青いチビの使い魔 39話 |
キキSide
「いやー、ホントすまなかった。我々だけでは帰還できなかった」
「いえいえ。こちらも同じことです。それに積荷とあの軍船をこんな高値で買い取ってくれるなんてこっちこそ頭があがりません」
と、船から下りた船長と王子が談笑しながら話している。
俺たちは今、ニューカッスル城の地下に在る隠し港って言うのか? まあ、そんな感じの場所にいる。何故そんなことに俺たちがいるのか? それは例のジン&チトセ爆死事故まで((遡|さかのぼ))るのだけども、細かく説明するのは面倒なので端的に。
爆発後、ルイズ達と王子達は互いに色々と慌てふためいていたが、王子達の方はとりあえず俺らの船を引き続き襲うためか、さらに降下してきて船の真上へと付けて部下たちをこっちの船へと降ろしてきた。が、そこでさらに無茶苦茶な事が起こった。
始めに上空から妙な音が聞こえてきたので、今度は何が来たんだよ…と、もう顔を動かすのも億劫だった俺は白眼使って確認したら……上空から隕石が落ちてきていた。……うん、アレにはビックリした。
そしてその隕石は見事に王子とこっちの船2隻を貫通していったのだった。そりゃあもう王子一派も俺達も大パニック。さすがにこんな事になったら王子達も空賊のマネなんてしてられずルイズ達に正体をバラし墜落の危機を互いに乗り切ろうみたいな事になった。
で、全員で2隻の船の緊急補修を行い、何とか墜落しない程度まで直した後、無事だった軍船を使いこの港まで牽引しながら航行した。
「ほほ、これはまた、たいした戦果ですな。陛下」
「ああ。まあ少々トラブルがあったが、大量の硫黄と軍船だ!」
「おお! 硫黄どころかこんな立派な船まで。これで我々の名誉も守られるいうものですな!」
背の高い初老の男が王子と共に手に入れた物に対して歓喜しており、周りにいるこの城の兵たちも同様に喜び勇んでいた。しかし、その際の会話内容が『これで名誉ある敗北だ』系ばっか。確かに戦力差はあるかもしれんが…
「負けること前提で戦うなよ。まあ、かと言って勝つことは出来ないんだけどな」
「戦力差は歴然」
ここに来る途中に見えた革命軍一派の拠点には軍船は数十隻ほどあった。その中に一際大きな軍艦があり、元々は王子達の艦隊旗艦だったらしいんだが拿捕され改修されてレキシトン号と言う名で使われているらしい。他の船舶も殆んどが戦いの中拿捕されたそうで、王子達のほうにはもう軍船が無いとのことだ。完全に詰んでるじゃん。まあ、そういう事情もあって今回の軍船取得は幸運だったらしい。
「まあいいや。そういえばルイズ達は?」
「あれ? そういえば何処にいったんだろ?」
「ルイズ達ならさっき皇太子様と一緒に歩いていったわよ」
俺がボケッと考えている間にルイズ&リオン、ついでにワルドが居なくなってたので近くにいたギーシュに聞いたがギーシュは首を傾げてしまった。ただその代わりにキュルケがルイズ達の行動を見ていたのか教えてくれた。王子と移動したってことは手紙の回収しにいったんかな?
