紫閃の軌跡
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依頼を報告して集合場所で合流し、目撃情報と昨日の違和感を覚えた場所―――『ルナリア自然公園』の前に辿り着いた六人。すると、その門には頑丈な錠が付いておりどうやらこの錠前を壊さないことには先に進めないようだが、下手に大きな音を立てては気付かれる可能性があるだろう……

 

すると、リィンがそれを壊すと言ったので離れると……リィンは抜刀術の構えから刀を抜き放つと、門を一切傷つけることなく、綺麗に錠前を斬ることに成功した。

 

「ふぅ……失敗しなくてよかったよ。」

「四の型の初伝『紅葉斬り』……稽古をつけた二年前よりも、結構上達してるじゃないか。」

「そりゃあ、まあ……あんな修行を課せられたら、嫌でも上達するよ。アスベルが国に帰ってからも剣術の基礎位はやっていたから。」

「どういう修行なのだ?」

「落ち葉連続百枚斬り。俺の時は倍の千枚連続とかやらされたが。」

「せ、千枚って……」

「私でもせいぜい百枚が限界なのだが……兄上あたりならば出来るやもしれぬな。」

(((いや、何かがおかしい気がする………)))

 

落ちてくる葉を斬るというのは至難の業だ。葉の軌道を読み、空気抵抗を極限まで削り、振るう速さを先鋭化させるという修行をこなす必要がある。アスベルの場合、エイフェリア島をはじめ、リベールの各地を徒歩で移動しつつ修行のノルマをこなす荒行を受けたことがある……流石に、海を渡る際は船であったが。まぁ、その修行のお蔭で大抵の事は慣れてしまった。その会話を傍で聞いていた後衛組の三人は常識離れしかけている前衛組に対して冷や汗が流れた。

 

何はともあれ、自然公園の敷地内に足を踏み入れ探索を開始する………少し込み入った場所にくると、何か光るものを見つけたアリサがそれを拾い上げた。

 

「これって……」

「知っているのですか?」

「うん。ハインツって人が売るはずだったもののサンプルを見せてもらったんだけど、それと同じものなんだ。」

「この場所は、我々が立ち入った際には外部からの人間を遠ざけていたはずだ。無論、あの商人とて例外ではないだろう。」

 

一般人が入れなかった場所に商人が売るはずだった商品がある……最早確定的だろう。慎重かつ迅速に進んでいくと、奥に話し声と人らしき気配を感じる。

 

「……奥から気配を感じる。」

「みたいだな。ざっと四人程度か……素早く鎮圧するぞ。銃なんか使われたら面倒だし。」

「銃を持った相手に臆せず飛び込めるアスベルが言えた台詞じゃないんだが……」

 

別に好きでこうなったわけではない。あの親父絡みだと色々苦労させられる羽目になったのは手で数えきれないほどだ……とうに諦めて受け入れることになったが。経験自体は無駄ではないにしろ、そういった気苦労を自分や“妹”、“弟”もしてきたのだから。

 

「………」

「アスベル?どうかしたのか?」

「いや……何でもない。」

 

あの父親にして自分ありとは言うが……父親の“女泣かせ”を弟が受け継いでいることに、妹に対して同情を禁じ得ない。それはさておき、六人が武器を準備した上で最奥部―――そこにいたのは、先日門の前にいた連中と同じ格好の人間。そして、大量の箱。その一部がこぼれ、中には加工食品やら装飾品やら……間違いなく盗品だろう。

 

「なっ!?」

「ガキだと!?門には鍵をかけていたはず……」

「あれで用心したつもりだろうが……甘い。一気に制圧するぞ。」

 

突然の来訪者に慌てる連中。その隙を逃さず、一気に詰めよって制圧する。流石に手練れがいるということもあって苦労することなく制圧に成功する。彼等に事情を聞こうとしたその時、

 

「え?」

「エリオット?」

「この音は……笛ですか?」

 

微かに聞こえた笛の音―――エリオットとステラがそれに気づいたのち、聞こえてくるのは雄叫びのような音と振動……明らかに、こちらに近づいてくる。だが、それは単独ではない。自分らが通ってきた道からも振動が聞こえ、アスベルがそちらを向くと、この公園のヌシ―――グルノージャであったが、更に奥から出てきたグルノージャとは異なり全身が黒く、更には黒い瘴気の様なものを纏っている。しかも、見たところ黒き瘴気を纏っている方が強いという印象を感じた。

