「真・恋姫無双 君の隣に」 第34話 |
華琳が?州と徐州を、雪蓮が荊州南部を支配下に置いた。
河北では麗羽が青州と冀州を領土として、并州の晋陽が関羽の手に落ちたらしい。
うん?関羽の治めてる平原は冀州の一部だ、一体どういうことだ?
正確な情報が入ってくるまで判断は保留だな。
新しい勢力図を見て、今後の事を考える。
大陸の諸侯も大分絞り込まれてきた、戦の規模も変わるし強敵だけが残る。
俺は諸侯全てが敵に等しいから、一時も無駄には出来ない。
建国の準備は大凡出来た。
いよいよだな、と拳を握り締める。
長安に戻る蒲公英に日程も伝えた、次に会う時は月達も一緒だ。
その為に政務をこなしているのに、背中から感じる複数の冷たい視線。
「御主人様、お昼をご一緒させて頂いてよろしいでしょうか?」
冷たさが更に増した。
「あ、ああ、勿論いいけど。紫苑、御主人様と呼ぶのは止めてもらえないか?どうにも慣れなくて」
そんな呼ばれ方を平気で受け止めるようになったら、人として堕落していきそうだ。
紫苑みたいな成熟した女性に呼ばれたら尚更。
比べるのもどうかだけど、春蘭や桂花にぼろかすに言われる方がまだ落ち着く。
「御言葉ですが、私にも譲れない事がございます。恩人であり尊敬して止まない主に、御主人様以外の呼び方はありえませんわ」
「だから、一刀でいいって!」
「真名をお許しいただけたことは光栄な事でございますが、私にとっては恐れ多い事ですわ」
この会話、何回繰り返しただろ。
それと近い、胸が当たる、いや当たってる。
この色気は反則だ。
結局押し切られる無力な俺に、背後から聞こえてくるのは呪詛。
「所構わず発情する種馬は去勢するべきですねえ」
「華琳様にあることあること報告しないといけませんねー」
「兄様の馬鹿、兄様の馬鹿、兄様の馬鹿・・・・・」
「ふむ、儂も御主人様と呼んでみるかのお」
「真・恋姫無双 君の隣に」 第34話
姫も忙しいねえ、怒ったり御機嫌だったり。
冀州の刺史である韓馥を倒したら、
「お〜ほっほっほっほっほっほっほ、これぞ漢帝国大将軍の力ですわ」
関羽に騙されたと知ったら、
「絶対に許しませんわ。直ちに滅ぼしますわよ!」
攻め込もうとしたら平原の民に歓迎されて、
「お〜ほっほっほっほっほっほっほ、よろしくてよ、わたくしの民となることを許しますわ」
于吉の奴が曹操に負けてきたら、
「于吉さん、わたくしの兵は一兵も損ねていませんから許してあげますけど、精進なさい」
御遣いが曹操を助けた事を聞いたら、
「どうして一刀さんが、ちんくしゃの華琳さんを助けるんですの。納得いきませんわっ!」
寡兵で張?を討った御遣いに、
「流石はわたくしの生涯の好敵手ですわ。華琳さんを助けたのは面白くありませんけど、同盟の義務を果たす義理堅さは評価に値しますわ」
最後は機嫌が良くなったから、ま、いいか。
「そんで、姫、これからどうすんの?晋陽を陥とした関羽を討ちにいくんすか?」
「当然ですわ」
「袁紹様、その事について進言したき事が御座います。お許し頂けますでしょうか?」
于吉の奴が割って入ってきた、こいつは姫に気にいられてっから、結構策が採用されんだよな。
「よろしくてよ、言ってみなさい」
「ありがとうございます。では、私は幽州への侵攻を進言します。関羽が并州を平定中ですので、誰が勝ち残ろうとも并州全体の力は落ちます。そして関羽を支援している公孫賛は逆に孤立無援です。助けの来ない幽州はたやすく陥ちるでしょう。その後に三州を支配する袁家が并州に兵を進めれば、戦うまでも無く軍門に下るかと」
ふ〜ん、そんなもんかね。
「斗詩、どう思う?」
「いいと思うよ。関羽さんを攻めたら公孫賛さんが援軍に来るだろうけど、今の状況なら逆は無理だと思う。冀州・幽州・青州を押さえれたら三十万以上の兵力は持てるよ。傷ついた并州だけで抵抗なんて出来ないから」
あ〜、そりゃそうだよな、納得納得。
「わたくしとしては関羽さんを真っ先に討ちたいですわ。わたくしを騙すなど許せませんわ」
