真・恋姫無双 外史に降り立つ仮面ライダー |
「……はぁ、流石に緊張するな」
城壁の下を走り回るのは完全武装した兵士達。
その兵たちが準備しているのが戦に必要な備品。
俺のいた時代ではもはや本物を目にする事すら困難であろう物の数々。………壮観、と表すほか無いだろう。
「どうした、そんなところで兵たちを眺めて」
「ん?」
後ろから聞こえた声に反応すると、そこには春蘭が立っていた。
「いや、これだけの兵を実際に見るのは初めてでな。少し驚いていただけだ」
おおよそ二千程だろうか、それだけの人数が華琳のために動いているのだ。現代の意識が根強く残っている俺にしてみれば驚くなという方が無理だ。
「なんだなんだ、この程度で驚いていたらいずれ華琳様が一城、一国の主となられた時には驚き過ぎて死んでしまうのではないか?」
「ハッ……その頃にはもう慣れてるだろうよ」
「なら構わん。……その時には貴様も軍の中核を担う人材となっているはずだ、よろしく頼むぞ」
「それまでに死んでなかったらな」
「あら、武の御使いを名乗る者がそんな簡単に死んでしまうのかしら?」
再び後ろから聞こえる声、さっきと同じように振り向くと、次は華琳と秋蘭、そして金髪の髪を左後方でまとめ、ロールを巻いている、布面積の小さい服を着た少女と、同じく金髪の薄幸そうな少女、そして華琳の髪型を大型化したような少女がいた。………金髪ってことは華琳の血縁か?
「華琳か………後ろの子達は?」
「そう言えばまだ、直接は会っていなかったわね。……華侖、柳琳、栄華。彼が武の御使いの緋霧よ」
「緋霧零児だ。真名はないので、好きに呼んでくれて構わない」
「初めましてっすね!あたしは曹仁、字は子考、真名が華侖っす。華侖でいいっすよ!よろしくっす、零児兄ぃ」
「どうも……私は曹純、字は子和、真名は柳琳です。柳琳とお呼びください……よろしくお願いしますね、零児さん」
薄着の少女の方が華侖、薄幸そうな少女の方が柳琳ね……。だが、栄華と呼ばれた少女は一向に喋ろうとしない……というか、睨まれてる?
「栄華?どうしたのだ?」
「どうしたもこうしたも無いわ秋蘭!!何故此処に男がいるんですの!?こんな汚らわしい存在がお姉様に仕えているなんて信じられません!!」
き、きつい性格してるなこの子!栄華ってことは……曹洪だったか?男嫌いとは聞いていたがこれ程とは……
「はぁ……相変わらず男が嫌いか、栄華」
「当然よ!!男なんて汚らわしくて、この世の害にしかならないような存在でしょう!?」
「やれやれ………随分嫌われてるみたいだな俺は」
「ふん!お姉様に免じて視界に入るのを許しているだけでも感謝して欲しいくらいですわ!!」
「………というか、華侖に柳琳だったか?そんな簡単に真名を預けていいのか?」
「そうね……初対面の者に真名を預けるのは珍しいけれど無いことも無いわ。それに………」
「それに?」
「この子達は私の従姉妹よ?会ったばかりの人物を見極める、なんてことは雑作もないわよ」
「そうっすよ、零児兄ぃ。見くびってもらっちゃ困るっす!」
「フフ……姉さんったら、もう……でもそうですね、私達もそのくらいはわかりますよ?」
「そうかい……なら、その信頼に応えられるよう頑張るとするかね」
「ええ、ぜひそうして頂戴」
「ふん!どうせ貴方も他の男どもと同じような女を孕ませることしか考えてない輩でしょう?すぐにボロを出すに決まっていますわ」
「栄華!!いい加減になさい!」
「構わないさ、信用を得るには自らの行動で示すしか無い。只それだけのことだ」
「殊勝な心掛けですこと。……早速ですが、お願いしたいことがあるのですが?」
「曹洪だったか?お前……随分と強かだな」
絶対俺が言い出すの待っていただろ、こいつ。
「お褒めに預かり光栄ですわね。貴方が男でなければ、ですけど」
「手厳しいな、全く……で?頼みたい事とは?」
「糧食の最終点検の帳簿がまだ届いておりませんの。それを取りに行ってくださいませ」
「………完璧な雑用だな」
「嫌なら別に構いませんが?代わりに私の信用を得ることは不可能になりますけど」
「嫌だとは言ってないさ。それじゃ行ってくるよ」
「お早くお願い致しますね。貴方が遅れれば全軍の出撃が遅れます。その分余計な金銭が掛かるのだから」