そういえばこの後どうなったけ? ……ダメだ、細かいことが思いだせねぇ。ワルドとルイズが結婚式挙げて、なんやかんやあって王子がワルドに殺されて……うん、まあいいや。
「とりあえず、ジンの依頼は果たさなきゃなぁ」
「……彼はあの爆発で死んだんじゃ?」
「いや、2人とも落ちていったのを視たから多分生きている……はず?」
生きてて欲しいなぁと言う希望を持たせてタバサに言い返す。まあいいや。とりあえず不審気なタバサを適当に説得して俺は下見をするために城内を散策する。城の間取りはもちろんのこと、結婚式とかしそうな礼拝堂。ってか城内に礼拝堂って必要か? まあ必要だから作ったのか。まあいいや。
「…ムグムグ、…何処行ってたの?」
「散歩ってかいつの間にパーティーやってんだよ。それ美味しそうだな。どこにあるん?」
「アナタがどっかに行った後、案内された。それとこれはあっちのテーブルにある」
城内の下見をしていたらタバサ達が美味そうな物を食べていたのを発見した。俺もとりあえず、とる物とってからタバサに話を聞いた。
聞いた話を要約すると、なんでも明日、王子達は敵軍に向かって特攻を仕掛けるらしく、このパーティーは最後の晩餐みたいだ。その際に、王様さんが兵たちに暇を与えて逃げるなら今が最後だぞ。と言ったらしいが兵たちは皆、特攻万歳状態だったそうだ。
「モグモグ…、しっかしなんでこの手の方々ってそんなに特攻大好きなんだ? もう少し生きることに執着を持とうよ」
「……彼らは騎士。国の為に最後まで戦ってこそ彼らの名誉が守られる」
「…まあ、本人たちの意思だし…ンッグ。名誉のためとかも解らんことでもないしな」
隣にいるタバサがアルビオンの人々を見ながら俺の独り言に答える。まあ、だからと言ってあの人達に共感はまったくしないけどな。名誉より命だ。コレ大事。命あってこそ大切なものを守り続けることが出来るし、大切な人達と一緒にいられる。うん、今のセリフは俺のキャラじゃない。まあいいや。
そんなこんなでパーティーは楽しく飲み食いさせてもらいました。
リオンSise
「ん? ルイズか?」
僕はパーティーから抜け出し、与えられた部屋へと行く為廊下を歩いていると、窓を開き月を見ているルイズを見つけた。
「…リオン」
「どうした?」
僕が近づくとルイズも気づき僕に振り向くがその眼は涙ぐんでおり、表情も暗いものだった。僕はルイズに声を掛けるとルイズはいきなり僕にもたれかかってきた。
「いやだわ……、あの人たち……、なんで、どうして死を選ぶの? わけわかんない。 姫さまが逃げてって言ってるのに……、恋人が死んで欲しくないって言ってるのに…、ウェールズ皇太子は死を選ぶの?」
ルイズは僕の胸に顔を当てて泣きじゃくりながらそう言った。僕は震えてしゃくりをあげるルイズをなでて落ち着かせる。
「あいつは自分の大事なものを守る為に戦うと言っていた」
僕はパーティー中に話しかけてきたウェールズとの会話を思い出しながらルイズに言う。自分が亡命などしようものなら確実にトリステインに攻め入る口実になってしまう。そして、そのせいで自分の愛する者を危機に合わせてしまうことを分かっている。だから逃げる事をせずにここで戦い、王族として散ることを覚悟していた。
「なによそれ。愛する人より大事なものがこの世にあるっていうの?」
「そうじゃない。愛する者が居るからこそ逃げる事を良しとしないんだ」
僕はあの海低洞窟での戦いを思い出す。大切な人を守る為に友と戦い、そして敗れた。もちろん悔いはあった。しかし、それでも僕はきっと同じ場面にあったら彼女を守る為に同じ事をしただろう。
「……わたし、もう一度説得してみるわ」
「やるだけ無駄だ。あいつは覚悟を決めている」
「でもやってみなきゃ!」
「やめておけ。それにお前には他にやるべきことがあるだろう」
「…………」
ルイズは僕の言葉に口を((噤|つぐ))む。きっとルイズも解っているのだろう。ウェールズへの説得が無意味な事に。
「…ねえ、リオン。貴方も彼らと同じなの? 大切な人の為に死を選ぶの?」
「…ああ」
僕はルイズの問に答える。
「…ホント自分勝手」
ルイズは僕の答えに顔を伏せて小さくそう呟いた。
「…ルイズ、そろそろ」
「ごめんリオン。わたしもう少し1人で考え事してたいの」
