しいお姉様!!」」

 

祭「ほぅ〜? なかなか面白い将よ! 儂の酒の相手をせい! 少し前に禁酒の罰則が解けたが、付き合う奴が居らなくてのぉ〜?」

 

迷吾、阿貴「「はいっ! ご一緒させて頂きます!!」」

 

 

焔耶「紫苑様……これは?」

 

紫苑「私達のような『 年上の女の子に対する礼儀 』を教えてあげただけよ? う〜ん、少し戒めの『お薬』……少し効きすぎちゃたかな? 『お薬』と言っても危ない物ではなくて、ちょっとした『罰』をね。 ふふふっ!」

 

焔耶「………………………」

 

ーーー

 

三太夫「お久しぶりです! 伊達家の姐さん方!!」

 

政宗「そう日数は、掛かって居ないはずだが……確かに懐かしいな!」

 

景綱「私達の役目は、颯馬より聞いてる……。 だが、当の颯馬や公方様達は大丈夫なのか? 私達の経験の無い……遥かに大規模な戦いに巻き込まれて居るようだが? 政宗や成美が、毎日のように心配して五月蝿いのだ!」

 

綱元「駄目だよ? 私達全員が心配している事、正直に話さないと! 知らない颯馬が他の家に婿入りで取られるか、独立して一家を建てる可能性が出てくるかも? そうなったら、どうしようも無いから………」

 

成美「えぇ〜! やだよっ! 颯馬には伊達に婿入りして、毎日お団子奢って貰ったり遊んで貰ったり。 え〜とぉ…夜の…お相手とか……? そ、そんな計画……いっぱい立ててあるんだよぉぉぉ!?」

 

政宗「な、なな成美は、何の計画を立てているんだぁ!! あくまで、私と颯馬が──そ、その夫婦になるかも知れない……なってくれれば嬉しいな……と考えていただけで……。 も、勿論! 颯馬の心配もしているぞぉぉ!?」

 

三太夫「……おっかしいな? 俺は旦那の話なんて、これっぽっちもしちゃあいなんだけど………。 状況確認だけしておこうかな〜と思って、話しかけたんだけどねぇ? おっと! この話をしてると食いつく姐さん方が───!」

 

ーーー

 

雪蓮「ねぇ〜! ま・さ・む・ね? まだ、私達に隠し事してない?」

 

冥琳「うむ! 伊達家との婚姻同盟の件は聞いたが……この件が終わった後に大陸に残るのか、それとも天の国に帰るのが……聞いて居なかったな?」

 

蓮華「………手荒い真似なんてしたくないのよ。 大人しく素直に吐いた方が……身の為だと思うけど?」

 

小蓮「シャオも詳しい話は全然知らないんだ! サッサと教えなさいよ!!」

 

政宗「し、知らん! 私達が一番遅く大陸に降り立ったのは、存じているだろう!? 颯馬との接点も少なくて……寂しい思いをしていた私に、分かる訳ないじゃないかぁぁぁ!!!」

 

景綱「まぁ……ほぼ右に同じだな。 但し…後半部分は…違うぞ!?」

 

綱元「私達の出番……かなり……遅かったもんね?」

 

成美「成美ちゃんの出番が少ないなんて──やぁだぁぁぁ!!!」

 

雪蓮「………それもそうね。 それなら三太夫なら知っているでしょう! って……もう居ない!? どこ隠れちゃたのよ!?」

 

冥琳「彼奴を探すには、思春に頼まなけばならないが……思春には偵察で向かわせたし。 くっ! ……何か別の方法は………」

 

蓮華「こうなったら……華琳達に合流しましょう! 華琳の軍勢へ加勢している御遣いが数人居るようですし、急ぎ合流して真相を聞き出せば!!!」

 

雪蓮「蓮華、凄い名案ねっ! いける、いけるわよ! すぐに軍勢を動かせるように準備! 華琳に前触れを出して、私達孫呉も合流すると伝えて!!」

 

◆◇◆

 

【 何進軍の行動 の件 】

 

? 豫州 汝南郡 にて ?

