ミクの姿には、なんの変化もなかった。学生服のままであり、顔つきも髪型も同じだった。

ガーディアン：・・・ふ・・・ふはは・・・はーーーーーーはっはっはっ！　最後の力にすら見捨てられたようだな！　私に消せないのはともかく、所詮は私が作ったのではない力！　偶発で作られた力など、こんなものなのだよ！　残念だったｎ

　ビュン！！！

　ガーディアンの言葉の最後あたりで、ミクは突然、ガーディアンの視界から消えてしまった。

ガーディアン：何？　消えｔ

　ガーディアンのこの言葉が始まった瞬間、ミクはガーディアンの横に立っていた。

ミク：すぐには殺さない。神威の刀コピー

　グサッ！

　ミクはなんの迷いもなく、神威の刀に似た刀をガーディアンに突き刺した！

ガーディアン：ぬ・・・修復！

　バキッ！

　ガーディアンは刺された箇所を瞬時に修復すると同時に、肉塊の圧力で刀をへし折ってしまった！

　ビュン！

ガーディアン：なに！　また消えｔ

　ミクは今度はガーディアンの後方に回り込んでいた！

ミク：これまで追うべきだった『罪』を感じながら、ジワジワ死ぬが良い。サンクチュアリコピー

　ジュワァァアァ！！！！

　ミクはガーディアンの後方部分に、あのサンクチュアリ能力とよく似た光線を浴びせて、円形に肉壁を焼き払ってしまった！

ガーディアン：うぐぐ・・なんなんだ・・・この能力は！　修復！

　ビュン！

　ガーディアンは焼けこげた部分を切り離し、肉壁を再生し始めたが、その刹那、ミクは更にガーディアンの横に移動していた。

ミク：貴方にはとても信じられない事のはず。その“疑問”を抱きながら、消えて行きなさい。天雷コピー

　ゴゴゴゴーーーーーーン！！！！！

　ミクは指さしながら右手を上に上げてから、シュッっと下に降ろした。それと同時に上から巨大な“稲妻”がガーディアンの頭上を襲った！

ガーディアン：ガ・・グォ・・・ゴ・・・しゅ・・・修復・・・

　ビュン！

　ミクは最後にガーディアンの目の前に移動した。修復が完了してガーディアンがミクを認識した瞬間、ミクは一言だけ呟いた。

ミク：ガーディアンのみ時間停止し、リリィウェポンコピー発動

ガーディアン：な・・・まさか・・・その力ｈ

　ピタッ

　ガーディアンは、まさに大きな目を全開状態にして、動きを止めた。そして、その周り３６０度全方位に、リリィのビームソードがとり囲むことになった。

ミク：そう。お前が言おうとしていた“その力”だ

ネル：悟られないように知らないフリをしていたけど、この“アペンド”の力は、お前が作ったものじゃない。僕たち３人が密かに作って置いた力だよ。ミクにはアペンドの力を通して、伝えて置いたけどね

ハク：“クリスタルの力を管理する”ネルの力を使って、これまでに取得してきた力を少しだけコピーしておいて、更に私の“ワープ能力”、テトの“時間停止能力”を加えた力を５つ目のクリスタルの一部に仕込んで置いたの

ミク：妖精達が作った力や、コピーした力は奪えなかったみたいね。じゃあ、さよなら。時間停止、解除

　ギュン！

ガーディアン：貴様ーーー！！！！！

　グサグサグサグサグサ！！！！！！

　ガーディアンが修復出来ない程の無数のビームソードがガーディアンの全身に渡って、深く突き刺さり、そしてガーディアンの本体を焼き払いながら貫通していき、そして内部で全てが爆発した。

