模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第29話
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――……後一日しかない。急いで完成させなきゃ……――

 

模型店『ガリア大陸』奥の工作室……テーブルの上に置かれたユニコーンを見ながらアイはそう思った。

違法ビルダー、フジミヤ・レムを圧倒した改造機『パーフェクトユニコーン』

強力ではあったが、この機体は名に反して『パーフェクト』な状態ではない。武装の一部が出来ていないのだ。

今回フジミヤ・レムに勝利することは出来た。だが明日は恐らく今日以上の激戦となるだろう。

こちらの手の内を中途半端ながらも見せてしまった以上、明日は完全な状態にしなければならない。

そう考えると早くユニコーンに手を加えねばとアイは考える。が……

 

「あ……」

 

ふらっと眼が回り、アイはその場にへたり込む。

 

「アイ!大丈夫?!」

 

どよめく周囲、一番手にナナがアイに駆け寄った。

 

「あ……ナナちゃん。大丈夫、ちょっと眠いだけだから……」

 

眼を擦りながらアイは答える。睡眠時間を削りながらパーフェクトユニコーンを製作していた上、

さっきまで緊張状態だった所為か物凄い眠気がアイを襲ってきた。まぶたが重い。意識して開いてもまたすぐ落ちてしまう。

 

「アイ。早く帰って休もうよ。今日のバトル前でもボロボロだったのに」

 

「ナナちゃん、そういうわけにもいかないよ……帰ってユニコーンを完成させなきゃ……」

 

「アイちゃん……まだ無理をするって言うの……?駄目だよ……これ以上は」

 

「そうだよ〜。明日だって大事なバトルが控えてあるんだから、別に今のままでも十分強いんだからいいじゃん」

 

「ぅ……そういう……わけにもいかないよ。今のコイツじゃ明日のバトルに勝てないかもしれない。挑むんなら完全な状態で挑みたいんだもん……」

 

「今これ以上無理したら機体は完璧になってもアンタの方が持たないわよ。機体が不完全でもアンタが完全な方がいいとアタシは思うけど?」

 

「そうだよ……ボクもそう思う……」

 

これ以上アイが無理をするのは友達としても嫌なのだろう。ナナ、ムツミ、タカコは全員自分の意志を伝える。

だがそんな中……、あるビルダーが名乗りを上げた。

 

「なら、残りの作業は俺にやらせてくれないか?」

 

コンドウ・ショウゴだった。アイ達は「え?」と一斉に彼を見る。

 

「どういう風にしたいか教えてくれれば仕上げてみせるさ」

 

「いいんですか?」とアイが訪ねる。

 

「もちろん。友達として協力したい」

 

コンドウの発言に安堵するアイ、直後「ただ一つだけ、俺の頼みも聞いて欲しい」とコンドウは付け加えた。

 

「俺ともう一度、ガンプラバトルをしてくれないか?勝ち負けは問わない」

 

「ちょっとオッサン!なんでこんな時にそんな条件付けるのよ!」

 

もうアイはボロボロだ。こんな時にどうしてそんな条件を付けるのか。とナナは食ってかかる。

 

「ハジメ、答えよう。ヤタテの実力を確かめたいんだ。相手はスランプとはいえ俺の勝てなかったフジミヤ・レム

そしておそらく向こうは切り札を出してくる。

俺に勝てない様なら明日の違法ビルダーとの戦いは恐らく勝てないだろう」

 

「コンドウさん……いいですよ」

 

眼を擦りながらアイは答える。

 

「え?ちょっとアイ」

 

「私も機体も、自信はつけておきたいですから」

 

「ありがとう。今の本気、出してくれよ」

 

感謝の笑顔でコンドウは答えた。

 

「だったらそのバトル、俺達も加えてくれないか」

 

と、聞き慣れた男の声が聞こえた。アイが振り返ると工作室の入口にツチヤとソウイチの二人がいた。

 

「お前達……」

 

「ツチヤさん、ソウイチ君」

 

「来てみたら面白そうな事になったみたいじゃないか。コンドウさん」

 

