十三番目の戦獣士 3
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「なんでついてくんだよ! 危ないだろ!!」

「いいでしょ! 私だって鈴花(リンファ)に言いたいことがあるの。それより本当にこっち?」

 

刻路(コクジ)と晶(アキ)は次から次へと現れる魔物をなぎ倒しながら鈴花を探していた。

 

「間違いないさ。オレの動体視力を見くびるな」

「……そうですか」

何体の魔物と戦ったもわからないほどに動いてきた二人だったが、まだ軽口を叩く余裕のあることにお互いホッとしていた。

「でもこれだけ魔物が出てくるほうに飛んだってことは、鈴花が危険な状況ってことだよね……もしかして……」

 

もう、生きていないかもしれない――

刻路は晶の言いたいことを察した。

 

「大丈夫だろ。そもそもあいつにはふっとばされてばっかりだからな。一回ふっとばす前にはくたばらせねーよ」

晶は、そうだね、と刻路に笑顔を向けた。

 

二人はそのまま森の中を歩いていたが、しばらく魔物に遭遇していないことに気づいた。何かがおかしいと感じたころだった。

女性が不自然に立ち尽くしている。

腰より少し長い黒い髪、長く伸びた肢体。

間違いない、探していた彼女だ。

 

「鈴花!!」

晶がすぐさまかけよると、彼女はハッとこちらを振り返った。

「晶…」

よかった、会いたかったのよ、と鈴花は晶の肩に手を置いた。

「……この……あほ豚ぁ〜!!」

刻路は、叫びながら鈴花に突進したが、あっさり避けられてしまった。

「刻路……私も疲れてるのよ……」

ため息をはいた鈴花の喉元に、刻路は迷うことなく剣を付きつけた。

「!? これはどういうつもり?」

「お前、誰だ!?」

「なに言ってんのよ。見たままでしょ」

「本物の鈴花だったら『豚』っつったらこれでもかってほどキレるんだよ!!」

晶もパッと鈴花から体を離した。

そんな二人を見て、鈴花はフッと笑みをこぼす。

「へぇ、そうか。それは知らナかっタ」

口調が変わった鈴花から、刻路と晶は地面を蹴って遠ざかった。

「本当の鈴花は、どこ!?」

晶の高い声に、鈴花は笑った。

「残念ナガラ、この体が間違いなく本当の猪(リンファ)さ!!」

ケケケと笑う鈴花は、もうそう呼べないほどに姿が変わっていた。体を魔物が蝕んでいるのだ。

「そんな…」

火筒を魔物に向けていた晶が躊躇したのを目に入れた魔物は、即座に晶に向かって突進してきた。刻路が晶をかばうように間に入る。

「鈴花を返せ!!」

鉤爪で身を守りながらも、刻路は魔物に押される。

「お前は神を裏切ったやつを取り戻そうと言うノカ?」

「鈴花はそんなやつじゃないんだよ! おい豚、聞け!! 早く目ぇ覚ませ!!」

刻路は魔物を払いのけたが、また魔物は弱ることもなく刻路に突進してくる。

「くっそ、本当に鈴花並みの突進だな…たちわりぃ!!」

「刻路、どうするの!?」

「こっちが聞きたいさ!!」

晶の途方もない声に刻路はくそぉと頭をかきむしった。

鈴花の体を持った魔物は、休む余裕も与えてはくれず、何度も刻路に向かう。

思わず、刻路は鉤爪で足を切りつけた。

魔物はうっと体を仰け反った。

「…こうなったら…本気でぶん殴ってやる!!」

刻路は高く飛び上がった。

「いい加減、目ぇ覚ませ、豚あぁぁぁぁ!!」

 

説明
十二支の話3話目です。
でもなぜか今回は猪と猫とイタチしか出てません。
ぜひ1から読んでください。
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コメント
誰が仕組んだものなんでしょうね。刻路の渾身の思いで魔物が払えるといいな。けど元に戻ったとき会話の中身は覚えてたら刻路、やばいかも。(華詩)
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