義輝記 星霜の章 その二十九
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【 礼に対する報恩 の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?

 

周囲は異様な物音に驚き………注目した!

 

肉を切り裂く音では無く、固い物を遮る音!

 

そして……そこに立っていた人物は、一刀達がよく知る人物だった!

 

一刀「大洪……! 左校……! お前達なのか!? お前達なんだな!!」

 

華琳「あ、貴方達………!!」

 

『大洪』は剣を構えて……厳しい顔で順慶を睨みつけ対陣する!

 

大洪『てめぇ……俺達の命を奪っても、まだ旦那を狙うのか!』

 

順慶「ふふっ! どんな手品を使ったか知りませんが、邪魔者は消えて貰いますわよ!! それに、貴方達の命など関係ありませんわ! 行くてを阻む雑草を刈り取っただけですもの!!」

 

順慶が構え、制空圏を作り上げると同時に攻撃を開始する! 既に……常人には分からない速度で動き、唸りを上げつつ拳を大洪に叩き込む!

 

大洪『前と同じだと───思われたくないねぇんだよ!!!』

 

その拳を左手で簡単に受け止め……剣で反撃するが、瞬時に避けられる。

 

しかし、順慶の顔に驚愕の顔が浮かぶ! 

 

順慶「ど……どういう事ですの!?」

 

この世界の英傑が束になり、攻められても……易々倒せた順慶。 それが……名も残らぬ無名の将如きに、対等以上に闘う事になるなんて!?

 

順慶は……軽く目眩がしていた。

 

ーーー

 

左校『御遣い様……ご無事で何より!! 皆で心配しておりました!』

 

一刀「お前達! 無事で───!?」

 

一刀は、二人の生還を喜ぼうとしたが……左校は悲しげに顔を横に振る。

 

左校『いえ……我々は筒井に命を奪われた身。 既に、この世の住人ではありません!』 

 

一刀「──────! そうか……やはり……俺のせいで……」

 

青い顔で落ち込む一刀に、左校は両肩に手を乗せ……一刀に話掛ける。

 

左校『我々は、御遣い様を守る事が出来て……本望です! しかし、御遣い様が日々悲しんでいる姿に……いても居られず……何か出来ないかと模索していたところ、このような機会に運良く恵まれました!!」

 

一刀「お、俺を……皆を恨んでいないのか? 妬ましくないのか!?」

 

左校「恨み事があれば、こんなところに出て参りません! 詳しくは言えませんが、ある方のお力添えにより……《式神》として参陣した次第です! つかの間とはいえ、御遣い様の力になれる事、皆……喜んでいますよ! ほらっ!』

 

左校が手を上げると、曹操軍の周囲へ光の柱が無数に立ち昇り、そこにも光り輝く鎧を着用した者が千人現れる。 

 

左校『御遣い様や華琳様達が、我々に行ってくれた恩義に報いるのは今だ! 総員──敵を討ち払え!!!』

 

『『『御意!!!』』』

 

大洪、左校配下の元青州兵達が、傀儡兵達に立ち向かっていった!! 

 

★☆☆

 

? 鶏洛山付近の森林 にて ?

 

果心「ふすふす………どうやら、上手く召喚出来たようですね」

 

果心居士は、祭壇の前で祈りを止めた。 

 

周囲は人が一切入らないように、結界を二重三重に張り巡らし、ただ一心に『天帝』の祭壇に祈りを捧げていた。 

 

ーーーーー

 

于吉と同じ管理者としている果心は、于吉の術を破るのは至難である事を自覚していた。 于吉のような妖術と言うものが、使えない事は無いが……同質の術では、まともに相手にならない! 他に何か手はないかと………。

 

そこで考えたのは……この世界で颯馬や一刀に力を貸してくれる『亡き者達』を、一時的に『力ある式神』として戦場に送り込む事だった!

 

意識ある使い魔として自動的に動いてくれれば、術に掛ける力も少なく済むし、果心自体も動ける。 それに、それぞれの理由があれば、更に強くなってくれるのが式神! これなら……大丈夫だと踏んだのだ!!

