熾天使外伝 獅子と玄武の邂逅
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熾天使外伝 獅子と玄武の邂逅

 

 

「さて、目標の研究所は…マップ情報から見ても、あれですね」

 

黒い髪に黒い瞳、黒いバリアジャケットと言う黒尽くめの少年は自身のデバイス『レオーネ・フォルティス』に送られてきたマップ情報を閲覧して一人ごちる

 

「あんなに大規模な研究所…バックはやはり管理局ですね。人体実験ですか…!」

 

黒尽くめの少年―ウルは怒りに燃え、血が滲むほどに拳を握る

実はこの少年、自身も数日前まで違法な研究所にとらわれ、実験体とされていたのだ

そこで行われたのは人道に憚る悪魔のような実験

投薬、人体解剖、人体改造、エトセトラエトセトラ…およそ人が思いつく限りの実験が行われたのだ

研究所を潰したところを運良く『とある組織』に拾われ、今こうして研究所を襲撃する立場に居るのだが…

まあそんな訳で、彼が人体実験を憎む理由は分かっただろう

 

「そんな義憤に燃えていても仕方が無いでしょう、ディアーリーズさん?貴方が今行うべきは任務の遂行ですよ」

「…分かっていますよ、竜神丸さん」

 

そんなウルに話しかけてきたのは、白衣に身を包みタブレット型の端末を持った人物だ

彼はコードネーム『竜神丸』。本名は今のところウルには知らされていない

ディアーリーズと言うのもウルが使うコードネームだ

竜神丸はウルを違法研究所から拾った一人で、組織の幹部の様な立ち位置にいる

その性格を一言で現すとしたら『マッドサイエンティスト』が一番適当だろう

研究至上主義、と言い換えても良いかも知れない

とにかくあるウィルスを使った研究が大好きで、人間の命など自分と組織のリーダー以外に微塵も興味が無いのだ

 

「…?竜神丸さん、なにかおかしく無いですか?」

「研究所ですか?そうですね、警備の人間やガードロボが見当たらないこと以外は、特に何も」

「それですよ!こういう所が警備を怠るなんて考えられません。考えられる可能性としては…」

「既に何者かが潜入している、ですかね」

 

その可能性に気付いた瞬間、ウルは考えを巡らせる

その潜入した者の人数は?

―大規模な破壊を行っていない、研究所内部から戦闘音がしないことから少人数と見ていいだろう

では、目的は?

―僕らと同じように、施設の破壊か殲滅。もしくは研究データの強奪

その場合、実験体たちはどうなるだろうか?

―連れて行っても足手まといになるため、放置もしくは殺害―!!

 

「竜神丸さん、先に行っています!」

 

瞬間、ウルは脚に気を集中させ高速移動する歩法『瞬動』で研究所の裏口に移動する

 

「…おやおや、血気盛んなことで」

 

それを見た竜神丸は口角を吊り上げ、何かを企んでいるような黒い笑いを浮かべたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだ、この破壊の後は…」

 

先ほど敵を少人数と見積もったのは誤算だったかもしれない、と呟く

なにせ研究所の内部は破壊されつくしているのだ

コンピュータや実験体を入れるであろうカプセルは、何か高熱の弾丸でも撃ちこまれたかのように融解している

研究所の所員たちや人体改造されたであろう実験体たちは、切り裂かれたり大口径の銃で撃ち殺されたりしていた

 

「これは…この傷は、僕の『((燃え盛る紅蓮の炎剣|レーヴァテイン))』と似た傷だ…。相手は一体…」

 

ウルのオリジナル魔法『燃え盛る紅蓮の炎剣』は高温の炎によって大剣を形作ると言うものだ

その特性上、切った傷は焼いて塞がれ血は一滴も流れ出ない

それと同じような傷が、切り裂かれた所員たちには有ったのだ

 

しかし考え込んでいる時間が有ったのならば、彼は進むべきだったのかもしれない

ウルの進行方向、実験体たちの檻がある場所から轟音が響く

 

「ッ、何だ!?」

 

またも轟音

どうやら先の侵入者と何者かが戦闘を開始し、研究所の防衛機構が働いたようだ

そして同時に、自壊機能までも

 

