真・恋姫†無双 侍臣墜遇、御遣臣相偶〜第四席〜
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〜第四席〜

 

 

 

 

遮侖は、とりあえず風鈴を自らの屋敷に幽閉した。

彼は女性には興味を持たない人であるから一刀の隣の部屋に放り込んだ。一応ここでは2番目に大きい部屋なので、其程苦にはならないだろうと考えた。

ただ、風鈴が夜な夜な壁に耳を押しつけて、一刀の部屋の様子を探っているのには気付いていない。

それよりも、自分の書庫から書物が無くなっていると思えば、掃除に入った時にそれが床に積み上げられているのには頭を抱えた。

 

「劉備が?」

風鈴がちゃっかり皿洗いに付き合っているとき、彼女が急に切り出した。

「うーん・・・・・・民の噂なんだけど、城外で何日も寝泊まりしてる軍があるんだって。でね、多分それ桃香ちゃん達だと思うんだよね・・・・・・。黄巾党討伐の時、一回一緒に闘ったんだけど、どうしちゃったのかな・・・・・・」

当たり前だ。遮侖は思った。

彼も、劉備を見た事がある。あの時は、単独ではあったが、義勇軍として砦に突入した。

義勇軍程度が公式に恩賞を貰えるはずが無い。

「たとい僕が陛下や何進に言ったところで、何も動かない。ああ、趙忠がもっと使えれば良いんだけど」

あいつはだめだと、十常侍の中で一番皇帝の側に行ける者の顔を思い浮かべたが、同時にその顔にバツ印かつけられた。

 

 

翌日、そのバツ印と宮中で話しているとき、それを彼女の耳に入れてみた。

すると、

「わかりました!私めにお任せを!」

といって陛下の元へぱたぱたと走って行ってしまったので、遮侖も頭を抱えた。

ただ、今回は何故か上手くいった。

案の定騒ぎ出した陛下の言葉を何太后が何進に伝えたのだが、既に恩賞を自ら渡してしまった何進は、流石に決まりが悪いと感じたのだろう、遮侖に勲功の再調査をするように言ったのだ。

 

「へえ、珍しく上手くいったじゃないか。いや、これが初めてかい?これで少しはましになったんじゃないのか?人にまた近づいたな。貴様はもう虫けらなどでは無い。駄馬の程度か?荷物も碌に運べず、すぐ倒れ込む愚図な驢馬か」

失敗したのか成功したのか分からないけれど、嬉しそうな顔をして近づいてきた趙忠に、無性に腹が立ったので、理不尽な八つ当たりをしたつもりであったが、彼女は恍惚の表情を浮かべ、息を荒くしながら自らの身体を抱きしめて悶えるので、余計ないらだちが増えるばかりである。

因みに、同じ過ちを、2日に1度は起こしている。

叱られても、罵られても、褒められても、無視されても悦ぶ趙忠が愚図なのは当然と言えるかも知れない。

 

さて、脇で悦に浸っている趙忠を余所目に、遮侖は早速劉備を安喜県の県尉とする、と書かれた書を使者に運ばせた。

これで風鈴との義理立てもすんだことだし、とりあえず周り固めて洛陽守るぞ!・・・・・・と意気込んだのは良いのだが、またしても賄賂を贈りに来たバカが来て、趙忠に受け取りに行かせるのだった。

 

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さて、そんなこんなで一応官職に就いた劉備は早速周辺の整理を始めた。

((大いなる大志|お花畑))はともかくとして、仁政を行っているので、民は大いに感服した。

そんな中、皇甫嵩が劉備を訪ねてきた。

 

「劉備、久しぶりね」

劉備は突然の来訪に驚いて、慌てて関羽達にもてなしの用意をさせた。

「は、はいっ!ご無沙汰しております!」

深々と頭を下げる劉備に、皇甫嵩は笑いながら手を振った。

「なにもそんなに畏まらなくても良いのよ。風鈴が貴方はいつか大きな事をやるかも、って言ってたから様子を見に来ただけ」

「そ、そんな、大きな事なんてできるはず有りません」

劉備は大きく首を振った。

「風鈴が言う事って大体当たるんだけど。だから、もっと自信を持つのよ。あなた達は絶対こんなところで小さくなっているべきじゃ無いわ。私だってそう思うもの」

「で、でも・・・・・・」

「あなたが前に言っていたでしょう?皆が笑って過ごせる世をつくりたいって。あなたがつくりたいなら、あなたが強くならないとダメなのよ。黄巾党党閥の時に顔ぶれを見たでしょう?恩賞を貰って力を得るために躍起になっていた人たち。ああいう人と戦わなくちゃいけないの。あの人達にはあの人達なりの理想や目標があるんだから、あなたの理想を説いたところで、受け入れてくれるはずが無いわ。それ以上に県尉ぐらいであの人達と戦えるわけが無いでしょう?話すら聞いてくれないわよ」