「話はハセベさんから聞いたッス。気に入らない連中ッスね。借り物ででかい顔するなんて」

 

ソウイチは違法ビルダーへの不快感を顔に表しながらパーフェクトユニコーンを見る。

 

「これが切り札スか。見事なユニコーンッス」

 

「あぁ、俺達も何か出来ないかと思ってたところだよ。手伝える事があるなら手伝いたいんだ。ただやっぱりコンドウさんと同じく俺達とも戦ってほしい」

 

「え?私ひとりで、ですか?む!無茶ですよ!」

 

慌てるアイにコンドウが真剣な顔で声をかける。

 

「ヤタテ、無茶じゃないさ。今までお前はたくさんのビルダーの挑戦を受け、試練ともとれる挑戦を何度も乗り越えてきた。お前の傍でずっと見てきた俺が言うんだぞ?」

 

「コンドウさん……」

 

「そうだヤタテさん、手加減はしない。そんな俺達を叩きのめして俺達を安心させてほしいんだ」

 

「俺は安心しないスけどね。むしろ面白くないッス」と余計なひと言のソウイチ

 

「ぶれないねソウイチ君……でも、解りました。こんな状態ですから加減は出来ませんよ!全力でいきますから!!」

 

寝ぼけていた心に闘志を灯し、アイは答えた。

 

「あぁ!来い!」

 

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そしてバトルが始まる。今回のステージは『コンペイトウ』と呼ばれる小惑星とその宙域だ。

登場作品は『機動戦士ガンダム』と『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』

最初は『ソロモン』と呼ばれる資源衛星を改造した宇宙要塞だ。『機動戦士ガンダム』に登場した際戦場となり陥落、

その後連邦軍に接収され名を『コンペイトウ』と改める事になる。

形状はその名の通り、金平糖に似た形をした巨大な衛星だ。

 

 

「そういえば、コンドウさんと戦うのって前のサバイバル大会以来だな……」

 

出撃したアイは宇宙空間を飛びながら昔を思い出す。まだコンドウ達との距離は大きく空いていた。

あの時はチームにナナと模型部のコウヤがいた。だが今回はアイ一人だ。

『勝てるのか?』と息を呑むアイ、コンドウ達『ウルフ』の実力はよく分かっていた。

 

「ん?!」

 

と、その時アイの視界の端に一条のレーザーが見えた。アイのパーフェクトユニコーンに放たれた物ではない。

レーザーはある地点に注がれる。そして注がれた地点にある物体が光った様な気がした。

 

――来る!!――

 

アイはそう思うと思いっきり上方向に飛ぶ。直後、巨大なエネルギーの濁流がアイのさっきまでいた地点を襲った。

 

「ガンダムエックス黒王号のハイパーサテライトキャノン!!ツチヤさんか!」

 

かつて一緒に戦った仲間の機体を思い出し、サテライトキャノンの発射地点目掛けて全力で飛ぶ。

さっきのレーザーはハイパーサテライトキャノンを撃つ為の準備だったわけだ。

発射中のエックス黒王号はその地点から動く事が出来ない為、発射地点を割り出すのは簡単だ。

発射地点に向かう途中、サテライトキャノンの射角が上に上がる。移動してるユニコーンに向け、当てるつもりだ。

が、ユニコーンは射角を動かす前から右に移動。そのまま大きく旋回、サテライトキャノンを撃った相手の後ろから襲おうというわけだ。

そうこうしてるうちに相手が見えてきた。以前共に戦った『ガンダムエックス黒王号』だ。

 

「ツチヤさん!覚悟!」

 

「!後ろから!!」

 

ツチヤの叫びを聞きながらアイは、ユニコーンの両手の武装を向け一斉に黒王号に撃つ。が……

 

「させんぞヤタテ!!」

 

野太い声が聞こえると共にマルーンに塗られた機体が両者の間に割って入る。ユニコーンが黒王号に放ったビームは、割って入ったその機体に向かう。

 

「甘い!」

 

