真・恋姫†無双 裏√SG 第17.5話
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焔耶さんと許昌

 

 

 

 

 

焔耶「はぁ…何故ワタシなんだ…」

 

はじめまして。ワタシの名は魏延、真名は焔耶。

17年前に蜀の将として戦乱を駆け抜け、三国同盟後も主に蜀領で、とりわけ五胡の国境線付近での任務を多く受け持っているものだ

 

それ故に、今までワタシの出番がなかったのだ。

決して、神様が忘れていたとか、そういう訳ではない。断じてない!

 

だが、ワタシ自身はそれでも良かったと思っている。

出番がないと言う事は、ここ許昌に行かなくて済むと言う事なのだから

 

ワタシは現在、とある任務で許昌に来ているのだが、ワタシはこの街が多少苦手だ。

と言うのも…

 

小型犬「きゃんきゃん」

 

大型犬「うぉんうぉん」

 

セキト「せやな」

 

この街、犬が妙に多いのだ…

 

ここ許昌は、政治に携わっている上層部のほぼ大半が犬猫好きであり、それ故に三国一犬猫に優しい街づくりを目指していると聞いている。確か、犬猫を無断で捨ててはいけないとか、犬猫を虐待してはいけないとか、野良専用の施設があるとも聞いたな

 

ワタシ自身、お館も尽力してくれたこともあり、多少犬に対しての苦手意識はなくなったのだが、急に多勢で寄って来たり、吠えられたりすると、やはりビクついてしまう自分がいるのも事実だ。だから、なるべく許昌には来ないようにしていたのだ

 

焔耶「だと言うのに、桔梗様は…」

 

今回の任務は、負傷した翠の保護と、道中までの警護だ。

王異とか言う暗殺者にしてやられた翠を無事に洛陽に連れ帰る。ただそれだけだ。

それだけの為に、このワタシが抜擢された。

いや、例えばこれが許昌以外の、建業とかなら喜んで行っていただろう。ちょっと観光なんかもしつつ、美味い魚料理でも食って、桃香様にお土産も買ってから翠を保護していただろう。

だがしかし、ここは許昌。ワタシにとって、この街以上に近寄りたくない街はない!例えこの街で繁盛している【晋】の飯をタダで食えると言われても、ワタシは即刻この街から出て行きたい!それくらいこの街が苦手なのだ!今回ワタシが選ばれたのだって、絶対に桔梗様が面白半分で選んだに違いない!

 

焔耶「ハッ!まさかあの事が…桔梗様が大事にとっていた饅頭を食った事がバレ、その報復としてこの様な仕打ち?だとしたら、なんという事だ。桔梗様、なんて恐ろしい人!」

 

しかし、あの饅頭は美味かった。いったいどこで仕入れたのだろう

 

ワンコ「わんわん!」

 

焔耶「きゃうん!お、脅かすなお前!寿命が縮むだろ!」

 

何故か犬に吠えられた。

ワタシはとてもびっくりし、変な声が出てしまったが、別に誰かに見られては…

 

蒲公英「きゃうん!だって……クッ」

 

一番見られたらマズイ相手に見られたーー!!?

 

焔耶「た、蒲公英!何故お前がここにいる!?」

 

蒲公英「っ!っ!っ!うん?なに?」

 

焔耶「声を殺して大爆笑するな!」

 

蒲公英「アーハッハッハッ!!きゃうん!って!アハハハハハ!」

 

焔耶「声に出して爆笑しろとも言ってない!笑うのを止めろと言っているのだ!」

 

蒲公英「アハッ、アハハハハハ!ゴホッゴホッ!」

 

笑いすぎてむせるなよ!

 

蒲公英「ヒー!ヒー!ご、ごめ、ごめんごめん!