 

しかし、この世界の人の絆に自分の力を足した『式神召喚法』だが、一抹の不安がある。 颯馬は別として、北郷一刀の事は殆ど知らない。 果たして、北郷一刀に力を貸す『亡き者』達は居るのだろうか………と。 

 

ーーー

 

果心「北郷一刀に恩ある亡魂達よ! 今一度、彼に力を貸さんと申す者あれば、『天帝』の使者である我に申告せよ!!」

 

だが……祭壇を拵え祈り始めると、直ぐに申し出が殺到してきた! 例えるなら、『○物バーゲンセールに挑む掛かる女性の方々』のような状態。 

 

 

『自分の力不足で、北郷様に迷惑を掛けた! 今こそお役に立ちたい!』

 

『あの方のお陰で、家族が守れた! 恩返しを!!』

 

 

正直……頭が痛くなる状態だったが、ある一団に目が入った。 

 

『……………………………』

 

兵数千人規模だが、キチンと整列し順番待ちをしている。 その規則正しさが気になり声を掛けると、大洪、左校が率いていた青州兵だった。 

 

『俺達は……御遣い様達を救い出せたので悔いは無い。 しかし、我らの前に何時も泣きながら御遣い様が謝れるのは……非常に辛いのだ! 何とか出来ぬものかと……相談させてもらいたいのだ!』

 

『旦那の良い所だか、あんまり執着し過ぎても、旦那も俺達も悪影響しか出ねぇ! この世で一発ドデカい手柄を立てて、双方綺麗に別れたいと思ってな? あの世も綺麗なネェチャン居るから不満もねぇもんでぇ……』

 

『何だその言いぐさは! 御遣い様を、自分の女のような扱いをするとは! 恥を知れ! 恥を───!!』

 

ここは相談室では無いのだが……と溜め息をつく前に、果心居士は思い付く。 

この者達を式神に召し抱えよう! そして、残りの者達を『甲冑』に変えて強化してみよう! そうすれば……于吉の術にも対抗出来るし、この者達の思いにも応えられる! 

 

果心「臣、果心言上仕ります! 忠義尽くし報恩の志を持つ烈士達を、何故とぞ一時期ながら……我が式神と召し抱える故、御許可の採決を願い奉ります!」

 

果心は祭壇に願った後、左校達を並ばせ……呪文を詠唱する!

 

果心「天帝の臣たる果心が命じる! 北郷一刀に仇なす輩を速やかに討ち払え! 神将招来!! 急急如律令!!!」

 

果心の詠唱が終わると、光輝く鎧を着用した神将達が現れた! 無論……大洪達の変化した姿だった。

 

果心「くつくつ、貴方達に力を与えました。 この世に悔い無きよう……力を尽くしなさい!!」

 

『おおぉぉぉ! 我々の導き手……北郷一刀様達を救い出すぞぉぉぉ!!』

 

こうして、『大洪』『左校』達は向かったのだ。 

 

順慶達に対抗できる力を手に入れて…………!

 

ーーー

 

果心居士「くつくつ……北郷一刀。 貴方もまた……この世界の主人公として恥じない活躍をされている様子。 管理者としても……颯馬殿の味方としても非常に頼もしく思いますよ……」

 

果心居士の祈りは続く。 

 

また……北郷一刀では無く、別の者に力を貸したいと言う者が現れた。

 

果心「ほんとうに……不思議な世界だ事………ふすふす」

 

 

◆◇◆

 

【 生きていた…颯馬 の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて ?

 

颯馬を中心として、光秀と凪、愛紗、小太郎の周りを傀儡兵が固めた!

 

光秀「凪! 周辺の白装束を掃討して下さい!」

 

凪「はいっ!」

 

凪は集まっている傀儡兵達に向かい突進し、拳撃で討ち倒す!

 

光秀「愛紗! いつまでも腑抜けた様子を晒しているのです! 早く此方に! 小太郎! 貴女も早く!!」

 

小太郎は……まだ泣いていた。

 

小太郎「颯馬様が……居ない世界なんて……執着などありません! このまま力一杯闘い、颯馬様の後を追います!!!」

 

光秀は溜め息をついて……小太郎に言った。

 

光秀「………いい加減に分かりませんか? 本当に颯馬が死ねば、私や凪が冷静に対応できると思います!? 私だって……もしそうなれば……小太郎と同じ行動を起こしますよ。 ……自慢じゃありませんが………」

 

その言葉に……一拍置いてから……小太郎が大声で応えた!

