ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY 32 忘れ物とプレゼント
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前回のあらすじ

小悪党の教皇を倒し、ついにアスナを取り戻した キリトとデュオは迷宮の如き神の体内を駆け抜け外に出た。

一方、外側で神と激闘を繰り広げていたベリルは、ボロボロになった神を見上げて「そろそろかな?」と呟く。

直後に神が停止、その胸部からキリト、デュオ、アスナの3人が出てきた。

ベリルは自分の前まで歩み寄ってきた3人にいくつかの言葉を告げ、最後に夜空の剣をキリトに託して去って行った。

 

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STORY ]]]U 忘れ物とプレゼント

 

 

 

 

 

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デュオ視点

翌日

目を覚ました俺が時間を確認すると、現在時刻は午前5:21。

いつもよりやや遅いが、昨日までの戦いを考えればかなり早い起床だろう。

とりあえず初期装備の服を着て一階へ下り、シャワールームへと足を運んだ。

脱衣所で服を脱ぎ、浴室でシャワーをかぶる。

溢れ出した熱い湯が頭から身体を伝って流れ、その身に付いた汚れや血を洗い流していく。

シャワーを浴び終え、浴室から上がった俺はタオルで水気を拭き取ってから衣服を纏い、そして最後に、ベリルが置いて行った大剣を背負った。

身体がやや硬めの服に包まれた後、遅れて出現した剣の重さが肩にかかった。

(ちなみに俺とキリトの装備はほとんどがボロボロだったが、昨日の内にアスナがまとめて修理に出してくれたので今はもう新品同様の状態に戻っている)

 

デュオ「よし!」

 

声に出して気合いを入れ、俺は脱衣所を出る。

長い廊下を歩いて外に出ると、ちょうど日が昇り始めたところだった。

澄んだ風が頬を撫で、遥か彼方に見える朝日が俺を出迎える。

それらは時折響き渡る鍛冶の金属音や噴水から溢れ出す水の音と相まって、爽快な気分をもたらした。

取り敢えず伸びを1つしてから、俺は街の外周部を目指して歩き出す。

誰もいない大通りを抜けて外周部に出た俺は、近くを徘徊していた―――おそらく昨日の生き残りと思われる―――モンスターたちを片っ端から斬り伏せていった。

 

デュオ「ぜあらあぁぁぁぁ・・・!!」

 

絶叫しながら大振りした剣が、防御態勢を取るリザードマン・ロードを盾ごと両断。

斬り裂かれた残骸から鮮血が飛び散り、直後に死骸もろともポリゴン片へと還元される。

 

デュオ「ダメか・・・」

 

剣を振り切ってポリゴンを払いながら、俺は思わずそう呟いた。

 

デュオ「やっぱり“あれ”はベリル専用の技か何かなのか?」

 

“あれ”とは、ベリルが俺たちとの戦闘で使った衝撃波のことだ。

彼は、今俺が右手で握っているこの剣―――名前はデュール・フィーラーというらしい―――を大振りして衝撃波を作り出していた。

あのアリスが膝を付く程の威力を持ち、しかも遠距離であっても攻撃出来る。

そう、俺は今あの技を習得しようとしているのだ。

だが見よう見真似で出来るものではなく、まだ1度も成功していない。

もう何体目かわからない敵を屠り、もう帰ろうかと思っていたその時、突然拍手が聞こえてきた。

 

?「相変わらずいい太刀筋だな((坊や|・・))」

 

まだ記憶に新しいその声に振り返ると、そこには昨日街を去ったはずの男、ベリルが立っていた。

 

デュオ「何でお前がここに?」

 

ベリル「いや、ちょっと忘れ物してな」

 

そう言ってベリルは腰のポーチから正八面体の物体を取り出す。

青紫色の石のようだが、俺はそれよく似たものを知っている

 

デュオ「録音クリスタル・・・?」

 

ベリル「なんだ、知ってるのか?なら早い。こいつを歌姫の嬢ちゃんに届けてくれ」

 

言い終えたベリルが片手で遊んでいたクリスタルをこちらへ放り投げる。

俺は慌てて手を出し、どうにかキャッチすると、それをポーチに詰めた。

 