　ゴゴゴーーーーーーーーーーン！！！！！

　ガーディアンは木っ端微塵に吹き飛んでしまった。同時に６つ目の最後のクリスタルが発動し、魔法陣のプレートが輝きだした。

ミク：・・・あっけないやつだったね

ネル：“保険として作って置いた力”が役に立ったね

ミク：それにしても、みんな人が悪いなぁ、こんな凄い力があるのを、私にも黙っているなんて

ハク：あくまでこれは保険だったんです。元々あった力も、凝縮して中に入れておいたけど、感じ取る名前に入ってこなかったみたいで、あいつも解らなかったみたいだけど

ネル：その力はアペンドの発動と同時に消滅してしまったみたいだ。それより、最後の“ルシフェル”の力が発動したみたいだよ。

　ギューーーーン！

　最後の６つ目のクリスタルが青緑色に輝いていた。

ミク：帰還の力・・・これでさよなら・・・なのかな・・・

ネル：あいつの話ではそう言うことになるね

ハク：これで最後になるけど、初めて、私たちの記憶を忘れないままで、元の世界に戻ることが出来るね

テト：ヾ(*´∀｀)ノ

ミク：え？

　ネルは６つ目のクリスタルを取り外して、ミクに渡した。

ネル：これは“ヤツの束縛”が消えた今、“帰還の力”だけでなく、こっちの世界とそっちの世界を繋ぐ“連絡機械”にもなるんだ

ハク：あいつの話の通り、ミクがやってきた事は“無し”になるけど、こっちの世界の意味合いが消えるわけではないのよ

ミク：つまり、私は帰った後も、これであなた達と、こっちとそっちの変化を連絡しあうわけだ

ネル：そう、まだ終わったわけじゃない、少なくても、ミクの家族の問題が解決するまでは、この力は持続すると思うよ

ミク：わかった。元の世界に帰ったら、なんとかしてみるよ

　ゴゴゴゴゴゴ・・・・・

　宇宙庭園のエリアが消え始めた。どうやら、とりあえずの最後らしかった。

ミク：どうやら、戻るときみたい

ネル：帰ってもミッションが終わらないのは申し訳ないけど、落ち着いたら連絡ちょうだいね

ミク：わかった！

　ギューーーーン！！！

　ミクが空中に浮かび、足から消え始めた。

ミク：じゃあ、とりあえず、有り難う！　連絡するからね！

ネル：頼むね！

　ギュン！

　こうしてミクは元の世界に戻っていった。

ネル：さて、僕たちも町に戻ろうか

ハク：あいつが消えたことで、新しい変化が生まれたと思うからね

　ギュン！

ハクの能力で、３人も宇宙庭園から消えていった。そしてその後すぐ、宇宙庭園は完全に消滅した。

（病院の一室）

ミク：ん・・・・・ん・・・？・・・あれ？

メイコ：ミク！！！！

　ガバッ！

　ベッドで寝ていたミクが目を覚ますと、メイコ母さんが泣きながら抱きついてきた。よく見ると、家族全員がミクのベッドを囲んでおり、ミクが意識を回復した事で全員が安堵の笑みを浮かべていた。

カイト：ミク！　よかった！

リン、レン：ミク姉！　気が付いたんだね！！

ルカ：気が付いてくれて良かった！

ミク：あの・・・私・・・

メイコ：あなた、通学路の開いていたマンホールに落ちたのよ！　気づいてくれた通行人が、レスキューと救急車を呼んでくれて・・・

カイト：病院に運んでくれたけど、意識が全然回復しなかったんだよ

ルカ：家を出て、その日に発見されて、病院で、だから、丸々３日、この状態だったのよ

リン：ホント、心配したんだからね！

ミク：あ・・・ごめんなさい・・・

メイコ：いいのよ、無事意識が回復したから

医師：かすり傷程度で目立った外傷がなく、意識不明だっただけだから、検査のためもう１日様子を見て、明日退院しましょう

メイコ：先生、有り難うございます！

医師：いやいや、ミクさんが気が付いてくれたことが、全てですよ。良かったですね

メイコ：はい、有り難うございます

ミク：あ、有り難うございます

医師：それでは私はこれで

　次の日、ミクは無事退院し、自宅に戻ることが出来た。こうしてミクは無事帰還できたわけだが、ミクには何か引っかかる事があったのだ。どうやら、帰還のショックで、“あの約束”の事も含め、あっちでの記憶を一時的に失ってしまっている状態だったらしいのだ。ぼ〜っとしているような感じだったミクは、それから三日ほど自宅療養する事になった。