「今度は一体何なのさ!」

 

研究所の内部にアラートが響く

続いて危険色のランプが壁からせり出し、内部の人間に避難を促す

ご丁寧にカウントまで表示されているところを見ると、研究所は自爆機能を搭載しているようだ

 

「クソッ、このまま中にいるのは危険ですね…。仕方ない、ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト…」

 

内部にいるのは危険と判断したウルは、影を利用した転移魔法によって研究所の外へ脱出する

いまだ戦闘音は鳴り響いており、戦闘の舞台は外へと場所を移したようだ

 

「まったく、散々だよ…」

 

ぶつくさ言いながらもウルは戦闘が行われているであろう場所まで移動する

そこで彼が見たものは―

 

「え―――ロボッ、ト…?」

 

 

 

 

 

 

 

―ライフルと光の剣を構え、ガードメカと戦闘をする人間大の白き機体だった

彼は後から知る事になるが、この機体の名前は『RX-78-2 ガンダム』と言うようだ

白、赤、青のトリコロールカラーを基調としたロボットはどこかヒーロー然とした格好良さを醸している

だが、そのロボットの足元には血を流して倒れている子供達が見え、さらにガードメカの背後にもいやに無表情な子供達が数名立っていた

 

「…まさか!!」

 

ウルが危惧した途端、ロボットはその堅牢な足でもって自身の足元に倒れていた、一人の子供の頭を踏み潰した

 

「ッ!!」

 

ロボットの足に粘着質な赤い液体がこびり付くが、それを意にも介さずガードメカに突撃する

そしてガードメカを光の剣で切り裂き、その凶刃をまだ生きている子供達にまで向ける

 

「さ、せるかぁぁぁ!!!」

 

ウルはその光景を見ると、すぐに行動に出た

右手に『燃え盛る紅蓮の炎剣』を発動、瞬動でロボットと子供達の間に割り込んだ

突然の乱入者にロボットが僅かに戸惑ったようだった

 

「一つだけ聞きます…。あそこで倒れている子供達、彼等を殺したのは…貴方ですか?」

 

ロボットは黙して答えない

しかし、返事の変わりにライフルと光の剣を構えた

それに対応してこちらも炎剣を構える

 

「もう一度聞きます。そこの子供達を殺したのは、貴方ですか?」

『否定はしない』

 

エコーが掛かった声で返事が返ってきた

そう言えば、傭兵時代に機兵の噂を聞いたことがあると、ウルは場違いにも考えた

曰く、『悪鬼』。何種類もの機兵に変化し、相手を容赦なく殲滅することから付いた通り名だった筈だ

 

「(ならば別の姿に変化させる暇も無く、ここで潰す!)」

『一応言っておくが、その子供達は((合成獣|キメラ))だぞ?』

「貴方の言っていることは信じられませんね。第一、証拠が無いじゃないですか」

 

信じていない演技をしながらも、ウルの内心は驚愕していた

何故なら、管理局の研究者達は子供を実験材料にすることに何の躊躇いも覚えない

中には良心的な研究者もいるが、そう言う者は左遷されるか、クビにされるか、闇に葬られるか、だ

 

『うん、まあ証拠は無いな。研究所からデータを抜き出してこなかったからな』

「御託はもう良いです。…そろそろ、死んでもらいます」

『短気だなぁ…』

 

炎剣を振りかぶり、ロボットに向かって袈裟懸けに斬りかかる

そんな大振りの攻撃があたるわけも無く難なく回避され、反撃にその金属の重い脚による蹴りを放たれる

その蹴りを前に倒れこんで姿勢を低くして回避し、そのまま突進する

ロボットは頭部に備え付けられているバルカンを撃ち、距離を離した

 

『…若いな』

 

ロボットがぼそりと呟いた

ギリギリ聞き取ったウルは、ロボットの次の行動に目を疑った

ロボットはウルが傍を離れ、狙いやすくなった子供たちにライフルを向ける

ようやくロボットの意図に気付いたウルは駆け出す

が、それよりもロボットが引き金を引き、光の弾丸が子供たちを吹き飛ばしていく方が速かった

 

炎に包まれて、燃えていく子供たちだった残骸

その燃えカスを手に、ウルは激昂した

 

「なん、て事を…。…なんて事をしたんだ!!!」

 

―もう、遠慮は要らない…。大技で、研究所諸共吹き飛ばす!!