 

何進「………若いとは羨ましいものだな! さて、我々も向かうか! 官渡の鳥巣にあると云う『茨砦』に………!!」

 

焔耶「お待ち下さい、閣下! 迷吾、阿貴の両名、祭殿に酔い潰されました! 当分の間、動く事は無理かと!!」

 

桔梗「なんと不甲斐ない! 二人掛かりで祭殿にやられるとは! この大事な時に、そのような体たらく! 将としての心構えが足らぬわい!!」

 

紫苑「………仕方が無いわよ! 好きな酒を罰則で止めらていた分、解禁となれば呑みたくもなるし。 若い子達が居れば、はしゃぎたくもなるもの。 被害はどうしても出るのよ……」

 

何進「……陸伯言よ! 二日程兵達に休息を取らせ、官渡へ向かうとする事どう思う? 成都から此処まで強行軍で参ったのだ! 休まねば支障をきたすが……颯馬達と時期を合わせねばならぬ。 軍師としての意見を聞きたい!」

 

穏「早くも大役ですね〜! わっかりました〜! ズバリ結論からすれば、三日の余裕は生まれると思いますー!」

 

桔梗「その読みの根拠は………?」

 

穏「天城さんの軍勢は八万、晋軍の軍勢三十万! これは、洛陽勢の三軍師からの連絡です〜。 そして、付近を見渡せば……幽州、徐州、洛陽、そして私

達の軍勢が散らばっていますよねー? これらを踏まえれば……」

 

焔耶「………ゴクッ!」

 

穏「大陸全域を使った『釣り野伏せ』の陣形になるんです───ぅ!」

 

紫苑「……ごめんなさい。 『釣り野伏せ』って……どういう戦術かしら?」

 

穏「えぇ〜!! 知らないのですかぁ!? 味方を囮にした包囲戦術ですよぉ! 今、最も流行りの新戦術で華琳……かの曹孟徳が力を入れている戦術なんですぅぅ! もぉ〜知らないなんてぇ、人生半分損してますよぉ〜!」

 

何進「それは言い過ぎだぞ? 戦術なぞ刻一刻と変わるもの。 一度は完成しても、次を望まなければ……己が日進月歩の新戦術に破られるのみ!!」

 

穏「あぁぁ〜目から鱗ですぅ〜! 確かにその通り、幾ら新戦術も刻を過ぎれば攻略されて弱点を狙われますからね〜! もしかして……何進大将軍も、戦略戦術をお好みになられのですか〜!? でしたら、是非ご教授を〜!?」

 

焔耶「ま、待てぇ! 戦術も大事だが、武力も高めなければ戦場には役立たない! そ、そうで御座いましょう! 何進様!!」

 

穏「武力を高めてもぉ〜敵の策を見破る事も出来なくてぇ、倒れ伏す武人の数は枚挙(まいきょ)に遑(いとま)がないのです〜! 武もそうですが、知の研鑽も積まなけば……どこかの小悪魔に、苛められちゃいますよぉ!?」

 

焔耶「ワ、ワタシは………そんな小悪魔なんぞに負けはしないぃ!!」

 

桔梗「黙らんかぁ! 焔耶!! 今は穏の話を聞けぇ!!」

 

焔耶「す、すいません! 桔梗様!」

 

穏「はいはいっ! 続きですよね〜!? ですから〜天城様の策は、自分達を囮にして敵陣営を惹きつけ、後に包囲して殲滅する策なんですよ!」

 

何進「………!」

 

穏「包囲に関わる他陣営の位置を確認すれば、此方を横切り官渡に向かう陣営は曹操軍のみ〜! 私達は、官渡で別行動もありますので、曹操軍を先に通過させ、その後に向かえば……二日程なら影響は無いと思いますぅ!!」

 

何進「よしっ! 二日程休みを入れて、兵達の士気を回復させ行動に移す! 天城達の行動を無駄にはさせん! 必ず茨砦を焼き討ちにするのだ!!」

 

『───はっ!!』

 

◆◇◆

 

【 読めた于吉の策 の件 】

 

? 徐州 下? 現曹操軍(旧晋軍)陣営内 にて ?

