艦隊 真・恋姫無双 15話目
[全1ページ]

【 起死回生の策 の件 】

 

? 益州北部 天蕩山 にて ?

 

朝から攻撃を行っていたが……日は既に暮れ、辺りは暗闇に包まれつつある。 

 

日がある時間には、果敢に攻め立てた益州軍であったが……今は疲れた身体を引きずりながら……天蕩山の味方陣営を目指し……逃走していた。

 

劉焉「ハァー、ハァー、ハァ……ウグッ! ハァ────!?」

 

急な坂を登って、天蕩山の陣営に辿り着いた劉焉。 

 

陣営周りは、既に松明を掲げた益州兵達が……仲間の帰還を手助けする為、途中まで出迎えに出て、陣営内に迎え入れていた。 

 

益州兵「劉焉様……! よくぞ……御無事で!!」

 

劉焉が、兵士達に支えられて丁重に案内を受け……何気なく後ろを振り向く。

 

その眼下には、まだ多くの兵達が……巣穴を壊されたアリのように逃げて来る様子が……垣間見えた。

 

劉焉「ばぁ………馬鹿なぁあああ!! 何故、何故ぇええッ!! 天は我を見捨てるぅうう!? 何故だぁあああ────ッ!!!」

 

劉焉は、切歯扼腕たる思いを込め、天に向かい大音声で己の顛末を訴えた!!

 

────あの日! 

 

成都より出発した時の……煌びやかな衣装、逞しい愛馬、凛々しい姿……!

 

成都の民から受ける羨望、その影に隠れて見れる憎悪を浴びながら、我関せずと栄光の道に進んでいた……気高き己が……!!

 

まさか……見る影も無く……派手に汚れ……見窄らしい(みすぼらしい)敗者の姿を無様に晒すとは!!!

 

しかも……先程、痛烈な批判を与えた董扶の前で……このような失態を犯すに事になろうとは────ッ!!!

 

劉焉は……思いもしなかった現状に……唖然とするしかなかった。

 

ーーー

 

他の益州兵も……黄色や赤や青など、様々な色合いで染まった状態のまま、陣営に転がり込んで怯えている。 

 

顔が全員『真っ青』なのは……パウダーを被っただけではないようだ。

 

あの大騒ぎの中で……死者が居ないのは奇跡に近いが……霧島が天蕩山への道を、ワザと開けて逃走経路に追い囲んだからでもある。

 

これが……背後に漢水があったなら……溺死者等も出て来て、死者数を大いに増やした筈であった。

 

ーーー

 

おまけに……趙?も……大きい怪我も無く……無事に戻っていた。 

 

しかし、劉焉に再び怒鳴られ……今回出陣した益州兵と東州兵の安否確認に……絶賛奔走中である!

 

★☆☆

 

天幕にて……劉焉が疲れた身体を玉座に下ろし……前方で神妙に礼を取る董扶を睨みつつ、声高々に怒鳴りつけた。

 

董扶「……………………」

 

劉焉「どうしたぁ!? お前を嘲笑った者が……こうして……惨めな姿をさらけ出したしているのだ……。 罵倒せよ! 罵れッ! 同じように嘲笑ってみろ─────ッ!!」

 

しかし、董扶は……そんな言葉に意に介さず、付近に待機していた兵を呼び出し、命令を与えた。

 

董扶「…………誰かある……! 陛下は混乱されているようだ! 急ぎ……替えの衣服と怪我の治療。 そして……簡単な食事の支度を用意せよ!」

 

『────はっ!』ダッ!

 

天蕩山の天幕には……劉焉と董扶だけしか居ない。

 

董扶は、恭しく頭を下げ……劉焉に意見を述べた。

 

董扶「陛下……勝負は時の運。 勝ちもあれば……負けもあります!」

 

劉焉「────ふんっ! 漢中勢に良いように翻弄された儂には……既に栄光の道は閉ざされたのだぞぉお!? 今更どうすればぁ良いと云うのだ!?」 

 

董扶「私に策が……あります! 今は、兵を立て直し……陽平関に兵を入れて守備を固め……益州に戻りましょう! そして……『天の御遣い降臨』を……演出するのですッ!!!」

 

劉焉「…………わ、儂は……漢中を平定を………失敗したのだぞ!?」

 