 

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト…」

 

ウルは自身が扱える上位古代語魔法、その得意とする属性の魔法を選択する

全てを切り裂き、薙ぎ払う暴風の魔法を

 

「契約に従い、我に従え風の帝王!来たれ全てを巻き上げる凄烈なる暴風!吹き荒べ!巻き上げよ!轟々たる滅びの風神!『((永久の烈風|アペイロン・プレーステール))』!!!」

 

詠唱を終え魔法を発動した途端、ロボットの体を全て飲み込みまだ余裕があるほどの巨大な竜巻が発生した

 

―あの中は真空の刃が乱れ飛ぶ空間、いかに機械の体とはいえ、破損は免れない

 

 

 

ウルが勝利を確信した、そのときだった

 

 

竜巻を強引に突破し、中から飛び出てくる一つの機影

 

先ほどのロボットとは似て非なる姿

赤いV字型のアンテナ、黒と白を基調として随所に赤と黄色をあしらったボディ、背中のウィングバインダー

それも後に知る事になる『CAT1-X1/3 ハイペリオン』と呼ばれる機体の姿だった

 

「なッ!?」

 

目を見張って驚愕する

驚きによって体が硬直した隙に、相手はウルを蹴り飛ばした

重い金属の塊をぶつけられたのと同じような蹴りは、少年の体躯であるウルを吹き飛ばすには充分な威力を持っていた

吹き飛ばされ地面に着地すると同時に、ウルの体が光に包まれる

 

「(な、これは…竜神丸さんのテレポート)」

 

それ以上思考をする時間も無く、ウルは竜神丸の元へ強制的に転移させられた

転移先で竜神丸の顔を見た途端、ウルは食って掛かる

 

「竜神丸さん!何で僕を転移させたんですか!まだ勝負は付いていなかったのに…!」

「いえいえ、あのままだとお二人とも、強制的に勝負を中断させられていましたよ。…管理局によってね。見てみますか?彼と管理局の戦いを」

 

ズイ、と竜神丸がタブレットを突きつけてくる

渋々と受け取ると、その画面にはまたも先ほどとは違った姿に変化した『悪鬼』と管理局の魔導師達が対峙していた

 

『エクシア、目標を駆逐する!!』

 

青と白を基調としたスマートな体型、黄色いV字のアンテナ、背中のコーン型スラスターとそこから溢れ出る緑色の粒子

『GN-001 ガンダムエクシア』が管理局の魔導師達を次々と切り払っていく

右腕に装備された巨大な実体剣と、肩裏から抜き放ち左手に装備した光の刃で次々と魔導師を屠っていく

 

数分後には、魔導師達の屍の山が積み上がっていた

 

「な、何なんですか、彼の強さは…一体」

「あの人―げんぶさんは私達の『旅団』のナンバーズ。貴方のセンパイですよ、ディアーリーズさん」

 

驚愕の事実に硬直し、気付いたときには竜神丸と共に『旅団』の本部、((楽園|エデン))に転移していた

戦った相手が実は同じ組織に属していたことは相当にショックが大きいのか、未だに呆けてしまっている

 

そこに目が細い坊主の若干強面の青年が転移してきた

 

「彼がげんぶさんですよ、ディアさん」

「え、あの人が!?」

「ええ、それに彼は若干短気でして…。味方に襲われたとなると相当に不機嫌でしょうねぇ」

 

さぁっと血の気が引くウル

彼は凄まじい速さでげんぶの元へ行き、綺麗な土下座をして謝罪をするのだった

 

余談だが、エクシアで魔導師を次々屠っていくげんぶの戦闘力に憧れ、ウルは度々模擬戦を申し込むようになったという

 

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こういうコラボは初めてなので、結構書き方が難しかったです…

説明
これは今書いている『運命の獅子』の主人公が本編の後、体験する話です
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コメント
旅)〜♪(竜神丸)
そこはほら、竜神丸さんの場をかき乱す嘘ですよ(ディアーリーズ)
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