英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜ルーレ市・ドヴァンス食堂〜
「……そうか。そんな事になっていたのか。メンフィル帝国と戦争状態に陥る事は予想していたが、まさかクロスベルまで関わってくるなんてね……」
事情を全て聞き終えて重々しい様子を纏っていたアンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いた。
「正直俺達も何とか状況を変えようと思ってその場で意見を何度も口にしたのですが…………」
「”貴族連合”がメンフィル帝国に対して行った数々の卑劣にして愚かな行為に加えて、最初の襲撃の後から約2週間も猶予を与えて頂いたにも関わらずエレボニア帝国はメンフィル帝国の”当然の要求”に一切応えなかったどころか、謝罪や説明すらもしなかったというメンフィル帝国に対する”負い目”がある為、殿下達でも状況を変える事はできませんでした……」
リィンとラウラは複雑そうな表情で答えた。
「まあ幾らオリヴァルト皇子殿下達でも無理だよ。メンフィル帝国は当然の事を言っているだけで、全ての非はエレボニア帝国にあるのだから。第一相手はあのレン君だからね……彼女の傍にいる私も彼女の凄さも十分理解しているつもりだ。何せあの年齢で僅かな時間で親父殿を説得して、軟禁の身となりかけていた私を連れ出す事ができたくらいだし、交渉の際も多くの大人達とも渡り合えるくらいだからね……」
「……ま、あたしは”殲滅天使”より”微笑みの剣妃”の方がそう言う事については”上”だと思っているわ。」
複雑そうな表情で呟いたアンゼリカに続くようにサラ教官は真剣な表情で呟き
「”六銃士”の一人である”微笑みの剣妃”ルイーネ・サーキュリー。リウイ陛下達と旧知の間柄であるヴァイスハイト殿の話によりますと元々あの方は祖国では内政と外交を一手に引き受け、更に策略を巡らせて”敵国”と対抗していたとの事ですわ。」
「ええっ!?」
「ど、道理で論争に強いはずですわね……」
「下手をすればあのオズボーン宰相をも上回るのではないか……?」
シグルーンの話を聞いたアリサは驚き、セレーネは疲れた表情をし、ラウラは真剣な表情で推測した。
「そしてそんな彼女が”クロスベル帝国”建国に関わった後は、間違いなく今後の外交などにも関わってくるのだろうね。やれやれ……噂には聞いていたけど、まさか”六銃士”がそんな凄い能力を持つ存在だったとはね。……まあ、メンフィルとクロスベルが攻めてくる前に内戦を終結させてもこのルーレはどの道メンフィルに贈与された後クロスベル領となってしまうのか……」
「アンゼリカさん…………」
「……どうしてそんなに辛そうな表情をしているの?」
肩を落として辛そうな表情をしたアリサは悲しそうな表情をし、ゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。
「ルーレはアリサ君同様私にとって生まれ育った故郷だからね。……で、メンフィルとの戦争を回避する為には私の実家―――”ログナー侯爵家”はこのルーレから出て行かなければならないから色々と思う所があるんだよ。”救済条約”とやらを使っても”四大名門”の帰属は許されないのだろう?」
「はい…………」
ゲルドの説明したアンゼリカはリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは辛そうな表情で頷いた。
「まあ、皇帝陛下への忠誠も低くないあの父が他国に鞍替えするなんてことはありえないし、”平民”に落とされてまでルーレに住むつもりもないだろう。それに”貴族として”ルーレを治める事や住む事を禁止しているだけなのですから、”旅行”で訪れたり、”一般人として”住む事は問題ないでしょう?シグルーン中将閣下。」
「ええ。さすがにそこまでは制限していませんわ。」
アンゼリカに問いかけられたシグルーンは静かな表情で頷き
「それを聞けて安心しました。元々私は頻繁に他の娘達の所で泊まっていたから、私はそれ程問題ではないさ。それにレン君の指摘通り7年ものチャンスが与えられたのだから、実家やエレボニア帝国の為にもそのチャンスをモノにしてみせるさ。」
「フフ……たくましいですね。」
