魔法少女リルカルなのはサイオニックティアーズ |
魔法少女リリカルなのはサイオニックティアーズ
長いい黒髪を夜陰に靡かせながら走る女性。
穂群原学園制服をはためかせ夜の闇を飛ぶ。その瞳は野生の獣を思わせるほどの鋭利さ、
しかしながらその表情は幼さが残る。不思議な少女だ。
咆哮が響き渡る。それを見据え、腰を落とす。
魔力を励起。全身に沸き立つ力の波動を知覚、それが身体を駆け巡るのを感じる。
敵を前にこちらは万全。甲に現れる紋章を見て頷く。これが、私が参加した聖杯戦争の最初の戦い。
(運がないと自嘲うべきか?…いいえ、私は運がいいわ)
何故ならばこの英雄を引き当てたときに確信した。…この英雄は騎士王に匹敵すると。
霊気の流れが固着し、過去の英雄を形作る。
黒銀の鎧に身を包み、戦戟をもつ騎士。雪のような肌、鎧からでもわかる女性の豊満さ…
―《復讐の英霊》よ―。階級は聖杯戦争にありえない想定外。
これが冬木の第五時聖杯戦争の戦いを告げる鐘の音、それは剣戟の音によって夜の新都に響き渡った。
雄々しい体躯から繰り出される凶悪な一撃。風を斬り周囲に暴風を巻き起こす褐色のバーサーカー
アインツベルンが呼び出した狂戦士の英雄の真名を伺い知ることはできぬ。しかし、狂化の呪いを受けてなお冴え劣らぬ剣技は相手が万人が知る英雄であるとわかる
その凶悪な蛮族の士の一撃を戟槍で交わす黒騎士の剣技もそれに劣らない。光の軌跡は幾果てなく続いている。
バーサーカーの石の斧剣を掻い潜り肉薄。
不利を察知すると蛮族の英雄はこちらの槍をワザと肉に突き刺し攻撃の手段を殺す。
そして、その豪腕をふり下ろそうとした瞬間、首筋に黒騎士の蹴りがめり込み吹き飛ばされた。
「やるじゃない。あなたのサーヴァント。私のバーサーカーにここまでするなんて」
そう酷薄に微笑むのは銀色の髪の少女。
『アインツベルン』ーお得意のホムンクルスか?
こちらの攻撃、指先から発射した魔弾が霧散し闇に飲み込まれていく。―防御結界。
こちらのシングルアクションを向こうは無力化。森に逃げたこちらを追いかける相手は狐狩りといったところか
相手の髪から銀色の鳥が羽ばたく。…一瞬で詠唱なしで使い魔を?、とんでもない化物ね。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁー…。
最後の呼吸を飲み込み、セーラー服を乱暴にチャックを下ろし、そこから戦闘をするための水着になる。
外様の魔術師である自分が『御三家』の一角を潰せるのは僥倖といえなくもない。
相手がこちらを格下だと見下しているのも幸いだ。
もう、この服に意味はない。
戦闘者にこの服は邪魔だ。赤いチョーカーを首に掲げ、豊満な肢体をハイレグに包む。
励起した魔力は精神と呼応し四肢に力を漲らせる。ここで…迎撃する。
起伏の激しい山道。制服を隠して目印の印。魔力を辿ればなくしはしない。
言峰教会からの帰りに襲われた体ではあるが市街地ではなく広大な森というのがこちらにとっては最良の策。
「…鬼ごっこはもうおしまい?」
少女が微笑む。それにこちらも笑みを浮かべて…相手が驚愕する。
「ん?戦闘しやすい格好にしただけだけど…?そんなに奇異の目で見ないでよ?」
私はそうつぶやき。力を解放した。
異変を感じてバーサーカーが森に視線をむけた瞬間。
ギリシャの大英雄ヘラクレスは討ち取られた。彼の宝具「十二の試練」をオーバーして首の骨が剥き出しになった死体は魔力に帰っていく
骨はへし折れ変形し、四肢はあらぬ方向をむいて、相貌は両目ごと抉られ…手に握る眼球さえも魔力となり虚空に消えた。
イレギュラー
ー想定外。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。―冬木の森で死ぬ。
衛宮士郎と出会えず、第五時聖杯戦争の最初の脱落者はアインツベルン。
聖杯戦争においてその都度、敗北し、煮え湯を飲まされ続けたアインツベルンは第四次聖杯戦争においてフリーの下賎な魔術師を雇い。愛情でその男を縛ろうとした。
ユティーツァの後継機のホムンクルスを妻として聖杯を勝ち取るために最高の英雄をも召喚させた。だが、それは水泡に帰した。
誰もいなくなった静寂がそこにはある。
荒廃した森と潰れた幼い少女の手だけが森に残された。
第三次聖杯戦争よりも早く、アインツベルンが手塩にかけて育て、送り出した後継機。
衛宮切嗣とアイリスフィールの娘は最初の骸となった。
冬木市の情勢はその様相を変化させていく。
柳洞寺に根を下ろしたキャスターは恐慌した。最大の敵だと思っていたアインツベルンの真っ先の脱落。
