英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜ケルディック・元締めの家〜
「皇女殿下、その服装……聖アストライア女学院の制服ですよね?それにエリスもどうして一緒になって……」
それぞれが身に纏っている聖アストライア女学院の制服を見たリィンは目を丸くした。
「ええ、お忍びで元締めにご挨拶に着たところでして。エリスには申し訳ないと思ったのですが、付き合ってもらったのです。こうして一緒に行動できる機会や自由に出歩ける機会はもうそれ程残っていませんし……」
「姫様…………そんな、私の方こそ姫様に”友人”として一緒に来てほしいと誘われてとても嬉しかったです。」
「ありがとう、エリス。」
「………………」
二人の会話からエリスがメンフィルがエリスに下した”処分”によってアルフィン皇女の付き人を既に辞めている事や近い将来レンの専属侍女を務めなければならない事、そして戦争回避条約によってアルフィン皇女は一生メンフィル帝国領に過ごさなければならない事を思い出したリィンは複雑そうな表情をした。
「……あの、リィンさん。もしよかったらこの後……」
「はい?」
「………………」
アルフィン皇女に見つめられたリィンは不思議そうな表情をし、エリスは目を丸くして二人の様子を見守っていた。
「い、いえっ。何でもありませんわ。」
「(皇女殿下、何か言いたい事があるみたいだけど……)皇女殿下、何か気がかりがあるなら是非おっしゃってください。俺が力になれることなら何でもお手伝いしますし。」
「ほ、本当ですかっ?……その、実はわたくし、大市というものをちゃんと見た事がなくって……できればこの機会に色々と見て回りたいのですけど。」
「姫様……そのような事でしたら私に仰って下さればお共しますのに……」
アルフィン皇女の頼みを聞いたエリスは目を丸くして言ったが
「気持ちは嬉しいけど、わたくしと一緒にいる事で起こる可能性がある危険にこれ以上エリスを巻き込みたくないのよ……それにエリスに付き人のような真似をさせていたら、またメンフィル帝国に怒られちゃうしね……」
「それは………………」
寂しげな笑みを浮かべるアルフィン皇女の言葉を聞き、辛そうな表情で黙り込んだ。
「………………(女学院の制服を着てるなら何とか騒ぎにならずに済むか。)わかりました、だったら俺が案内させていただきますよ。勿論エリスも付き合うだろ?」
「ほ、本当ですかっ?ふふっ、それではあとでちょっとだけお付き合いください。」
「兄様……はいっ!フフッ、一緒に街を見て回るのなんて本当に久しぶりですね……」
アルフィン皇女の用事が終わった後、リィン達は一緒に大市へと向かった。
〜大市〜
「ここがケルディックの”大市”……」
「噂には聞いていましたが、やっぱり賑やかですね。内戦の影響で若干縮小されたという話ですが活気は十分みたいです。」
初めて見る大市にエリスとアルフィン皇女は興味ありげな様子で周囲を見回していた。
「ええ、ひとえに商人たちの努力あってのことでしょう。」
「ふふっ、燃える商魂というやつですわね。ああっ、あちらの屋台からいい匂いがします!行きましょうっ、リィンさん、エリス!」
「ひ、姫様!はしたないですよ……!」
(はは、すごく嬉しそうだな。皇女殿下とエリスにとっても久々の息抜き……俺も存分に付き合ってやらないとな。)
はしゃいでいるアルフィン皇女を慌てた様子で諌めているエリスを微笑ましく見守っていたリィンは二人に付き合って屋台を周って様々な食べ物を買って食べ歩きをしていた。
「うふふ、屋台の食べ物はどれも大変美味ですわね。バリアハートの職人が手がけた美しい調度品も見れましたし……ケルディック特産の地ビールもできれば味わってみたかったです。」
「姫様……私達はまだ成人していないのですから、お酒は駄目ですよ。」
アルフィン皇女の言葉を聞いたエリスは呆れた表情で指摘した。
「クスクス、冗談よ。ただ、やっぱり帝国西部の商品はほとんど見かけませんね。鉄道網の規制で流通に制限がかかってしまっているのは仕方の無い事だと思いますけど。」
「ええ、この内戦が終わらない事には……それにしても殿下もよくそんなところに目がいきますね。」
アルフィン皇女の話に頷いたリィンはアルフィン皇女の目利きに気付き、目を丸くした。