 

「えええっ!?」

「(どういうことだ……)リィン、そっちは任せる。」

「アスベル、私がサポートに入るわ。」

「……ああ、頼む!」

 

アスベルはARCUSでアリサと戦術リンクを結び、リィンとエリオット、ラウラとステラでも戦術リンクを結ぶ。この状況では、場合によって出し惜しみをしている余裕はないだろう……少なくとも、未知数の敵がいる以上は。

 

「……ふう、解ってはいたことだが、苦労を買って出た話じゃない……少しばかり、怒ってるんでな。覚悟してもらおうか。」

 

アスベルが構え、剣を振りかざす。黒きグルノージャはそれを臆することなく受けつつ、彼の背後にいたアリサに対して攻撃を加えようととするが、彼の眼前に姿を見せたのは、先程攻撃をかけたはずのアスベル―――躊躇うことなく横に薙ぎ、目に対してダメージを負ったグルノージャはもだえ苦しんだ。

 

「食らいなさい―――ファイアッ!!」

 

続けざまに放たれるアリサのクラフト『フランベルジュ』。ダメージ自体はそれほどではないにしろ、矢を通した炎傷効果により、こちら側への優位を引き寄せることが出来た。それに対してグルノージャは拳を乱雑に振りかざす。

 

「ちっ!」

「きゃっ!!」

 

こればかりは流石に多少なりともダメージを負うが、

 

「みんな、元気を出して!!」

「済まない、エリオット。―――はああああっ!!」

「ありがとう。―――ARCUS、駆動!」

 

エリオットの『エコーズビート』によって回復効果を得た二人はすぐに体勢を立て直し、アリサはARCUSを駆動させてアーツの準備を行う。それを知ってか知らずかグルノージャの方も咆哮を上げ、自らの身体能力を向上させる。アスベル自身は問題ないにしろ、戦闘経験がまだ少ないアリサに無茶はさせられない……意を決して、抜刀術の構えを取り、意識を集中させる。

 

「はあっ!!」

 

アリサが発動させたアーツ―――ゴルドスフィアによって僅かに怯んだその瞬間、アスベルはその構えのまま一気に駆け出した。グルノージャもその拳を向ってくる気配―――アスベルに向かって放つ。だが、アスベルに恐れはない……

 

―――三の型“流水”が終の太刀………『氷絶』

 

相手の力を利用し、それを自らの刃に合わせて威力を重ねる“流水”の極致の一つ……瞬間的に動きを止め、相手の動きに沿って太刀をなぞらせる奥義『氷絶』。アスベルが抜き放った太刀を鞘に納めると、そのグルノージャは動きを止め、眩い光りを放ったかと思うと、次の瞬間には消えていた。息を整えて振り向くと、もう一体の方も何とか撃退出来たようであり……そして、リィンも何かを掴めたみたいだった。こればかりは本人だけにしか解らないことであったが。

 

予想外の敵に連中の口からは『話が違う』ということを口走り、詳しい事情を聞こうとしたその時に聞こえるホイッスルのような笛の音。

 

「これは……」

「どうやら、面倒な連中がやってきたようだ。」

 

ラウラの言葉の通り、姿を見せたのは領邦軍の面々。そして、兵士はあろうことか……リィン達を取り囲んだ。これには納得がしかねる……すると、隊長はこう言った。

 

「確かに、盗品もあるようだが彼らがやった証拠はなかろう。何だったら、このままバリアハートまで連行してやってもよいのだぞ?」

 

物を盗んだ連中と領邦軍―――ひいてはアルバレア公爵家……いや、この場合はその領主であるヘルムート・アルバレア公爵が仕組んだことなのだろう。ここまでは予測の範囲内であった。だが、隊長はあろうことかリィンとラウラの方を見て、

 

「ああ。ちなみにそこの二人にはバリアハート市まで同行してもらうぞ?公爵閣下にとって、“今後”の為に役に立つからな。」

「なっ!?」

「リィンとラウラの二人を人質に!?」

「正気か?お前たちは。」

「フン……片や<五大名門>の成り上がり。もう一人は“光の剣匠”とて、自らの子に対して非情になれるものなどではあるまい?そして、これは閣下直々の御命令である!」

 

