お嫁さんは悪魔さん!?
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それはある晩のことだった。

 

 

俺は背川良太。 県立高校に通う勉強も運動も中の上くらい、主だった趣味もなく、いわゆる普通の高校生だった。

 

 

なぜ語尾が過去形かと言われると長くなるのだが結論から言う。

 

 

俺の嫁は悪魔です。

 

 

その日は朝から体調が悪かったから早く寝ていた。

 

そして夜中の三時頃だっただろうか、トイレに行って手を洗っているといきなり大きな音がした。

 

『パリーンッ』

 

俺の思い込みじゃなければ深夜に自分の家で大きな音がしたら驚かない奴はいないだろう。

 

そして俺もその例外ではなかった。

 

だって明らかに音がしたのって俺の部屋の方だよ?

 

そりゃ空き巣や泥棒かと思いますよ。 ねぇ?

 

だから急いで自分の部屋に戻ると窓が木っ端微塵に割れていた。

 

そして、それ以上におかしな点があった。

 

俺は自分の目をこすった。

 

(あれっ?俺、寝ぼけてるのかなぁ?)

 

そう、なんと割れた窓のところに一人の少女が座っていたのだ。

 

「少年よ、おはよう!」

 

「あっ、おはようございます・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「じゃねぇよっ!」

 

「何がだ?」

 

「あ〜っ、ツッコミどころが多すぎる!」

 

「さっきから何を一人でごちゃごちゃ言っているんだ?」

 

「明らかお前のせいだろ!ってかお前は誰だ!?空き巣か?泥棒か?それなら、うちには盗む様な物はなにもないぞ!」

 

「少年っ!私をその様な者達と一緒にするな!私はレフィア。レフィア・グランタ、悪魔 兼 貴様のお嫁さんだっ!」

 

「え〜と・・・警察ですか?あのですね・・・。」

 

「・・・っておい!なぜ警察を呼ぶ!?」

 

「いやいや、今の名乗りを聞いたら誰だって通報するでしょ?俺にだってそれくらいの常識はありますよ。」

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「なにか?少年は私を信じていないと?」

 

「はいっ!」

 

「即答するなっ!じゃあ、どうしたら私を信じてくれる?」

 

「じゃあ悪魔だという証拠を見せてくださいよ。もしその証拠がちゃんとしたものならば俺はあなたの事を一応、信用しましょう。」

 

「証拠か・・・。」

 

「ないんですか?なら通報を・・・。」

 

「やっ、待てって!今、考えてただろ!」

 

「で、良い案はうかびましたか?」

 

「まぁあるはあるんだが・・・・・・。なるべく死者は出したくないしな・・・。」

 

「!?、今、死者とか何とか言いました!?」

 

「ああ、言ったぞ。」

 

「・・・・・・なんで?」

 

「お前に最大級の魔法を見せてやろうと思ってな。」

 

「・・・・・・あの、できればもっと安全なものでお願いします。」

 

「そうだなぁ・・・。」

 

「じゃあこれでいいです。」

 

と言うと良太はレフィアに消しゴムを渡した。

 

「もう面倒なんでこれを動かせたら悪魔でいいですよ。」

 

「そんなんでいいのか?私的にはもっと特別な、代々継承されてきた禁術でも披露しようと考えてたんだが。」

 

「いや遠慮しときます。違うことで通報することになりそうなんで。」

 

「わかった。じゃあこれを動かせたらいいんだな。」

 

「ああ、でもトンチとかそういうのじゃないからな。」

 

「わかってるって、ほらっ。」

 

レフィアが人差し指を上に動かすとそれと同じように消しゴムが浮いたのだ。

 

「これでいいか?」

 

「・・・・・・。」

 

「おい?」

 

(やばいよ!驚きすぎて何も言えねぇよ!だって本当に浮いてたし・・・まぁとりあえず落ち着け俺!落ち着くんだ!ここはいったん話を聞こう!うん、そうしよう!相手の話を一切聞かずに頭から全否定てのもな?なぁ?俺の選択は正しいよな?)

