剣の書物 episode1
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僕、薙野道弓は、最近とあることに悩まされていた。

〔道弓ー、暇だよー〕

僕の目の前には、話す本。そう、それが悩みだった。

〔私は『剣の書物』だよー。本ではないよー〕

『剣の書物』、この意思と話す本を手に入れたのは、昨日まで話を遡る――

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――――昨日

「ねえねえ、道弓君。この本、貰ってくれないかな?」

抑々の発端は、彼女、雪浪楓葉に古ぼけた本を貰ったことだった。

表紙は革表紙。今時、そのような本が出版されているとは信じがたい。つまりは、この本は年代物という事になる。

僕は、彼女と幼なじみだ。その為、年頃の男女にしてはよく話す。

勿論、一瞬も躊躇わずに受け取った。この手の類の本を集めるのが僕の趣味である。

「有難う!お婆ちゃんからもらったんだけど、私は本を読まないから」

「それにしてもいいの?お婆ちゃんの形見なのに」

その言葉に、一瞬悲しそうな顔をした後、楓葉は、微笑した。

「ううん。実は、父方の祖母に「捨てなさい」って言われちゃって。どうせなら、こういう本、好きそうな人に渡そうって思っただけだよ」

「うん。一応貰っておくよ。じゃあ、また明日」

「また明日」

こうして、楓葉と別れた。

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これが、僕が『剣の書物』を手に入れた経緯である。

じゃあ、何で悩みがあるかって?何故なら、訳の分からない謎の組織に襲われたからだった。

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楓葉と別れた後、僕は借りているアパートに帰ろうとしていた。

その途中に僕は襲われたわけである。

アパートの中に入ろうとしたとき、前方に一人の大男が立ち塞がっているのに気が付き、僕は立ち止まる。

「お前さん……その『書物』を渡して貰おうか……」

明らかに不審である。無視して通り過ぎようとすると、肩を掴まれて振り向かされた。

「お前さん……『書物』……持っているだろう……」

「書物って、何のことですか。抑々、貴方のいっている意味が分かりません」

更に強い力で掴まれた。肩が痛み、段々と感覚が無くなってくる。

その本が入ったサブバックを、思わず強く握る。本能ではなく、直感が「渡してはだめだ」と告げていた。

「そうか……」

男は諦めたような声を出した。僕は安堵のため息を吐いたが、それは一瞬で消え去った。

男は、腰のベルトにつけられたポーチから、小さめの小冊子を取り出した。そして、僕の肩を右手で掴んだまま左手でページをめくる。

「『熱の書物』……やれ」

〔はい。ご主人〕

本が話した。

そういう驚愕も早々に、嫌な予感がし、頭を動かす。その直後、頭の真横を暑いものが掠り、床に着弾した何かは、床を焦がした。

その隙に、身体を激しく動かしてその手の中から逃げ出すと、床を転がって距離をとった。

「ほう……熱球を避けるとは……侮れなさそうだ……熱の波動」

〔はい。ご主人〕

透明な弾が僕に向かって放たれる。それをステップを踏んで躱す。ダンスを習わされていた事が、ここで役に立った。

だけど、避ける度に端へ、端へと追いやられていく。焦りを感じた時、僕のサブバックが輝いた。否、サブバックの中から輝いていた。

無我夢中で次の熱球を躱すと、サブバックのファスナーを引き開け、輝く物を掴みだす。その途端、まぶしくて目を細めた。

輝く物の正体は、楓葉に貰った古ぼけた革表紙の本。それが、輝いていた。

「なっ……目覚めたのか……」

〔ご主人。撤退しますか?〕

「いや……撤退はしないさ……完全に目覚めきっていないようだからな……」

困惑するしかない僕。そして、光は更に輝きを増し、辺り一帯を包み込んだ。

〔起動。所持者確認〕

僕の持つ本も、話し出す。

〔所持者、薙野道弓。認定します〕

「目覚めた……!」

「な、何なんだ!?」

〔標的、確認。『剣の書物』、起動します〕

そんな声がし、視界が完全に真っ白になった時、僕は意識を失った。

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意識が元に戻った時、男はいなかった。

そして、僕はフロアロビーに倒れていた。

横にはサブバックと、古ぼけた革表紙の本。もう、光り輝いてはいない。

「夢、か?」

〔いえいえー、ゆめじゃないよー。ここは現実ー〕

「えっと……空耳?」

〔空耳ではないよー〕

うん。現実だった。

こうして、僕の日常は変化した。

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えっと、初めまして、ミーシェです。

オリジナル作品を投稿しようと思っています。

更新は遅いと思いますが、よろしくお願いします。

説明
『書物』。それは、意志を持った書の事である。
ある日、『剣の書物』と呼ばれる『書物』を手に入れた少年、薙野道弓は『書物』をめぐる戦いに巻き込まれることになる――!
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戦い 書物 ファンタジー 

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