 

華琳「………で、アナタ達は韓馥から、何か聞いているの?」

 

念者衆「………………」

 

若衆「──わ、わいらかてなんも。 ねーさんさん達かて……なんも言うてへんと思うて……。 かな通り、猜疑心と高慢ちきん塊んようなおとこしどしたさかい……」

 

要約(──わ、私達にも何も。 姉様達にも……何も言っていないと思います……。 あの通り、猜疑心と高慢ちきの塊のような男でしたので……)

 

念者衆と若衆をそれぞれ並べて、尋問するが出てきた言葉はコレだけ。

 

華琳「……そう? 手荒い真似は支度なかったのだけど、此方も気が立っているの! 拷問に晒しても吐いてもらうわよ! 双方引っ立てぇぇ!!」

 

『はっ!』

 

武装した兵と春蘭、季衣、真桜の将兵が念者衆を、秋蘭、流琉、沙和の率いる兵で若衆をそれぞれ分けて、天幕に収容した!

 

華琳「それでは、拷問の準備を行う! 桂花! 直ぐに準備なさい!」

 

桂花「………はっ!」

 

ーーーーー

 

義久「うぅ〜ん、痛いの……お姉ちゃん嫌いぃぃ〜!」

 

宗茂「………ですが、拷問如きで口を割る輩でしょうか? 私には如何なる拷問も効かないようにみえます!」

 

家久「絶対────ぃ拷問しても無理!! 心に芯が宿っている顔していたんだよ? あんな顔した人は物凄く手強いの!! 戦で対戦すると決まって苦戦するから、見れば分かるんだよ!! 」

 

紹運「あのような将兵こそ、攻守において手強い! たが……支えを失えば、簡単に脆くなってしまう弱みもある!!」

 

ーーー

 

義弘「う〜ん、若衆って綺麗なオナゴみたいな人達は、多分、嘘はついていないと思うけど……あの仁王みたいな迫力のある輩は何かありそうだよねぇ?」

 

道雪「……ですが、客将である私達が口を挟む問題でありません! 華琳殿の様子からして、何かしら考えがあるようですから、傍観していた方がいいでしょう………」

 

歳久「はい……私も同意見です。 華琳配下の桃香達が、このような出来事に異論を挟まないのは余りにも変ですから。 これは、普通の拷問と思えば間違いを犯す事になりかねます。 どの様な裁きを付けるか拝見致しましょう!」

 

ーーーーー

 

華琳「念者衆の一人を連れて、若衆の天幕まで! 若衆の一人を念者衆の天幕にそれぞれ連れて暴行を加えよ!!!」

 

曹兵「はっ!」

 

華琳「猿轡を付ける事を忘れるな!!」

 

曹兵「はっ! ─────よしっ! やれぇ!!」

 

 

★☆☆

 

 

? 若衆側天幕にて ?

 

曹兵『オラッ! オラッ!』 ボカッ! ドスッ!

 

曹兵『吐けぇ! 秘密を吐けぇ!!』 ドカッバキッ!

 

念者衆『ウグッ! ウグッ!ウグッ!』

 

ーーー

 

若衆「ねーさんさん───!?」

 

若衆「いやぁ〜! お願いっ! 可哀想な事止めてぇ!!」

 

ーーーーー

 

? 念者衆側 天幕 にて ?

 

曹兵『へへっ! 虐めがいがありそうな奴だぜぇ!』バシッバシッ!

 

曹兵『まったくだ! 頬を真っ赤に染めやがって!』ボスッ!

 

若衆『ン〜〜! ングゥ────!!』

 

ーーーーー

 

念者衆「や、やめーな! そん子達は関係へんんよ!」

 

念者衆「しゃべる! しゃべるから! お願いやから止めて頂戴!!」

 

ーーーーー

 

華琳『その言葉、嘘偽りがあれば──全員を拷問に掛ける!! 相違は無いか!?』

 

若衆「嘘偽りなぞ申しまへん! 早う! ねーさんさんを───!!」

 

念者衆「そないな事、絶対せんから! 早う止めてぇー!!!」

 

華琳『よしっ! 言質を取った! 双方共──中止なさい!!』

 

★★☆

 

天幕より出される念者衆と若衆達。

 

そこには、いい笑顔を浮かべた華琳と…………。

 

ーーー

 

曹兵「オラッ! オラッ!!」ボスッ!