「そいつは大変だな、なら急ぐとしますか」
「緋霧。監督官は、いま馬具の確認をしているはずだ。そちらに行ってみるといい」
「了解。ありがと、秋蘭」
監督官の居場所を秋蘭に教えて貰い、駆け出そうとするが、大事なことを聞き忘れていたため、動こを止める。
「……っと、秋蘭。監督官の特徴は?」
「頭巾を被っている少女だ。頭巾の形が珍しいから、それで分かるだろう」
「珍しい頭巾ね……了解」
監督官の特徴も聞いたし、準備は完了。ここから馬具の置いてあるところは中庭突っ切った方が速いな。
「おらよ………っと!!」
俺は懐から、タンポポの絵柄のあるロックシードを取り出しつつ、中庭の方へと飛ぶ。
「「「なあっ!!?」」」
その場にいた全員が驚いて、声をあげる。………まあ傍から見ればただの飛び降り自殺にしか見えないしな。
手摺を飛び越え、空中に浮くと同時にロックシードを解錠し、下へ落とす。手放した瞬間、ロックシードは姿を変え、〈ロックビークル・ダンデライナー〉へなる。ダンデライナーへ乗り、中庭へと向かう。
……華琳達には後で説明しないとな。地味に睨んでたし。
Side華琳
零児………あんなものまで持っていたなんて、後で問い詰めないといけないわね。まあそれは置いておくとして、問題は………
「……スッゲー!!なんすか今の!!むっちゃ格好いいじゃないっすか!!」
「あらあらあら……姉さん、少し落ち着いて」
「な、何ですの!!あれは!……まさか、妖術使い!?五胡の回し者だったのね!?やっぱり男は信用できませんわね!!」
この子達に説明しないといけないのよね………まったく面倒ね……
「落ち着きなさい、華侖、栄華。あれは零児の天の御使いの力の一つよ。……さっきのは初めて見たけれど、似たようなものを使っているのを私や春蘭、秋蘭が見ているわ」
「ですがお姉様!!やはりあんな得体の知れない物を使う奴をそばに置いておくなんて……!」
「しつこいぞ栄華!!」
「………っ!」
「零児は春蘭を下す程の実力がある。得体が知れない程度で手放すには惜しい人材なの。わかった?栄華?」
「春蘭を!?……………わかりました。ひじょ?に不本意ですけれど、お姉様が認めているのなら仕方ありませんわ」
「よろしい。………取り敢えず今は零児を待つとしましょう」
まったく……栄華の男嫌いは相当なものね。零児に任せれば少しは改善するかしら?
Side零児
……ッ!!?なんだ!?今首筋に刃物を突きつけられたような感覚がしたんだが……何かの予兆かね?
ダンデライナーを降りて、ロックシードに戻してから数分。現在監督官を探している真っ最中に殺気に近しいものを感じた。………なんか怖いけど気にしないことにしよう。
「さて、と監督官はどこにいるのやら」
秋蘭曰く、特徴的な頭巾を被っているそうなので、見つけやすいとは思うのだが……
「……お?もしかして……あいつか?」
俺の目の前には猫耳のような形をした頭巾を被っている少女がいた。………確かに特徴的だな。
「すまん。監督官とやらはお前か?」
「…………だったら何よ。こっちはあんたみたいな奴に用はないんだけど」
「曹洪……殿に頼まれてな。糧食の最終点検の帳簿を取りに来た」
「ああ、それならそこに置いてある緑色の表紙のやつよ。さっさと持って行って私の目の前から消えて頂戴」
「お、おう。………ありがとさん」
「ふん。………これだから男は嫌なのよ」
………うぉーい。こいつも男嫌いかよ。まあこれ以上関わることは多分ないだろうし、さっさと退散しますか。
「よい…しょっと。持ってきたぞ?」
「あら、空を飛んでいった割には随分と時間がかかりましたわね」
「監督官を探すのに手間取ってな。………ほら、これだろ?」
ダンデライナーから降り、手に持っていた帳簿を曹洪へと渡す。
「確かに。ではさっさと確認してしまいましょうか……」
そう呟くなり、曹洪は帳簿に目を通し始める。その横顔は仕事をしている時の華琳にそっくりだ。
「やれやれ、無駄に疲れたな……」
「そう、大変ね零児。………それはそうとして聞きたいことがあるのだけれど良いかしら?」
「ッ!!?な、なんだ……?華琳。急に改まって……」
そんなことを思っていると、華琳に声をかけられた。殺気つきで。………しかもこの感覚は、さっき感じたものと同じ……!
