英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜ザクセン山道〜

 

「!あ、貴女は確か……!」

「えっと……ターナ皇女殿下の親衛隊の隊長のシレーネ様……ですわよね?」

女性騎士―――シレーネの登場にリィンは驚き、セレーネは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「フフ、覚えて頂いて何よりです。―――久しぶりね、シグルーン。」

「ハッ!シレーネ将軍閣下も壮健のご様子で何よりです!」

シレーネに微笑まれたシグルーンは敬礼をした。

(?どうしてシグルーンさんはあの人にはアルフィン皇女に接しているような態度で接しているの?)

(……親衛隊の副長である彼女からしたら、所属は違えど親衛隊の隊長であり、階級も上のシレーネ将軍は上官に当たるからよ。)

その様子を見ていたゲルドの疑問を聞いたサラ教官は小声で答えた。

 

「フフ、今はプライベートだから砕けた口調でいいわよ。」

「―――わかったわ。シレーネ、一つ聞きたいのだけれど……ユミル防衛の兵達の配置を考えたのはもしかしてヒーニアス皇子殿下かしら?」

苦笑するシレーネの言葉に頷いたシグルーンは静かな表情で尋ねた。

 

「ええ。例の”戦争回避条約”の”期限”が切れた際にルーレとザクセン鉄鉱山を即座に制圧できるようにとの事よ。」

「なっ!?」

「そ、そんな…………」

「クッ……!まさか我らがメンフィルから与えられた期間以内に内戦を終結できることを信じていないのですか……!?」

「……どうやらメンフィルは”期限”が切れるのを今か今かと待ち構えているようね……」

「……………………」

シレーネの答えを聞いたリィンは驚き、アリサは表情を青褪めさせ、ラウラは唇を噛みしめ、サラ教官は厳しい表情をし、アンゼリカは真剣な表情で黙ってシレーネを見つめた。

 

「その期限の件ですが……―――クロスベルで動きがありました。」

「何ですって!?」

「まさかもうクロスベルが解放されたのでしょうか……?」

シレーネの答えを聞いたサラ教官は厳しい表情で声を上げ、セレーネは不安そうな表情で尋ねた。

 

「―――まず”特務支援課”。彼らは先日はぐれた最後の仲間であり、ミシェラムにマクダエル議長と共に軟禁されていたエリィ嬢をマクダエル議長と共に救出しました。」

「”はぐれた最後の仲間”と言う事は……」

「……”特務支援課”も全員揃ったと言う事ね。」

シレーネの話を聞いて静かに呟いたゲルドの言葉の続きをサラ教官は複雑そうな表情で答えた。

 

「動きと言うのは特務支援課が全員揃った事かしら?」

「いいえ。―――昨日(さくじつ)特務支援課によって救出されたマクダエル議長による”独立国無効宣言”並びに”六銃士”達による”クロスベル帝国宣言”とその後にリウイ陛下による”クロスベル帝国との同盟の宣言”がハッキングによってクロスベル市内で放送されたわ。」

シグルーンの質問にシレーネは静かな表情で答え

「それは…………」

「間違いなくクロスベルの市民達に影響を与える宣言ですわね……」

シレーネの話を聞いたラウラは真剣な表情をし、セレーネは静かな表情で推測した。

 

「そう……それじゃあ後はクロスベルを覆っている”結界”だけね。」

「ええ。現在”特務支援課”が”結界”を解除する方法を探っているとの事よ。」

「あの……少しよろしいでしょうか?」

「お兄様?」

シレーネとシグルーンの会話に割り込んできたリィンを見たセレーネは不思議そうな表情をした。

 

「何でしょうか?」

「その……ロイドさん達――――”特務支援課”の人達は”クロスベル帝国”や二大国侵攻についてどう思っているのですか?その事がずっと気になっていまして……」

「あ………」

「確かにそうね……彼らの活躍や今までの行動を考えると彼らは君達Z組と似ている部分が多いわ。しかももう一人のクロスベル政府の代表であるマクダエル議長も救出している上特務支援課に所属しているエリィ・マクダエルはマクダエル議長の孫娘よ。」

リィンの質問を聞いたアリサは呆け、サラ教官は真剣な表情で呟いた。

 

「彼らは”六銃士”がクロスベルを新たに導く存在として認め、”六銃士”達と協力体制を結んだと聞いておりますが。」

「なっ!?」

「一体何故彼らが……」

シレーネの答えを聞いたリィンは驚き、ラウラは信じられない表情をした。

「あくまで私の推測になりますが、彼らも彼らなりに考えて今後のクロスベルは”六銃士”によって導かれる事がクロスベルの為になると考えたのではないでしょうか?それに貴方達は何か勘違いをしていませんか?」

