〜羨望外史〜 第一話 「勇の降・T」
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─────1人目。

 

 

 

???「…………痛てて…」

 

全身に、なぜかある痛み。

 

なぜ痛み?…記憶を辿ってみる。

 

…確か、突然目の前が暗くなって…。…あれ?なんで目の前が暗くなったんだっけ?

 

え?え?何?全然覚えてないんだけど?…記憶喪失ってやつか…?

 

???「お、俺は…」

 

声は出る。…全身が痛いのは変わらないけど、…指、…腕、…手、…足、…体。うん、全部動く。どうやら、無事らしい。

 

???「俺は北郷一刀……聖フランチェスカの二年生で、所属クラブは剣道部……」

 

生まれてから、今までの事を振り返りながら、記憶を確かめていく。……大体、大丈夫だな。

 

そして、今日は、朝起きて、学校に行って、いつも通りの授業を受けてて、それから…

 

一刀「それからか…」

 

足りない記憶はここ前後。…記憶喪失だったらシャレならん…。まぁ、心配してくれるヒロインでもいれば話は別だけど…。

 

 

 

そして俺は、ゆっくり目を開いて…………。

 

 

 

一刀「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

目の前の光景に思わず叫ぶ。

 

青い空、白い雲、岩の山、果てなき荒野、……………そして、無人。

 

もちろん俺の叫びにリアクションを返してくれるひとはいないわけで…。

 

一刀「ど、どこだここ!」

 

ここ日本じゃないだろ!?…じゃあ外国?なんだか、それっぽい所はテレビでみたことある…。…けど、ありえないだろ!

 

一刀「…でも、夢でもないんだよな?」

 

一応ほっぺたをつねってみる。……痛いな。じゃあ、ドッキリ?……………及川か?いや無理無理。というより、こんなこと出来る友人なんかいない。

 

一刀「せめて、なんかヒントがあればなぁ…」

 

ゴソゴソと探してみるが、シャープペンと消しゴム、…百円玉、十円玉。…財布は?携帯は?………なんで?落とした?

 

キョロキョロと探してみるが、この辺りにはないらしい。…というか、ここなんだか見やすいな。1km先の人まで見えそうな気がする。……空気が綺麗なのかな?

 

そんな空気が綺麗な所なんて、ますます分からない。…誰かに聞かないとな。

 

一刀「…誰か、って…。どっちに行けばいいんだろう…」

 

こんな荒野で人が住んでるところなんて分からないぞ?…唯一分かることと言えば、太陽が真上だから、たぶんお昼頃。それだけだ。

 

一刀「うーん、こういうときはシャーペンが倒れた方向に…」

 

コテン

 

シャーペンを立てて、それを倒して、先っぽが向いている方向…。

 

一刀「南か………」

 

じゃあ、行ってみようか……。…適当すぎるけど、動かないよりましだろ。

 

何とはなしにそう決めて、倒したシャーペンをポケットに放り込もうとして……。

 

???「おう、兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

独り言以外の声がかけられたのはその時だった。

 

一刀「……………コスプレ?」

 

声をかけてきたのは3人。…東洋系、日本では普通着ないだろう、鎧らしきもの、……そして、雑魚。

 

 

 

………え?俺、今何を思った?

 

 

 

アニキ「……はぁ?何言ってんだこいつ?」

 

チビ「さぁ、あっしに聞かれても……」

 

アニキ「おメェ、わかるか?」

 

デブ「……わがんね」

 

一刀「あの、すいません……」

 

アニキ「何だよ?」

 

一刀「ここ、どこですか?」

 

チビ「はぁ?」

 

一刀「それにその格好、コスプレかドラマ、映画の撮影のどれかですか?…随分凝ってますけど……」

 

一刀「あの、もし良かったら、携帯貸してもらえませんか?…充電切れちゃって」

 

デブ「………?」

 

チビ「アニキ。こいつ、頭おかしいんじゃないすか?」

 

アニキ「ああ。俺もそう思っていたところだ」

 

一刀「あの、言葉通じてますよねぇ……?」

 

アニキ「そりゃ、こっちが聞きたいぜ、兄ちゃん。俺達の言ってること、ちゃんと分かるよな?」

 

一刀「はい、分かります。よかったちゃんと通じてるみたいですね。良かった」

 

アニキ「そうかそうか。なら良かったついでに……金出してもらおうか」

 

そんな言葉と共に俺の頬に触れたのは、冷たい鉄の感触だった。

 

 

 

ドン!