その機体は左右一本ずつ握られた実体剣を盾とし、ビームを防ぐ、以前コンドウがサバイバル大会でアイと激闘を繰り広げた『ミブウルフ』だ。

 

「防がれた!?ハッ!」

 

直後アイのユニコーンに真上から赤い機体が斬りかかってくる。ソウイチの『ガンダムアストレアFR2ダークマター』だ。

アイはバックステップの要領で後方に回避、同時に両手の火器を一斉に発射しようとするも、ダークマターは左手にGNビームライフルを握っておりそのまま撃ってくる。

 

「チッ!!」

 

右腕のシールドで受けるアイのユニコーン、だがユニコーンの左腕は空いている。そのままユニコーンはダークマターに向けて撃つ。

しかしダークマターは難なくこれを回避、ダークマターの攻撃を防御した事により一瞬ユニコーンの動作が遅れた。

その為射撃を回避させる隙をダークマターに与えてしまったのだ。

そしてサテライトキャノンを撃ち終わった黒王号、ダークマター、ミブウルフの三体は並びパーフェクトユニコーンに相対する。

 

 

「コンドウさん……」

 

「以前のサバイバル大会を思い出すな……、あの時はハジメ達と力を合わせ、俺に勝利する事が出来た。だが次はお前一人だ……やれるか?!俺達に!!」

 

そう言った直後、三機は散開、パーフェクトユニコーン目掛けて攻撃を仕掛ける。

左右から黒王号とダークマターがそれぞれビームライフルを撃ちながら迫ってくる。

アイはかわすと両肩のアーマーからビームサーベルを発生、黒王号に斬りかかる。

 

「まず一番の火力を潰す!」

 

「サテライトキャノンが怖いか!!」

 

ツチヤはサテライトキャノンの先端から大型ビームトマホークを発生、ユニコーンのサーベルを受け止める。

 

「クッ!サテライトキャノンから発生してるとはいえ普通のビームトマホーク!私のサーベルだって負けちゃいない!」

 

「だが近接装備はこれだけじゃないぞ!」

 

ツチヤはそう叫ぶと片腕をサテライトキャノンの最後部にある柄を引き抜く、それは改造前のガンダムエックスの基本装備であるビームソードになっていた。

そのままビームトマホークを押し返そうとしているユニコーンに突き刺そうとするツチヤ、

だがアイも読んでいたのだろう。右腕のビームガンを黒王号に向けていた。撃たれると判断したツチヤは黒王号を下がらせる。

だがタダではすまさんと言わんばかりに下がりながら左肩のミサイル、左足側面のバルカンを撃ちまくるツチヤ。

アイの方も下がるが彼女のGポッドに警告音が響く、ツチヤの攻撃に対してではない。

 

「上か!」

 

アイが気づくとコンドウのミブウルフが腹部を展開させ球状のビーム、トライパニッシャーを撃ってくる。

このままユニコーンを下がらせるべきかとアイは一瞬思案するがそれじゃジリ貧になるとアイは判断、そのまま前方の黒王号に向けて全力で突っ込む。

真正面から突っ込んでくるかと迎え撃つツチヤ、ユニコーン目掛けてビームトマホークを横に大きく振るう。が手ごたえがない。

ユニコーンは大きく前屈みの姿勢になっておりビームトマホークをかわしたのだ。

 

「ソウイチ!!」

 

叫ぶツチヤ、するとユニコーン目掛けて上から大型ビームが降ってきた。ソウイチのアストレアがダークマターブースターを分離させブースターの頭部から

撃ってきたのだ。

 

――こんな間近なのに大型ビームを!?だけどっ!――

 

アイは身をひるがえすと機体左肩部のアーマーでビームを受け止める。ツチヤは左腕に握られたビームソードでユニコーンを突き刺そうとするも

その前にアイのユニコーンにコクピット部に右腕でパンチを撃ちこまれる。

 

「なっ!!」

 

ツチヤが驚きの声を上げる。直後黒王号のコクピットはユニコーンの右腕についていたビームガンで撃ち抜かれていた。

 