 

曹兵「へへっ!!」ドスッ!

 

太い丸太を差し込み、その丸太に寝具を巻き付けた物を、一生懸命打撃を与えていた。 二人一組みで、木の棒で叩きあっている。

 

桃香「今日はいい天気ですからねぇ! 布団を叩きながら干しましょう!」

 

桃香は笑顔で、兵達に布団干しと布団叩きの指示を出し、盛大に行っていた。

 

ーーー

 

横では、連れて来られた捕虜が猿轡のまま、縛られて座らせていて………。

 

朱里「た、確か……竹簡に書いてあった性感帯は、ココと……」

 

念者衆「ウグッ! ウグッ!!」

 

竹簡を見ながら握っていた木の棒を、鋼のような肉体に押し込んだ!

 

朱里「う〜ん……ココですね!」

 

念者衆「ウグゥ────!」バタッ!

 

朱里「は、はわわぁ!? 違うところで逝ってしまいましたぁ……! もしかして……これは、新しい性感帯と云う事で………書き加えましょう!」

 

ーーー

 

雛里「うぅ………綺麗な女の人にしか見えないのに。 す、すいません! えぇ〜い!」

 

雛里も、朱里の動作を見ながらツボを押す。

 

若衆「んん〜!」

 

雛里「え〜とぉ、反応がありましたが……あわっ! こ、これって女性専用の性感帯なのに……なんでぇ……この人に!? こ、これは、大発見ですっ! ま、まだ色々と試してみないとぉ!!」

 

若衆「ん! ん! んぐぅぅ─────!!!」ガクッ

 

雛里「す、凄いでしゅ!! これは、八○一や他の閨で使える資料になりましゅ!!」

 

ーーーーー

 

『─────!?!?』

 

 

華琳「……………コホンッ! ア、アナタ達の仲間は、この通りよ!」

 

拷問を加えられている仲間が、何故か……別の意味でエラい目に合わされている。 勿論……抗議を申し立てる者がいたが…………。

 

『騙される方が悪いのよ!!』と、乱世だから通る正論で、反論を捻り伏せて納得させた。 研究材料にされた二人は、一日中……身体をもじもじして……身体が艶めいていたと云う。

 

★★★

 

その結果────得た情報とは。

 

華琳「ほ、本当に!? それが───于吉とやらの目的なの!?」

 

麗羽「───────そんなぁ!!」

 

桂花「か、華琳様! 私達に打てる手立てはあるのでしょうか!?」

 

歳久「くっ──!! ひ、卑怯な!」

 

道雪「─────そ、颯馬殿!」

 

斗詩「私のせいでぇ…………! 一刀さん!!」

 

曹操軍に激震をもたらせ……天の御遣い達を絶望の淵に追い込んだ!

 

ーーー

 

『北郷一刀を人質に取り……関羽(愛紗)に……天城颯馬を討たせる!』

 

生前、韓馥が自慢げに話しているのを……数人の念者衆と若衆が聞いていた。

 

ーーー

 

秋蘭「確か……今の愛紗は……颯馬の傍に仕えていたな?」 

 

春蘭「愛紗は……一刀に無二の忠誠を誓っている! か、華琳様! これでは、その者の策通りになってしまいます!!」

 

雛里「天城様が暗殺されれば、洛陽軍は策を考えた者より……実行に起こした者を狙うでしょう。 それで……愛紗さんが討ち取られ……一刀さんを!」

 

朱里「一刀さんを洛陽軍に引き渡せば、必ず殺されます! 皆さん、天城様を慕う方達ばかりでしたから………」

 

桃香「そんな! そんなぁぁぁ───!」

 

家久「い、嫌だよ? 二人のお兄ちゃんが……それぞれ殺されるなんてぇ! 絶対に嫌あぁぁぁ!!」

 

宗茂「わ、私達が事情を知っています! ですから、説明すれば───!」

 

義弘「無理よ! 私達だって……颯馬が殺されば……大混乱よ! それに、義輝様、信長、今は居ない謙信、信玄達が参加すれば……収集が付かない!!」

 

