女神異聞録〜閑話ヒーホー君物語〜第一話
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               女神異聞録〜閑話ヒーホー君物語〜

 

                    第1話

 

                 「さよならは笑顔で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ある冬のこと、少年は雪だるまを作った。

 

作り上げた雪だるまに自分の被っていた帽子を、青い帽子を被せ。

 

友達と遊んだ。見知らぬ子供も何人か混じったが、少年はそんなことは気にせず。

 

日は暮れ、夕闇に包まれ始める頃、子供たちは家路に付く。

 

いつも見送る子が居た。

 

その子はいつも、少年を見送っていた。

 

笑顔で、手を振り、見えなくなるまで、青い帽子をかぶって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 春になる前、いつも最後まで残っている子は、この街を離れると言っていた。

 

「ヒーホー、オイラは春にはこの街を離れるホー、だから、しばらくお別れホー」

 

少年は、また寂しくなるねと、少し悲しそうに笑いながらも同じように笑顔で応えた。

 

「だからこの帽子は返すホー」

 

少年は首を振り、これもあげるよとただ一言返した。

 

にっこりと微笑んだ黄色いバッジ。

 

毎年、冬にだけ現れる子供。

 

子供たちだけの秘密で、皆からはその口癖からヒーホー君と呼ばれた。

 

大人たちは知らない秘密で少年たちは大人になるにつれて忘れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 時は流れ、その街は雪に閉ざされた。

 

その年は様々な事件が多く流れた。

 

人が行方不明になる。誰も居なかったのに建物が壊れている。殺人事件も多く起きた。極め

 

つけは冬でもないのに、雪が、豪雪が吹雪くという異常気象。

 

備えた者などなく、多くの凍死者たちが出た。

 

外に逃れようとしたものは悉くが、雪に足をとられ冷たくなっていた。

 

内で暖を必死に取ったものの、救助も間に合わず小さな命は失われていった。

 

人々は雪の吹雪くその叫び声に恐れながらも逃げられずに居た。

 

そんな街にやってきた、戻ってきた者が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 鬼女ユキジョロウ、魔獣ハティ、邪鬼ウェンディゴ、妖精ジャックフロストなど氷に纏わ

 

る者達が集まっていた。

 

そんな中、辿り着いた彼も雪に纏わる何者かだが、集まってきた者たちとは違う目的をもっ

 

ていた。それを探し、一人街をさ迷い歩く。

 

二日三日歩き続け、凍てつかせるその原因の中心へと辿り着く。

 

目の前に鎮座するのは魔王。

 

彼らの王とも言える存在、王杖を携え、その体は彼よりも遥かに大きく、多くの手下が足元

 

にたむろしていた。

 

「ヒーホー、お前かホ?オイラの邪魔しているとか言うのは。もしそうなら叩き潰してやる

 

ホー………でも、手下になるなら許してやるホ?オイラは寛大なんだホー」

 

「オイラは、子供たちを助けに来たんだホー。テメーの手下になんかならないホ」

 

「生意気だホ!!全員ぶっ潰すホ!!」

 

「氷の檻の鍵、渡してもらうホ!!」

 

勝負の結果はわかっていても、それに挑む事を愚かというのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 お互いに氷のアクマ。その弱点も似ていて、強みも似たようなもの。

 

なら勝負の結果を変えたのはなんだったのだろうか。

 

彼は鍵を破壊し、魔王は彼をぼろぼろにして外に放り出した。

 

そう、『結果はわかっていた』倒すことは出来ない。それはわかりきっていた。

 

絶対的な強者を倒す事が極めて困難な事、それはこれからと、これまででよくわかっていた。

 

だからこそ、同質の魔力を注ぎ、鍵だけを破壊する事に終始努めた。

 

「ヒー………ホー………待ってるホ………もう一度いくんだホ……今度こそ………」

 

崩れ始める体を、力の篭らない手で押さえ、震える脚で一歩一歩進む。

 

一度檻まで辿り着いた。だから知っている、回復に時間をとられれば子供たちが死んでしま

 

う事を。この体のままでいけば、もう一度辿り着けないことも。

 

それでも、足を進める。

 

子供たちを助ける為に、ただそれだけの為に。

 

「動くホ………もう一度、見るんだホ………あの子の笑い顔を………」

 

雪に足をとられながらも、雪を無理矢理傷口に押し当てながら。

 

上手く動かない口で、上手く動かない足を叱咤しながら。

 

よろめく足で、引き摺るように進んでいく。

 

降り頻る雪にその轍を消されながら。

 

 

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 ふと気がつくと、誰かに背負われて運ばれていた。

 

ガバッと体を起こし、今居る場所を確認した。

 

「ヒーホー?あんたたち誰だホー?」

 

防寒着に身を包んだ青年と他にアクマが数体、後女性が三人。

 

背負っていた青年はそのまま背負いながら、落ちないように気をつけて歩き、さっきの質問

 

に答える。

 

「この街を覆ってる雲をどうにかしたくてね。目の前で倒れたから軽く治療して安全そう

 

なところまで運んでるんだけど………」

 

「ヒーホー、それなら案内できるホ。オイラもそこに用があるんだホ」

 

これだけ回復していれば、辿り着くことが出来ると青年の背から飛び降りて、手の感触を確

 

かめ、足の調子を確かめる。

 

「似たようなアクマも居るから、何か判別方法がほしいな………」

 

「ヒホー。青い帽子がトレードマークだホ。バッジもつけてるホ」

 

「あ………思い出した。子供の頃に聞いた……ヒーホー君か」

 

「ヒーホー、好きな風に呼べばいいホー」

 

青年はヒーホー君の事を覚えていた。覚えていられる時間が短いとは知りながら。

 

寓話、御伽話、都市伝説、ヒーホー君はそんなものから生まれたアクマ。

 

子供にしか見えず、大人になれば忘れてしまう。

 

そんな子供たちだけの伝説。

 

そんな存在だから、子供のときにしか伝わらない、覚えていられない。

 

ただ、子供たちの笑顔が好きな、子供たちの友達。

 

「あぁ、よろしくな。ヒーホー君」

 

「ヒーホー、名前はありがたく貰うホ。でもオイラ契約は出来ないホ。子供たちが待ってる

 

からだホー」

 

お互いに急ぎ足で目的の場所へと向かう。

 

彼はその結末を知りながら。

 

今度こそは、と―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

説明
メガテンマスコットのヒーホー君の物語
ちょいちょい本編の方にも出てくるキャラクター
そんなキャラに焦点を当てた作品
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