 

 

 

一刀「へ?」

 

そして、それと同時に聞こえた音は、俺がアニキと呼ばれる男を、蹴り飛ばす音だった。

 

チビ「て、てめぇ、なにしやがる!!」

 

一刀「え?え?俺も何がなんだか…」

 

無意識?そんな反射神経もってないぞ!?

 

アニキ「…こ、このやろう……」

 

5mほど先では、俺に蹴飛ばされた男が、苦しみに耐える声を出しながら、睨んでくる。

 

一刀「い、いや、俺が悪いのか!?…いや、俺が悪いんだけどさ!」

 

けど、蹴ろうと思って蹴った訳じゃ…。

 

アニキ「…ち、ちくしょう!お前ら、やっちまえ!」

 

チビ「ウ、ウス!」

 

今度はチビがアニキの命令で短刀を真正面に構え、飛び込んでくる。

 

 

──────遅い。

 

 

シュッ!

 

チビ「かっ!?」

 

チビの延髄に手刀を叩き込む。

 

 

 

一刀「………………………」

 

 

 

…き、気絶している。

 

 

な、なんだよ、これ!なんでこんな事が出来るんだよ!手刀は相当な力がないと気絶出来ない筈だろ!?…なんで!?

 

 

 

────不安。底知れぬ不安。今まで感じたことのない力が俺の中で駆け巡る。

 

 

 

デブ「……て、てめぇ…」

 

一刀「…………………」

 

……そうだ、まだこいつが残ってた。

 

デブ「……………」

 

じりじりと寄ってくるデブ。

 

………だが、その瞳に映るものは──────『恐怖』。

 

……………じゃあ、ここは……。

 

一刀「…止まれ」

 

出来るだけ、ドスを効かせて。

 

デブ「ひっ」

 

デブの全身に『恐怖』。

 

一刀「…今は二人とも生きている。……けど、これ以上続けるなら……」

 

更にドスを効かせ、睨みつける。

 

デブ「……う、うぅ…」

 

一刀「分かるなら、二人を連れて、ここから去れ!!」

 

精一杯の虚勢で声を張り上げる。

 

デブ「ひ、ひぃいいいいいいいい!」

 

それにビビったデブは、チビを抱えあげ、遠くでうずくまったままのアニキを抱え込み走り出す。

 

アニキ「あ、てめ、こら!………この野郎!覚えてやがれーーーーーーーー!」

 

抱え込まれたアニキは俺を睨みつけながら、よくある台詞を口にして去っていく。

 

一刀「いや、それよくある三下の台詞だし。というか、覚えねぇよ…」

 

そう言って、先ほどまで出していた、『殺気』らしき者を納める。

 

 

 

パチパチパチ

 

 

 

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一刀「!」

 

突然、後ろからの拍手。

 

???「いや、お見事」

 

一刀「今度は、何だ……?」

 

今度も三人組。

 

一人は槍を携えし、扇情的な白い服を着た、青髪の女性。

一人はペロペロキャンディーを咥えて、頭にモニュメント…太陽の塔?を乗せた女性。

一人は眼鏡で黒髪、ちらりと見えるガーターがいい感じの女性。

 

────皆、可愛いな。

 

???「大丈夫ですかー?」

 

???「大丈夫も何も、風も見てたでしょう?かすり傷すらついてないじゃない」

 

一刀「え、いや、うん。その子の言う通り、大丈夫だけど…」

 

???「そうですかー」

 

一刀「…………………」

 

しかし、これまたなんとも個性的な子たちだなぁ…。中華風?っていうのかな?少なくとも日本じゃ見ない。

 

何かのアニメやゲームのコスプレとかでも……ないと思うんだけど。

 

???「いや、しかし見事であったな。助けに入ろうかとも思ったが、必要なかったな」

 

???「しかし、災難でしたね。この辺りは、盗賊は比較的少ない地域なんですが……」

 

一刀「比較的……?」

 

日本にそんな無法地帯あるのか?…それとも、やっぱりここ海外?