いやだって、まさか焔耶に会うとは思ってなくて…クフッ」

 

焔耶「お前、いい加減にしろよ?」

 

ワタシが鈍砕骨を握り締めると、蒲公英はやばっ!と言って慌てて笑うのを止めた。

この辺り、だいぶ大人しくなったとは思う。昔ならワタシが武器を握ろうが関係無く笑っていただろう

 

焔耶「で?お前も翠の保護と護衛か?」

 

蒲公英が落ち着いたのを見計らい、ワタシは蒲公英に問い掛けた。

まだ微妙に笑みが顔に張り付いてるが、翠の名が出た途端、話をしようとは思ったらしい

 

蒲公英「そうそう。洛陽に着いた途端、お姉様が負傷したって言うから、慌てて許昌にとんぼ返りだったよ。念のために護衛をつけるとは聞いてたけど、まさか焔耶だねんてね」

 

そういえば、お館と五虎将が洛陽に来ていたと言う報告があったな。

確か、許昌の遷都計画だったか?許昌が都になったら………

 

焔耶「死ぬ…」

 

蒲公英「はい?」

 

思わず未来を想像してしまい、ワタシが犬に囲まれている光景を思い描いてしまった。

なんということだ。もしそうなってしまったら、ワタシは軍を退役する事も辞さない

 

焔耶「ところで、翠の容態はどうなんだ?」

 

蒲公英「あぁ、お姉様なら無事だよ。

結構こっ酷くヤられてたけど、あれで生きてるんだから、姉様もたいがい化け物だよね」

 

実の姉を化け物呼ばわりとは、相変わらずこいつは容赦がないな

 

焔耶「それならいい。なら、もう出発するか?ワタシとしても…」

 

さっさとこの街を出て、久しぶりに桃香様の顔を拝見したい

 

蒲公英「あー、それは無理。なんか華佗が、検査の為に今日一日はもう少し診ておきたいんだって。だから出発は明日。それまではこの許昌に滞在だよ」

 

なん…だと…

 

焔耶「ど、どういうことだ!?検査ってなんだ!翠ならそれくらい問題ないだろ!」

 

蒲公英「いや、私に言われても。文句なら華佗に言ってよ」

 

ワタシは蒲公英の言葉を聞き、この街にある華佗の診療所へと駈け出す。

そして辿り着き、扉を開けると、そこには今まさに治療中らしい翠の姿があった

 

翠「おー、焔耶じゃねーか。久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」

 

翠の様子はいつも通りだった。ただ、包帯があちこちに巻かれ、そばには松葉杖があるくらいだ

 

焔耶「お前は元気そうだな、翠。それだけ元気なら、もう出発できるよな?」

 

私が聞くと、翠は困ったように頬をかき、すぐそばに居た華佗に睨まれてしまう

 

華佗「悪いが、今日一日は治療に専念してもらう。今ここで処置を怠り、洛陽までの道中で傷が開くなんて、バカバカしいからな」

 

華佗のいう事はもっともだ。だが、となると、ワタシは…

 

翠「つーわけなんだ、焔耶。せっかく許昌まで来たんだし、適当にぶらついてきてくれ!」

 

そういう翠の笑顔が純粋過ぎて、ワタシは首を縦に振るしかできなかった

 

 

 

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焔耶「適当にぶらつけと言われても…」

 

外に出て、周りを見渡せば、右を向いても左を向いても犬が居る。

そんな状況下で、どうぶらつけと言うのだ…

 

焔耶「仕方ない…どこか適当な店に入るか」

 

そう思うやいなや、ワタシはどこか手ごろな店を探し始める

 

理想的なのは、安くて長時間滞在できる飲食店だ。

飲食店なら、衛生上まず犬は居ないはずだ。そこに最悪半日居座ることができれば上々。

後は適当な宿で一晩を越すだけだ。最初から宿に居たらいいんじゃないかって?

無理だ。ワタシがそんな、室内でジッとしてられると思うか?

 

焔耶「さて、なら早速いい店を探すか。許昌と言えば、【晋】だが…」

 

お食事処【晋】。ここ許昌にある、大陸で最も有名とされている料理屋。

有名である理由は、利用者の半分が、桃香様の様なこの大陸の重要人物であるため。

そこで出される料理は、この大陸では見たこともないような料理ばかりであり、そのどれもが美味い。かといって、料金はかなり良心的で、一般人も普通に払える値段設定との事

 

もちろん、ワタシもよく知っている。なんなら、毎年一度は必ず会っている。

何故なら、三国同盟締結記念日には毎年【晋】を雇い、彼らの料理を振る舞ってもらっているのだから。彼らの出す料理はどれも美味い。これは間違いない。だが…

 

焔耶「あそこはダメだ…あの家にはセキトがいる」

 