 

小太郎「え……えぇぇぇ!!!!! ま、まさかぁぁ!?」

 

光秀「早くして下さい! とりあえず、ここを鎮静化しないと!! 理由は後で話しますから!!」

 

小太郎「うぅ〜! わ、分かりました! 私も加勢します!!!」

 

──────ザザザザザッ!

 

鹿介「光秀殿! 大丈夫ですか!!」

 

光秀「鹿介殿! いい所へ!! 白装束の掃討をお願いします!!」

 

鹿介「承知した! 山中鹿介! いざ、参る!!」

 

★☆☆

 

少しの間を置いて……辺りの傀儡兵は全滅した。 

 

周辺を見渡した後、鹿介が口を開いた!

 

鹿介「案外……あっけなかったようですな? しかし……何故、皆さんは緊迫した表情をしていらっしゃるのです!?」

 

そんな鹿介に、小太郎は……大輪の笑顔で応えた!!

 

小太郎「鹿介様! 喜んで下さい!! 颯馬様が、颯馬様が生きているとの事です!! 光秀様が……そのように!!」

 

鹿介「光秀殿! ……そ、それは誠に………?」

 

光秀「私や凪を見れば……一目瞭然かと」

 

光秀が冷静に応えると、鹿介は自分の頭を軽く叩き……自分の慌て振りを恥じた。 だが、疑問箇所も出てくるもので……光秀に問い質してみる!

 

鹿介「───やられました! しかし、颯馬殿に刺さる刃は、確かに身体を貫き通し、呼吸も心拍も止まっておいでです! このような状態では、普通助かる訳も無い筈ですが────!?」

 

その質問に応える為、光秀が颯馬に刺さる短刀を手にする。 思わず目を背ける幾人かの将達。

 

光秀「………今から颯馬に刺さる短刀を抜きます。 絶対に声を出さないように!! ……僅かでも手元を狂わせれば、颯馬は亡き者になりますので!!」

 

物騒な申し出に、全員口を一文字にして……様子を見守る。

 

「「「「「 …………………… 」」」」」

 

光秀「いきます! ────はっ!!」ズボッ!

 

 

 

颯馬「………ぐっ! はぁはぁ!」

 

『──────────!!』

 

短刀を引き抜くと同時に───息を吹き返す颯馬!!

 

思わず顔を見合わす将達!!

 

小太郎「そ、颯馬様!! 颯馬様!!!」

 

凪「小太郎様! 今は颯馬様の傷の手当てを! この出血では、本当に命取りへ成りかねません!!」

 

小太郎「わ、わかりました!! 颯馬様! 少し痛いですが我慢して下さいね!!」

 

颯馬「はぁはぁ! わ、わかった……うぐっ!!」

 

★★☆

 

颯馬の手当ても終わり………皆が辺りを警戒しながら喜びあった!!

 

鹿介「颯馬殿……! 良かった! 本当に良かったぁぁ!!」

 

小太郎「一体……これは……どういう事で………?」

 

小太郎の疑問は尤もな事。 颯馬は愛紗に刺された! それなのに、どうしてどうやって……あの状態で生きていられたのか? 

 

颯馬「光秀……頼む!」

 

光秀「分かりました……私も詳しくは知りませんが……少しだけ」

 

光秀は、寝ている颯馬の頭の傍に寄り添い、訳を説明し始めた!

 

光秀「………颯馬は分かっていました。 敵の策略が、颯馬と北郷一刀に絞られると。 久秀殿が、月様に洛陽攻めで漏らした言葉が気に掛かり、貂蝉から話を伺っていたようです……」

 

 

◆◇◆

 

【 颯馬の秘策 の件 】

 

? 洛陽 宮殿内客室 颯馬回想 にて ?

 

俺は、とある理由で貂蝉を呼び寄せた。 今回の話は、貂蝉と二人で話さないと意味が無いとも思っていたんだが。

 

この部屋は、宮殿内の客の控え室。 始めて、宮殿に通され月様達と入った部屋がここだったり、反董卓軍の裁判で北郷殿達を閉じ込めたのも、この部屋だ。 結構利用進度が多い部屋で重宝している!