「貴方、あんなものを持っているのをどうして私に黙っていたのかしら?」
「え……?言ってなかったか?」
説明したような気がするが……
「ええ、聞いていないわね。おかげで無駄な苦労を抱え込むことになったわ」
………やばい。笑顔だけど目が笑ってねぇ……
「………スマン。以後気をつける」
「……なら、良いわ。説明を忘れていることは他には無いわね?」
「………鎧武に変身するとき、ロックシードを変えることで姿が変わる。それくらいだな」
「貴方ねぇ……!」
「仕方ないだろ!?説明する暇無かったんだから!」
「言いに来なさいよ!!子供じゃあるまいし!」
「言いに行く程のことでもないだろうが!」
「どういうことですの!!?これは!!」
華琳との口論が白熱しかけたところで、曹洪が叫ぶ。………どうしたんだ?
「どうしたのだ?栄華?そのように声を荒らげて…」
「どうしたもこうしたも!秋蘭!この監督官はどういった人物ですの!?」
「最近入った新人だ。仕事の手際が良かったから今回の食糧調達を任せたのだが……何か問題があったのか?」
「これを問題と言わずに何を問題と言えと言うんですの!!指定した量の半分した手配できてないんですのよ!!?」
「「はぁ!!?」」
俺と春蘭が思わず叫ぶ。半分って………手違いで済まされる量じゃねぇぞ!?
「……見せなさい栄華」
「どうぞ、お姉様」
華琳へと帳簿が渡される。………あいつ、何を考えてこんな真似を?
「秋蘭」
「はっ」
「監督官をここに連れて来なさい。大至急よ」
「御意!」
「…………………」
「…………………」
秋蘭が監督官を呼びに行ってから体感で数分程。華琳と曹洪がいっこうに喋らねぇ……空気がスゲェ重い。
「(零児兄ぃ零児兄ぃ。………華琳姉ぇと栄華が怖いっす)」
「(俺だって怖いよ……触らぬ神に祟りなし。監督官に冥福を祈っておこう)」
華侖と小声で話す。……今華琳が横目でこっち見た。殺気が俺にまで向けられる。………聞こえてるのか?
「華琳様、連れて参りました」
ようやく秋蘭がさっきの猫耳頭巾(フードか?)を連れてきた。さて、彼女は何を言い出すのやら……
「お前が食糧の手配をしたの?」
「はい。…必要な量は揃えたつもりですが」
「指定した量の半分しかない、というのにですの?」
「はい」
半分で充分だと……?もしかしてこいつ……
「このまま出撃すれば糧食不足で行き倒れになる所だったわ。そうなれば、どうするつもりだったの?」
「いえ、そうはならない筈です」
「……?どういうこと?」
「糧食を削っても、どうにか出来る何かがあるんだろう?」
「零児?」「あんた……さっきの」
全員がこっちを見る。………まあこの空気で発言すれば注目するわな。
「どういうこと?」
「流石に詳細まではわからんが……半分も糧食を減らす以上、こうやって華琳が呼び出すのは、容易に予測出来る。そこで自分の考えを打ち明ける………といったところかね?」
「「「「…………………」」」」
「あんた一体何者よ、私の考えをそこまで見抜くなんて……」
華琳達は絶句、少女は呆然とした表情を浮かべる。………てか少女の呟きでわかったけど、よかった?間違ってなくて。ここで間違えてたら恥ずかしすぎる。
「……で?それは本当なの?」
「は、はっ。確かにそこの男の言う通り、作戦は用意しておりましたが……」
「そう……零児、ひとつ聞く。率直な意見を聞かせて」
「なんなりと」
「こいつの言う作戦……信用度は?」
「かなり高いと思う。………こんなことをすればその場で首を落とされてもおかしくはないはずだ。それを承知の上でやっているんだ………乗る価値はある」
「成程。………貴女、名は?」
「姓を筍、名をケ、字を文若。真名を桂花と申します」
荀ケ……!王佐の才を持つと言われた名軍師か!
「………なら桂花。その作戦があれば、糧食が不足することはないのね?」
「はい、必ずや」
「ならば、今回の指揮を貴女に任せるわ。………それと、私のことは華琳と呼びなさい」
「はっ!!華琳様!この筍文若、全身全霊をかけて努めさせていただきます!!」
「よろしい。春蘭!秋蘭!華侖!柳琳!栄華!零児!桂花!これより出発するぞ!!」
「「「「「「「御意!」」」」」」」
……只の賊討伐にしては少々過剰な戦力のような気もするが気にせずに行くとしますか。
英雄譚から華侖(曹仁)、柳琳(曹純)、栄華(曹洪)が登場しました。
栄華がダ名家っぽいですが、流してください。
そして報告を。一刀が変身するライダーを発表したいと思います。
ウィザードになりました!!
最初は一刀といえば→種馬→性欲が強い→欲望→オーズ
といった連想ゲームが繰り広げられていたのですが、アクアマンさんの希望をもとにプロットを見直したらうまいこと言ったので、ウィザードにしました。ちゃんとウィザードラゴン中にいますよ?
その辺の説明は追々致します。
では今回はこのあたりで
それでわ〜
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