「ふふっ、これでも皇族の端くれですから。あ、でもリィンさんに嫁いだ際には皇族ではなくなりますけどね♪ちなみにわたくしは後何年皇族でいられるのですか?リィンさ―――いえ、あ・な・た♪」
「う”っ!?」
「なっ!?姫様、抜け駆けはずるいです!」
アルフィン皇女に微笑まれたリィンはアルフィン皇女との結婚が決まっている事を思い出して表情を引き攣らせ、エリスは驚いた後アルフィン皇女を睨んで指摘した。
「フフッ、次はあちら側も回ってみましょう、リィンさん、エリス!」
そして二人の反応を面白がったアルフィン皇女は再び二人と共に大市を見て回り始めた。
「……ったく、いつになったらこの内戦は終わるのかねえ。」
3人が大市を歩いていると商人の声が聞こえて来た。
「領主様達のお蔭で売上税は半分になったとはいえ、内戦が続く限りは肝心の商品の値段が馬鹿みたいに跳ね上がったままだからお先真っ暗だぜ。こんなときにエレボニアの皇帝はいったい何をしているんだ?セドリック皇太子や噂のオリヴァルト皇子ってのもめっきり話を聞かなくなってるし。」
(あ……)
商人と話している仕入れ商人の話を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情をした。
「一応、エレボニアの皇帝陛下は帝都で無事でいらっしゃるという噂は聞いたぞ?」
「貴族どもによって占領された帝都でか?まったく、皇族が聞いて呆れるよ。もっと威厳を示して欲しいもんだね。むしろ領主様達を含めたメンフィルの皇族達の爪の垢を呑んで欲しいくらいだぜ。領主様達はこのケルディックの為に色々と手を尽くしてくれている上内戦の影響で苦しくなった俺達の暮らしもちゃんと考えてくれている所か内戦に巻き込まれない為にこっちに避難して来たエレボニアの難民の連中を受け入れている懐の広さもあるし、確かリフィア皇女殿下はこの前帝都で監禁されていた自分のお付きの侍女長の家族を助ける為にメンフィル軍に貴族連合に占領された帝都を襲撃させてその隙に助け出したって話だろ?それと比べて、エレボニアの皇族達と来たら…………」
(あ…………)
(姫様……)
(皇女殿下……)
呆れた表情で言った仕入れ商人のエレボニア皇家に対する厳しい意見を聞いて辛そうな表情をしているアルフィン皇女をエリスとリィンは心配そうな表情で見つめた。
「……おい、滅多なことを言うもんじゃないぜ。話に聞く限り、双龍橋から領邦軍を追っ払った”紅い翼”はエレボニアのアルフィン皇女殿下が率いたそうじゃないか。」
「む……そうなのか?」
商人の指摘を聞いた仕入れ商人は目を丸くした。
「きっとエレボニアの皇族の方々だってそれぞれどこかで頑張ってるさ。俺達は俺達で事態が良くなるのを信じて大市で頑張っていこうぜ。」
「ふうむ……まあ、内戦さえ終わってくれりゃ俺はどっちだっていいけどな。おっと、そろそろ行くぜ。邪魔したな。」
商人の言葉に首を傾げた仕入れ商人は溜息を吐いた後その場から去って行った。
説明 | ||
第443話 | ||
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コメント | ||
本郷 刃様 後建国した初代皇帝であるリウイが不老不死なのがでかいでしょうね。 K’様 確かにメンフィルの敵は世界といってもおかしくありませんものね M.N.F. 様 ケルヴァンは確かに有能ですね。アレが本当に忠臣だったらメンフィルは更に栄えていたでしょうに (sorano) ↓あーすいません言葉が悪かったです。皇族が制御できない、問題児的な意味のつもりでした。エレボニアで言うなら、四大名門や宰相のような。手綱を取ることが出来ないと書くべきでした(K') ↓いやケルヴァンもろくでもない部下では有りませんよ。むしろ有能、でも望みがアレなせいで・・・。(M.N.F.) メンフィルはエレボニアと違って録でもない部下が少ない(かつてのケルヴァンぐらいかな?パイモンは微妙)皇族が突き抜けて優秀、外敵が強大かつ膨大とエレボニアとはまた事情が異なりますからね。民からすればそんなこと知ったこっちゃ無いんですけど。(K') メンフィルが特殊なんでしょうけどね、というかエレボニアは部下の方が優秀過ぎて野心が高いのも一端かと(本郷 刃) |
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