おにむす!B
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繁華街の隅にある居酒屋『小雪』

カウンター席で日本酒を煽りながら、待ち合わせの時間をとうに過ぎている相手をまっている女がいた。

綺麗なブロンドのロングヘアーをポニーテールに纏め、スーツを着崩している姿はとても扇情的だった。

「ったく・・・、もう一杯!」

(どうして男ってのはこう、時間にルーズなのかね?)

イライラしている頭を冷やすように酒を一気に煽る。

「飲みすぎだぞ、アリス」

「おせぇよ、情報屋が時間守れねぇで商売成り立つと思うなよ?」

アリスと呼ばれた女は眉間に皺をよせ、悪態をつく。

情報屋

金と引き換えにクライアントの欲しい情報を仕入れ提供する人、又は企業を指す。

どこにでもいるような中年のサラリーマン風の男は自分がアリスと呼んだ女の隣の席に腰を落とす。

「で?何かわかった?」

「ガードが固くてね、事が動き出してるのは間違いないんだが・・・あっ、とりあえずビール」

「役にたたねぇ」

皺を一層深くしてアリスが毒づく。

「そりゃねぇだろ、こっちだって命掛けてんだ。あの御堂財閥だぞ?リスクがでかいし慎重になるのは当然だろう?」

御堂財閥は製薬会社からコンビニチェーンまで幅広く展開する大企業の元締めである。

何気なくつけたテレビのCMなどでもよく見る名前だ。

「命を惜しんで仕事しているうちは二流だよ、表ならまだしも裏じゃあね」

「これは手厳しい」

男は差し出されたジョッキを受け取り傾ける。

「しかし、この案件は異常だ。人間の考えることじゃない」

男はポツリと呟いた。

「そうでもないだろう、金と権力があるんだ、それ以上に欲しいものなんか限られてくる」

「そういうもんかね?」

「なんにせよ、あたしはクライアントの要望にのっとり『それ』を潰すだけさ」

アリスは残った酒を飲み干し、席を立つ。

「行くのかい?」

「今日はもう帰って寝る」

カウンターの上に5万円を置き出口に向かう。

「少ないんじゃないの?ここの代金込みでしょ?」

「遅刻した分天引きだ」

「仕方ない、じゃあ最後に一つ。この案件でお前のことをマークしてるやつがいるぞ」

「いつものことだな、誰なんだ?」

「それは守秘義務だ」

アリスは小さく舌打ちをして店を出た。

冷たい風を受け、アリスは帰路についた。

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コメント
>華詩さん コメントありがとうございます! この段階でもちょこっと伏線張ってますw ぜひ予想してみてくださいねw (瀬領・K・シャオフェイ)
どんなふうに人々が交錯して物語が進んでいくのか楽しみです。タイトルの由来も考えながら読んでいきます。(華詩)
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