チェーンソーでも切れないの |
「ねぇ、見て!」
急に彼女が僕を引っ張って、手を差し出してきた。
その手は握り拳で、小指だけがぴんと立っている。
その小指に注目しても、何も気になるところなんてない。
「……怪我なんてないけど?」
「ちっがーう!もっとよく見てよ」
言われたとおり突き出した指を見る。
小指、といえば約束か?
指切りげんまんなのか?
僕が眉をひそめて考えていると、彼女は軽くため息を吐いた。
「なんで分かんないのかなぁ」
「分かるわけねぇじゃん」
わざとらしくがっかりした仕草をする彼女にそう言うと、にんまり笑って僕の小指を引っ張った。
痛い。顔を歪めると、彼女は自分の小指と僕の小指を交互に見て、口を開いた。
「赤い糸、ついてるでしょ」
なんとも乙女チックな考え。頭がくらくらしながらも僕は彼女の小指を握った。
そんな僕の行動に彼女は、何?といった表情で僕を見上げている。
「切れちゃうよ、糸なんて」
相手が乙女チックな思想なら、僕もそれに返すだけ。
しかし彼女はまだにんまり笑顔を崩さず、僕の小指に自分のそれを絡めた。
「そうね、普通の赤い糸なら切れちゃうね」
「じゃあ僕らも切れちゃうよ」
「私とあんたのは、普通じゃないの」
彼女は僕の小指にキスをした。
「絶対切れないの、それがチェーンソーでもねっ!」
次は僕の唇にキスしてそう言った。
自分で言ったくせに、自分で真っ赤になっている彼女が愛しくて、小指を絡めたまま抱きしめた。
苦しいよ。なんて言って、彼女は小指をきつく絡めてきた。
チェーンソーでも切れないの
僕は小指どころか、全部の指を彼女の指に絡めた。
end
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そんなもの、信じちゃいないけど、 君が言うから信じちゃうんだ。 |
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