あの店の前には犬小屋があり、そこには恋の愛犬であるセキトがいる。

あの犬、何故かワタシにすり寄ってくるんだよな。というか、セキトだけに限らず、ワタシの下にはよく犬が寄ってくる。ほら、今もこうして…

 

室内犬「わんわんおー」

 

焔耶「わん…わん………おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!??」

 

ワタシは全速力で駈け出した。持てる力を全て脚力にまわして走った。

そして背後を振り向くと、そこには数匹、また数匹と増える犬の群れがあった。

人間と違い、4足で走るあいつらの脚力は、このワタシの全力に匹敵するほどの速さだ。

ぎらついた、獲物を捕らえたという目、口から垂れる唾液。間違いない。

あいつらは、このワタシを襲う気だ

 

焔耶「ぬぁぁぁぁ!!なんでこんな目にあうんだぁぁぁ!!?」

 

ワタシはとにかく全力で走った。何も考えず、ただひたすらに。

そして角を曲がり、店らしきものがあったので、ワタシはなりふり構わずそこに飛び込んだ。ワタシはさっと立ち上がり、扉越しに外の様子を見る。犬の群れはワタシを見失ったようだ

 

焔耶「ふぅ…これでなんと…か…」

 

落ち着きを取り戻し、店内を見渡す。見覚えのある木造建築で、落ち着いた雰囲気の内装。

バーテンダーと呼ばれるものと、メイドと呼ばれるものを着ている店員。

そして久しぶりだが、馴染みのある店員の顔…

 

咲夜「お前…焔耶か?ずいぶん久しぶりだな。というか、お前が許昌に来るとは…」

 

いったいどういう風の吹き回しだ?と、【晋】の店員、司馬懿こと咲夜が尋ねてきた。

どうやらワタシは、もっとも来ては行けない店に来たようだ…

 

咲夜「とりあえず、そんなとこに居たら迷惑だから、こっちこい。なんか出してやるよ」

 

そしてワタシは、言われるがままに店のカウンター席に座り、茶を貰っていた

 

 

 

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咲夜「はっはっは!犬に追われたからここに飛び込んだって!

焔耶は相変わらず犬が苦手なんだな!」

 

咲夜はワタシの話を聞くなり、声に出して笑い始めた。

それにワタシはちょっとムッとする。それを見た咲夜は、笑いながらも謝って来た

 

咲夜「あははは、ていうか、お前も逃げちゃダメだろ。

犬ってのはな、逃げられると追いかけてくる生き物なんだよ。

もし絶叫しながら逃げてる奴見かけたら、そりゃあ追うしかないよな」

 

さすがに、犬を飼っているだけあって、犬については詳しいようだ。

とはいえ、逃げたら追ってくるとは、なんという迷惑…

 

焔耶「どうすれば良いというのだ…」

 

咲夜「どうするも何も、落ち着いて、ゆっくり立ち去ればいいんだよ。

お前が興奮したら向こうも興奮しちまうからな」

 

焔耶「無理だ!お前も知っているだろ!ワタシはな!」

 

咲夜「あーはいはい、トンデモ敏感肌だったな。舐められるとやべぇんだろ?」

 

やばいなんてものじゃない!それはもう、大変なことになる!

 

咲夜「ま、ここにいりゃ、しばらくは大丈夫だよ。セキトも、今頃は恋と散歩中だし。

ここで私の話し相手になってくれよ」

 

焔耶「話し相手って…ここは大陸一有名な店じゃないのか?」

 

咲夜「そりゃ、有名かもしんねぇけど、昼時越えたらこんなもんだぜ?

この時間帯は奥様方がお茶飲みに来るくらいだ」

 

確かに、店内に客は少なく、それでいてほとんど女性客だ。

あ、あの茶菓子、美味そうだな

 

咲夜「ん?あのホットケーキが気になるか?作ってやるよ」

 

こいつは、本当に人の事をよく見ている。なぜワタシがあれを食べたいとわかったのだ

 

 

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蒲公英「あ、いたいた。探したよ焔耶」

 

咲夜に作ってもらったホットケーキを食べていると、蒲公英がやって来た

 

焔耶「どうしたんだ、蒲公英?」

 

蒲公英「どうしたって…あんた、今日の宿どうするの?」

 

宿…あぁ、忘れていたな。このホットケーキに夢中だった。

それにしても、宿か。外に出なきゃいけないよな。嫌だなぁ…

 