 

「あっうん・・・とりあえず。いったん信じるよ。」

 

「いったんとは私もなかなか信じてもらえないな。まぁよい。」

 

「じゃあ、えーと。あっそうだ、さっき言ってた俺のお嫁さんだっけ?あれってどういうことなの?俺はまだ十六ですよ?」

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「お嫁さん?え〜と何のことかな?」

 

「はっ?って、えぇぇぇ!自分で言っておいてそれはないでしょ!?」

 

「冗談、冗談(笑)」

 

「(笑)じゃねぇよ!! で結局のところ何なんだ?」

 

「いいか良く聞けよ。」

 

「お、おう。」

 

レフィアの言うところによるとこういう事らしい。

 

レフィアが住む悪魔界《デビルズサンクチュアリ 通称デビサン》では特殊な仕来たりがあるらしく デビサンの姫は良いお年頃になるとお婿さんを探すらしい。

しかも姫クラスにもなると魔力が強くて同族と結婚すると子供の魔力が強力になりすぎて危険なため人間界で探すらしいのだ。

 

しかも特殊なのはこれからだ。

 

普通、結婚相手くらいは自分で決めたいもんだ。

しかし、デビサンの仕来たりではデビサンの王宮にある装置を使い人間界にランダムに姫を転送するらしいのだ そして、姫達は転送された先で会った男のお嫁さんにならなきゃいけないらしいのだ。

 

「で、その転送先が俺の家だったと?」

 

「その通り!!見かけによらず理解が早いな。」

 

「・・・あの拒否権は?」

 

「ない。しかしデビサンもそこまで強制的ではない。」

 

そしてレフィアは説明を続けた。

 

「お前の様にいきなり婚約を持ち出されて拒否したりする輩もいる。だからこの婚約にもルールがある。」

 

「ルール?」

 

「そうルールだ。この婚約は相手がすんなり受け入れない場合は一年という期限が与えられ、一年間、姫と一緒に暮らして男が婚約を受け入れればそれで良し。もしも一年たっても男の意志が変わらない場合はタイムオーバー。姫は一度、デビサンに戻り、再度ランダムに転送されるんだ。」

 

「つまり、あの・・・もしかしてなんですけど・・・一年間、俺の家にいちゃったりするんでしょうか?・・・。」

 

「うむ!」

 

「あは・・・あはははは・・・・・・。」

 

「しょっ、少年!?」

 

結局、俺はいきなりの出来事に耐えきれずに気絶してしまった。

 

朝になり目が覚めると目の前に黒い紐があった。

 

「ん?何だろ?」

 

良太は黒い紐を掴んだ。

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「はうぅっ!?」

 

(ん?誰か何か言ったか?馬鹿を言うなここは俺の部屋だ他に誰かいるわけがない、じゃあやっぱりこれは何なんだろう?)

 

すると良太はもう一度、黒い紐を掴んだ。

 

「ひうっ!?少年!ドコを掴んでいる!」

 

「えっ?」

 

「いっ、いいから手を離せっ!」

 

「・・・って誰!?」

 

と良太が言うと気絶する前の出来事が走馬灯の様に頭の中を駆け巡った。

 

「あっ!」

 

と言った頃には既に遅かった。

 

「婚約者を忘れるとは良い度胸だな?今、すぐに思い出させてやろう。」

 

するとレフィアの手のひらに炎が灯った。

 

「まっ、待て!!冗談だって冗談!」

 

「ほ〜う、では私の名は?」

 

「リフィア。」

 

「・・・・・・。」

 

「どうだ!ちゃんと覚えてたろ!」

 

「もう一度、言ってみろ。」

 

「リフィア。」

 

「私の名はレフィアだぁ〜!」

 

するとレフィアの手から凄い勢いで炎が飛んできた。

 

そして、それを避けられる程の反射神経は俺にはなく、無惨にも直撃。

 

『ドカ〜ン』で表現できる様な可愛らしいものではなかった。

 

「あは、あははは良いお目覚めだこと・・・。」

 

「どうだ思い出しただろ?」

 

「はい・・・。」

 

「ってか何で俺の部屋に?」

 

「結婚するんだからあたりまえだろう。」

 

「いやいや、結婚するなんて言ってねぇし。俺の家にいても構わんから頼むから別の部屋を使ってくださいよ。」

 

「それはイヤだな。」

 

「・・・もしかして一人が怖い・・・とか?(笑)」

 

「ばっ、馬鹿にするなよ!!デビサンの姫はそんなものを怖れたりはしない!」

 

「わっ!」

 

「はうっ!」

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「やっぱり怖いんだね。」

 

レフィアは涙目になりながら反論してくる。

 

「ちっ、違う!今のは朝の発声練習だっ!」

 

「あ・・・。」

 

「どうかしたか?」

 

「レフィアの後ろに血だらけの女性が・・・。」

 

「ひぅっ!」

 

「ははは、姫さんともあろう方がこんなに怖がりだなんて。」

 

「・・・そうだよ、怖いんだよっ・・・悪いかよっ!」

 

「いや、別に。ちょっとからかっただけだよ。女の子なんだし、いいんじゃない?(笑)」

 

「ほんとうに?」

 

「あっ、うん。」

 

(あれっ?からかったつもりだったんだけどな?)

