英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
ルーレへの潜入においては、やはり強力なノルティア領邦軍の本拠地であるのが最大の障害であり……いくらカレイジャスでもそのまま近づくのは危険だった。そこでリィン達は―――ノルド方面にいる”ある人物”のアドバイスを貰う事にした。
12月21日―――
〜カレイジャス・ブリッジ〜
「―――ふむ、どうやら滞りなくノルティア州には入れそうじゃの?」
モニターに映っている人物―――グエン・ラインフォルトはリィン達に問いかけた。
「はい、お祖父様。問題はどうやってルーレ市へ入るかなんですけど……」
「さすがに空港を使うわけにはいかないもんね。」
「とはいえ、街道も街からはほとんど丸見えだ。」
「正直、カレイジャスを降ろすいい場所が無いみたいなのよね。」
「ユミルの山道からルーレへと続くザクセン山道を降りる手も考えたのですが………」
アリサ達と共にルーレに潜入する方法を考えていたエリスは複雑そうな表情をし
「……ユミルはグエンさんもご存知の通りメンフィル軍による厳戒態勢に入っている影響で、ザクセン山道に降りる所までメンフィル軍が展開されている為、領邦軍もメンフィル軍による襲撃を警戒しているでしょうからザクセン山道方面からの潜入も厳しいという結論が出たのですわ。」
セレーネは疲れた表情でエリスの説明を捕捉した。
「そこでグエンさんに知恵を借りられないかと連絡したんですが……何か、いいルートを知っていたりはしませんか?」
「フフン、ワシを頼ったのはなかなか良い判断じゃ。それならちょうどいい場所を知っておるぞい。」
リィンに尋ねられたグエンは自慢げに答えた後リィン達が期待していた言葉を口にした。
「ご隠居、それは……?」
「ルーレ西側の”スピナ間道”―――あそこには小川が流れておってな。ワシも昔はよくそこで釣りをしておったもんじゃが……その川の源流は、ユミルの山麓方面にあっての〜。」
「え……」
「もしかして……ユミル方面からボートで潜入するということですか?」
ガイウスの問いかけに答えたグエンの話を聞いたエリスは目を丸くして呆け、すぐに察したリィンは尋ねた。
「フフ、そういうことじゃな。かなり急な場所もあるから注意は必要じゃろうが……そのルートならば、気付かれずに街の近くへと出られるはずじゃ。」
「なるほど………それは見込みがありそうだ。」
「さすがに小川からの侵入や襲撃は想定していないと思いますわ。」
グエンの説明を聞いたラウラとシグルーンは納得し
「あはは、なんかスパイ小説みたいで楽しそー!」
「お前が言うな、お前が……」
無邪気な笑顔を浮かべるミリアムにユーシスは呆れた表情で指摘した。
「そうと決まればいったんユミル方面に向かうことにしましょう。」
「ボートで行くとなると人数を絞る必要もありそうね。」
「お祖父様、いい知恵をありがとうございます……!」
「な〜に、他でもない可愛い孫娘のためじゃ。それに、可愛くない我が娘に恩を売るのも悪くあるまい。ワシの遊びの一番弟子であるアンゼリカちゃんも助けてやりたいしのう。」
「お祖父様……」
「フフ……とても優しい人ね。」
グエンの優しさを知ったアリサとゲルドはそれぞれ微笑んだ。
「皆さん………どうかお気をつけて。」
「……僕達もできればついて行きたいけれど……艦の運用を考えるとやっぱり君達に任せるしかないだろう。」
「アンちゃんたちのこと……どうかよろしくお願いするね!私やジョルジュ君……それとクロウ君のぶんも!」
「ええ―――任せてください!」
そしてリィンは潜入メンバーにアリサ、ゲルド、セレーネ、ラウラ、シグルーン、サラ教官を選んだ後一旦ユミル山麓へと向かい……用意したボートを小川に下ろして、ルーレ方面へ下っていったのだった。
同日――――11:00
〜スピナ間道〜
「なんとか見つからずにここまでこれたわね。思った通り、こちら方面は領邦軍の警戒も薄いみたいだわ。」
「こちらの方角には正規軍の中でも有力な機甲師団もいませんし、それにメンフィル軍がルーレに攻めてくるとしてもザクセン山道でしょうし、そちらからの襲撃を警戒しているのだと思いますわ。」
「あとはどうやって市内に潜りこむかだな。」
「シグルーン様とゲルドさん以外のメンバーであるわたくし達は領邦軍に指名手配をされていますからね……」
「とにかく一旦、ルーレ市に向かってみよう。ここから歩いていけば、街に通じる道に出られるはずだ。」
「ええ……!」
その後街道に出たリィン達は街の出入り口まで到着したが、そこには領邦軍の兵士達が見張りに立っていた。
「む……」
「ん、何だお前達は?」
ルーレに近づいてきたリィン達を領邦軍の兵士達は眉を顰めて呼び止めた。
「その、俺達は旅の者です。ちょうど、ユミルの山麓方面から歩いてきたところなんですが……」
「歩いてきただと……?この内戦下に、危機感が足りないというかなんというか………ん?そちらの娘は……」
リィンの説明を聞いて呆れた兵士はアリサに視線を向けた。
「な、なんでしょう?」
「いや………お前の顔をどこかで見たような気がしてな。よく見れば、他の者達も……?」
(チッ……露骨に怪しまれてるわね。)
(ルーレに来る方法が”徒歩”という普通なら信じられない手段ですからね……)
(歩いて街に来ただけでどうしてそんなに怪しむのかしら……?)
自分達を警戒する兵士の様子にサラ教官とシグルーンは厳しい表情をし、ゲルドは不思議そうな表情をして首を傾げていた。
(どうする……?)
そしてラウラがリィンに判断を促したその時もう一人の兵士が予想外な事にリィン達に対する助け舟を出した。
「まあ―――おそらく気のせいだろう。このくらいの年頃の若者はみな同じ顔に見えるものだ。昨晩行ったバーの店員と見間違えてるんじゃないか?」
「なっ……なんだと?」
「そもそも、我々が第一に注意すべきはあくまで正規軍とメンフィル軍だろう。さすがにこんな若者たちは関係あるまい。」
「……まあ、それもそうだな。いいだろう、通るが良い。ただし、くれぐれも街の中で騒ぎを起こさぬように。」
「は、はい。」
「……失礼します。」
こうしてリィン達はルーレへの潜入を無事果たした。
説明 | ||
第447話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
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コメント | ||
本郷 刃様 全く持ってその通りですなww(sorano) ミリアム、キミとてスパイ小説のような行動をしていただろうw(本郷 刃) |
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