ベリル「にしても、やけに大振りな攻撃ばっかだったな。ひょっとして“ブラスト”の練習か?」

 

デュオ「ブラスト?」

 

ベリル「坊やたちと闘り合った時に俺がぶっ放した((衝撃波|ソニックブーム))のことさ」

 

どうやら、あの斬撃は“ブラスト”というらしい。

 

デュオ〈というかこいつは、いつからこちらを見ていたんだ?〉

 

ベリル「人間観察が俺の趣味でね」

 

俺の考えを見透かしたかのように口を開いたベリル。

単に顔に出ていただけなのか、それとも思考を読み取ったのかはわからないが、1つ確かなのは、俺はこいつには敵いそうもないということだ。

そんな相手に隠してもすぐにまた見透かされるだろう。

俺は素直に話すことにした。

 

デュオ「あぁ、お前の使っていた((ブラスト|あの技))はかなり強力だった。これから先も戦い続けることを考えると、是非とも習得しておきたい」

 

ベリル「なるほどな。ちなみに何でだ?別に坊やたちが戦わなくても、放っておけばこのゲームは俺がクリアするぜ?」

 

デュオ「あいにく俺は、会って数日の相手に自分の命を任せる気はない」

 

ベリル「おやおや、結構冷たい言い方だな。だがそれだけじゃないだろ?」

 

デュオ「どういうことだ?」

 

ベリル「自分を守るためだけに強くなろうとしているわけじゃないんだろ?」

 

デュオ「なぜそう思う?」

 

見透かされているとわかった上で聞いてみる。

するとベリルは、可笑しそうに微笑してから答えた。

 

ベリル「言っただろ?人間観察が趣味だって。もし坊やが単に強くなりたいだけだったらそこまで焦る必要がないからな」

 

ニヤリと不敵に笑うベリルを見て、本当に敵わないなと早くも確認させられる。

苦笑交じりにため息をつく俺に、ベリルは問い掛ける。

 

ベリル「で?何でそんなに焦ってんだ?彼女と生き別れでもしたか?」

 

デュオ「本当に何でもわかってるんだな」

 

ベリル「坊やたちとは経験が違うんだよ」

 

外見だけならそれほど歳が離れているとは思えない相手にそう言われると、どこか納得がいかない。

そんなことを考えて、口をへの字に曲げていると、ベリルが再び可笑しそうに笑った。

 

ベリル「あははは・・・!わかった!いいぜ教えてやるよ」

 

デュオ「えっ・・・!?」

 

突然のことに、俺はポカンとしてしまう。

そんな俺を見てベリルはさらに大げさな笑い声を上げる。

 

ベリル「坊や、意外と表情豊かなんだな・・・あははは・・・!」

 

腹を抱えて今にも転げ回りそうなベリルに、俺はムッとしたまま剣を持ち上げた。

するとベリルは、笑うのをやめて上体を起こす。

 

ベリル「OK、OK・・・んじゃ、早速やってみるか」

 

未だ微妙に笑いを堪えているようだったが、それでも自分の剣をウインドウから呼び出して構えた。

 

ベリル「まずは、どんな体勢でもいいから剣を構える」

 

言われた通り、俺は自分流の構え―――後ろに流すような体勢―――で剣を構える。

 

ベリル「次に柄をしっかりと握って、刀身からエネルギーを吸い込むようなイメージを浮かべてみろ」

 

デュオ「?」

 

よくはわからなかったが、それでも俺は感覚を研ぎ澄ます。

集中するにつれて徐々に思考がクリアになっていき、ベリルが言ったイメージがゆっくりと形になっていく。

不意に俺の握る大剣の柄が熱を帯び始めた。

気になって視線を向けると、たった今までメタリックシルバーだった刀身がクリムゾンレッドに変化し、その周りに極小のプロミネンスのような焔を作り出していた。

 

ベリル「OK、そのまま振ってみな」

 

頷きつつ次の指示を出すベリルに従い、エネルギーを逃がさないように気をつけて思い切り上段斬りで空を斬る。

しかし衝撃波は起こらず、熱を帯びた刃が空を斬る音だけが虚しく響いた。

 

