涼宮ハルヒの対決 プロローグ |
これは夏の始まりから終わりにかけて、つまりはあのガンプラ世界大会の事故が起こる前の話である。
ハルヒがいきなりガンプラを作ると言いだし、四苦八苦しながら完成までこぎつけ、しいてはガンプラを作るきっかけとなったおねーさんと闘った後の記録だ。
時間にしておよそ二か月強といったところだろうか?
その間ハルヒが落ち着いているわけなどなく、ガンプラバトルや合宿等、様々なイベントをこなしながら濃厚な時を過ごしていったのだ。
しかもガンプラバトルのペースが尋常ではなく、ハルヒが望むままに相手が現れ、そして闘って修復するというローテーションがいつの間にか組まれていたのである。
まぁ、こういう風にハルヒがガンプラにはまるのはいいが、やはりこのヘビーローテーションはいかがなものかと思わざるを得ない。
季節が季節だけにハルヒもヒートアップしていたのだろうか?
俺なんかじゃとてもとても出せないくらいに熱が入っていた。
ハッキリ言わせてもらうと、ガンプラバトルはお腹いっぱいを通り越して食傷気味だったのである。
恐らく修復という作業が無かったら、毎日でも戦っていたんじゃないかと思う。
一種のバトルマニア……、いや、バトルジャンキーと言わせてもらおう。
ハルヒは面白い事や楽しいことがあると、即断即決!私について来い!なんて勢いで道を突っ走るからな。
まぁ、またそれもある種の魅力かもしれんのだが、残念なことに俺は苦行に身を置いて喜ぶなんて趣味の持ち主じゃないんでな、一歩退いたところで見物させてもらいたいところだ。
しかし、古泉や長門や朝比奈さんはなぜかその苦行に身を窶していってしまうのだ。
こうなってしまうと民主主義における最高の理不尽、多数決によって俺側が敗北してしまう。
あの少数が常に封殺されるっていうのは軋轢を生まないのか?甚だ疑問である。
だったらそんな集団から抜ければいいのではないかという意見もあるだろうが、なぜか苦行の中に一休みポイント的な優しさや、脳からドーパミンが出て脳内麻薬が働き苦行が楽しくなってしまうという現象が起こり、やめられなくなってしまうのだ。
また、他にも何も起こりませんように、と願う時に限っていつの間にか事件に巻き込まれて、いつの間にか逃げ道がなくなっているという状態になり、事件解決に向かって動く羽目になるのである。
こうなるともう笑うしかなくなって、修行僧のように精神を強く持つしか方法はない。
俺の観察で悪いが、ハルヒの面白おかしいことを引き寄せるということに関しては、一種の才能を感じる。
こう、ハルヒが退屈すると決まってハルヒが何かを言い出すか、日常に綻びが出来たところを目ざとくハルヒや他の皆が発見し、俺はそれの辻褄合わせに遁走しなくてはならないのだ。
本当に俺は疲れてきた。なんてったって気力体力を吸い取られているんじゃないかと思うくらいハルヒの事件にかかわると疲労困憊、満身創痍になる。
なんというか、他の皆の身体の構造が知りたい、かなりマジで。あのハルヒの奇天烈な行動によくついていけるな……。
それでいて定期的に俺達に完成したガンプラを披露していくのだから、恐ろしい。
古泉なんか学校、閉鎖空間、団の活動と三重苦以上の多忙さなのにもかかわらずに、だ。
そのスケジュール管理能力には敬意を表するよ。俺にもぜひ教えてくれ。
まぁ、朝比奈さんだったら、禁則事項です、と愛らしいポーズで返されてお終いだろうけどな……。
長門はアレだ、睡眠時間を削って……、いや、それをするまでもなく完璧なスケジュールを組んで正確無比、最短距離を進むように作るところが容易に想像できる。
言い訳にしか聞こえないと思うが、はっきり言って俺はハルヒたちについていくのが精一杯で、ガンプラ作る暇がなくなってしまい、少し危機感を覚えている。
なんというか、ハルヒたちの行動についていくだけでなんとな〜く活動したという気持ちになってしまい、そのまま疲労でぐっすり、休日もぼんやりと過ごしているのが専ら俺の近況である。
そんな状況なんてお構いなしにハルヒの独走は続き、俺達はそれに追随せにゃならない。
当り前のことだがハルヒは、人一倍普通とか退屈が嫌いなように思われる。それでいて頭の中にある愉快なこと、楽しいこと、をみんなに分けてあげよう!というなんて言うか、イベントの押し売りみたいな女なのである。まったく、傍迷惑な。
いや、そうとも言えんか。なんだかんだ言って楽しんでいた俺がいることは事実だし、ハルヒがガンプラの道に来てくれたときなんかもそうだ。
なんだかんだ言って俺もハルヒに毒されてきてるのかね……。
まぁ、俺の自己分析はいいとして、この二か月強の期間に起きたハイペースなガンプラの対決の模様をお伝えしていこうと思う。
確かに世界大会ほどのボリュームや洗練されてないガンプラバトルだが、俺たちの……主にハルヒの熱気がこもった試合模様をお送りできると思う。
そして、誰かにこの熱気が伝わって、ガンプラの道に走っていってくれたらうれしい。
それに俺だってガンプラバトルデビューしたんだぜ?ハルヒほどじゃあないが、俺も結構健闘したと思う。
おっと、本題からまたそれるとこだったな……、それじゃあまず何から話そうか。
うん、まずはハルヒが公共の電波で対決してしまった話とかはどうかな。
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