劉備には、それがかつての恩師、廬植の言葉にも聞こえた。

劉備は深く頷いた。

 

頃合いを見計らって、役館に案内したのだが、皇甫嵩は、入ったとたんに固まった。

高座のあたりはいくらかましだが、反対側の隅にはなにやらがらくたが積み上げられていて、崩れないように机や椅子で壁をつくっていた。

何より、皿に山と盛られたそれは、最早料理と言えるものではなかった。

部屋の片付けをしたのは張飛であり、食事の仕度をしたのは関羽であるから当然である。

更に悪いことには、劉備が、長い放浪生活で覚えた世渡りの術、賄賂として金の壺を運んできたから大変である。

やっていること自体あながち間違いは無いのだが、相手を間違えた。

 

「劉備!関羽!張飛!ここになおりなさい!」

皇甫嵩が怒鳴った。

「まず関羽!何ですかこれは!あなたは皿に盛るものを間違えたのでは無いでしょうね!他人に料理を振る舞うなら味見をしっかりしなさい!あなたはこれを一口でも口にしたのですか!つぎに張飛!片付けというのはただ積み上げればいいというものではありません!大体なんで広間に筆や書簡があるのですか!仕事は執務室でしなさい!もともと置いてあった場所に戻すんです!わかりましたね!」

「は」

「ごめんなさいなのだ・・・・・・」

関羽と張飛の顔が引きつった。

後に天下に名を知らしめる2人の豪傑も縮こまってしまうほど、迫力があった。

「そして劉備!」

「は、はいっ!」

劉備は飛び上がらんとする勢いで姿勢を正した。

「臣下の管理は主君であるあなたがするのです!この状況を見て、あなたの指示に大きな誤りがあったことに気付くでしょう?まさかあなたまでまともに料理ができないなんて言うんじゃ無いでしょうね」

劉備は目をそらした。

皇甫嵩は頭を抱えてため息をついた。

「それにあなたが持ってきたものは何ですか!」

「え、えと・・・・・・立派な壺です。あの・・・・・・皇甫嵩さんに差し上げようと思って・・・・・・」

「もしそれが賄賂のつもりなら、ふざけないで!いい?賄賂なんて悪い役人の象徴なの。贈る方も同じよ。あなたが賄賂を贈っているうちは、あなた自身大成しないし、理想とする世も作れないわ。分かったわね!」

「は、はい・・・・・・」

豪傑3人が、そろって皇甫嵩の前に頭を下げた。

彼女としては別に過ぎた失敗をしつこく責めるようなことはしたくなかったので、何となく持ってきた料理本を一冊置いて、安喜を後にした。

 

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その後しばらくして、何進が派遣した、朝廷の使いが安喜県を訪れた。

劉備が挨拶に出向くと、使者の督郵は高座から3人を見下ろしていた。

「おまえが県尉か。ここに来るまで、薄汚れた百姓共が我々を指さしたり、近づいてきたりした。勅使に向かって大層な態度ではないか。おまえは県尉として、監督がなっておらん」

「ご、ご免なさい・・・・・・」

「ならばおまえ自身はどうだ?我々を迎えるに当たって、まともなもてなしは出来るのだろうな?」

「でも、こんな田舎ですから、出せる料理も限られますけど」

「それも仕方が無かろう。我々に対してどんな心をもって歓待するか、見定めてやろう」

劉備は、県一番の料理人を呼んで料理を作らせ、県一番の酒を用意した。

しかし、督郵は不満を露わにしたあげく、中山靖王の末裔と偽り、民をまとめ上げるとは不敬極まりなしと言い、それを帝に奉り、沙汰をくだしてもらう旨を伝えた。

 

「あの、私のなにがいけなかったのでしょうか?」

劉備は裏でこっそりと随員の者に問うた。

「決まっているじゃ有りませんか。賄賂ですよ。賄賂。なぜ閣下をもてなすにあたり、金銀を積まなかったのか、私たちも不思議でなりませんよ。それに、それは私たちにも言えること。閣下のみならず、控える者にもそれ相応のものを渡すことも肝心ですよ」

と、答えられたので、劉備は驚きあきれて、帰ってしまった。

 