アンゼリカの答えを聞いたラウラは苦笑した。
「―――まあ、そんな事よりも。まさか本当にリィン君がアルフィン皇女殿下のお相手になるとはねぇ?」
「う”……そ、それは…………」
口元に笑みを浮かべたアンゼリカに視線を向けられたリィンは表情を引き攣らせて言葉を濁し
「しかも話を聞く限り”ラインフォルトグループ”を護る為にもアリサ君とも結婚しなければならないし、養子とはいえメンフィル皇家の一員であるセレーネ君を捨てるなんてことはできないから当然彼女も娶らなければいけない上、心から大切にしている妹であるエリゼ君とエリス君の想いも兄として無下にできないから、現時点でも5人もの麗しい女性達と結婚しなければならないという事になるね。君は世界中の男達の嫉妬の対象だろうねぇ?この私ですら君の女運に嫉妬しているくらいだし。」
「確かにその通りよねぇ?というかつい最近、”氷の乙女(アイスメイデン)”まで落としたのよ♪」
アンゼリカとサラ教官は口元をニヤニヤさせながらリィンを見つめた。
「なっ……あのクレア大尉をですか!?サラ教官、その話後で詳しく教えて貰ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ♪」
「きょ、教官!?」
そして二人の会話を聞いたリィンは慌て始めた。
「ア、アハハ……」
「………本当に後何人増やせば気がすむのよ……」
その様子を見ていたセレーネは苦笑し、アリサはジト目でリィンを見つめ
「……ゲルド。そなたの予知能力とやらではわからぬか?」
「えっと…………」
「いやいやいやっ!?そんな事の為に予知能力を使わなくていいから!」
ラウラに尋ねられて自分をジッと見つめ始めたゲルドにリィンは疲れた表情で指摘した。
「フフ……―――話を戻すが家を飛び出す直前に言い争いにもなったんだが……『お前が正しいと主張するなら俺を力ずくで納得させてみろ!』―――なんて言われてしまってね。」
「そ、それは……」
「とても名門貴族の当主とは思えない方ですわね………」
「というか何気に考え方がメンフィルと似ているじゃない……」
アンゼリカの話を聞いて仲間達と共に冷や汗をかいたリィンは表情を引き攣らせ、シグルーンは目を丸くし、サラ教官は疲れた表情をした。
「でも……迷いがあるのも当然かもしれませんね。」
「ああ……―――父は今、”黒竜関(こくりゅうせき)”で領邦軍の指揮をとっている。そして少数だが、一部の兵士は私の決起を待ってくれている。装甲車も数体確保できたし、機甲兵も何機かは動かせるだろう。時が来れば父に挑み、お望み通り”力ずく”納得させてやるつもりだ。そういう意味では―――君達の出る幕はないだろう。これはあくまで、ログナー家の問題だ。来てくれたのは嬉しいし、エレボニア帝国を滅亡させない為にも一日でも早く内戦を終結させたい気持ちはわかるがどうか手を引いてくれないか?勿論私も出来る限り早く父と決着をつけるつもりだ。」
「それは……」
「アンゼリカ、あんた……」
アンゼリカの頼みを聞いたリィンは複雑そうな表情をし、サラ教官は真剣な表情をし
「いいえ―――アンゼリカさん。これは、侯爵家だけの問題じゃありません。故郷のルーレが……何よりRF社が絡んでいる。その時点でこれは、”私”の問題でもあるんです。」
アリサは首を横に振った後静かな表情で答えた。
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第451話 | ||
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コメント | ||
K'様 さてさて自分の領地が奪われる事を知ったログナー侯はどんな反応をするやら…… 本郷 刃様 でも、それがいいんですよねww(sorano) ルイーネは確かに凄いですよね、魔導巧殻をプレイしていた時も美人で人妻で謀略型とか怖いなぁと思いましたよw(本郷 刃) この様子ではログナー公の死は避けられそうにないですね。第一貴族としての有り所を奪われてまで生きるのを望むかどうか・・・せめて良き死に様を与えて欲しいところです。(K') |
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