「関羽如き小物にお心を煩わせることはありません。袁紹様はいずれ雌雄を決します北郷殿の事に専念すべきです。ですが、お辛い事で御座いましょう、お察し申し上げます」
「その通りですわ。わたくしに相応しい唯一の殿方と戦わねばならない悲しき宿命、嗚呼、天はどうしてわたくし達にこの様な過酷な運命を与えるのでしょう」
「お嘆き下さいますな。恋とは辛いもので御座いますが、困難なればこそ、より強く結ばれるものと私は信じております」
「左慈さんに貴方の想いが通じる日はきっと来ますわ。わたくしの悲しみを理解してくれる臣を持てた事を嬉しく思いますわ」
「有り難き御言葉。私も微力ながら力を尽くさせて頂きます」
この芝居、何べん見たっけ。
何時も通り、共感しまくってるなあ。
「なあ、斗詩。どうして生涯の敵が悲劇の恋人になってんだろうな?」
「・・姫様に聞いてよ」
「左慈が居ないのは巻き込まれたくないからか?」
「どう考えてもそうだよ」
あ〜あ、兵の奴等、可哀相に、今頃死ぬほど鍛えられてるぜ。
「桃香様、ありがとうございました。御陰様で晋陽を陥とす事が出来ました」
無事に平原を脱出され、晋陽に到着された桃香様に喜びを伝える。
平原の民を傷つけることなく、袁紹の追撃を防いでくれた。
最上の結果を出して頂けた事に感謝が尽きなかった。
「脱出する時に民が付いて行くと言ってたけど、お姉ちゃんが断ったのだ」
「どういう事ですか?」
桃香様が袁紹への対策を全て終えて此方に向かおうとされた時に、大多数の民から共に行きたいと願い出されたらしい。
僅か数ヶ月でそこまで慕われるとは、やはりこの方は大陸に安寧をもたらすお人なのだ。
「それでしたら、同行して貰ってもよろしかったのでは?」
「あのね、平原の人達には一杯協力して貰えて、本当に感謝してるんだ。一緒に来てくれると言ってくれたのも凄く嬉しかったけど、とても危険だし、護る事も出来ないのに承諾するのは無責任だと思うから断ったんだよ」
「お姉ちゃんは一生懸命謝って、袁紹にやられないように歓迎の準備をして欲しいとお願いしたのだ」
「そうでしたか」
事の顛末を聞きながら、私は本来の立場に戻る時が来たことを実感していた。
民に求められる王など、何処にもいるものか。
だが同じ過ちは繰り返すまい、この方のお心こそが何よりも大事な事なのだから。
「本当にお姉ちゃんは変わったのだ。御遣いの兄ちゃんに会ってから凄く大人という感じなのだ」
・・御遣い。
私は冷水を浴びたような気持ちになる。
今の桃香様があるのは、全て御遣いの薫陶だという事実。
桃香様と再会するまでは気に懸けないようにしていたが、反董卓連合の戦から否が応でも御遣いの事を耳にする事が増えている。
噂を聞く度に、私の無力さを自覚させられた。
一個人の武など、良き政や鍛え上げられた軍には歯牙にも掛からない事だと。
最も認めたくない事は、桃香様が御遣いに憧れ、尊敬しているという事。
私は自分が間違っていた事に気が付いても、桃香様との絆が深まった事を感じながらも、御遣いに対しての憎しみが心に残っていた。
その憎しみの心を持つ自分を自己嫌悪しながら。
私が偵察を終えて報告し終わった途端、小蓮様が凄く大きな声で抗議の声を上げられました。
「絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ対に嫌だからね!私だって孫家の娘だから政略結婚しなくちゃいけない事くらい分かるけど、そんな奴等のところにお嫁に行くなんて死んでも嫌っ!」
お気持ちは分かります、私も報告しながら不愉快で仕方なかったのです。
同盟申し込みの書簡では共に協力したいと謙虚な文面でしたが、偵察しましたら予想通りでした。
評判どおり民の営みは最悪で、三者の城に潜入しましたら口を揃えたかのように雪蓮様を小娘扱い、自分達が実権を握る事を口にしていました。
偵察する前から見え透いてた事ではありますが、目の当たりにしますと怒りが次々に湧き上がって来ます。
「シャオ、嫌というだけなら誰でも出来るわ。代案がなければ断るのは難しい話よ、揚州の三大勢力をまとめて敵にするのだから」
