英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
風車小屋に戻ったリィン達が定時連絡の時間まで待っていると、通信機から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
〜東ケルディック街道・風車小屋〜
「―――あーあー。定時連絡、定時連絡。こちらエリオット―――聞こえる、マキアス?」
「こちらマキアス―――ああ、通信状態は良好だ。フィーも近くにいるな。そっちの状況はどうだ?」
「”双龍橋”の周辺を可能な限り探ってきた。さすがに警備は厳重みたい。」
「橋を越えるには、貴族連合かクロイツェン領邦軍の許可証が必要になるみたいなんだ。民間人や商人なんかも完全に足止めを食らってるみたいでさ。やっぱり、ここを通過するのは難しいかもしれないね。」
「そうか………何か策を講じないとな。―――ところで、二人とも。いいニュースがあるんだが。」
「へ……?」
「???」
マキアスが通信機に向かってある言葉を言うと通信機からそれぞれ首を傾げている様子のエリオットとフィーの声が聞こえて来た。そしてマキアスとリィン、セレーネは互いに顔を見合わせて頷き、リィンとセレーネは順番に通信機に話しかけた。
「―――エリオット、フィー。聞こえるか?」
「お二人とも、お久しぶりですわ♪」
「!!!?こ、この声って……!―――リ、リィン!リィンなの!?」
「しかもセレーネの声も聞こえて来たね。二人ともそこにいるの……?……マキアスの声マネじぇないよね?」
二人の声を聞くと通信機から興奮した様子のエリオットとどこか喜んでいる様子のフィーの声が聞こえて来た。
「ガクッ……そんなわけないだろう。とういうか、リィンはともかく女性のセレーネの声マネを男の僕が出来る訳がないだろう……」
フィーの指摘を聞いたマキアスは疲れた表情で指摘し
「クスクス……でも、わたくしの声マネをするマキアスさんの姿にはちょっと興味がありますね。」
「あのな……」
微笑みながら言ったセレーネの言葉を聞いたマキアスはジト目でセレーネを見つめた。
「はは……間違いなく俺だ。さっき、ようやくマキアスと合流することができた。遊撃士のトヴァルさんやセリーヌも一緒にな。」
「フン、まあそういうことね。」
「よっ、お邪魔してるぜ。」
リィンの報告に応えるかのようにセリーヌとトヴァルはそれぞれ通信機に話しかけた。
「あ、あはは……なにがなんだか。これ、夢なんかじゃないよね―――あいた!」
「……違うみたい。」
「つ、つねるなら自分の頬にしてよ……」
通信機から聞こえて来たフィーがエリオットの頬をつねっていた様子を聞いたリィン達は脱力した。
「こらこら……遊んでるんじゃない。」
「はは……二人とも相変わらずで安心したよ。」
「ええ……元気そうで何よりです。」
「と、とにかくよかった!リィンとセレーネが無事で……!今、風車小屋にいるの?これから何とか会えないかな?」
通信機から今すぐにでもリィン達を会う事を望んでいる様子のエリオットの声が聞こえて来た。
「ああ、今ちょうどその話をしようとしていたんだ。」
「これから二人のところに向かおうと思っている。どこか安全な場所で落ち合えないか?」
「安全な場所……」
「だったら”双龍橋”手前の”ポイントD”だね。ちょうど死角になってて領邦軍の目も届かないはず。」
「”ポイントD”……東ケルディック街道の外れだな。わかった、そこで落ち合おう。僕らもすぐに出発する。」
「うん、わかった。僕らもさっそく向かうよ。」
「じゃ、また後で―――OVER(オーバー)。」
リィン達が通信を終えたその頃、街道で通信をしていたエリオットは立ち上がって安堵の溜息を吐いた。
〜東ケルディック街道〜
「はあ〜……!よかった、リィンとセレーネが無事で!感謝します、女神様……!」
「”女神”ならリィンの傍に常にいるから、エリオット、アイドスに感謝しているの?」
「アハハ……勿論アイドスさんにも感謝しているよ。でも、セリーヌはともかくなんで遊撃士の人と一緒なんだろ?」
フィーの指摘に苦笑しながら答えたエリオットはある事が気になって不思議そうな表情をした。
「後で聞いてみるしか。とにかく、これでわたしたちも本格的に動き出せそう。」
「うん、そうだね……!とにかく急ごう、フィー!早く二人に会いにいかなくちゃ!」
「ん。」
エリオットの言葉に頷いたフィーだったが何かに気付いて目の前の建物と巨大な橋―――”双龍橋”に視線を向けた。
「……………………」
「フィー……?どうかしたの?」
