真・恋姫無双 雌雄の御遣い 第三十五話
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〜雪蓮視点〜

翌日になっても一刀は目を覚まさない

「雪蓮、襄陽と成都に使者を送った方が良い

 お前の号令から一刀が毒を受けた事は直ぐに知られる

 向こうから確認される前に知らせておいた方が余計な事を疑われずに済む」

彼方から確認が来るまで報告せずにおくと我々が一刀を暗殺しようとしたと勘ぐるものが出るかもしれない

その責任を曹操に擦り付けた、というおまけつきで

「そうね、亜莎に襄陽へ行きその足で成都に向かうように伝えて」

「心得た」

 

更に翌日、愛紗が私の所にやって来た

曹操との戦の後から片時も一刀の傍から離れなかったのに

「雪蓮殿、一刀様の事を頼む

 私は襄陽へ行く これから曹操と戦になるのだから此処に留まってはいられない」

成る程、一刀の復讐戦をしようと言う訳ね

「一刀の事は引き受けたわ

 でも、私達は今軍を動かせる状態じゃないから援軍は出せないわ

 同盟を結んでおいて、命を助けられて、母様を助けてもらって、申し訳ないけどね」

私の言葉に

「援軍は期待していない

 これは、我等北郷軍の問題だ」

愛紗は低い声で話、部屋を後にした

愛紗、気持ちは分かるけど今動けば負けるのは貴方達よ その言葉を私は掛けれなかった

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〜紫苑視点〜

曹操が孫呉に向けて出陣したという情報を得て私達は急遽出陣の準備をしました

しかし、その直後理由は分かりませんが曹操は撤退した、との情報が入りました

「曹操は何故、撤退したのか

 孫呉が曹操に勝てるとは思えぬ

 一刀様が孫呉に居る故、出陣の準備をしたというのにな」

星ちゃんが不思議がっています

「孫呉に勝ち目が無い、とは言えませんが難しいでしょうね

 ただ、曹操が撤退したならば一刀様達も無事だという事ですので寧ろ喜ばしい事です」

静里ちゃんの言葉が今の我々の総意でしょうね

その静里ちゃんの意見は孫呉からの使者の言で覆されました

”一刀様が孫策殿を庇い、毒を受けて意識不明

 医師の話では目を覚ますかどうかは本人の体力に賭けるしかない”

平身低頭している呂蒙さんは心底申し訳なさそうだった

そして、この後成都に向かう、との言葉を残し出立して行った

 

「紫苑、静里、直ぐに出陣準備に掛かろう

 一刀様の復讐戦だ」

「そうね、星ちゃん」

私も同意しました

そこに愛紗ちゃんが入って来て

「私も加わるぞ」

出陣準備に掛かる為、部屋を出ようとした私達の前に静里ちゃんが立ち塞がりました

「駄目です 今は動くべきではありません

 今動けば江夏の劉埼、曹操、私達で取られている均衡が崩れます

 最悪、出陣した軍が壊滅し、襄陽を失い荊州南部の離反を招きます

 一刀様がいない間にそのような事を起こしてはなりません」

静里ちゃんの意見は正論でしょう

しかし正論だから従える、人間の感情はそう言った物ではありません

「静里、貴様一刀様が瀕死の目に会っているのによくそんな事が言えるな!」

愛紗ちゃんが静里ちゃんの意見に激昂します

星ちゃんは黙って静里ちゃんを睨んでいます

「どうしても出陣する、と云うならば私を斬ってからにして下さい

 そうでなければ絶対に出陣させません!」

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〜静里視点〜

「愛紗さん、星さん、紫苑さん、三人の誰でも私を簡単に討ち取れるでしょう

 それでも、私は出陣させません!」

「静里、貴様〜」

愛紗さんが激昂し、睨みつけたと思ったら直ぐに顔色が変わりました

「静里、お主 泣いているのか・・・?」

星さんに言われて気が着きました

私はいつの間にか涙を流していました

「私も頭に血が昇っていたようね

 一刀様がいない間に状況を悪くしては家臣の資格は無いわ

 ここは静里ちゃんの言う事に従いましょう」

と紫苑さんが言うと

「そうだな、一刀様が亡くなった訳でもない

 あの方なら直ぐに目を覚まされる」

星さんも同意してくれました 愛紗さんは

「三人がそう言うなら仕方が無い」

渋々ながら思い留まってくれました

”一刀様、襄陽は大丈夫です 早く目を覚ましてください”