「ツチヤさんが!?」

 

「次はっ!!」

 

アイはダークマターブースターのビームを防いだまま、そしてユニコーンを腕を黒王号にめり込ませたまま真上にブーストをかける。狙うはソウイチのダークマターブースター、

 

「ソウイチ!!」

 

コンドウのミブウルフがアイのユニコーンめがけてトライパニッシャーを撃つ。アイは腕にめり込ませた黒王号をトライパニッシャー目掛けて放り投げた。

トライパニッシャーに向かう黒王号。「何!」とコンドウが驚きの声を上げる。

直後、トライパニッシャーが当たった黒王号は大爆発を起こす。ほぼ同時にダークマターブースターのビームも撃ち終わる。

と同時にユニコーンがダークマターブースターに迫る。両肩部のビームサーベルを構えながら。

 

「うわっ!!」と声を上げ、寸での所でユニコーンの斬撃をかわすソウイチのアストレア、

追撃をしようとするアイだがコンドウのミブウルフがパーフェクトユニコーンに斬りかかってくる。

アイは背中から両手二本ビームサーベルを抜き、そのままビーム刃でミブウルフのシラヌイとウンリュウを受け止めた。

その隙にソウイチのダークマターブースターはアストレアと合体、コンドウとソウイチの二機は一度ユニコーンから距離を取る。

 

「大したもんだな!俺達三人相手にするどころかあっという間にサブを倒すとは!」

 

「必死でやってるだけです!」

 

「……俺達も必死にならなきゃいけないって事ッスね!これは!」

 

「あぁ、ソウイチ!やるぞ!」

 

「あいさ!」

 

『トランザム!!』

 

二人が同時に叫ぶと共に乗機が赤く輝く。強化形態、トランザムだ。

 

「二機同時に?!」

 

アイが叫ぶや否やミブウルフとアストレアはユニコーンに襲いかかる。

アイは二機同時に相手をするのはマズイと判断、コンペイトウの内部で戦おうとそこへ向かう。

 

「行かせるか!」

 

アイの正面をコンドウのミブウルフがバスターソードで斬りかかる。

右肩のビームサーベルで受け止めるアイ、

 

「後ろががら空きっスよ!」

 

「!?」

 

ソウイチのアストレアが後ろからユニコーンを斬り裂こうと襲ってくる。

アストレアのGNソードをアイは左肩のビームサーベルで受け止めた。

 

「やるな!だが片腕で俺達を防げるかな?!」

 

コンドウはバスターソードのバーニアを点火、これにより増したパワーに受け止めたユニコーンの肩アーマーがきしみだす。

 

「ぐぅっ!!」

 

「トランザム終わったら弱体化するリスクがある以上、こっちも余裕はないんスよ!決めさせてもらうッス!」

 

ソウイチもアストレアのGNソードにこめる力を全開にする。このままでは押し切られるのは時間の問題だ。

 

「させる……もんですか!!」

 

アイは叫ぶと両腕のビームガンとビームガトリングをパージ、武装の下部からビームトンファーが展開、ビームの刃が飛び出た。

 

「何!?」

 

コンドウが叫ぶと同時にアイはビームトンファーをミブウルフとアストレアに振るう。直前に二機は下がった為ビームトンファーの刃に斬り裂かれることはなかった。

 

「そっちが剣で来るなら!こっちも剣ですよ!」

 

 

「うわ〜、ド派手にやるねぇアイちゃん、コンドウさん達もだけど」

 

観戦モニターでアイの戦いを見ていたタカコが呑気な声をあげる。

彼女が言葉を発するまで誰一人言葉はその場になかった。

エデンのメンバー、店員のハセベ含めて、皆そのバトルに見入っていたのだから。

 

「でも……勝てるの?アイちゃん……以前と似たような構図だけど……あの時もコンドウさんのトランザムっていうシステムに圧倒されてたし……」

 

ムツミが続けて言う。冬のガンプラバトル大会の事だ、あの時はアイ一人でコンドウと戦ったがミブウルフのトランザムに圧倒されっぱなしだった。

その上今回は二対一の戦いだ。ムツミは不安を隠せなかった。

 