義久「それにね〜? 懸念するのは……その晋軍の情勢なの。 多分、お姉ちゃんの考えが当たれば……晋軍の道士はね? 一刀君を曹操軍に渡してくる。 そうなったら一刀君を……貴女達は……洛陽軍に引き渡せる〜?」

 

猪々子「馬鹿ぁ言っちゃいけないぜぇ!」

 

季衣「兄ちゃんが……殺されるのが分かっているのに!! みすみす渡す訳ないじゃないかぁ!!!」

 

流琉「私が死んでも……お守りします!!!」

 

儁乂「天城颯馬様の噂は聞いていますが………理由はどうあれ、私の主は『北郷一刀』様だけ! 青州兵が一丸となり、最後の一兵になっても戦います!」

 

紫「………儁乂様やお兄ちゃんの為……頑張る!」

 

紹運「だろうな……。 そうなると……晋軍の企み通りだ。 二つの虎が争う中を眺めつつ、双方弱ったところを討つ。『二虎競食の計』の計略だろう!」

 

真桜「うわっ! サラッと計略を見破ってはる!? 流石、天の御遣いや!」

 

沙和「………それよりも! 早くこの事を洛陽軍に! 天城様達に知らせないっとぉなのぉぉ!!」

 

星「どうやら……刻……既に遅しだな…………!!」ドン!

 

─────ダダダダダダダッ!

 

曹兵「ほ、報告致します!! 洛陽軍! 『 司州 河南尹 鶏洛山付近 』において晋軍を迎えうち………双方激戦になっております!!!」

 

『───────────!!』

 

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

少し早いですが………于吉の策を……ほぼ全部を表してみました。

 

一応、これが晋軍の大まかな目標なんですが、久秀や順慶達は……まだ知らせれていません。 

 

どうなるかは、また、次回と…………………。

説明
義輝記の続編です! 宜しければ読んで下さい!
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コメント
『年上の女の子』の表示では駄目ですか………。 『妙齢の女の子』 『永遠の十八歳』 これじゃあ……笑い話にしかなりませんね。 この策謀の結果は……やっぱり次回か次の回になります! (いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 本当に徒然なるままの妄想書きですので恐縮です。 丁寧な分析かつ両面の損得による影響とかの評価が作者にはもったいない言葉ですよ。 そこまで考えていませんからね。(いた)
反面、于吉が関羽を過小評価していた様なら事は運ばず、曹操軍も洛陽軍も何が優先事項かこれまで考え斬り捨ててきたものを想えば答えは明確。一刀の努力と対応が青洲軍の欠点と美点両方に表れている、いやぁ…魅せ方が巧みかつエグイですね作者様。『年上の女の子』…残念だな( ゚д゚)、ペッ(禁玉⇒金球)
手元の人質の有効活用を『卑怯』とか阿呆が多いのは仕方ないとして、于吉の策は利に適ってるし敵状分析の結果の最上策と讃えたくなります。外史の要石とかは置いておいて言うなれば一刀にそれだけの価値を見出している連中に問題があるとも言える、たかが一個人を全体より優先すようとする様なら彼女等の今後は知れたものです。(禁玉⇒金球)
『この作品を見て、漢王朝全域が泣いたっ!!』とか言いそうで怖いですね。 大陸間で……見れればの話ですが。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 人間関係を利用した巧妙?なる策です。 朱里と雛里が発見した新秘孔じゃなく性感帯は、華琳様の閨で使用されます。 まぁ……探求心が怖いのは同意です。 『掘られる方が悪いのよ!!』 何故か納得して頷く作者です。(いた)
Jack Tlam様 コメントありがとうございます! どうなるかは……是非次回以降を。 なるべく派手に行いたいな……と考えてます。(いた)
連中の手口があくどいのはいつものことで。これは大変な事になったなぁ。(Jack Tlam)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 于吉の渾身の策ですが……果たして颯馬の運命は……! 次回かその次辺りを予定してます! (いた)
ほぅ…関羽さんに颯馬をねぇ。きっとそんな策は颯馬が破ってくれると信じております。(mokiti1976-2010)
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