鬼の人と血と月と 第4話 「涙夜」
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第4話 涙夜

 

 

 

 

 

「暴走した少年の 手の平から炎が出た?」

5月の活動の翌日、統司は咲森と連絡していた

以前 咲森は“気になった事があったら質問しても良い”といった、そして“鬼人の事は詳しい”とも

それを思い出し、統司は咲森に鬼人に関して質問していた

「はい、嫌な空気が少年の方に流れたと思ったら、少年の手から黄色い炎が突然現れたんですよ」

それを聞くと咲森はすぐに答えた

「それは“鬼火”ね」

『鬼火…ですか』

「そう鬼火、説や名称は多々あるけど、鬼が操る火だから鬼火って事にしてる」

『鬼火って…なんというか、どんなものなんですか?』

「どんなものか…、私も以前、色々調べてみたけど、結局分かったのは、簡単に言うと“暴走した者だけが使える特殊能力”って事位ね」

そう言うと、軽くため息を吐き再び話し続ける

「少し愚痴を言うと、…ここらでは研究と言っても人体実験とか本格的にする訳でもなく、どの調査書も結局 風習や逸話に基づいた意見になってる物しかなかったわ、この町じゃ仕方のない事かもしれないけどね、暴走した者に聞いても意識・記憶共に存在してなくて全く分からないし、…そうね、他に調査書が無いかまた調べておくわね」

『そう…ですか、はい、ありがとうございます』

「実際に目にしたって事は、相手が鬼火をやってきたのね、なら対処方法は分かってるだろうけど、鬼火は衝突すると身体全てを一瞬で火に包むわ、そうなっても焦らずに“意志を持って払う”とすぐに火は消えるわ」

『はい、わかりました』

「他に聞きたいことはある?カウンセリングでも良いけど」

『あ、いえ、特には、…あ、そういえば、一つだけ』

「なに?」

『さっき鬼火は暴走した者だけが操ると言ってましたけど、普通の人…あ、普段の鬼人でも操ったりすることはあるのですか?』

「普段の鬼人が鬼火を?…その様子を見たの?」

『あ、えっと、はい、もしかしたら違うかもしれないけど…、あれは鬼火だったと思います』

「そんな話、聞いたこと無いわね…、でもその話興味があるわ、調べておくわね、他に質問は無い?」

『はい、大丈夫です、ありがとうございました』

そして統司は電話を切る

 