董扶「この戦の状況が……成都の民が知るには……かなりの日数が掛かります。 その隙を突いて『御遣い降臨』を実現し……既成事実を作り出す! さすれば……漢中を政治力で封じ込める……事も可能かと!」

 

劉焉「漢中を……包囲による……経済封鎖をすると云う事か?」

 

董扶「───御意! 漢中は攻めるに難しい場所……! ですが……裏を返せば……入国がしにくい地形でもあります! ならば、限定される入り口を封鎖するだけで……経済的破綻を齎す事など容易いでしょう………!!」

 

劉焉「奴らが……武力で攻めてきた場合は!?」

 

董扶「本気で攻めてくれば……成都など簡単に……陥落する筈。 しかし、

かの者達は……攻める様子も見せず……閉じ籠もるばかり。 これは……何らかの訳ありで……動けないのではと……見ております。 ですので……その隙に!!」

 

劉焉「………………………」

 

董扶「……先に……瑞祥の象徴である『白き服』を着用して……『天の御遣い』を名乗り上げれば……劉焉様こそ本物! ……余程の確証が無ければ……偽者と断定は下せますまい! つまり……漢王朝を……味方に取り込む事も………!!」

 

劉焉「────────!」

 

董扶「……漢王朝が……劉焉様支援の表明する事になれば……他の軍閥も漢中勢を敵と認識する事に! さすれば……劉焉様を中心に討伐戦が起こり……今度こそ……漢中討伐が成功する事になるでしょう!!」

 

劉焉「………フッ。 フッフフッ! フッハハハハハハッ!!」

 

董扶「……………………………」

 

劉焉「お前と云う男はぁ!! よぉおく分かった!! 全て──董扶の云う通りに実行する!! 鬼灯にも伝えておけぇえ!!」

 

董扶「────はっ!!」

 

 

◆◇◆

 

 

【 夜戦之準備 の件 】

 

? 益州北部 定軍山 にて ?

 

漢中陣営内では……于吉、左慈、華佗、卑弥呼等が集まり……待機中。

 

于吉が……例の水晶球で覗き……では無く、情報収集をしている。

 

于吉「今回は、惜しいですね〜〜! とっても素晴らしい策だと思いますがぁ……」

 

于吉は、水晶球を眺めながら呟く。

 

于吉「敵が……私達じゃなければ……ねぇ? ふふっ! いい線行きましたのに。 本当に……残念な戦略ですよ……」

 

左慈「ふん……どこが『残念』なんて思っているような……ツラしているんだよ!? まぁ……俺達に牙を剥いたのが運の尽きだ………」

 

卑弥呼「だぁりんを討伐しようなど、不埒な考えを持つ事がぁ、そもそも敗北確定済みよぉおお!! そんな大事な事を分からん輩など……儂自ら教育し直してやるわいぃいい! むふぅううん!!!」

 

華佗「卑弥呼がヤル気になってくれているようだな! 俺も……ゴットヴェイドォーの名に掛けてぇ!! ……劉焉と云う強大な病魔を阻み、益州の民達の心痛を治療してみせるぞ!! うおおぉおおお───ッ!!!」

 

ーーー  ーーーー

 

少し経って夜戦組に収集が掛かる!

 

霧島「川内! 夕立! 島風! 後は……左慈! …………準備は良い?」

 

川内「何時でもOKだよッ! 脳内演習もバッチリさ!!」

 

夕立「…………お呼びっぽい?」

 

島風「私も……参加だったよね………?」

 

左慈「…………ちっ! オマケみたいな言い方しやがって!!」

 

霧島「──全員集合したようね! 私達は今から『合図』と共に突撃を掛けるわ! 卑怯とも言われるかも知れないけど、そもそも……数の暴力を仕掛けてきたのは劉焉の方よ? 私達は……丁重に御礼参りしてあげなきゃ──!?」

 

夜戦組が会合をしていると……新たな艦娘が二人……助っ人で参加した!

 

─────ザッ!