 

貂蝉「あらぁ〜ん! 私と二人きりになりたいなんてぇ……期待していいのかしらぁぁん!」

 

颯馬「真面目に話をしたい。 ………月様より話を伺った。 久秀殿の背後に……別の大きな企みがありそうだな!」

 

貂蝉「………えぇ! 前に話をした『不定者』側の管理者が、久秀ちゃん達の背後に居て、この世界を崩壊させようと企んでいるのよぉ!」

 

颯馬「その条件……とは? この大陸に要石みたいな楔があって、そこを外すと崩壊するとか、あの月様の持つ銅鏡を破壊すると駄目だとか?」

 

貂蝉「前の外史は、ご主人様の存在が問題だったけど……今回の条件は三つ! 月ちゃんの所持している始まりの銅鏡、ご主人様……北郷一刀の命、そして……天城颯馬、貴方の命が失われた時なのよぉぉぉん!!」

 

颯馬「俺も……銅鏡に招かれた為、世界崩壊の楔を背負わされたか!」

 

貂蝉「ごめんなさい……ねぇぇ。 まさか……このような結果になるなんてぇ、私も後で気付いて………『いやっ! これでいい!』───えっ!?」

 

颯馬「悩んでも仕方が無い! それに、条件の一人が俺ならば……俺を餌にして策が組める。 他の者に……こんな危険な真似は出来ない!!」

 

貂蝉「ますます惚れ直したくなる男ねぇん! ご主人様を知る前だったら……間違いなくぅぅぅ………!」

 

颯馬「俺は! 光秀一筋だ!!」

 

貂蝉「そんな所もス☆テ☆キィィィ!!」

 

颯馬「と、兎も角!!! 俺と北郷殿で……一番交わる情報を探る! それに軍勢や交友関係、過去の出来事等、思い出す事を書き出す! 貂蝉! 竹簡と筆を貸してくれ!!」

 

貂蝉「ちょっと待ててぇん! あぁぁん! 違うモノ握ちゃたぁぁぁん!!」

 

颯馬「だからぁ!! そこから出すな! 手前の竹簡と筆を取れ! その前に手を洗ってこい!!!」

 

貂蝉「えぇ……何時も綺麗にしているのにぃぃん!!」

 

手を洗ってきた貂蝉から受け取り……色々と書き込んでいく…………!!

 

颯馬「──────────出てきた。 やはり『愛紗』だ。 過去の敵対行動、北郷殿への高い忠誠心、秀でた武力、それに……一番、俺に接している曹操軍側の将! 間違いなく、愛紗を利用して俺を殺しに掛かる!」

 

貂蝉「もしかすると、久秀ちゃんや順慶ちゃんの意見を聞いて、向こうの陣営に引きずり込むように画策しているかもねぇん?」

 

颯馬「どちらにしても、俺を殺すように仕掛けてくるはず。 愛紗を使えば、曹操軍の関与を疑われ……下手をすると内乱に発展する! そこを晋軍に突かれれば……義輝達が居ても壊滅の憂き目が! すると……月様も!!!」

 

貂蝉「そうすれば……勿論ご主人様もね? 邪魔者を全部消して、自分達は高見の見物。 多分……順慶ちゃんも久秀ちゃんも……生きては居ないわよ? あれほどの力を多様しているもの。 寿命も一年持つか持たないかも?」

 

颯馬「んんん……! 愛紗に攻撃を限定させて、俺を仮死状態にするような技とかないのか……貂蝉?」

 

貂蝉「手品みたいな事は……于吉ちゃんが見破るものね? 少し危険だけど、これを教えてあげるわぁぁぁん!」

 

颯馬「それは………?」

 

貂蝉「数ある外史の中にある剣術流派『一文字流斬岩剣』! これなら奥義『血栓貫』を使えば仮死状態になれるわよぉぉ!」

 

颯馬「す、凄い名前だな! しかも奥義か!?」

 

貂蝉「『この世に斬れぬ物は無し!』の流派よぉん! 勿論! この剣術使っても、月ちゃん達の絆やご主人様への赤い糸は切れないわぁあ!! それに、奥義と言える部分は観察眼なのよぉぉぉ!!」

 

颯馬「どういう意味だ?」

 

貂蝉「遣い手の身体の中で、重要器官を全部見抜き、そこを外さなければならないの! でないと……ただの自殺になっちゃうからなのよぉん!」

 

颯馬「じゃあ……無理……」

 

貂蝉「大丈夫! わ☆た☆し☆が……見て確かめて上げるぅぅ! はいはーい、上着を脱いでぇん! 裸じゃないと確認できないわぁぁん!!」

 

颯馬「お、お手柔らかに─────!!」

 

◆◇◆

 

【 颯馬の預けた秘策 の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて ?