 

一刀「あの……、風、さん?」

 

風「……ひへっ!?」

 

???「貴様……っ!」

 

その瞬間、目の前に突きつけられたのは、青髪の女性の持っていた槍の穂先。

 

一刀「な……何………っ!?」

 

先程の男たちの嫌な殺気では無い為か、無意識で反撃などはしない。

 

???「おぬし、武人かと思ったが、……格好を見る限りでは世間知らずの貴族かは知らんが……いきなり人の真名を呼ぶなど、どうゆう了見だ!」

 

風「て……っ、訂正してください……っ!」

 

一刀「え……?だ、だって、……え?」

 

???「訂正なさい!」

 

風「うぅぅ……っ!」

 

な、なんだこの子たち、さっきまでと様子が違うじゃないか。まるで胸を触った、とか、とにかくセクハラされたときのような感じだ。まさか、そういう風習なのか?この国は……。

 

……ってか、マナってなんだよ!?

 

一刀「わ、分かった。ごめん。訂正する!訂正するから、その槍を引いてくれ」

 

???「………結構」

 

風「はふぅ…。いきなり真名を呼ぶなんて、びっくりしちゃいましたよー」

 

一刀「いや、そりゃ、こっちの台詞だよ。…そのマナってなにさ……?」

 

???「……真名を知らない?本当に世間知らずの貴族ようですね…」

 

一刀「いや、貴族じゃないよ。てか、ここがどこだかも分かんないのに、マナもなにも知らないってば」

 

???「……どういうことだ?お主、生まれは?」

 

一刀「日本の東京。…マナってやつは、たぶん風習なんだろう?そんな風習日本にはなかったからさ。てか、字すら分からん」

 

???「にほんのとうきょう?どこですか、それは?」

 

一刀「え、それは…」

 

日本ってそんなにマイナーか?

 

風「……真名とは」

 

一刀「え?」

 

日本の事はもういいの?

 

風「…真名とは真なる名と書きます。これは、本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前でして、本人の許可無く真名で呼びかけることは、失礼にあたり、侮辱でもあるのですよー」

 

一刀「真なる名…」

 

じゃあ………。

 

一刀「す、すまない!悪かった!本当にごめん!」

 

風「へ?」

 

一刀「そんな大事なこととは知らずに呼んでしまって、すまない。……そうか!君が槍を突きつけたのは、当然なんだよな!」

 

???「え、ええ、まぁ……」

 

一刀「じゃあ、えと、んと…」

 

程立「……程立とお呼びくださいー」

 

一刀「わ、わかった!じゃあ、程立!君は俺になんらかの罰的なものを与えないといけないんじゃないか!?」

 

程立「…いえー、構いませんよー」

 

???「風!?この男は真名を呼んだのよ!しかも、罰まで所望してるのよ!?」

 

いや、所望…………か?

 

程立「……稟ちゃん。この人、本当に真名のこと知らないみたいですよー。それでもですかー?」

 

???「うっ……」

 

???「…確かに風の言う通りやもしれん。それにこの態度、悪い御仁ではなさそうだ…」

 

???「……それは、まぁ確かに…」

 

一刀「え?…許してくれるのか!?」

 

程立「はいー」

 

一刀「あ、ありがとう!」

 

心底嬉しくて、笑顔で感謝を述べる。

 

???「(……ほう、これはこれは…)」

 

???「(……う)」

 

程立「(……いい顔してますねー)」

 

一刀「……?」

 

三人が、なぜかじっと見てくる。……何?

 

一刀「………それで、あとの2人の名前は?」

 

なんか、空気を変えたかったので、話題を変える。

 

戯志才「い、今は戯志才と名乗っています」

 

…自ら偽名とばらすの?

 

趙雲「……ふむ。私は趙雲と申す」

 

え?

 

一刀「……趙雲って、常山の趙子龍!?」

 

あれって男じゃなかったか!?

 

趙雲「なぜ私の字を?そこまで名が知れ渡っているとは知らなんだが…」

 

一刀「いや、趙雲っていえば、槍の名手で俺らの国じゃ有名で……」

 

趙雲「俺らの国?……では漢の出身ではないと?」

 

一刀「かん?かんって………漢!?え、いや、だって…」

 

え?いったいどういうことだ!?

 

 

 

 

 

戯志才「………星」

 

俺がちょっと混乱していると、戯志才と名乗った少女が趙雲の肩を叩いている。

 

趙雲「……む、旗印が『曹』。……確かあれは、陳留の刺史殿だったか…」

 

一刀「しし?」

 

趙雲たちが見ている方向を見る。

 

一刀「………おいおい」

 

視線の先には騎馬武者の群れに、『曹』の旗。

 

……なんだよ、あれ……。映画の撮影か、なにか?