「え……」

「……それは一体どういう事でしょうか。」

シレーネの問いかけを聞いたアリサは呆け、ラウラは真剣な表情で尋ねた。

 

「特務支援課は”エレボニア帝国民ではなくクロスベル自治州民”です。エレボニアを護ろうとする貴方達と違い、彼らは自治州であるクロスベルを護り、”二大国による圧力や干渉を受け続けているクロスベルの状況を少しでも良くする為に動いている存在”ですよ。」

「!!それは……」

シレーネの指摘に目を見開いたラウラは複雑そうな表情をした。

「そもそも”クロスベル問題”の”元凶”である二大国の滅亡と今まで搾取され続けて来た自分達の故郷が大国へと成り上がり、繁栄が約束される事を天秤にかければ、普通ならどちらに傾きますか?」

「あ……」

「………………」

シレーネの推測を聞いたアリサは呆けた声を出した後辛そうな表情をし、リィンは複雑そうな表情で黙り込み

「”クロスベル問題”か……私は話にしか聞いていないが、市民達の間で犠牲者が出たにも関わらず事件は有耶無耶にされて、犯人が捕まらなかった事も頻繁にあったそうですね?」

「ええ……5年前の”事故”を境にそう言った”不幸な事故”は一応止まったんだけどね……」

アンゼリカに視線を向けられたサラ教官は静かな表情で答えた。

 

「それとクロスベルを解放する為にも彼らや彼らを慕う”六銃士派”の力は絶対に必要だからと思ったからでしょうね。」

「”六銃士派”……クロスベル警察、警備隊の中でも彼らを強く慕っている彼らの事ね……」

「確かに相手は”軍”ですから、それに対する”兵力”も用意しなければなりませんものね……」

シレーネの話を聞いたサラ教官とセレーネはそれぞれ複雑そうな表情で呟いた。

 

「その……特務支援課の人達はマクダエル議長も救出したんですよね?マクダエル議長はどうなるのですか?」

その時ある事に気付いたアリサは不安そうな表情で尋ねた。

「マクダエル議長は自らの意志で”六銃士”達にクロスベルの未来を任せて自分は引退する事を申し出たとの事です。」

「な……っ!?」

「マクダエル議長自らがですか!?」

「……その人はどうしてその”議長”という仕事を辞める事にしたの?」

シレーネの話を聞いたラウラは驚き、リィンは信じられない表情をし、ゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「話によりますと高齢である自分では若い世代である”六銃士”達の足かせになると自ら判断して政治の世界から引退するとの事です。」

「マクダエル議長は今までクロスベルの為に身を粉にして働いて来たのですから、クロスベル帝国建国後は”勇退”扱いになる事はほぼ間違いないと思われますわ。マクダエル議長は市長であった頃から市民達に支持され続けていたのですから、クロスベルの大多数の民達もマクダエル議長の”勇退”を受け入れるでしょうね。」

「それは…………」

「元々マクダエル議長はいつ引退してもおかしくない年齢だったからね……マクダエル議長御自身もクロスベルの未来を託せる優秀な人物達が見つかったから自分が引退するちょうどいい機会だと判断されたのかもしれないわね……」

シレーネとシグルーンの話を聞いたリィンやサラ教官は複雑そうな表情をし、仲間達もそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んだ。

 

「今の話を聞けば既におわかりかと思いますが、エレボニア帝国に残された時間はそれ程ありません。その事を頭に入れて内戦終結に向けて貴方達も活動すべきだと思いますよ?」

「……ご忠告、感謝致します。」

シレーネの言葉を聞いたリィンは会釈し

「――では私はこれで失礼します。」

シレーネはペガサスに騎乗してペガサスを空へと飛びあがらせ、ユミル方面へと飛び去って行った。

 

その後改めて内戦終結を早める事を決意したリィン達はザクセン鉄鉱山に急いで向かった。

 

 

説明
第453話
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コメント
本郷 刃様 そりゃロイド達は故郷であるクロスベルと戦ってでもキーアが大切ですからね K’様 中途半端にエレボニアの知り合いと親しくなったのが仇と出たのでしょうね。それにリィン達にはキーアみたいな故郷を敵に回してでも絶対に守りたい存在がいませんし(sorano)
なんだかんだでロイドは己の軸足をはっきりさせてるところがリィンよりも好感が持てますね、どうにもリィンはその辺が中途半端で・・・(お前はメンフィルとエレボニア、どっちの味方やねんと何度思ったか)(K')
ロイド君達にとってはエレボニアの今後よりもクロスベルの未来、そしてなによりも娘であるキーアの方が大事なことですからね(本郷 刃)
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