「姉様、断っても全く問題ありません。その者達が強気に出てるのは我等の態度が弱気に見られているからです。今からでも遅くありません、綱紀粛正を行い、民を大事にしない者など処罰すべきです。そうすれば恥政しか行えぬ者達に付け入る隙などありません」
「またその話なの。一刀に抗じる為の力が必要と言った筈よ!」
「何故ですか!一刀は力を用いても問答無用で使ったりしません。姉様もそれ位は分かるでしょう!」
「敵を信用しての軍略などありえないわ!」
「どうして敵味方でくくるのですか!主義主張の違いは歩み寄れる余地があります!」
また始まってしまいました。
日常と化してしまった光景ですが、お二人とも国を思っての御言葉です。
家臣である私達にはお止めしづらく、冥琳様でも口を挟むのは憚られてます。
同盟の申し出に関しては保留となり、他の案件に関する議題と代わりましたが、それも紛糾する一方でした。
以前よりも更に雪蓮様と蓮華様の溝が広がっています。
場が解散した後、亞莎に私がいない間の事を聞いたら、最悪の状態でした。
今の孫家は完全に二派に分かれているそうです。
「どうしてですか、亞莎。雪蓮様と蓮華様は意見は違えど、国の事を必死に考えられてるではないですか」
「明命の言う通りです。実は恭順した有力豪族の中心人物である許貢が、蓮華様を排斥するように雪蓮様に訴えたんです。当然の如く却下されましたが、他の豪族と太い繋がりを持つ許貢を退く事は出来ず、許貢は今も力を背景に排斥を訴え続けてます」
そして蓮華様の身の危険を感じた古参や新たに任官した市井出身の者達が、許貢を討つべく臨戦状態に入っているとの事。
雪蓮様も蓮華様も必死に抑えていますが、一触即発の状況だそうです。
「亞莎。これから孫家はどうなるのですか?」
「分からない。ただ、一刀様が豪族を無くそうとしている理由はよく分かったの。力の意味や責任を知らない者に、力を持つ資格は無いんだって」
「本当にいいの、一刀様。この親書を馬家に届けて」
「うん、頼んだよ、蒲公英」
明日に長安へ戻る蒲公英が準備の為に退出して、七乃達の視線が俺に集中する。
「一刀さん、本当にいいんですか?事を起こすまで馬家は中立の立場を取りますよ?」
「いいんだ。俺は歩みを止めない。でも付き合うかどうかは本人の意思に任せたい。人にはそれぞれ繋がりや護りたいものがあるから」
七乃の次に凪も問いかけてくる。
「・・祭殿の事もですか」
お見通しか、それでも皆は俺の意思を尊重してくれる。
俺は恵まれすぎだよな。
「祭も蒲公英も翠も、後悔しないで欲しいんだ。どんな事になっても、俺は彼女達に出会えた事に感謝してる。だから、俺も後悔しない道を選ぶよ」
「損な性格してるの」
「しゃあないわ、大将やしな」
「ですねえ」
「御心のままに。私達は何処までもお供します」
本当に素敵な人達。
自然にお互いを大事に思いあってるわ。
私もいつか、あの輪の中に入れるのかしら。
「特に意識する事はないと思います。お兄さんといたらいつのまにか溶け込んでいるのですよー。」
いきなり本心を言い当てられて驚いたけど、悟られないように受け流しましょう。
「程cさん達が御主人様の下に残られたのは、あの輪の中に居たい為なのかしら?」
「あ、あの、その・・」
典韋ちゃんが顔を真っ赤にしてるわ、正直ね。
「いえいえ、荊州攻略の為に派遣されたのですから、まだ終わっていないからですよー」
あらあら、御主人様が当面は荊州南部を攻略しないのは承知の上でしょうに。
「それに風達が此処にいるのは華琳様の為にもなりますから」
「あら、堂々と細作宣言かしら?」
「フフフー、お兄さんは気にしませんよー」
その通りでしょうね、でも、このままでいいのかしら。
休戦の同盟は曹操軍が徐州を支配下にした時点で終了してるのに。
曹操に御主人様の性格が見抜かれてるとも取れるわ。
「お兄さんは大地なのです。全てを受け止めて、支えて、新たな芽を吹かせる人だと風は思ってます。日輪も、吹く風も、大地があるからこそ安心して自分の役目が果たせるのですよ」
日輪に吹く風?