「―――エリオット、先に行ってて。ちょっと確認しておきたい事ができたから。」
一方その頃、通信を終えたリィン達は風車小屋から出立しようとしていた。
〜風車小屋〜
「―――それでは、さっそく”ポイントD”に急ぐとしよう。場所は東ケルディックの先…………小川を越えた先の地点になる。」
「”双龍橋”の手前あたりか……気を付けた方がよさそうだな。」
「ええ、十分に注意しましょう。案内は頼んだぞ、マキアス。」
「ああ、任せておいてくれ。」
「それじゃあ、出発しましょ。」
「はい……!」
その後風車小屋を出たリィン達は”ポイントD”に向かっていたが、途中の道のりでメンフィル帝国軍が陣を展開していた為、立ち止まった。
〜メンフィル帝国軍・ケルディック地方・双龍橋方面国境防衛部隊〜
「こいつは……」
「メ、メンフィル帝国軍!?どうしてこんな所に……」
メンフィル帝国軍の拠点を見たトヴァルは真剣な表情をし、リィンは驚き
「もしかして国境を守る部隊でしょうか……?」
「恐らくそうでしょうね。昨日自国領で”あんな事”があったんだから、警戒しているんじゃないかしら?」
「しまったな……今朝プリネ達から前もって聞いていた話を伝えるのを今の今まで忘れていたよ……」
セレーネとセリーヌの推測を聞いて何かに気付いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐いた。
「マキアス?」
「何か知っているのですか?」
「ああ。今朝プリネに呼び出されて”検問”の件を聞いた際に、メンフィル帝国軍が近い内にバリアハート方面―――”ケルディック要塞”だけでなく、”双龍橋”方面の国境にも軍を展開して”貴族連合”の襲撃に備える警備や検問を開始して、検問を通過するには”通行証”が必要な話を聞かされたんだ。」
「なるほどな……」
「……でも幾ら何でも早くないかしら?確か彼女は検問は明日から始まるって言ってたと思うけど。」
マキアスの説明を聞いたトヴァルは頷いて考え込み、セリーヌは眉を顰めてメンフィル帝国の拠点を見つめた。
「……とりあえず、メンフィル兵達に聞いてみよう。」
そしてリィン達はメンフィル帝国軍の拠点に近づいた。
「―――止まれ。現在メンフィル帝国領は非常厳戒態勢だ。ここを通過したいのならば”通行証”を提示せよ。」
「その……”通行証”が必要なのは、明日からだと聞いていますが……」
自分達を足止めしたメンフィル兵の話を聞いたリィンは戸惑いの表情で指摘した。
「国境の検問に関しては陣を築き次第早急に始めよと先程レン姫から指示があった為、既に検問を開始している。」
「レ、レン姫からですか?」
「何を考えているのかしら?アタシたちが来た事はツーヤから聞いているでしょうに。」
兵士の話を聞いたセレーネは戸惑い、セリーヌは目を細めた。
「もしかしたら、”薔薇”のお嬢さんがプリネ姫に俺達がケルディックに来た事を伝えた時、その場にいなかったからかもしれんな。」
「恐らくそうでしょうね。しかし、困ったな。既にプリネから”通行証”を貰っている僕や、遊撃士のトヴァルさんは大丈夫だけど、リィン、セレーネ。二人は”通行証”を持っているか?」
トヴァルの推測に頷いたマキアスは困った表情でリィンとセレーネに視線を向け
「いや……残念ながら持っていない。」
「ど、どうしましょう……?これではエリオットさん達と合流できませんし……」
リィンは首を横に振って答え、セレーネは不安そうな表情をし
「………――仕方ない。二人に連絡して、落ち合う場所を変えるしかないな。二人なら”通行証”を持っているから、メンフィル帝国軍の検問を通過できるはずだ。」
マキアスは考え込んだ後結論を出した。
「―――その必要はありません。」
するとその時聞き覚えのある女性の声が聞こえたリィン達が声が聞こえた方向―――空を見上げると飛竜に乗ったサフィナが飛竜をリィン達の傍に着地させた。
なお、メンフィル帝国軍の拠点のBGMは空の”荒野に潜む影”だと思って下さい♪
説明 | ||
第323話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1570 | 1462 | 3 |
コメント | ||
ジン様&本郷 刃様 訓練兵じゃ全然知られていませんからねぇ(sorano) まぁ訓練兵とはいえリィンもいまやメンフィル貴族の1人ですからね、レンもそのあたりは話しを通してそうですが(本郷 刃) てか普通にリィンが名乗れば通れる気がするのは気のせいなのかな?(ジン) |
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