【第26回フリーワンライ】あとのまつり【参加作品】
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「あとのまつり」

 

気がついた時には、何もかもが終わっていた。

 

間違っていたのは俺なのか?

訳も分からず意味も無く、男は膝から崩れ落ちる。

 

胸が痛む。

断片的にしかない記憶。

覚えているのは、相手に銃を向けたその瞬間だけ。

 

殺らなければ、殺られてしまう。

その事だけに必死だった。

その事に必死で、自分の置かれた状況、立場を確認する事を怠っていた。

 

その昔、この土地では大きな戦争があった。

男はそこで英雄と呼ばれ、名声を上げる程の腕前だった。

幾多の血を流し、それでも尚、国の為に戦い続けた男だった。

 

しかし、それも今や昔の話。

 

戦争は、とっくの昔に終わっている。

 

だが、それでも未だに夢を見る。

戦場で戦う己の姿。

死屍累々の中で立ち上がり、戦い続ける己の姿。

銃を手に取り、相手を次々と撃ち殺して行く己の姿。

 

そうだ、これは夢だ。

今や世間は平和になった。

戦うべき相手もおらず、銃を手にする理由も無い。

 

その筈だった。

そうしているつもりだった。

その日の出来事も、男はいつもの夢を見ている感覚だった。

胸くそ悪くなる夢を、ずっと見ている感覚だった。

 

街中で見知らぬ男とすれ違った。

一瞬、相手に睨まれたと思った。

殺気を感じる鋭い視線を、男は感じた。

確かに感じたんだ。

 

殺らなければ、殺られてしまう。

 

後はもう、感覚と言うより反射に近かった。

男は護身用の銃を手に取り、何も考えずに引き金を引いた。

 

…………

 

気がついた時には、何もかもが終わっていた。

 

間違っていたのは俺なのか?

訳も分からず意味も無く、男は膝から崩れ落ちる。

 

相手の返り血を浴びて我に返る。

これはいつも見る夢ではない、胸くそ悪い夢ではない!!

俺が起こした事は、全て、今、現実に起きている事……

 

目撃者からの通報を受け、治安部隊が無抵抗の男を捉えるのに大した時間はかからなかった。

手錠をかけられながらも男は叫ぶ。

己の名を、国を救った英雄の名前を。

だが、今の時代では単なる殺戮者でしかない。

見知らぬ通行人を、ただ意味も無く撃ち殺した殺人鬼でしかないのだ。

 

「……あとの、まつり、か……」

 

捉えられた男が力無く呟く。

取り返しのつかない失態。

それを呪った所で、もう、どうしようもない。

 

男は泣く気力さえ失い、放心したまま、壊れたように同じ言葉を繰り返し続けていた。

 

すべては、あとの、まつり…

すべては、あとの、まつり……

すべては、あとの、まつり…

すべては、あとの、まつり…………

説明
https://twitter.com/freedom_1write/status/536142106289389568
久々に参加させていただきました(*´∀`*)何でお題がひらがななんだろう?と思っていたら、こんなのが出来上がりましたとさ。
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