紫閃の軌跡
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「いや〜、皆お疲れ様。ちょうど雨も止んだみたいだし、タイミング良かったじゃない。これも空の女神の粋な計らいかしらね♪」

「また適当なことを……」

 

翌日から始まった中間試験。各自今までに勉強してきた成果を出し切る様に奮闘し……四日間十教科の試験を乗り切り、最終日のHRとなった。力を出し切った者……手ごたえを感じていた者……反応は様々であった。

 

「つ、疲れたぁ……」

「……もう、無理っぽい。」

「フィーちゃん、頑張りましたね。」

「ふふ……お疲れ様です。」

 

疲労の色を隠しきれないエリオット、顔を上げることすら気力が残っていないフィー……その様子を見て、フィーを労うエマとステラの姿があった。本来ならば水曜から土曜の予定だったのだが、今回は急遽火曜から金曜に繰り上がりとなり、自由行動日が二日あるような状態となった。その理由はと言うと……教官たちの都合によるものであった。

 

「で、明日の授業は午前中に武術教練の予定だったんだけれど……あたしとラグナ教官もいないし、他に代われる人がいないからお休みにしておくわ。ま、来週は“実技テスト”があるからそれに向けて励んでもいいし、各自自習してもいいけれど、他のクラスに迷惑は掛けないようにね。何だったら、外出許可を出して遠出しても構わないわよ。ただし……羽目を外し過ぎない程度にね。」

 

それを聞いた一同は、実技テスト云々はともかくとして、日常生活で羽目を外しているサラが言っても微塵にも説得力がないのだと言いたかったが……先日のアスベルのようにチョークを飛ばされても困るので、発言を慎んだ。その代りに疲れたような表情を浮かべつつラグナが呟いた。

 

「サラ教官、それをアンタが言うな。アンタが……ま、節度ある行動をしろってことだ。」

「それにしても、来週は“実技テスト”か……」

「そして、次の”特別実習”についての発表もあるんですよね?」

「ええ。二日休みなんて滅多にあるものじゃないから、ゆっくり休むといいわ。来週末には各自実習先に向かってもらうことになるから。」

 

HRが終わり、特に用事の無かったリィン、ステラ、アスベル、アリサ、ルドガー、エリオット、マキアス、ユーシス、エマは揃って第三学生寮に帰ることとなった。ラウラとフィーは先に教室を出てしまい、ガイウスは学院長に呼ばれたため、ここにはいない。その話題と言うと先程終わったばかりの中間試験のことであった。

 

「はぁ〜、やっと終わったよ……試験結果の事を考えると、ちょっと憂鬱だけれど。」

「フフン……悪いが、僕は自信があるぞ。エマ君はどうだった?」

「そうですね……手応えとしては、悪くはないと思います。」

「むむっ……」

「やめておけ、見苦しい。」

 

入学試験では首席であったエマと次席のマキアス……詳しく言うと、マキアスの方が一方的にライバル視しているようなものだが、それに対してユーシスが釘を刺すように述べた。

 

「私の方もそれなりに手ごたえはあったわね。ステラはどうだった?」

「そうですね……手応えとしては十分だったかと。もしかしたら、気付かないところでミスしているかもしれませんので、来週の結果待ちでしょうね。アスベルとルドガーはどうでした?」

「ぼちぼち、かな。」

「悪い点数ではねぇと思う。」

「開始25分ぐらいで寝てたみたいだものね……寝息が聞こえてたもの。」

「なっ……アスベルにルドガー、まさかとは思うが……」

「「ちゃんと全部解き終えて、再チェックしてから寝てましたが何か?」」

「い、いや……」

 

これに関しては政治経済の試験の際、試験監督であったハインリッヒ教頭が寝ていることを注意しに行こうとして、彼らの解答用紙を見て……黙ったまま教壇に戻った時の顔が、非常に困ったような表情を浮かべていたことに、ふとその表情が目に入ったリィンも不思議に思ったほどだ。そういうことからして、あながち嘘ではないと思った。同じような表情をナイトハルト教官もしていたのはここだけの話だ。

 

「それにしても……サラ教官にラグナ教官が揃って用事があるということで明日はお休みですが……何かあるんでしょうか?」

「用事ですか……もしかして、恋人に会いに行くとかでしょうか?」

「シルベスティーレ教官に関しては、見た目に反して結構しっかりしているから在り得なくもないが……アレにそんなものがいるのか?」

「美人なのは認めるが、あの性格と生活態度を見ると……」

 

ステラの言葉にエマがその予測を述べると……ユーシスはサラのその可能性を否定するように指摘し、マキアスもそれに同意するように述べた。そもそも授業を私用で休みにしていいのかという疑問はあるわけなのだが、学院長が認めているであろうし、問題は無いのだろう。

 

「言いたい放題だな……気持ちは解るけれど(あはは……まぁ、いるんだけれどな。)」

「確かに……(恋人と言うか、既に結婚してるんだけれど。)」

「まぁな……(世の中、狂ってると思うぞ……)」

 

事実は小説よりも奇なり……とはよく言ったものだ。その事実を知るリィン、アスベル、ルドガーの三人は揃って内心苦笑を浮かべたのは言うまでもない。世界は広い……あのような存在を好む人だって、この世界の中には存在するのだと。そんなものを現実で見せられるほうは困りものだが。

