超次元の外れ者・リメイク |
「男達の作戦会議」(ユウザ:11歳)
僕がハイマ……姉さんの弟となり、レッドチェッカーズの一員になってから月日が経ち、徐々にグループにも溶け込んでいった。
最初はグループ内の一部の人たち、入学したての僕に絡んできた人たちの接し方がよそよそしい……と言うより気まずそうだったが、時間が解決してくれた。
ハイマ……姉さんも今は立派な中学生、中学からの勢力拡大を本格的に進めているようだ。
そして僕は心の中に出来た空洞を埋める手がかりを模索しつつ、一先ずはグループの一員として強くなる為に努力している。(……けど何故か今だに敵の一体も撃退どまりになってしまっている)
(央共学園空き部屋/レッドチェッカーズ・アジトの一室)
「……所でよぉユウザ、入団してっから一週間に一回姐さんに召集受けてるじゃねぇか」
「あ、ああ……うん……」
「あん時何されてんだ?」
ある日の事、グループの一員であるゴーレムの((岩三|ガンゾー))に疑問を投げかけられた。
入団してから、僕は一週間に一度のペースで放課後、ハイマ……姉さんに招集をかけられている。
理由は分からない。ただアジトの一室で二人きりになった後、催眠魔法で寝かされ、夕方に起こされて真っ直ぐ家に帰って食事を摂って十分に寝るように言われて別れる……と言う流れだ。
ただ別れる時のハイマ……姉さんの顔が妙につやつやしているような……
「なん……だと……!?」
その話を聞いてガンゾーは驚愕し、グループのメンバー数人を招集し、会議を開いた
「――これより、姐さんが週一ユウザでナニやってるかの解明会を開く」
……何だか大変な事になった。ちなみに僕は隅っこでちょこんと座っている、邪魔にならないように。
「先ずは今日、ユウザに聞いた事だが……」
先ずガンゾーは、僕が話したことを要約して説明する。
すると皆「なん……だと……!?」とガンゾー同様のリアクションをハモりで摂った。
「そう言えば彼が入団してから、うちのリーダーが【発作】を起こした所を見た事無いな……まさか……」
機械種(所謂ロボット)の((105式|トーゴ))は【発作】と関係付けをした。
ハイマ……姉さんは偶に人格化した吸血種の力に飲まれ、身体の主導権を乗っ取られてしまうことがある。
グループの皆はこれを【発作】と呼んでおり、実は僕と戦った時にも起きていた。
口調が変わり、敵味方構わず殺したいだけ殺し、壊したいだけ壊そうとする破壊衝動の塊。
けが人は多数だが、乗っ取られた時でもハイマ……姉さんが必死に抵抗して抑え込めていた為死傷者は未だに奇跡の0人らしい。
皆もクエスト中に意外としょっちゅう見たことがあるらしく、見られなくなってからは嵐の前の静けさではないかとささやかれていたという。
けど考えて見れば皆は良く見たことあると言う【発作】、僕が見たのはあの時の一回きりだったような……
「そう言えば姐さん、何か最近色っぽくなってねぇか?」
鳥人種のトンガはふとした疑問を投げかけた。
普段は投げかけても此処にいる誰もが相手にしない((疑問|モノ))だったが、様々な疑惑が飛び交い、想像力を働かせるこの会においては別だった。
憶測が憶測を呼び、その殆どがいかがわしいものとなり、男達の妄想が集まり交わり混ざり合い、遂にその虚妄を真相と錯覚してしまう結果となった。
その結果、結論は、姉さんの性格や立場、種族的な性質とどう照らし合わせても有りえないものだったが、皆は聞く耳を持たない程盛り上がっていた。
「……そんなわけで、『姐さんはユウザのDTを既にゲット済みである』という真相が明らかになった今、俺達がやるべき事は一つとなった……盗撮だ」
「任せろ、俺のスコープで余裕の精密写げ……ってしまったぁぁぁ……」
「どうしたんだよ、トンガ?」
「俺、鳥目だから暗い場所はちょっと……」
「そうだった……!((鷹の目|ホークアイ))だけにそうだった……!」
わいわいがやがやと騒ぎまくる思春期男子達、同じ男なのに一人取り残されてる僕。
日が暮れるしそろそろ帰りたいと思った((瞬間|トキ))……
「その件……俺に任せちゃくれないか?」
グループの参報役、支援特化型の機械種、トーゴが立ち上がった。
トーゴが取り出したのは、浮遊する複数の小型カメラだった。カメラビット((105式|トーゴカスタム))……というものらしい
確かカメラビットはレンタルで支給される物が主流で、学生じゃとても手が届かない筈の物である。
自分で一から作ったにしても、設計図も材料もどこから仕入れて来たんだか……
「以前、隠密依頼をした時にレンタルのカメラビットを支給されてな、滅多に扱えるものでも無し、使えるガラクタで自作しようと予め構造を読み取っておいたのさ」
「作るの大変だっただろ?」
「製作も支援の内だ、この程度作れないで何が支援特化型か」
「相変わらず器用だな……」
トーゴはあらゆる意味で支援のプロだ。
戦闘では援護、勉学ではアドバイス、受験ではティーチング、スポーツではコーチング、悩み事等ではカウンセリング、食料ではクッキング等、とそつなくこなす事が出来る。
その能力の高さと万能さ、更にそれらを活用したことで生まれ、培われたグループの信頼も人望も厚く、ハイマ空も一目置かれる彼は、実質的なナンバー2である。
だがそんな彼にも弱点がある。それは……
「では作戦のミーティングと行こうか、この作戦が成功したら、撮った映像を見て真実を――」
彼が立てたフラグの回収が異常なまでに早い事だ。
ズシャァッ
「「「トォォォォォォォォォォォゴォォォォォォォォォォォ!!!」」」
いざミーティングを始めようとした瞬間、トーゴは背後から長物で貫かれ、その場に倒れた。
「しっかりしろ!おい!」
「大丈夫だ!コアには傷一つない!」
「くそ……俺達の仲間になん……てぇ?」
皆は驚いた、僕も驚いた、『何時の間に入って来たんだこの人は』と僕等は思った
トーゴを刺したのはなんと……今にも怒りが有頂天なのが見ても分かる……姉さんだった
「あ……あ……姐さん?」
「随分と楽しそうだねぇ……?アタシも混ぜてもらおうか」
凶悪な笑みを浮かべる姉さん、怯える思春期真っ盛りな男達、今の内にとそそくさと部屋から出て全速力で帰宅する僕
その後に起きたのは一方的な蹂躙、残ったのは男たちの屍の山なのは言うまでもない。
だがしかし、男たちの、真相の解明という名の野望はまだ終わってなかった。
……そしてその野望に、必然的に僕は巻き込まれる事になる。
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