その次の日も、督郵になんの贈り物も来ないので、業を煮やして官吏を呼び、

「百姓共から劉備に対する不満の声が強く聞こえる。帝に奉聞して、処罰を仰いでやるから、訴状をしたためろ」といった。

官吏は、百姓全員が劉備に感服していると言うと、

「今すぐに書かねば、汝も同罪なるぞ」

と脅したので、官吏は震えながら督郵の言ったとおりの罪状を書き並べた。

 

張飛は、川で釣った魚を食べて満腹の表情を浮かべて帰ってくるところだった。

豚々にいい具合に揺られて、つい居眠りをしてしまい、私館を通り過ぎてしまった張飛が目を覚ますとそこは役所の前であった。

「ん?いったいどうしたのだ?」

そこの門前で、50人ほどの百姓が頭を地に着けて、なにやら騒いでいた。

「みんな!これはどうしたのだ?」

農民の一人が、張飛に気付いて訳を話した。

「あの勅使さまが、官吏の一人に罪状を書かせたのです」

「だれが悪いことをしたのだ?鈴々がとっちめてやるのだ」

「それが、玄徳様が我々百姓から税を搾り取って私腹を肥やすなど、20の罪状を

書き並べたので、我々も勅使様におすがりしたところ、たたき出され、門を閉められ、仕方なくこうしているのでございます」

張飛はぴょんと豚々から飛び降りると、彼らに言った。

「これは鈴々が勝手にやることなのだ。みんなは悪く無いのだ。あとで自分のせいにされないようにどこかに逃げるのだ」

百姓は、ぞろぞろとその場を離れたが、近くの物陰からそれを眺めていた。

張飛は門の前に立った。

「門を開けるのだ!開けなかったらぶち破って中に入るのだ!」

番卒は劉備の部下、張飛だと言うことを伝えると、督郵は絶対に入れてはならぬと、門の内に人垣を作らせた。

「むーっ!開けないならぶち破るのだ!」

そういって張飛は易々と門を押し倒して、逃げ遅れた督郵の家来を何人か押しつぶし、張飛は中に入っていった。

「鈴々にかなうはず無いのだ!」

そういって、督郵の手下を片っ端から殺して、督郵を造作なく庭に引っ張り出すと、柳につるし上げ、その枝で幾度も打った。

「桃香お姉ちゃんは悪くないのだ!悪いのはおまえなのだ!」

張飛は目に涙を浮かべながら、叩き続けた。

 

劉備と関羽が騒ぎを聞きつけ、急いで止めに来たときには督郵は既に虫の息だった。

「鈴々ちゃん!止めて!」

「止めぬかっ!鈴々!」

関羽がその柳の鞭をひったくった。

「お姉ちゃんは悪くないのだ!絶対に悪くないのだ〜!」

張飛はそう言って、関羽に抱きついて泣き出した。

劉備は督郵を下ろしてやろうとしたが、関羽がとめた。

「愛紗ちゃん、どうして?可哀想だよ」

「このような者を助けても無駄なことです。たとえ姉上が此奴を助けたところで、そのお気持ちは誰に通じましょう。こちらの百姓達でさえ、此奴の姿を喜ばしく思っているのです。ここは身を一度退いて、われらの理想を実現するために、再び計画を練り直すのです」

劉備は漸く頷いて、県尉の印綬を督郵の肥えた腹の上に投げた。

「ほんとうに嫌な人だね。さよなら」

劉備は関羽と張飛を促して、そこを去って行った。

 

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というわけで、桃香のターンでした。

 

nakuさん、フレーズ、これで如何ですか?何か遮侖がもう女性化していたので・・・・・・前回で。

 

とにかく、これでまた話は宮中に戻ります。

桃香が追われる所とか、正直どうでもいいので。

 

遮侖は味方勢力なら、一刀を貸しても良いと思っていますので、もしかしたら風鈴、楼杏。黄のターンがあるかも知れません。

問題は、月の扱いが未だ定まっていません。

 

それから、一刀の双剣の銘は耶蜘蛛さんの「此方」と「彼方」をそのまま使わせていただきます。

 

nakuさん、耶蜘蛛さん、ありがとうございました。

 

では、再見!

説明
『新・恋姫無双・乙女だらけの三国志!!………わぁ乙女(^∀^。)?』

・・・・・・とまぁ、nakuさんのキャッチフレーズを若干いじりまして、張譲が乙女扱いされて大喜びなわけですが、そんな彼もちゃんと仕事してます!

・・・・・・で、今回はお花畑のターンです。
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真・恋姫†無双 桃香  風鈴 楼杏 鈴々 張譲 

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