遠坂邸に魔力の渦があがる。英雄を召喚したのであろう。間桐邸も英霊の残滓が周囲に残っていた。御三家はサーヴァント召喚に成功した。
エーデルフェルトの別荘に居としたバゼット・フラガ・マクレミッツも「ランサー」を召喚。
言峰綺礼はほくそ笑む。今度の聖杯戦争は過去、類を見ない「地獄」となるだろう。
鼓動しない心臓に手を当て、五度目の聖杯の監督役は聖杯を顕現させるために動き出す。
「そうだとも私は今度こそあれの誕生を見るのだ。そのために今回の聖杯戦争を用意したと行ってもいい」
…不意に電話がなった。
言峰は聖堂教会から―…その報告は彼を困惑させた。
「―この時期に?、なぜ?」
それは因縁。彼の英雄に滅ぼされた死徒の一派が冬木市に入ったという情報だった。
《ロシアの大英雄》
クラス:アヴェンジャー
真名:イリア・ムーロメツ
属性:混沌・善
筋力:A++
耐久:A
敏捷:A++
魔力:B+
幸運:C
宝具:B
ロシアの口承叙事詩ブィリーナに登場する英雄
★宝具スヴャトゴル《巨人の勇猛》A+
常時発動型宝具。スヴャトゴルの身体から命の泡があふれ出したその泡を纏った事に由来する筋力と敏捷、回復力の向上。
本来の怪力が向上され体術から相手を即死させる関節技を使う。装備することでパラメーターが向上する。
★宝具「ブィリーナ」《敵対するものに死の鉄槌を》Aクラス宝具
イリアの武勇を神格化した戟槍。分解すると弩にもなる。これは怒って教会の十字架を吹き飛ばした逸話から。
真名開放による効果は退魔《霊的存在を調伏する》神性属性をランクダウンさせる効果があり、
ヘラクレスやギルガメッシュとは相性もいい。
代わりに最後は石になるという逸話からメデューサの石化には弱い。
布団から起きて…
ゆっくりと、少女は一度、眼を瞑った。
最初の一打は有効だった。アインツベルンを倒せたアドバンテージは大きい。
…それでも、自分が殺した少女の顔が忘れられず、昨日は寝込んでしまった。幾分、回復はしたものの気だるい。
「マスター」
そう呼ばれて顔を上げると…銀色の髪の女性が全裸で心配そうに見つめていた。
「なっ、…!」
両目を見開いてまじまじと…見つめて返して。
その豊満…というより、おっきな胸に顔を赤らめて大きな声で…
「なんで、はだかぁぁぁー!」
新都の武家屋敷に素っ頓狂な大声が響き渡った。
「そんだけ大声が出せるなら大丈夫だな。マスター」
…裸エプロンで何言ってますか、この英霊?
「そんなにじろじろ見ないでほしい。マスターが体調が悪そうだから私の手料理をご馳走してやろうとな…」
…私の家の服はサイズが合わないと言っていた。明日にでも服を買わないと毎日裸でうろうろされたらたまったものじゃない。
私の住居兼魔術師の工房は言峰教会に近い高台の一角。
曽祖父が遠坂家の当主と敵対して居を構えたという家の周囲を小さい堀が囲む小城郭という体。
魔術回路の継承も終わり、祖父の遺産を管理する名目で私はこの小城の主に収まった。
…遺産というのは魔術も含めての伝統技術。
ことに桜庭が伝えてきた魔術様式との私との相性は最高。祖父の後継者に選ばれてからは鍛錬の日々。
祖父が亡くなってから四年。
私が住みやすいように改造された邸宅は今では名実ともに私の城。
地下の魔術工房は当時とそのままだが、居間の電球はLED電球に変えてあるし、中庭の枯山水は廃して天蓋をして
祖父の寝室にダブルベッドをいれて私はそこで寝起きしている。部屋一面の布団に包まりながら…
新都のスーパーが近いから買い物には困らないのは利点であり、祖父の遺産と魔術協会に残した研究資金で生活している。
…あとは副業も。
「マスター…併設された道場にあったのは闘技場か?」
目利きの早いことで。格技場は祖父の代、柔術の道場だった。今はプロレスのリングをおいてある」
…夜な夜な此処で闇試合を開催しているのだ。
「そうか、マスターの格闘技術は大したものだと思っていたが日々、研鑽しているのだな」
関心するサーヴァント。だけど、この英霊に比べたら私のなんて児技に等しい。あの巨躯を物ともしない戦闘技術に驚愕したのだから。
…本当に豪放磊落な英雄だこと。
ピリピリとした緊張感が場を支配していく。
「とりあえず、服を着て」
今日は学校は休んで…服を買いに行かなくてはいけないな。
説明 | ||
―はじまりは第五時聖杯戦争から。 言峰教会の対岸の高台に古めかしい小城の跡 そこに居を構える魔術師の後継、桜庭愛。左手に現れた令呪の刻印。 それがすべてのはじまりだった。 リリカルなのはやfateの世界観の融合。ガチの格闘ss それは、想定外。ありえない出来事から幕を開けた |
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