 

光秀「…………と、こんな技を利用した秘策だったんです!」

 

鹿介「ちなみに──────存じている方は?」

 

光秀「提案者の颯馬と教授した貂蝉は別として、愛紗、私、凪、信廉殿の六人ですよ! 先に申し上げますが、本来……私達にも秘密だったんです。 それが……その……ちょっと、私が慌ててしまいまして………」

 

凪「凄かったです。 天城様が弁明しているところを平手打ちで……」

 

光秀「や、止めて下さい!! あ、あれは勘違いでぇ!!」

 

小太郎「…………勘違いで颯馬様を叩き、秘密を漏らすように強欲したんですかぁ!! 幾ら正妻と言えど、やって良い事と悪い事があるが……!?」

 

鹿介「暴力を振るうのは…私も納得いきません! しかし、事情を知っている筈の愛紗が……何故これ程取り乱すのです? 貴女も武で生きていた武人だでしょう! 人を斬る行為に、これ程まで狂乱する筈が!?」

 

愛紗「わ、私も刺した後……演技をしようと思いましたが……今まで味わったことが無い身体の感触に戸惑い、何故か心が苦しくなって………面目次第もありません…………」

 

その場の全員が思う。 

 

『早く返さないと……また一人『恋する乙女』が増える。 これ以上は駄目、絶対駄目!!』

 

??「成る程───そんな事でしたか!」

 

全員が……声をした所を注目すると……于吉と傀儡兵数千人が立っていた。

 

★☆☆

 

鹿介「某達が話をしていても、決して警戒を怠った事は無いのに……!」

 

于吉「私の妖術の前には無意味ですよ! 遺体を回収しようかと思えば……まんまと騙されました。 ですが、この人数で、そちらの人数で対応できますか? まぁ、対応されては困るのですが……。 私も結構忙しい男でして!」

 

光秀「何度見ても不快な顔です! 私達が颯馬を見捨て逃げると思うのですか? 私達は……少なくとも私は、颯馬を残して逃走するなどしません!」

 

小太郎「ちょっと! そこでどうして貴女ばかり強調するんですか! わ、私も残ります! 颯馬様のお嫁さんである私が、夫を残して逃げる尻軽娘だなんて……思われたくありません!!」

 

凪「私も天城様には身命を捧げています! そこで外されるのは……非常に『異議アリ』と申し上げます!!」

 

鹿介「某もそうです! 勝手に外さないで下さい! でも、愛紗殿は逃げて下さいね! 貴女は部外者! 今から逃げれば……北郷殿や曹操軍の皆さんと合流できます。 皆さんも、帰りを待っていますから!!」

 

愛紗「いえっ! この場所で退くなどしたら……皆に何を言われるか!! 緊急存亡の時、私も最後まで踏みとどまります!」

 

于吉は口を三日月の形に変えて……嗤う。

 

于吉「………誰も逃がしません。 天城颯馬が生きているのは、ここに居る全員知っているのですから! まぁ、一人居ませんが……ここに居なければ問題などありません!! 合流される前に倒せば……それでいいだけですよ!」

 

『……………………!』

 

颯馬を囲み、将達が円陣を組む! 誰一人も……天城颯馬の為に死を覚悟を決めた! 颯馬は、ふらつきながら起き上がろうとするが……光秀に制され寝たまま。 声も出せる状態でなく……衰弱も激しい! 

 

まさしく……絶対絶命の危機だった!!!

 

于吉「さて! それでは───やぁ!!」

 

『ちょぉぉおとおぉぉ───待つでぇ御座るよぉぉぉ!!!』

 

于吉が背後の傀儡兵に命令を与えようとした時、鶏洛山の砦から……大音声が挙がった!!

 

★☆☆

 

鶏洛山の砦から、一人の将が飛び出した!

 

忠勝「本多平八郎忠勝! 只今───推参!!! でやぁ!!」

 

傀儡兵「──────!」

 

忽ち(たちまち)、傀儡兵の中に飛び入り暴れ廻る!!