僕はこれ以上話を止めようと、多少強引だがルイズに促そうとしたら、ルイズは急に僕から離れて顔を伏せたまま歩いて行ってしまった。
まったく、あまり思い詰めなければいいのだがな。
キキSide
朝が来た。素晴しくない朝だ。
昨夜、散策中にばら撒いていた影分身で一晩、城中を監視そして先ほど分身を解いて情報を回収したんだが、リオンとルイズに王子、後ついでにワルドの重苦しいというか暗いというか、まあそんな内容が入って来た。止めろよ。朝からテンション下がるわ〜。まあいいや。
「さーてと、とりあえずはジンの依頼どうり王子を助けるかな」
まあ、王子自身は特攻したがってるみたいだけど、俺には関係ない。だってお金が欲しいから。
「アホなこと考えてないで準備してこよう」
下準備の廊下に呪印を刻むのは新たに出した影分身でやっているので俺はメインの準備だ。この呪印は俗に言う人払いと認識阻害の効果を持つ結界を作り出すものであり、対象以外の人間を遠ざけ、尚且つ結界内に入った人物の思考や認識能力を鈍化させるものである。準備に時間が掛るが超便利。
さらに城内は既に特攻組と脱出組とでそれぞれの船に荷を積み入れをしていて人が少ない上に、タバサ達の方には影分身をつけてるので裏でコソコソやっていることを疑われる心配も無用。好き勝手できる。
では、ルイズとワルドの結婚式の開始と共に行動開始だ。
ってなワケで、手始めに変化の術でワルドになり、城内を前もって決めていたルートを歩いて王室へ行き中に居る王様の腹に風穴開けて殺した。そして死体を隠して、変化の術で血まみれ瀕死状態の王様に化けて倒れておく。すると…
「陛下!」
「グァ……、ガ、ガイ…ウスか…」
このように誘導しておいた近衛隊の隊長が入って来る。
「陛下一体何が! 今、傷を治しますゆえ少しの辛抱をッ…!?」
俺は騎士の眼を見て、腕を掴み相手に幻術を掛けながら言葉をかける。まあ、内容は『自分は助からない。王子を亡命させろ、自分の死体と共に特攻してくれ』的なことを言った。幻術にかけて思考を鈍化させているので騎士は疑うことも無く何度も返事をしながら頷いてきた。
「あの…手紙を、ウェールズに…。頑固者じゃ。言葉だけでは、納得せんじゃろう。だから…手紙を((認|したた))めた。あれを…渡しておくれ」
「…わかりました。必ずや陛下のお言葉と共に殿下に届けます。では…また後ほどお迎えに上がります」
騎士は動かなくなった俺に涙を流しながらゆっくりと横たえると、机の上に置いておいた手紙を取り、部屋から出て行った。
まあ、分かっていると思うがあの手紙は昨夜の内にこの王様の筆跡を真似て作った偽造書である。めっちゃ作るの面倒臭かった。こういう時、写輪眼だったら楽だろうな〜と思った。
とりあえず、隠していた本当の王様の死体を出して、俺が倒れていた場所へと横たえる。
「しかし、これやってること完全に悪人だよな」
自分の益の為に人殺しして、謀って。バレたら絶対にタバサに嫌われる。……うん、深く考えるのはよそう。良心が痛くなる。いや、むしろ良心うんぬんよりタバサに嫌われるのが怖いです。
まあ、そんな感じに1人勝手にテンションをただ下げしながらも聖堂へと移動した。
ルイズSide
「リオンッ!」
ガキンッ!と私の目の前で殿下の胸に突き出さたワルドの杖をリオンの剣が弾いた。
「くッ!? あと少しのところをッ!」
ワルドの表情は私が今まで見たことの無い形相をして後ろへと飛んで私たちから離れていった。
「ワルド! 一体どう言う事なの!?」
結婚式の最後、私はワルドと結婚できないと自分の意思を伝えた。ワルドは始めはもちろん驚いていたし、優しい表情で考え直すよう言ってきた。でも私の意志が変わらないと分かると今までの表情から一変してとても怖い表情となって私に掴みかかってきた。
その際、リオンが私とワルドの間へと入って来てワルドはこれ以上手が出ないと分かると、殿下に向かって杖を突き刺そうとしたけど、それもリオンに止められた。
「あははは。まったく中々上手くいかないものだね。君の気持ちをつかむ為色々と策を弄していたし、君を手に入れられなかったとしても、手紙さえ手に入れればウェールズ((諸共|もろとも))と思っていたが、使い魔…いや、リオンくん、君のせいで全てご破算だ」
「ワルド子爵ッ! あなたはまさかッ」
殿下も腰の杖を引き抜き、構えながらワルドへと叫けんだ。殿下の言葉にワルドは獰猛な笑みを浮かべた。