「大丈夫よムツミ。アイの奴、オッサンとアサダの動きに対応してる」

 

ナナがモニターをじっと見ながらフォローを入れた。目の前のモニターでは三機が高速で動きながらぶつかり合うように戦闘を行っていた。

 

「ん?」

 

ふとバトルを見ていたタカコが違和感を声に出した。

 

「?どうしたのタカコ」

 

「アイちゃんのガンダム、もともと緑に光ってたけどさ。なんか光強くなってない?」

 

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「この!!」

 

ソウイチのアストレアがユニコーンにGNビームライフルを連射する。簡単にユニコーンはそれを簡単にかわす。

 

「ソウイチ!加速しながらの照準なんて無理だ!」

 

コンドウが接近戦で挑め!とソウイチに指摘せんばかりに、

前に回り込んだミブウルフがアイのユニコーンにGNバスターソードで斬りかかってくる。

 

「またその手を!」

 

アイはユニコーンの両肩、両腕のビームサーベルを重ね、バスターソードを受け止める。

 

「何!?」

 

「四本束ねれば!!これ位!!」

 

アイが叫ぶと同時にユニコーンの緑色の部分、『サイコフレーム』がさっきより強く輝きだす。

 

「これは!?パワーが上がっている!?」

 

「だぁぁっ!!」

 

瞬時に両腕を広げ、ミブウルフを弾き飛ばすユニコーン、その拍子にミブウルフはバスターソードを手から離してしまった。

 

「チャンス!覚悟!!」

 

アイは四本のビームサーベルを構えミブウルフに突っ込む。

コンドウは一度しまった背中の実体剣、シラヌイとウンリュウをとろうとする、だがユニコーンは思った以上に早い、

剣をとる前に自分が斬り裂かれてしまうだろう。「ここまでか」と覚悟を決めるコンドウ、だが……

 

「コンドウさぁぁん!!!」

 

ソウイチのアストレアがミブウルフを横から突き飛ばした。ミブウルフは横に飛びユニコーンの斬撃を回避、

だが本来ミブウルフがいた場所にいたアストレアは……

 

「ソ!ソウイチ!」

 

「な!ソウイチ君?!」

 

「残念ですが、俺の方が弱いッスから……、勝って下さい。コンドウさん……」

 

ユニコーンの斬撃を受け、四つに斬り裂かれたアストレアは爆散、ウルフの面々はコンドウ一人となった。

 

「ヤタテェェ!!!」

 

コンドウは続けてアイに斬りかかろうとバスターソードを振り下ろす。それを両腕のビームトンファーで受け止めるアイ。

が、直後ミブウルフの赤い粒子の輝きが収まる。

ミブウルフのトランザムが解除されたのだ。それと同時にペナルティとしてミブウルフの性能が大きく低下する。

 

「くっ!トランザムの限界時間が!!」

 

「尽きましたか!!」

 

アイが叫ぶと同時にユニコーンはミブウルフを弾き飛ばす。今のミブウルフのパワーではアイのユニコーンに勝てない。

そのままミブウルフは浮かぶコンペイトウの地表に背中から叩きつけられた。

 

「うおっ!!」

 

追いつめられたミブウルフにユニコーンが迫る。どうにか迎え撃とうとするがバスターソードはさっき弾かれた時に手を離したため紛失。

 

――くそっ!バスターソードが!今のパワー、そしてシラヌイとウンリュウで勝てるのか?!――

 

コンドウが一瞬思案した瞬間、前方の視界端に細長い、見覚えのある物が浮かんでるのが見えた。

 

「?あれは……」

 

「ここまでですよ!コンドウさん!」

 

どんどん距離を縮めるユニコーン、

 

「そうか!!あれは!」

 

ミブウルフを前に加速させるコンドウ、ミブウルフがさっきの見覚えのある物をつかんだのと

アイのユニコーンがビームトンファーを突き刺そうとするのはほぼ同時だった。

 