 

─────しかもでかい気が三つ。よく目を凝らすと、ツインロールの金髪に、黒髪ストレート、青髪の右目が隠れている─────女の子。…ちっ、細かく顔までは見えないか…。

 

趙雲「ふむ、この御仁といると、面倒ごとがあって面白そうであったが、官が絡むとなると、な……」

 

一刀「……え、あれ?行っちゃうの!?」

 

戯志才「我々のような流れ者が貴族の方を連れていると、大概の者はよからぬ想像をしてしまうのですよ」

 

一刀「いや、貴族じゃないし!…俺も連れて行ってくれ!」

 

戯志才「……なぜ?刺史殿についていけば、色々と知ることが出来るのですよ?」

 

確かにそうかもしれない…。

 

一刀「けど、ダメなんだ…。今あいつらに会っちゃいけないんだ…」

 

程立「…………なぜですかー?」

 

なぜ、か………。

 

一刀「………勘、かな……」

 

趙雲「…………ふむ………」

 

趙雲がじっと俺の顔を見てくる。

 

一刀「…ダメ、か……?」

 

 

 

趙雲「………こちらへ!」

 

 

 

一刀「…!すまない!恩にきる!」

 

戯志才「…星、よろしいのですか?…それに、追ってくるかも知れませんよ?」

 

趙雲「ふふ、私は面白い方を選ぶ。それだけだ。それに先程の盗賊が乗っていた馬が放置されているだろう?あっちに気を取られてくれるだろう」

 

戯志才「……賭のような気がしますが、まぁいいでしょう」

 

程立「……ふふふ、なんだか楽しくなってきましたねー」

 

戯志才「…どこがですか!…まったく」

 

 

逃げている間も三人の会話は続く。俺はその後ろ付いていきながら、後方を見て呟く。

 

一刀「……あんたにはまだ会えない。……けど、いつか必ず会える。…そんな気がするよ」

 

そういって、更に速度をあげ、その場から去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────陳留に降り立つは、『勇』の北郷一刀。

 

─────これは、幽州に天の御使いが降り立つ、三月前の出来事。

 

─────このことが未来にどう関係するのか……。

 

 

 

───────それは、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

続史!

-3ページ-

 

〜あとがき〜

 

いや〜、なんで書いちゃったんでしょうねー。

…いや、まぁ書きやすかったからなんですけどね…。

 

というわけで、こっちが続きました。

 

もちろん、繰り返し〜も続きますよ?

 

 

 

…けど、皆さんがどっちを見たいかが分からないんですよねー。

 

 

 

 

…あ、ちなみに、見たら分かるとおり、この一刀は『チート』です。

…チート嫌いな方、ゴメンナサイ。

……けど、やめません。

 

ということで、

 

 

 

でわでわ〜

説明
『繰り返しながらも新たなる外史』を書かずにこっち書いちゃった!?

いや、書きやすかったんですよ。
…ごめんなさい。

あと、若干前作と違います。ごめんなさい。


誤字等ありましたら、ご指摘願います。

[追記]タイトル変更(ちょっとかっこよくしました!)
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コメント
繰り返し〜は結構時間も経ってますし、こちらから書いて行って終わったらと言うのは如何でしょうか?二つ同時は辛いものが在りますよ?自分的には、チートな設定の方が好きなのでこちらを優先して頂ければ嬉しいです(クォーツ)
へー、結構チートは大丈夫みたいですね、よかった。強さは恋と同じくらいにしたい(願望w)とにかく急いで書きます!(つよし)
チ−ト一刀か・・勇の一刀わ星と風と凛を攻略すると(笑い)(brid)
風ファンの私には願ってもない展開。ぜひ続きをお願いします。(ブックマン)
チート一刀は私も書いてますけど整合性を合わせるのが大変ですよね。複数の一刀ってネタはちょっと考えてました。ここからどうなるのか興味があります。(とにー)
いいねwもっとやってくれ(☆samidare☆)
あえて言わせてほしい・・・・・・・・・・・・続きを!と(toto)
魏√スタートでありかつ、冒頭で華琳達と逢わないとは・・・・・続きをお待ちしてます(cheat)
一人目ってことは・・・?(XOP)
一刀の女たらし度はもはやチートの領域なのでなんら違和感ありませんよ(笑) 続き心待ちにしてますねwww(YUJI)
ま、種馬事態チートに似たようなモノだから 一刀が強い事に越したことはないかと 自分は、一刀が強いほうが良いと思います。(Poussiere)
「勇」の一刀・・・続きが気になります!!(komanari)
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