 

ーーー

 

于吉は………信じられないような顔をしている!

 

于吉「な、なんですかぁ!! そこも私達が占拠した場所です! 万が一に備え二万の傀儡兵を出現させて守備しておいたのに!!!」

 

義輝達が出て行った後、于吉は砦を占拠した。 また、逃げて籠城されても困る。 新たな傀儡兵を呼び出し、守備につかせたのだ。

 

華雄「すまんな………。 お前の野望を阻ませて貰う為だ! 私達が背後の山背から攻め込み、一人残らず討ち取った!!」

 

于吉「あ、あれだけの兵を────────!?」

 

稟「そう何回も……私達を出し抜いて貰っては、沽券に関わります!」

 

風「…………………ジィ〜。 松永さんは居ないようなのですねー!」

 

鶏洛山砦から……華雄、稟、風の三人が数万の兵を引き連れ現れる!!

 

于吉「そんな事はありません! 洛陽には兵士は留守部隊しかいない! 予備兵など居るわけが無い!! わ、私が何回も確認したです!! 間違いなどない!!」

 

于吉は、水晶球を使い何度も確認していた。 敵の兵力の数値を!!

 

失敗すれば、此方の予定が狂うのだ。 だから……執拗に何度も何度も!

 

風「にゅふふふ! ですが……居るんですよね〜?」

 

風はドヤ顔で背をそり返る。 

 

稟「何進大将軍や陛下の嗜好品を売りさばいて金に換え、その金で傭兵を雇ったんです! その数……約三万!!」

 

華雄は、金剛爆斧を────于吉に向けて言い放った!!

 

華雄「そいつ等を引き連れて、戦場に来てみれば……この有り様! だから、お前達の見えない場所から攻め込んだって訳だ!! いい加減、観念するんだな!」

 

だが、于吉に余裕があった。 

 

自分達の兵力は、洛陽軍より遥かに多いと!!

 

于吉「………観念? 馬鹿な事を! 私達の方が、まだ兵力数は上なんですよ? 総勢百三十万の軍勢に対して………たかだか三十万少しに三万の援兵! この差を────どう埋めるのですか!?」

 

しかし、稟達には不安は無い! 既に策は発動している!!!

 

稟「────聞こえませんか? 北側から人馬の進撃音が!」

 

風「南から聞こえませんかね〜! 勇猛な兵士さん達の怒声がー!」

 

微かに聞こえる『異質な音』に、于吉の顔が青ざめた!!!

 

于吉「──────ま、まさかぁ!」

 

華雄「我々の援軍だ! 第一陣、六十万の援軍がな!」

 

于吉「そんなぁ─────馬鹿なぁぁぁ!?」

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

これが………颯馬の秘策となります。

 

よくあるパターンですけどね。

 

皆様の予想は……どうでしたでしょうか?

 

明日から忙しくなる為、急遽……書き上げ投稿致します。

 

話は……もう少し続きますので、次回も宜しくお願いします。

 

 