デュオ「出来ないぞ」

 

ベリル「そりゃそうだ。さっきのは直接叩き込まないとブラストにならないやり方だからな」

 

デュオ「はあ!?」

 

何でもない事のように話すベリルに、思わず声が出てしまう。

そんな俺をなだめるように、ベリルは左手でこちらを制した。

 

ベリル「まあ落ち着けって坊や。ちゃんと飛ぶのも教えてやるから」

 

そう言って剣を構えると、ベリルの剣がエメラルドグリーンの光を纏い、刀身から同色の電撃を迸らせる。

 

ベリル「まずはこうやってエネルギーを集める。ここまでは同じだ。だが、今度はそれを吹っ飛ばすんだ」

 

ゆっくりと持ち上げられた剣が勢いよく振り切られた瞬間、刀身を包んでいたエネルギーが鮮やかな緑の三日月となって吹き荒れた。

 

ベリル「要はボールを投げるような感じで振ればいいんだ」

 

デュオ「なるほど」

 

説明に納得した俺はもう1度集中して、刀身にエネルギーをチャージする。

再び刃がクリムゾンレッドの光に包まれ、そこから小さなプロミネンスが吹き上がる。

そして今度は右下からの斬り上げを放つ。

すると、振り上げた剣の軌跡をなぞって作り出された赤い三日月が、巨大な衝撃波となって解き放たれた。

放たれた斬撃はやがて彼方の空へと溶けて消える。

 

ベリル「やっぱ筋が良いな坊や!教えたとはいえ、ものの数分で覚えるとは」

 

デュオ「そりゃどうも」

 

口笛を吹いて感心するベリルに、俺は素っ気なく返した。

 

ベリル「どうした?嬉しくないのか?」

 

デュオ「結構嬉しいが、そこまで喜ぶことでもないだろ?」

 

ベリル「それはもったいないぜ坊や」

 

デュオ「もったいない?」

 

ベリル「せっかく感情があるんだ。押し殺すなんてのは年老いてからでも出来るが、目一杯表すっていうのは若い内しか出来ないぜ」

 

デュオ「年寄り臭い言い方だな」

 

ベリル「実際、そこまで若くも無いしな」

 

そう言ってベリルは笑った。

 

ベリル「さてと、それじゃあ俺はそろそろ行くとするか?」

 

デュオ「もう行くのか?」

 

ベリル「まあ忘れ物を置きに来ただけだしな」

 

背に剣を戻したベリルが、駅に向かう道へと足を向ける。

 

ベリル「またな坊や。相棒やお嬢ちゃんによろしくな」

 

最後にそれだけ言い残して、ベリルは立ち去って行った。

その姿が完全に見えなくなり1人残された俺は、取り敢えずウインドウ画面で時間を確認する。

現在時刻は7:25。

起きてからかれこれ2時間以上経っていたらしい。

 

デュオ「俺も戻るとするか?」

 

何も言わずに出てきたので、2人も心配しているだろう。―――2人が起きていればの話しだが・・・

俺は街に戻るために剣を背に戻そうとした時、あることに気がついた。

鍔の先に、小さな紙切れが張り付いている。

左手でそれを剥して見ると、手書きでこう書いてあった。

 

?その剣は坊やにやるよ。頑張る坊やへ俺からのプレゼントだ by ベリル?

 

最初からそのつもりだったのか、ブラストを教えている時にそうしようと思いついたのかは知らないが、取り敢えずこの剣は譲られたということのようだ。

 

デュオ「どこまでも変わった奴だ」

 

思わず口に出してから、俺は剣を背に戻す。

そして、街へ戻るため来た道を戻り始めた。

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コメント
本郷 刃さんへ ベリルは気まぐれなだけで結構年長者らしい一面も持っていますよw キリトとアスナについてはお察しの通りですww(やぎすけ)
以外と面倒見の良いベリルw キリトとアスナが起きているかって? 寝ているに決まっているでしょう、夜分は営みで忙しかったようですから(2828)(本郷 刃)
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