そう言って掲げたのは書状―――アルバレア公爵家の印と家紋が押されている勅命書。これには流石のリィンらも黙って従う他ないと………だが、一人だけは違った。

 

「黙っていればいい気になっているようだな……本気で“白隼”を怒らせるつもりか?」

「アスベル……?」

「フン……貴様の素性も既に知っている。『一介の遊撃士』風情が何をするつもりかな?余計な事をすれば……」

「へぇ、流石に調べるのは早いことで……でも、『もう遅い』けど。」

 

アスベルがそう呟いた瞬間、兵士らが一斉に倒れ込み、身動きが取れない状態であった。しかも、彼等が所持していた銃は完膚なきまでに破壊されていた。この状況に困惑する隊長……驚きを隠せないリィン達……アスベルは、懐から書状を出した。

 

「―――アスベル・フォストレイト。以上の者は、エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの名において、一方的または不当な事由により自分達を襲う者達と戦闘、処刑並びに拘束した際の罪は、相手の身分に関係なく不問とする。」

「な、なあっ!?」

「言っておくが、これは本物だ。それと……一昨年の“取り決め”を破ろうとしたこと、それに加えて士官候補生であるとはいえ身分上は『学生』―――民間人とも取れる彼等を不当に拘束しようとした罪、その他諸々も含めて、貴方方を拘束させていただきます。」

「で、デタラメを……がはっ!?」

 

物言いをする前に体調の腹部に食い込むアスベルの拳……それによって気絶し、隊長が持っていた書状を回収した。連中に関しては先程の光景を見て完全に腰が抜けていたようだった。

 

「というわけで……流石に俺らだけだと全部できないから助けを呼んでくるか。」

「いや、その前に……何で皇帝陛下の勅命書を持ってるのよ?」

「流石に全部は言えないけれど……こっちに留学する際の交換条件だよ。流石に危険がないという保障がなかったからな。」

 

アリサのツッコミにアスベルは簡単ながらも説明する。経済交流があるとはいえ二つの“百日”からして未だに『敵国』の概念が残っているリベールとエレボニア……留学生に対して危害を加えないという保障がなかったため、悩みながらも交換条件として加えたのだ。

 

「そ、そうなのか……さっきのアレ、アスベルの剣技だよな。」

「流石リィン……何、一の型“烈火”の一つを使っただけだよ。」

「サラッと言ってるけれど、銃まで斬れるものなの?」

「父上あたりなら可能やもしれぬが……」

 

一の型“烈火”の奥義が一つ『蛍火』。相手に“斬った”と知覚させる暇もなく打ち倒す技。その気になると兵士らも簡単に……流石にそういう訳にはいかないので、神経を少しばかり傷つけて指一本動かせない状態にしたのだ。

 

とりあえず色々山積みのこの状況に、更なる来訪者が姿を見せることとなった。

 

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ここで、補足を。

 

一昨年の“取り決め”:『遊撃士(ひいては星杯騎士)の行動に対しての妨害および不当な拘束行為の禁止』を条件付きで認可。その条件に関しては、必要以上の殺人、それに準ずる行為の禁止ということです。元々遊撃士自体が殺しを禁じていますので、あるようでない条件です。

 

そして、アスベルの交換条件ですが……ラウラ(+サラ)はともかくとして、“あの教官”の旦那さんはリベール王国軍ですから、そのための保険です。というか、ラウラを不当に捕まえようとしたら、身内の関係ですぐさま皇帝陛下の耳に入るのですがね……その辺を失念していた公爵でした。

 

説明
第19話 力の使いどころ
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コメント
sorano様 どちらも皇帝に縁のある人間を拉致ろうとしたのですから、激おこ待ったなしです。 アラル様 帝国での知名度が低いからこそなせる業です。仕方のないことです。(真理)(kelvin)
アルバレア公はアホかアスベル相手じゃ分が悪すぎだ(アラル)
アルバレア公爵の暴走は相変わらずですよね〜ww 他国の貴族に皇帝に信頼を置かれている貴族の子供を拉致しようとしたんですから、かなりのペナルティを受けてもおかしくありませんよね(黒笑)(sorano)
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閃の軌跡 神様転生要素あり ご都合主義あり オリキャラ多数 

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