 

「本当に女の子って思ってる?」

 

「えっ?だって女の子でしょ?」

 

「あっ、あたりまえだ! ただその・・・。」

 

聞くところによるとレフィアは幼い頃から男の子っぽい性格だったためあまり女の子として意識されなかったみたいだ。

 

「なんだそんなことか。」

 

「そんなこととはなんだっ!そんなこととは!」

 

「だって性格が男の子っぽいって言ってもやっぱりレフィアは女の子だろ?性格なんて人の数だけあるんだしそれがレフィアの個性だろ?だったら別にいいじゃん。」

 

「・・・・・・。」

 

「ん?どうした?」

 

「うっ、うるさい!」

 

レフィアの手のひらが再び光り、今度は電撃が飛んできた。

 

「おわぁぁぁぁぁ!」

 

言うまでもない。  当たったさ。

 

(私としたことがこんな少年ごときに・・・)

 

「俺なんか変なこと言ったか!?」

 

「うるさいぞ少年!もう一発いっとくか?」

 

本当はまだまだ言いたいことはたくさんあるさ。

 

でもさ、これ、あれだぞ? 銀行強盗に玩具のお札を渡すようなもんだぜ?

 

残念ながら俺にそんな勇気はないね。

 

だから俺は堂々と言ってやったのさ!

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「すいません。私が悪うございました。」

 

我ながら不甲斐ない・・・・・・。

 

「ならいい。」

 

「ところでいい加減、少年って呼ぶのやめません?」

 

「まぁそうだな。・・・え〜と名前は?」

 

「そうだよな?だと思ったさ。」

 

「なにせ好きでここに来たわけじゃないからな!」

 

「そこっ!自信満々に言わない!」

 

ということでとりあえずお互いに自己紹介をすることになった。

 

「俺は背川良太。自分で言うのもなんだが普通の高校生だ。」

 

「私はさっきも言った通りレフィア・グランタ。悪魔 兼 良太の妻だ。」

 

「っておいっ! 最後のは余計だぞ!」

 

「わたしじゃ嫌なのぉ?」

 

レフィアは急に甘えるような素振りで言ってきた。

 

「いや、その、いやっていうか、ねぇ?」

 

〔実際、俺だってこんな可愛い(多少、性格に難あり)がお嫁さんだったらどんなにいいことか。でもさ俺、高校生だよ?しかも相手は悪魔だよ?〕

 

「だめなのぉ?」

 

(おいおい、なんか泣きそうなんですけど!? もういい!どうにでもなれ!女の子を泣かせる方がよっぽどダメだ!)

 

「わかった! でも一つ条件がある。」

 

「じょうけん?」

 

「そうだ。確かに俺はレフィアが嫌いじゃない。でもいくらなんでも会っていきなり結婚は正直無理だ。だからこうしよう。これから少しずつお互いを知ってからにしよう。」

 

「ほんとぅ?じゃあこの家にいてもいぃ?」

 

「あぁ本当だ。だから別にこの家にいても構わない。でも部屋は別のトコを使ってくれ。」

 

「言ったな?今の話、ちゃんと聞いたぞ!お前はさっきみたいな態度が好きなのか?まんまとだまされたな。」

 

「っておい!? 芝居なんて卑怯だぞ! 人の善意を踏みにじったな!」

 

「さぁ?なんのことかな?」

 

「レフィア〜! お前はなぁ。」

 

「あっ、そうだ!一つだけ言っておく私のことはレフィーでいいぞ。まずはお互いを知るんだろう?ならまずは親しくならんとな?だからレフィーでいい。とりあえずよろしくな良太!」

 

やれやれ、これからが思いやられるよ・・・まったく・・・。

 

 

 

 

 

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