説明
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
10/20 果心の会話や左校の会話を修正しました。
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コメント
Jack Tlam様 再度の診断ありがとうございます! 順慶「やはり、私の方が颯馬様に相応しいのですわ!」 久秀「……自己愛でも何でも言いなさい。 久秀は……久秀には……颯馬が必要なの。 颯馬じゃなきゃ……駄目なのよ………」(いた)
↓愛情だとは思います。人間の感情の根源は愛情と言われていますし……それが根底から「他者への愛」なのか、根底が「自己愛」かで評価が変わってくるでしょうけどね。久秀は自己愛が過ぎる御様子。他者をモノ扱いして憚らない人間て、得てして自分を愛しすぎているか、自分しか愛せないような人間であることが非常に多いんですよね。(Jack Tlam)
お二人の意見を二人に見せたら……。 これも愛情ですかね?(いた)
順慶「違いますわ! 一人の殿方の為に献身的に尽くす事が……どれだけ幸福か。 愛する殿方と……ずっと傍に居る事……。 ああぁぁぁ───順慶は、順慶は……幸福感で一杯になりますわ!!」(いた)
久秀「あらっ? 愛情表現が一つだけだなんて……誰が決めたの? 久秀みたいに手管替えつつ可愛いがってあげるのも大事。 久秀の愛情は、押し付けるんじゃなくて……相手から請わせるの。 身体が疼いて、久秀に頼み込むんでくるようにね」クスクス(いた)
つまるところ、相手に対して夢を見なくなったら道筋は見えるでしょう。劉備軍は一刀に夢を見過ぎ。だから批判が多いんだと思います。お姉さま方は別にしても……相手への配慮を十分に、というには彼女たちは若すぎるかもしれませんけどね。(Jack Tlam)
↓↓言ってることはなんかぶっ飛んでいるが、内容自体は正論ですね。相手を不快にさせては……それも愛情ではあるのでしょうがね。愛とは与えるものとは言いますが、まず相手の在り方をちゃんと受け止めないと本当の愛情には発展のしようが無いわけです。そうじゃなきゃ、ただの押しつけです。『真』の華琳が人気高いのはそのあたりに理由があると思います。(Jack Tlam)
朱里「ごしゅ……じゃなかった……一刀さんが嫌がる事をする方が変です! 絶対変です!!」 雛里「す、凄いぃ! 朱里ちゃん完璧な理論武装だよぉ!」 桂花「……アンタ達の行いも……一刀が悲しむって知っての発言?」 『!?』 (いた)
貂蝉「あらやだぁ! ご主人様のキュートで可愛いお尻は私のモノぉよぉぉ!」 朱里「はわわわぁ! わ、私達が書きたいと思うのも、愛情表現なんだよ!」 雛里「あわわわぁ! これで免罪符を手に入れたね!」 (いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 秘策の第一段階が颯馬の生還。 第二段階が次回となります。 ごり押しですが。(いた)
そうですか、やはり生きてましたか。そして遂に秘策の発動…続きを楽しみにしています。(mokiti1976-2010)
天の御遣いは……最終的には天に帰る結末が多いと思う作者の実感です。 魏のエンディングもあまり好きじゃないんですよ。 天の御遣いの肩書きは、国を揺るがす事が出来る両面を持つ物だと……考えています。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 念を入れまれましたら、光秀が止めに入り……即座にバレます。 ネタバレ厳禁です。 今回は……貂蝉の色気を入れてみました。 なんてモノを書くんだと……文句が来そうですが。(いた)
tenryu様 再コメントありがとうございます! 好きには好きですが、この作品には使えそうな設定だけ取り入れています。 どちらかと言えば……設定はJOJOの方が多いです。(いた)
Jack Tlam様 再コメントありがとうございます! ……確か看板の件はした気が……。 『天の御遣い』は……世界各地に類話があります。 『かぐや姫』『羽衣』『とある英雄』……天から来た者は天に帰る……その事がゲームに反映されているかもしれません。 優れ過ぎる者は秩序を破壊する……だから天に戻す。 そんな懸念もあるのかも。 (いた)
もしかして、男塾ファンですかwww(tenryu)
↓そうですね、悩める姿を見てみたいものです……一刀自身の意志を無視して戦乱の世に立つための立て看板にした罪悪感に悩むとか。恋愛で悩む前にまずそっちで悩んで一刀と対話すべきでは……もうしたっけ?『天の御遣い』という存在に関しては、原作が発売されてから数年経過した今でも疑問が尽きません……外史の主人公という以上に、何かとても不幸な存在意義を背負わされているような気がします。(Jack Tlam)
Jack Tlam様 コメントありがとうございます! まだ、症状は軽めですので……颯馬の仲間が丁重に送り届けてくれるでしょう。 二人の男をどちらを取るか愛紗次第? 捨てられてしまうのか……一刀は!? そんな展開はか書く予定はありませんが……偶には、嫉妬軍神の悩める姿を見てみたいモノです。(いた)
まさか、愛紗め……あれだけのことをやっておいて、颯馬に……!?仕方ないことなんでしょうが、これは決戦よりも重大事かもしれないと感じる……ま、相手ははっきり意思表示してるから行き過ぎることは無いでしょう。一刀がちょっと他の女性と話をしているだけですぐに偃月刀持ち出して暴力を振るう嫉妬軍神も、相手の意思表示がしっかりしていれば現れない筈。(Jack Tlam)
tenryu様 コメントありがとうございます! ネタとして思いついたの一年前、この作品の二話目です。 因みに……星の戦いも男塾からですよ! (いた)
もしかして、男塾の民明書房刊でも呼んだなww(tenryu)
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