 

??「気合! 入れて! 行きますッ!!」

 

─────『金剛型 2番艦 戦艦 比叡』

 

??「夜戦なの? 腕が鳴るわね!」

 

─────『金剛型 3番艦 戦艦 榛名』

 

霧島の姉妹達が……着任した。

 

霧島「比叡姉さん! 榛名!」

 

比叡「金剛お姉さまに敵対する人達を……この比叡が見逃すとも?」

 

榛名「一刀提督の敵は──即ち! 私の敵ですッ! そんな失礼な人達は、木っ端微塵に吹き飛ばしてさしあげますわ!!」

 

霧島「………二人とも……気合い入れてくれるのは、いいのだけど……殺してはダメよ? ちょっと………そんな絶望的な顔しても……許可出来ないからッ!」

 

姉妹揃って……これでは……先が思いやられる……。

 

な〜んて、考える霧島だが……人の事は言えないかも………?

 

霧島「…………それから、『探照灯』を装備して出撃するから、忘れないように!! 総員───準備に掛かって下さい!!」

 

★☆☆

 

劉焉「急いで陣営内を引き払えぇえ!! 篝火は、そのまま付けたままにしておくのだ! まだ、益州の軍が残っていると思わせるためにな!!」

 

董扶「撤退は速やかに……!! 要所には……数人の兵が控えている! 漢水では……既に対岸まで……縄が張ってある! それを握りつつ……明かりに向かえば……陽平関に辿り着くぞ!!」

 

劉焉達が……密に指示を出して行動を起こすが……于吉の活躍で筒抜けである。 そう……全ての指示が………。

 

ーーーー

ーーーー

ーーー★

 

定軍山の漢中陣営内では、華佗と卑弥呼が天蕩山を睨みつつ、準備をしていた。

 

華佗「卑弥呼───頼むッ!」

 

華佗が卑弥呼へ背を向ける。 

 

卑弥呼「ぬうわあぁああああ!!!」

 

それと同時に……卑弥呼の目が輝き、身体の氣が異様な高まりを見せる! そして、高まった氣を右手に集めて、華佗の背中に叩き込んだッ!!

 

卑弥呼「羅武力(ラブパワー)注入ぅううう!!」

 

華佗「うぅ………うおおぉおおおッ!!!」

 

卑弥呼から『謎の氣』を受けた華佗は、黄金色のオーラに包まれ変貌を遂げる。 髪の毛が逆立ち、黄金色に染まり……身体からは気力が満ち溢れる! 

 

華佗曰わく『ゴットヴェイドォーを極める者が本気を出すと………こうなるんだ!』と云う状態。 華佗でさえ、修業不足の為……卑弥呼の力を借りないと、この姿になれないらしい。 

 

一見すると……スー○ーサイ○人に似た風貌だが……一切関係は無いとの事。

 

華佗「よしっ! これで準備完了!!」

 

華佗は、そんな状態のまま……天蕩山の山頂をジッと望む!!

 

華佗「………あそこに通るのは……どこだ? どこへ通る!? ───ここかッ!? いやっ、そこなのかッ!? それとも……むっ!?」

 

華佗は、ある地点を見つけると……一目散に走り寄り……更に注意深く観察する。 そして……破顔一笑し、指先で地点を示す!!

 

華佗「見つけたッ!!! ここだ! ここに『水龍』の龍脈が走っている!! ここに……俺の力を注ぎ込めばぁああッ!!!」

 

懐より『金色の鍼』を取り出すと───!

 

華佗「ここに眠る『水龍』よ!! 龍脈の流れを強め、俺達に力を貸してくれぇええ! コオオォオオオォォォーーッ!! 燃えろぉおお! 我が魂魄よ!! この水龍に宿れぇえええ!!」

 

──────その声に呼応して、鍼が黄金色に輝く!!

 

華佗『注魂! ゴットヴェイドォー!!!』

 

華佗は────鍼を地面に刺した!!

 

◆◇◆

 

【 定軍山の戦い(夜戦) の件 】

 

? 益州北部 天蕩山 にて ?

 

その頃………天蕩山の劉焉が居る益州軍陣営では………!

 

………

…………

 

益州兵1「ムッ!? 地震……かぁ!?」

 

ーーーー

ーーーーー!

 

益州兵2「ゆ、揺れが強くなるッ! 全員──伏せろぉおおッ!!!」

 

━━━━━━

━━━━━━━!!

 

ドオオォォオオォォォ────ッ!!

 

劉焉「な、何が起きたのだぁあああッ!!」

 

董扶「わ、わかりません!!」

 

益州軍の陣営の真ん中から、間歇泉が吹き上がったのだ!!