焔耶「なぁ咲夜、ここ、宿とかは…」

 

咲夜「やってない。諦めてさっさと探しに行った方がいいぜ。

いい宿は早い時間から満室になるぜ」

 

焔耶「な!?それを早く言え!」

 

咲夜「いや、もう取っているものだと」

 

蒲公英「宿が取れず路地裏…そこに群がるは男の犬…薄い本が出そうだね」

 

焔耶「そんな展開、あるわけない!」

 

ワタシは金を机に叩きつけ、店を出た

 

セキト「わんっ」

 

恋「ありがとう…ございまし……Zzz」

 

焔耶「ひゃん!び、びっくりしただろ!」

 

セキトに吠えられ、思わずのけぞるほど驚いてしまう。

後ろから咲夜と蒲公英の笑う声が聞こえるが、ワタシは努めて冷静を装い、その場を立ち去った。すると、咲夜が言った通り、セキトは追ってこなかった

 

フッ…もう驚かないぞ!

 

 

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焔耶「ま、まずい…」

 

蒲公英「あーらら、どうするの?私が取ってる部屋、一人部屋だから寝台ないよ」

 

宿が見つからない…

最悪、城に行って部屋を借りるという手もあるが、城の中にも犬は多いから、なるべく避けたいのだが…

 

 

きゃん!

 

 

ふと、どこかから犬の悲痛な声が聞こえた。

蒲公英も聞こえたらしく、ワタシと目を合わせ頷いた。

先程の声は、この薄暗い路地裏から聞こえた。

ワタシと蒲公英は気になり、奥に進むことにした。

するとそこには…

 

チンピラ1「ヒャッハー!見たか今の!大当たりっしょ!」

 

チンピラ2「うひゃー!おま、マジ容赦ねーわ!」

 

チンピラ3「次オレ!オレが投げる!」

 

怯える子犬に、容赦なく石を投げつけるクズが数人いた

 

蒲公英「!?あいつら!」

 

焔耶「………」

 

ワタシはゆっくり犬に近づく。そして犬に投げられた石を捕った

 

チンピラ3「あぁ?なに?お前?」

 

焔耶「クズが…」

 

ワタシは捕った石をチンピラに投げつける。

石はチンピラの顔面にぶち当たり、鼻から勢いよく血を噴き出させた。

それと同時に、蒲公英が走りだし、チンピラを薙ぎ払い始めた

 

焔耶「確かこの街では、犬を虐めたら重罪なんだよなぁ?

お前たち、覚悟はできているんだな?」

 

ワタシも、それに混ざり、チンピラの骨を砕き始めることにした

 

 

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蒲公英「犬、触れてるじゃん」

 

チンピラども薙ぎ払い、虐められていた子犬を保護した。

その道中、蒲公英がそんな事を言うので、ワタシも少し驚いた。

ワタシ自身、犬を抱っこできるなんて、思いもしなかった

 

焔耶「ハッ、もう犬は怖くない」

 

あんな小さく、弱い姿を見たんだ。この子たちのどこを怖がれば良いのだ

 

焔耶「それにしても、ここも治安が悪くなってきたな」

 

蒲公英「やっぱり、そっちも?」

 

ここ最近になって、ああいったチンピラが後を絶たなくなってきた。

それこそ、あの乱世だった頃と変わらない数で増えてきている。

蜀も呉も魏も…段々と雲行きが怪しくなっていた

 

焔耶「あぁ。巷で噂の徐福と言う名を聞き始めてからだな。

また、乱世のような時代を作らないためにも、我々も気をつけなければいけない」

 

そういうと、蒲公英も静かに頷いた。

せっかく掴んだ平和な時代を、よくわからないキチガイなんぞに壊されてたまるか

 

子犬「くぅーん」

 

焔耶「ん?あぁ。お前たちが安心して暮らせるように、このワタシが頑張ってやるさ」

 

そう言って、ワタシは子犬の頭を撫でた。

すると、子犬はペロッと弱弱しくワタシの手を舐め…

 

焔耶「ひゃあ!!」

 

みっともない声を出してしまった

 

蒲公英「まったく…あんたも難儀な体質よね」

 

やはり犬は苦手かもしれない…

 

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations日常編 
今回は何気に初登場のあの子視点
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コメント
セキトが喋りはった!?(ohatiyo)
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