 

「その意味でリィンが一番苦労させられてるからね。そういえば、明後日は自由行動日だけれど……リィンはまた生徒会の手伝い?」

「ああ。試験も終わったし気分転換になるかなと思って。」

「となると、旧校舎に潜るのか……今度は俺も誘ってくれよ。」

 

色々言葉を交わす中、その中で異なった反応をしていた者―――アスベルとアリサであった。

 

「あ、そうだ。今日の午後から明後日の夕方まではいないから。ちょっとした野暮用なんだけれど、リベールのほうに顔を出すことになっちゃってな。」

「私の方も午後には一度実家に戻ることになったの。明後日ぐらいには戻ってくる予定よ。」

「そっか、解った。」

 

……流石に同じ行先を告げるわけにもいかないので、そう言った。まぁ、元々予期していなかった休みが出来たので、一度用事のためにそれぞれリベールとルーレに戻ることは事実だが。そのためにちょっと“裏技”を使うことになるが……話題は最近ギクシャクしたような雰囲気の二人―――ラウラとフィーのことに移った。

 

「最近のラウラとフィー……どこか、ぎこちなくないか?」

 

互いに細かいことを気にするタイプではない。心当たりとしては、マキアスが述べた先月の実習の内容に関してだ。フィーが爆薬を使って扉を爆破したり、牢の鍵を破壊したり……そして、元“猟兵”であるということもだ。その一件以来、ラウラがフィーに対して距離を置くようになってしまった。これに関しては一部を除いてその原因が解らずに首を傾げた。

 

「フン、事情は人それぞれだろう。――いまだ家名を明かさない人間もいるくらいだからな。」

「ちょ、ちょっと……今ここでそれを言うの!?」

「別に他意はないが。まあ、お前の家名については大方予想できているからな。」

(まぁ、そうだよな……)

 

ルーレ出身で、機械にも詳しく、“R”という名字。そして、それなりの振る舞いをこなすアリサ自身。これだけの要素が出て気付かない方が不思議である。まぁ、その内のいくつかはZ組の面々にしか明かされていないので当然と言えばそうであるが。周りに知られると面倒なことになりかねない事情……それを大っぴらにするかのように聞こえてきた声。

 

「―――お嬢様。お帰りなさいませ。」

「え―――」

 

この中ではアリサが一番聞き覚えのあるその声に、半信半疑でアリサがそちらの方を向き……リィン達もそちらの方を向くと……その疑惑は完全に確証へと変わったのであった。

 

「シャ、シャ、シャ……シャロン!?」

「はい。お久しぶりでございます。」

 

シャロンは笑みを零しつつ、静かな表情で答えた。

 

(あの時の……)

(リィン、知ってるの?)

 

どうやら、アスベルと会う前に擦れ違う程度ではあったが、リィンも面識があったようだ。ここにいる面々で言うと、アリサは勿論の事、リィン、アスベル、そしてルドガーの四人が知っていることになる。その面識の差にはかなり開きがあるが。

 

「どうして貴女がここに……ま、まさか……母様が!?」

「ふふっ、はい。会長と副会長に申し付けられまして。今日から第三学生寮の管理人を務めさせていただきます。」

「!!!」

「……あ〜、アリサ、大丈夫か?」

 

その言葉に目を見開き、ガックシと肩を落とすアリサ……シャロンが言った意味を察し、それに対して諦めたような表情……流石のアスベルもアリサを気遣うように声をかけた。

「初めまして―――シャロン・クルーガーと申します。アリサお嬢様のご実家、“ラインフォルト家”の使用人として仕えさせていただいております。皆様のお世話をさせて頂きますのでよろしくご指導、ご鞭撻ください。」

 

その後、アリサとシャロンの言い合いになったことは言うまでもなく、アリサは納得していない様子であったが……どう言おうともシャロンが第三学生寮の管理人となったことは変えようのない事実であった。その後、私服に着替えた二人をお見送りにきたシャロンの素早さには感心しつつ、アリサとシャロンのやり取りを微笑ましそうに見つめていたアスベルだった。

 

二人が改札を出た後、シャロンに近づく人物―――ルドガーであった。

 

「まったく、そういう愉快な所は変わってないな。」

「ふふっ……ルドガー様こそ、お変わりないようで安心いたしました。ところで、あの方々とはお会いになられないのですか?」

「今会ったら、確実に“既成事実”作られかねん……それに、だ。これから起こることを考えた時、それは逆に足枷となる……お前もそう思ってるから、そうしているんじゃないのか?」

「ご想像にお任せいたしますわ。」

 

互いの信念……『使徒』であるルドガーと『執行者』であるシャロン……互いに本音は隠しつつも、互いがそれぞれ信じるもののために……そのことだけは互いに理解したようだった。

 

「そういえば、ルーレで私服姿のデュバリィ様とお会いしましたわ……ルドガー様を探すように言いつけられていたようですが……」

「聞かなかったことにしていいか?ソレ。」

 

説明
第38話 計らいとお節介
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閃の軌跡 神様転生要素あり ご都合主義あり オリキャラ多数 

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