 

普通の間歇泉は、温泉が主であるが……極まれに冷泉が吹き上げる事がある。 

今回は、その冷泉が吹き上がり、劉焉や益州兵達を濡れ鼠に変えた!! 

 

 

そして……!!

 

 

────カッ!

 

──────カッ!

 

─────カッ!

 

 

『探照灯』が山の中腹から照らされ、益州軍の慌てふためく滑稽な姿が浮かび上がる!!

 

益州兵3「ま、眩しいぃいいッ!!」

 

益州兵4「ま、また……またぁ、何か来るのかぁ!?」

 

急な闇を切り裂く灯りに照らされ……益州兵達は大慌てを起こした!!

 

ーーーーー

 

川内「夜戦ッ! 一番乗りぃいいい!! おりゃあああッ!!!」ボゴッオッ!

 

益州兵3「ぐはぁああッ!!」

 

川内は完全武装をしながら、一挙に益州兵達の中に入り殴り込む! この時ばかりは、目にサングラスを着用。 

 

『夜戦だから、暗視装置を着用じゃない?』と思われる方も、居るかもしれないが……こんな時に使用すると目が焼けてしまうので注意である。

 

暗視装置は、夜間に周りの光を集めて視る装置が主。 そんな中で、強力なライトの灯りを視れば……当然……支障をきたす為。

 

ーーー

 

夕立「うふっ! ソロモンの悪夢、見せてあげるぅ!」

 

榛名「榛名! 全力で参りますぅ!!」

 

比叡「まっかせてー!」

 

左慈「ふんっ! もっと歯応えのある奴は、居ないのか!?」

 

島風「だからー、しまかぜからは、逃げられないってぇえ!」

 

ーーーー

 

『わあぁあああぁぁぁ────ッ!』

 

益州兵達の狂乱が……更に続く!!

 

劉焉「鎮まれぇえええ!! 鎮まらんかぁあ───!?」

 

劉焉が周りの兵達を抑える為、声を張り上げていた途中───『探照灯』の灯りを遮って、一人の艦娘が……劉焉に近付いた。

 

??「………貴男が……劉焉ね?」

 

『皆から畏れ敬われる己を……堂々と呼び捨てにする女……だと!?』

 

劉焉は、顔を真っ赤にして怒鳴り付けた!!

 

劉焉「頭が高いぞぉおおッ! 無礼者め!! それに、礼儀知らずがぁあ!! 儂の事は───『劉焉様』と呼称を付けろぉおおお!!」

 

そんな劉焉の姿を見て、『霧島』は呆れ顔で応える。

 

霧島「……やれやれだわ! 貴男のような男が……提督に取って代わろうなんて……恥知らずもいいとこ!!」

 

劉焉「き、貴様ぁああ! 何者だぁあああ!?!?」

 

霧島は……劉焉の問いを無視し……マイクを手に持って構える。

 

霧島「───さあ、マイクチェックの時間よ……ベイビー!!」

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

前作で決着付いたようなものでしたけど……活躍してない人達が結構居るため、出撃せてみました。

 

また、よろしければ読んでみて下さい。

 

 

 

説明
今回は短いです。 12/19……ヒトフタサンマル 加筆修正しました。 すいません。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1935 1666 18
コメント
hokuhin提督 コメントありがとうございます! ………でも……一番危ない人に遭った劉焉の運命は………如何に。(いた)
夜戦バカにソルモンの悪夢にかけっこバカとやばいやつばかりだなw神通さんや綾波が居ないことを喜ぶべきだな劉焉はw(hokuhin)
Jack Tlam提督 コメントありがとうございます! 霧島ネキ(アネキ)の事を調べると……史実を踏まえても接近戦しか考えられません。 と云うか……最後のシメは、この人で終わらせないと……。 (いた)
うん、見てたけどやはり爺に接近するのは霧島さんですか……敵艦に接近して三式弾でタコ殴りするような人がそんなこと言っても説得力ありません、はい。比叡と榛名の無言の抗議は尤もです。金剛型は火力あるし機動力あるしで強かったですからね。今では優位性がちょっと落ちたらしいですが。霧島さん、まさか近接砲撃(殴打)を仕掛けるつもりか?(Jack Tlam)
タグ
真・恋姫†無双 艦隊これくしょん 

いたさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com