私はそう願いました

 

〜鞘華視点〜

「何ですって!

 それで一刀は無事なの?」

「医師の話では本人の体力に賭けるしかない、との事です」

呂蒙から事の経緯を聞いた私は激昂した

しかし、呂蒙を責めても意味が無い

平静を装いながら

「ご苦労だったわね 呂蒙

 部屋を用意させるから休んで行きなさい」

私がそう言うと呂蒙は侍女に案内されて退室した

「どうしますか、鞘華様」

灯里の問いに私は考える

そして出した結論は

「我等は現状を維持する

 一刀は復讐戦など望まないし、直ぐに目を覚ましてくれる筈

 ならば、その後迅速に動ける様にする為にも現状を維持する」

益州州牧代理の私の言に異論は出なかった

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〜一刀視点〜

目を覚ますと知らない部屋だった

起き上がると左腕に鋭い痛みが走った

腕には包帯が巻いてあるので指を動かしてみると動く

肘を曲げてみると痛みが走るが何とかなる

負傷しても使えなくなった訳ではなさそうだ

で、此処はどこだ?

そんな事を考えていたら雪蓮が入って来た

「一刀!目を覚ましたのね!良かった〜」

泣きながら抱き付いてきた

取り敢えず雪蓮が落ち着くのを待ってから何があったかを説明してもらう

その後、孫呉の主要な面子が集まり皆に感謝された

 

「で、俺は5日も眠っていたのか

 現在、どこかに大きな動きは無いのか?」

「無いな、北郷軍が曹操に復讐戦を挑むかとも思ったがそれも無かった

 お前が意識不明になってからは大きな動きは無い」

冥琳が説明してくれた

「じゃ、お願いがある

 成都に俺が目を覚ましたと伝令をお願いできるか?」

「それ位、問題ないわ でも襄陽は良いの?」

雪蓮の問いに俺は

「ああ、明朝 俺は襄陽に出立する」

 

翌朝、襄陽へ出立する俺に

「一刀、貴方には一生かかっても返しきれない程の恩が出来たわ

 私達に出来る事なら何でも聞くわ」

雪蓮が真面目な表情で言ったが、ここで表情を崩して

「何なら、私や蓮華の体を要求しても構わないわよ」

「姉様!」

大騒ぎになり、その後俺は出立した

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〜あとがき〜

 

今回は一刀が意識不明の状態で皆が暴走しないか、という話でした

静里が活躍しました

鞘華は無理やり「公」を優先させました

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

説明
北郷軍は一刀の状態を知って・・・
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コメント
Jackさんの言う通りですね、それを顧みるに関羽を討たれ感情に任せて呉を攻めた劉備はやはり王としては二流なんですかね。(紫天の支配者)
一刀もなんの後遺症もなく復活できてよかった!皆を早く安心させてあげてくれ!(nao)
静里は軍師だから冷たい計算をしなければならず、彼女の意見は当然の事。でも鞘華は立派。個人の感情を優先させなかったのは統治者として立派だし、同時に最低条件でもある。王は人であって人でない、よく言ったものですよね……人の心を持ちながら、個人の感情はその一切を殺さなければならない、さもなくば破滅の道を辿る……暴走しなくてよかった。(Jack Tlam)
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真・恋姫無双 北郷一刀 愛紗 雪蓮 蓮華 紫苑  

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