「ああ、その通り。いかにも僕はレコン・キスタの一員だ」
「貴族派!? なんで、どうしてッ!」
「我々はハルケギニアの将来を((憂|うれ))い、国境を越えて((繋|つな))がった貴族の連盟さ。我々に国境は無い! ハルケギニアは我々の手で一つとなり、始祖ブリミルの降臨せし『聖地』を取り戻すのだ!」
ワルドは私の問に変わらず獰猛な笑みを浮かべたまま大仰なしぐさでそう叫んできた。その姿は幼い頃に見た彼とはまったくの別人だった。一体何があなたをそこまで変えたの? 私はそんなワルドに恐怖を感じて震えて((後退|あとずさ))る。
「…で、言いたいことはそれだけか?」
そんなワルドの姿にリオンはいつも通りの態度で彼を冷笑した。ワルドはリオンの態度に一瞬だけど表情を歪めたけど、すぐに先ほどの表情に戻り、逆にリオンを見下したように喋り始める。
「ふん、いくら腕が立つと言っても所詮は余所者。そんな君に我々貴族の崇高なる考えは理解できないようだね」
「そうだな。そんなバカバカしい考えなど理解する気にもなれん」
「……あまり((図|ず))に乗るなよ。小僧」
ワルドはリオンの言葉が癇に障ったのか表情が険しくなり、杖を構えた。リオンもこれ以上話すことは無いと思ったのか、剣を構えてワルドと対峙する。
「私も加勢しよう。先ほど命を助けてもらった恩もある」
殿下もそう言うと一歩前に出て、杖を構えた。聖堂の中はピリピリとした空気に包まれ、そして……
「「エアハンマー!」」
殿下とワルドが同時に魔法を撃ち、それが合図のように戦いが始まった。
キキSide
ガンッ!キンッ!と俺が聖堂へと飛雷神の術を使って移動すると、そこではリオンと王子、と何故かいるキュルケ&タバサと俺の影分身がワルド(×6)と戦っていた。多分偏在で数を増やしているんだろう。
リオンは3人、王子は1人、そしてキュルケとタバサ&俺(影分身)はルイズを守りながら2人のワルドと戦っており、ぶっちゃけワルドの勝ち目は皆無だ。
しかしリオンと王子が戦っているのは解るが何故にタバサ達がいるんだ? 現状の把握が出来んので影分身に合図を出し、タイミングを見て入れ替わることにする。
皆にバレないように影分身に合図を送り、影分身にはわざとワルドの攻撃に当たってもらう。
「キキッ!?」
「まずは1りぅがッ!?」
「なわけない」
と、影分身がワルドの刺突で貫かれボンッと消えると同時に横合いから蹴り飛ばす。吹っ飛ばしたワルドは偏在だったようで空気に溶けるように消えていった。
「…怪我は?」
「あの程度で怪我はしないって」
タバサは心配してくれているのか声をかけてきてくれた。俺は心配ないとタバサの頭をポンポンと撫でたら案の定叩かれた。最近わかったことだがタバサはどうも子供の様に頭を撫でられるのが嫌らしい。
さて、そんなことより影分身から得た情報によると、タバサ達がここに居る理由と言うのがキュルケがルイズとリオンが居ない事を不審がって探していたらしい。なんでも嫌な予感がするとか。女の感って恐ろしいな、おい。
まあ、そんな感じで聖堂まで来たらいきなり戦闘になっていて、なんやかんやとルイズを保護しつつも戦っていたようだ。
「ぐっ!」
「あッ!? 殿下が!」
ワルドの攻撃を食らい、((蹲|うずくま))ってしまった王子にルイズが咄嗟に駆け寄ってしまう。何やってのさ。
「ククク! 丁度良い! まとめて死ねぇッ!」
めっちゃ悪人セリフを吐いて、王子とルイズに向かって魔法を纏わせた杖を振り下ろす。が、残念ながらそれが二人に届くことはなかった。
キィンッと、甲高い音と共にワルドの杖は弾き飛ばされ、そしてザクリとワルドの左肩へと短剣が突き立てられ、血飛沫が舞った。
「ぐがぁぁぁッ! き、貴様ぁ!」
「まったく、お前は少しは後先の事を考えて動けんのか?」
「リ、リオン……」
偏在だった3人のワルドを倒したリオンが油断していたワルドへとカウンターを食らわせた。すんごいカッコイイな。俺は残った偏在の首をへし折り消しつつそう思った。
「さて、観念したらどうだ? もうお前に勝ち目はない」
「……ふふふ」
「? …何を笑ってッ!?」
肩の傷を押さえながら不気味に笑いだしたワルドにリオンが警戒した瞬間、城全体が爆音と共に大きく振動した。あ〜、これって攻撃されてる?