「覚悟!!」

 

勝利を確信したアイ、だが直後、ビームトンファーは大型のビームトマホークで受け止められた。

 

「な?!その手に持ってるのって!」

 

驚きの声を上げるアイ、ミブウルフの手に握られる物、それは撃墜されたガンダムエックス黒王号の

ハイパーサテライトキャノンだった。これだけは無傷で漂流していたわけだ。

 

「フン!性能が落ちたからといってなんだ!俺は全力でやるだけだ!ソウイチ達に勝てと言われたんだからな!」

 

ビームトンファーとビームトマホーク、鍔迫り合いのスパークを起こしながら諦めのない声を上げるコンドウ。

 

「そうッスよコンドウさん!これを使って欲しいッス!」

 

直後撃墜されたハズのソウイチの声が響いた。とミブウルフの真上から一機の機影が写る。それは……

 

『?!ダークマターブースター!!』

 

アイとコンドウの両者が叫ぶ。飛んできたのはソウイチのアストレアが背中に装着していたダークマターブースターだ。

 

「そう!こいつを外したらアストレア本体のコントロールは出来ないッスからね!ミブウルフに突っ込んだアストレアはコントロール不能だったんスよ!」

コンドウさん!すぐ背中のバックパックをパージして!!」

 

「?!こうか!?」

 

コンドウが指摘通りに背中の装備をパージさせる。直後、ソウイチのダークマターブースターがミブウルフの背中に装着される。

同時に再びミブウルフのエネルギー状態がトランザム可能に戻った。

 

 

「こ!これは!」

 

「ダークマターブースターの正式名称は『トランザムブースター』トランザムの安定化を狙った物ッス。ミブウルフにも使えて当たり前でしょう?」

 

「でもソウイチ君!無改造でつけられるものじゃないのに!」

 

「俺が先にやられるのは解ってたッスからね。ジョイントパーツもブースターにくっつけてたんスよ」

 

「ソウイチ……どうしてそこまで……」

 

「言ったでしょう?俺の方が弱いッスから……だから、勝って下さい……俺達ウルフの意地を……」

 

「ソウイチ……解った!!」

 

コンドウが叫ぶと再びミブウルフの全身が赤く輝く、それもさっきより強く!

 

「な!これ程のパワーを!」

 

アイが驚きの声を上げる。と同時に、ミブウルフの武装は仲間の装備で固められていた。

 

「どうやら!!これからが本番のようだぜ!!ヤタテェ!!!」

 

今度はミブウルフの方がアイのユニコーンを弾き飛ばす。

 

「くぅ!!望むところおぉおおお!!!」

 

サテライトキャノンを振りかぶり突っ込んでくるミブウルフ、アイのユニコーンもまた四本のビームサーベルを身構え突っ込んでいった。

 

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……少しの時間が過ぎた。

バトルはさっきと同じようにお互い二条の光となり、高速でぶつかり合い、ぶつかる度に大きな光を暗黒の宇宙に彩った。

だが飛ぶ二つの光はどんどん強くなってゆく、まるでそれはお互いの燃え上がる心を表している様だった。

そのバトルを観戦していたナナ達は、ただただ見守るしかなかった。

 

「くぁっ!」

 

何度目かのぶつかり合いの後、アイの声が響き渡ると共にユニコーンの右腕が宙に舞った。流れはコンドウの方に向いている。

コンドウは追い打ちとして再びサテライトキャノンをユニコーンに振り被る。

 

「もらったぁ!!」

 

「!!」

 

振り下ろされるサテライトキャノン、アイはすかさず左腕のビームトンファーでサテライトキャノンを受け止める。

今までで一番激しいスパークを起こす鍔迫り合いだ。

 

 

「ぐ!ぅうう!!」

 

が、パワーはトランザム中のミブウルフには適わないらしい。ユニコーンの腕がカタカタ震えている。

 

「俺には負けられない理由がある!だが楽しいなヤタテ!お互いの全力を尽くした勝負は!!」

 

「?!」

 

「あの時!以前ビギニングファントム事変があった時!俺が見た魂を燃やし尽くすようなガンプラバトル!今それが出来ている!