（自宅・ミクの部屋）

　その日は日曜日だった。ミクはベッドに寝ていた。勿論起きている状態だが、何故かぼーっとする。

メイコ：じゃあ、母さん、家事で戻るけど、何かあったら呼んでね

ミク：うん、わかった

　こうしてメイコは退室した。ミクは何か引っかかる事があるのだが、どうにもはっきりと思い出せないでいた。

ミク：えっと・・・何か“大事な約束”があったはずなんだけど・・・

　スタッ

　とにかくこんな事をしていても始まらない。せっかく家族全員、ちょうど家にいるわけだ。自分がどういう状態だったか聞こうと思い、部屋を出て、リンの部屋に入ろうとドアを叩く寸前、中からリンとレンの声が聞こえてきた。

　（何か引っかかる）

　こう思ったミクは、失礼ながらもその声をドア越しでちゃんと聞くことにした。

リン：でも、不思議だよね、レン

レン：うん。あれだけ僕たちをいじめていたあいつが、何を思ったのか、あの不動産関係の息子にちょっかい出して・・・

リン：その子の親と先生に、コレまでのこと全部がばれて、先生と怖いおじさん達があいつの家に来て・・・

レン：あっさり転校だもんね

リン：天罰といえば天罰だけど、急だったしねぇ

レン：まぁ、僕たちとしては、助かったんだけどね

ミク：え・・・いじめ・・・相手がいなくなる・・・・・・！！！！

　ミクはあっちでの事をようやく思い出した。そして、“この展開がリンレンに起こっている”という事は、他も、と思い、静かに１Ｆに移動し、ちょうどメイコ母さん、カイト父さん、ルカ姉さんがテーブルでお茶をしている所を、隣の部屋で気づかれないようにして聞くことにした。

メイコ：はぁ、ほんと、ミクが無事で良かったわ。それに迷惑電話も無くなったし

カイト：ん？　母さん、なにか電話で問題でもあったのか？

メイコ：ええ。ホント、しつこいテレアポだったんだけど、相手先、掴まったらしいのよ。今日の新聞にも載っていたんだけど、やはり会社に警察が踏み込んだんだって。悪質業者だったらしくて。もう、ほっとしたわよ

カイト：そうか、母さんもそんな事があったんだ。偶然なのかな？　僕の方もあったんだよ

メイコ：え！？　アナタもなにかあったの？

カイト：ああ。私の指示はムシする、違反する、と、もう、どうしようもない部下が、ようやっと別支社に異動してくれることになったんだ。上の方も問題視していたらしく、人事が動いてくれてね。これで、ようやく、通常業務ができそうだよ

メイコ：ミクの事故前のアナタの悩みって、それだったのね。良かったじゃないの

カイト：まったくだ

ルカ：あれ？　母さんも父さんもそんなことがあったんだ。私もあったの

カイト：ん？　ルカもなのか？

ルカ：私・・・ゼミの先生から、軽いけどセクハラ受けていたの

カイト：何！？

ルカ：あ、でも、そいつ、私だけにやっていたわけじゃなかったのよ。それが学校側にバレテね、即逮捕。当分は私達は他の先生のゼミに行くことになったのよ。今は、ホント、気が楽

メイコ：そう、良かったわね

カイト：まぁ、なんだ。こう言うことは重なる物なのかもな

メイコ：そうね

ルカ：もう、こんな事は起こらないように、気を付けるわ

カイト：父さんも気を付けるよ

メイコ：私も怪しい電話には、絶対に取り合わない事にするわ