話の内容に不明な点はあるけれど、ご主人様を大地と例えるのは分かる気がするわ。
私は自分の考える王を、御主人様に求めていたのかしら。
これまで玉座の重みを感じなかった方達に苦悩を重ねていたのに。
「それにニーチャンは純粋に真名で呼んで欲しいんだと思うぜ。御遣いや主人じゃなくて、そのままの自分と接して欲しくてよ」
そのままの自分を。
・・私は、とても恥ずかしい気持ちになる。
桔梗、貴女が此処にいたら、先程までの私を笑っていたかしら。
御主人様が素のお姿で接してくださるのに、私だけ構えた心でいたなんて。
私も、自分を知って欲しい。
「一刀様、皆さん。今日の夕餉は私がご用意させて頂きたいのですが、如何がでしょうか?」
突然の提案と呼び方に皆は一瞬驚いたけど、真意を察してくれたわ。
一刀様が笑顔で、皆も嬉しそうな表情で受けてくれる。
「あの、黄忠さん。私も手伝わせて下さい」
「ありがとう。私の事は紫苑と呼んでくれるかしら」
「わ、私は流琉です。そう呼んで下さい」
また、あいつ来てたんだ。
月に一刀の悪口を言いに来る。
恋、あいつ嫌い。
斬ろうとしたら、ねねと星に止められた。
「恋、お主の気持ちは分かる。私とて同じ思いだ。だが今はこらえるのだ、奴を斬れば涼州の大半が敵にまわる」
「恋殿、こらえてくだされ。いま少しの辛抱なのです。たんぽぽ殿が戻られたら、いよいよ我等の国が建ち上がるのです。さすれば一刀殿と共に、あの者が討てるのです」
でもあいつ、翠にもよく話しかけてる。
翠、辛そうな顔してた、元気無い。
一刀、早く一緒に居たい。
そしたら翠も、きっと元気になる。
「ねね、やはり奴の背後は韓遂か」
「間違いないのです。あの、ひねくれじじい、絶対に滅ぼしてやるのです」
説明 | ||
建国まであと少し。 諸侯は次々に淘汰され、強き国だけが残っていく。 |
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コメント | ||
人間が二人以上集まればそりゃあ意見の食い違いが生じるそこからが議論の開始だ、為政者は信頼が大事ですが猜疑心も同等以上に大事、見えない信頼ではなく見える利益こそに価値あり。信念と理屈じゃねぇんだよ(禁玉⇒金球) まーこうなるよね、うん。天下には興味が無くても孫呉の存続には徹底的に拘る。致し方ない。愛紗もなあ……確かに一刀の言葉で一時的な離別はあったが、それが互いを成長させたじゃないか。自己嫌悪してるだけマシだが、この蟠りがいずれとんでもないことにならないことを祈るばかり。(Jack Tlam) ここで実は恋姫においては袁家姉妹以上の保守派である雪蓮の弱みが出てきましたか。……お互いを解り合えたら共存の道があると最初の頃に一刀は言っていましたが、逆に「お互いに解り合っているからこそ、己の存在意義を護る為には滅ぼすしかない」ということだってあるわけで。(h995) 呉がやばいですな〜内乱勃発したら他との戦どろこじゃないな^^;(nao) 涼州と孫呉がこれからどうなるのか?楽しみにしてます。(himajin) 今度は涼州での内乱にスポットが当たるのかな? しかし、左慈と于吉は割と真っ当に生きてるのに手出ししてない方が滅びそうになっとるのは皮肉というか・・・孫呉ェ・・・(黒乃真白) |
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