こんな充実する様な事があるか!」

 

コンドウの楽しそうな声が響き渡る。

 

「俺が目指した物が!今ここにあるんだ!!」

 

「楽しいのは同意ですよ……でも!」

 

アイが叫ぶと同時にユニコーンの目が光り、震えていた左腕が止まる。ユニコーンのパワーが上がって行ってるのだ。

 

「私はこれ位じゃ満足できないんですよ!!」

 

直後、ユニコーンのビームトンファーのビームが大きくなり始めた。それに伴い、ビームトンファーの刃がサテライトキャノンのビーム刃に食い込んでくる。

 

「な!何?!」

 

「私は数年前!ガンプラマイスター『イレイ・ハル』君に助けられて!そしてハル君とボリス・シャウアーさんのガンプラバトルをこの目で見ました!」

女としてあの人に会いたい!ビルダーとしてあの人みたいになりたい!あの人に追いつきたい!

ガンプラをどれだけ好きになってもその夢は諦めない!」

 

「お前!!イレイ・ハルのバトルを見たのか!!」

 

「その為に!私は今ここで立ち止まるわけにはいかないんです!!だから!!私はぁぁぁっっ!!」

 

アイが叫ぶと同時にビームトンファーはサテライトキャノンを持っていたミブウルフごと真っ二つに斬り裂いた。

 

「超えたか……俺の腕も……俺の立ってる場所も……」

 

少しだけ悔しそうに……だが嬉しそうにコンドウがつぶやくと同時にミブウルフは爆発。このバトルはアイの勝利で終わった。

 

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「……それで仕上げれば完成です。指定したパーツはムツミちゃんがパーフェクトユニコーン入れて持ってきた箱にあらかじめ入ってますから」

 

バトルが終わった後、アイは工作室で、箱に入ったパーフェクトユニコーンのまだ使ってないパーツを見せながらコンドウに改造の指示を出す。

 

「解った。任せろヤタテ」

 

コンドウが箱を受け取るのを見ると「じゃぁ後お願いします……」と言い、コテッとアイはその場に倒れそうになる。

 

「わわ!アイ!」

 

ナナが体勢を崩したアイを受け止める。ナナの耳にはアイの寝息が聞こえた。

 

「ったく、最後の最後で締まらない真似を……」

 

「そう言わないでよアサダ、アイは全力を出し切ったんだから」

 

面白くなさそうなソウイチにナナがフォローを入れる。

 

「完全にこれで全力出し切ったって感じだね。コンドウさん」

 

「しかしすげぇ戦いだったぜ!感動もんだ!」

 

と、ツチヤとゼデルがコンドウに話しかける。ゼデルの方はさっきのバトルに興奮してるらしく眼は爛々と輝いていた。

 

「本当ですよ〜。まさかこんな派手なバトルになるなんて〜」

 

「その通りです……。素晴らしいバトルでした……」

 

タカコとムツミもゼデルに賛同する。

 

「そうか?俺としても悔いのないバトルだったさ」

 

「ところで気になったん事があるんですけど……」

 

なんだ?と質問を承諾するコンドウ

 

「いえ、途中アイちゃんのガンプラが光が強くなったり、ビームの刃が強くなったりでどうしてあぁなったのかなって思って……」

 

「あれか?そうだな……ありていに言えばヤタテの強い気持ちがユニコーンに伝わった。かな?」

 

「え?」と声を出すタカコとムツミ。

あまりにも科学技術を駆使したガンプラバトルにしては、答えが真逆のベクトルだったからだ。

 

「ハハ、ありえないって顔してるな。でも本当だよ二人とも、作る時の『楽しい』という気持ち、完成した時の『嬉しい』という気持ちがガンプラ

に宿り、応えてくれる。ガンプラバトルってのはそういうのが成立するもんなんだ」

 

コンドウが言ってる事は本当だった。現にガンプラの中には使用者の『魂』が極限に高まる事によって使用可能となる武器もある。

 