「始まったか」
「まさか…奴等が侵攻してきたのか!? 聞いていた情報より早すぎる!」
「ハッ、当たり前だ。その情報はわざと流した物だからな。本当の時間は今、正確には僕が指定した時刻内に連絡しなかったら攻撃を始めるようになっていたのさ」
ワルドは痛みのせいかフラフラしながら立ち上がり、王子の戸惑いの言葉に答える。
「ちっ、心中するつもりか!」
「はははッ! すまないが僕には為すべき事があるのでね。死ぬのはお前たちだけだ!」
ワルドは叫ぶと腰辺りから予備の物だろう。小型の杖を出し((飛行|フライ))の魔法を使って先ほどから来ている攻撃で割れた窓から飛び去って行った。
ああ言う、逃げ時を見極められる所は好感もてるなぁ。と、とてつもなくどうでもいい事を思いながら上から落ちてくる石を避けながらリオン達へと近づいていく。
「リオン、大丈夫? 怪我は無「ダーリン怪我は無い? 大丈夫だった?」ってキュルケ! いきなりリオンに抱きついてるんじゃないわよ!」
「はぁ…お前ら、バカ騒ぎするのもいいが生き埋めになりたくなかったら早く脱出するぞ」
「しかし、どうするんだい? もう船は出港してしまったのではないか?」
リオンは嘆息しながら脱出を促し、キュルケとルイズを鬱陶しそうに引き剥がしていると王子が船の事を心配してくる。
「確かに。城が攻撃されているのに((悠長|ゆうちょう))に待ってるはずも無いか」
リオンは王子の言葉に表情を曇らせていると
「あッ! みんなッ! こんなところに居たのかい!」
「殿下! ご無事で!?」
聖堂の扉からギーシュと騎士が勢いよく入って来た。
「ギーシュ! あなたどうしてここに?」
「何言ってるんだい! いざ出航となった時に君たちが居ないことに気づいて探しに来たんじゃないか!」
「おいギーシュ。それはまだ船は出港していないということか!?」
「そうだよ。無理矢理待ってもらってるんだけど、でも早く戻らないと置いていかれてしまうよ!」
ギーシュの言葉にリオン達の表情は明るくなり、港へと急ぐぞとリオンは言って走り出す。
で、もう片方、王子と騎士の方は……
「ガイウス殿! どうしてこんなところに?」
「はッ! 実は殿下に至急お伝えしたい事と、お渡ししたいものがあります」
と騎士の人は俺が王様に化けて騙った内容を話していく、最初は渋っていた王子も騎士の必死の説得というか懇願? 的なものと手紙みを読み、生き恥をさらす悔しさや国を再建する為の願いを託された事への思いやらで色々と悩んでいたが、最終的には生きることに決めたみたいだ。
ちなみに、あの手紙にはチャクラが仕込んであり、読むと文字を通して軽い幻術による催眠を相手に掛けるもので、つまりは……アレを読めばなんやかんや悩んだ所で手紙の内容通りに思考が行くことになるのである。いやぁ最低な事してるなぁ俺。
「ん?」
「早く」
俺が横目で王子と騎士の事を見ていたらタバサが服を引っ張り移動を急かしてきた。
その後は皆で待たせてある船まで走り、乗船。崩れていく城から、そしてアルビオンから脱出する。騎士の方は王様の亡骸を回収して特攻するための軍艦に乗り込む為分かれた。どうやら軍艦の方は別の場所から出るらしい。
「父上、そして共に逝く騎士達よ。私は必ずアルビオンを取り戻し、((嘗|かつ))ての平和で美しい国を再建してみせます」
王子は去り行くアルビオンに向かい杖を掲げ、涙を流す。そしてその様子を見つめるルイズは隣にいるリオンに寄り添うようにくっ付き、ギーシュは涙を滂沱の如く流し、キュルケとタバサは感慨深そうに、そして俺はジンからの報酬をどんぐらい貰おうかと考えながら、ボケッとしていた。
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