「にわかには信じがたいですけど……そう言うならそうなんでしょうね……」

 

「ん〜オカルトだねぇ〜」

 

「……でも、なんだか解る気がします。アイちゃん……好きだって思った事には凄い集中力出しますからね。

だからこそガンダムに興味が薄いナナをガンプラに興味を持たせたのかもしれないです……本当に好きな事を楽しそうにやるっていうの、

他人も引き込む説得力があるんだと思います」

 

「そうだね〜、ソウイチ君の考えも改めた事もあるし。いいな〜アイちゃん、あぁやってカワイイ子と距離縮めちゃうんだから」

 

「黙ってタカコ……」

 

「おうおうあんま難しく考えんな二人とも!物に魂が宿るっていう考えは昔っからあったろう?!」

 

「ゼデルさん〜、日本人じゃないあなたが言います〜?」

 

「あん?そうか?」

 

ゼデルとタカコが問答する中、ツチヤとムツミがコンドウに話しかける。

 

「にしても……決着ついたって感じだな」

 

「サブ……あぁ、完敗だ。凄い奴だよヤタテは」

 

「それにしてもアイちゃんに憧れの人がいたとは知りませんでしたけど……凄い人だったんですか?そのイレイ・ハルって人」

 

「あぁ、わずか一年でガンプラを極めたという少年だ。ヤタテの奴……彼に会った事があったとはな」

 

「好きな物に取り組む姿勢はその人から学んだのかもしれませんね……」

 

「そうかもな。もしくはアイツの元々の才能だったかもしれんぞ」と返すコンドウ、ともかくこれなら明日も大丈夫だろう。

俺達は明日、ヤタテが全力で戦えるよう、全力でサポートをするだけだ……。

そう思いながら、さっき教えてもらったパーフェクトユニコーンの完全体、コンドウはまだ形にならないそれを頭でイメージしていた……。

 

 

 

――でもヤタテ……お前だったら、ウルフを任せられるかもしれないが……残念だ……――

 

謎の言葉を浮かべながら……。

 

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そしてレム達のいるゲームセンター

 

「……負けちゃった……」

 

Gポッドの中、撃墜されたレムはつぶやく。目の前に『あなたは撃墜されました』の表示が浮かんでいた。

 

――やっぱり駄目だ……、普通のガンプラじゃスランプのまま……――

 

ハロ型スキャナーから自分のガンプラを取り出す。

違法機体ではない。ガンダムAGEに登場したファルシアというピンク色の機体だった。

スランプに陥る前、愛用していた機体だ。

 

――やっぱりこっちじゃないと駄目みたい……――

 

レムは目の前に一つの一pにも満たない箱状のICチップを取り出す。

その中には違法ビルダーのデータが入っていた。

 

――ごめんね皆……わたし、負け癖は相変わらずでこっちだけ勝ち癖がついてきちゃった……――

 

そうマスミ達へ謝罪を心の中でしながら、かつ自己嫌悪に陥りながら、レムは明日のバトルを楽しみに感じていた。

 

――おかしいよね……これをやってる時だけ、皆と一緒の位置に立ってる気持ちになれるんだもの……ダメだな……わたし……――

 

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前回近いうちにと言いましたが一か月待たせてしまいました…すいません。発言はもう少し気をつけねば…コマネチです。

今回決戦前夜という事でコンドウと完全に決着をつけました。これだけでは物足りないだろうと思い今日はもう一話連続で投稿します。よければみて下さい。

説明
第29話「決戦前夜」
違法ビルダーの正体、それはチーム『エデン』のフジミヤ・レムだった。二度に渡り彼女を退けるも、
彼女から挑戦状が送られた。それはアイ達に決戦を感じさせる物であった。
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飛鳥さん 返事遅れてすいません。有難うございます。この章のトリとして思いっきり暴れさせる予定です。(コマネチ)
おぉ、なにやら不穏な空気がますます……(´・ω・`)パーフェクトユニコーンも形になってきて、楽しみです(飛鳥)
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