翌日の放課後、水内に呼び出された統司達は部室へ向かう

既に部室には詩月と月雨、魁魅がいた

「呼び出されたけど、いったい何があるんだ?」

部室に入るなり、蒼衣が口を開く

「さぁ、反省会…とか?」

統司は蒼衣の発言に対して思いついた事を言う

「反省会か…、それに関しては今までなかったし、多分ないと思うけど…」

恵は統司の疑問に答える様に発言する

「ん?皆聞いてないんだ、それじゃあもう少しすれば分かるよ」

月雨はニコニコと笑顔で話す

「ったく、あの先生は、いつも用件を言わねぇんだよなぁ」

蒼衣は愚痴る様に喋る

と、喋り終えたと同時に扉がガラッと開き、水内が入って来る

蒼衣は水内が入った事に気付き、ビクッと身体を強張らせた

「おー、皆揃ってるかー?…ん?どうした蒼衣、そんな背筋を伸ばして」

『あ、ハハハ、いえ、何でもないです』

水内は部員が集合しているのを確認する

「あのー、今日はなんで呼ばれたんですか?」

蒼衣の言葉を無視して、扉の外にいる誰かに合図をする

すると1年の顧問である、金林が入ってきた

「あ、金林先生じゃないっすか、今日はなんで…」

蒼衣が言いきる前に、扉からもう一人、少女が入ってきた

その少女を見るなり、蒼衣を除いた2年生の部員は皆、こわばった表情になる

その少女は先日の活動の際に、襲われていたと思わしき少女の姿だった

身長は165位だろう、ポニーテールに大きな丸メガネ、眠そうな虚ろな瞳

「今日呼び出したのは、新入部員を連れてきたからだ」

『新入部員…ですか?』

恵は驚いたまま、水内に聞く

「おー そうや、金林が来たように、1年生の部員や」

水内がそう言い、金林が静かな声で「自己紹介を」と、少女に促す

…そして少女は静かに口を開いた

「篠(しの)森(もり)月(つく)裏(り)です、よろしくお願いします」

篠森はたった一言だけ、自己紹介をした

「…ってそれだけか?他に言う事はないんか?」

水内の言葉に何も言わず、篠森は口を固く閉じたままである

「くっ、こいつ…」

水内はその態度にイラッときたのか、右手を強く握る…が、すぐに力緩め、頭を軽く掻きながら続ける

「まぁいいや、それじゃお前ら、順々に自己紹介してくれ」

そう言うと詩月から順に自己紹介を始め、先月に統司が入部した時と同じ順番で紹介をしていく、但し今回 水内は補足をしないが

そして最後、自己紹介は統司の番になった

「2年の霧海統司です、っと…俺も先月鬼焚部に入部したばかりだから、そんなに堅苦しく接してこなくて良いかな」

統司が言い終わるのを察した水内は、話始める

「ん、終わったか、他に何か言う事あったっけな…」

水内は考えるが、少しすると思いだす

「あ、そうやそうや、篠森…と統司もちょっと来い」

そう言うと、恵と蒼衣の横を通り、ロッカーを示す

「ここが統司、お前のロッカーや、で…篠森、こっちがお前のロッカー」

統司のロッカーから少しずれ、2つ目に篠森のロッカーがある

よく見ると、部員それぞれのロッカーには名前が入っていた

「…じゃあ、これで今日は終わりとするか、金林、何か話す事はあるか?」

水内は金林に聞くが、金林は横に首を振る

「それじゃあ、今日は解散とする」

そう言うと、水内と金林は部室を出ていく

統司は、部屋の隅にたてかけた木刀を持ち上げると、自分のロッカーを開き、木刀を仕舞いこむ

他の皆は、荷物を持って部室から出る所だった

「霧海…先輩」

篠森が統司に向かって話しかけた

その様子を見た皆は、その足を止める

「ん?えっと…」

統司は話しかけられた事に驚き、ロッカーを閉じ、ゆっくりと篠森の方に向く

そして篠森は統司をジッ…と見つめる

「先輩って…」

『ど、どうかした?』

篠森はそう言うとフッと笑い

「私より背が小さいんですね」

…と上から目線で言った

「なっ…!?」

統司は固まった、癇(かん)に障(さわ)った訳ではなく、何を言うかと思ったらそんな事かと、驚いたのだった

その様子を見ていた内の蒼衣は声を上げて笑う

それを見た篠森は淡々と

「蒼衣先輩でしたっけ、貴方アホっぽいですね、あまり喋らない方が良いん じゃないですか?」

と言い、その言葉は蒼衣に突き刺さる

「がっ!?」

そして恵と月雨はクスクスと笑う

篠森は自分の鞄を持つと、扉へ向かう

帰るのかと一同は思うが、篠森は扉の近くで立ち止まる

そしてすぐ近くにいた月雨の方を向く

月雨は「?」を出しながら円らな瞳で篠森を見る

すると篠森は月雨の頭に手を置く

突然の事に月雨は驚いて「ニャッ!?」と鳴き声をだす

篠森は薄ら笑いをしながら、月雨の頭をグシャグシャと撫で回す

「ぬあっ、やーめーろー!やめなさいーっ!」

月雨は撫で回す手をヒョイと退(ど)かすと、篠森を怒る

「もうっ!上級生は敬いなさい!」

それを聞くと篠森は謝る様子を見せる

「すいません、先輩がなんだか可愛かったものでつい…」

それを聞くと月雨は許そうかと黙るが…

「小動物みたいで」

…と、篠森はフッと笑うと、後ろで怒りだす月雨を無視して、部室を出て帰りだす

恵は篠森が帰るのを見ると、少し走って隣に並んで帰ろうとする

それを見た統司、そして蒼衣も恵に着いていき帰っていく

「あ、コラー!待ちなさい!」

走って追いかけようとする月雨を詩月は制止する

「はは、まぁ良いじゃないか、なんというか、その…、溶け込んでいるみたいで」

詩月もやや言葉に詰まって、苦笑している

そんな発言にも関わらず、月雨は静まって笑顔に戻る

「それじゃ私も帰るね」

そう言うと月雨は帰っていく

残った詩月と魁魅は上の4階へと昇っていき、そして一室へと入っていく

「遅れてすいません」

そこには複数の学生がテーブルを囲っている

ここは生徒会室、詩月と魁魅は生徒会に所属している事もあり、生徒会に向かったのだった

「遅かったではないか、これは本日の議題の資料だ、進行具合はホワイトボードに、分からない事は他の者に聞いてくれ」

纏めているであろう少女が2人に資料を渡し、軽く説明する

 

彼女は陽村(ひむら)緋之女(ひのめ)、魁魅高等学校の生徒会長である

長髪を後ろで束ね、整った顔立ちであるが、やや釣り目にフレームの薄い四角いメガネをかけている

頭はとても良く、物事の判断が素早いが、キツイ性格である

 

「さて、話を続ける、何か質問や案は無いか」

そう言うと「あ、ハイ」…と雑務の生徒が手を上げる

「チッ、…またお前か、今度はまともな意見だろうな」

生徒が案を言うが、冗談の様な案であった為、陽村に一蹴される

「すみません、鬼焚部の活動の報告があるのですが」

魁魅が陽村に向かって話かけた

「活動報告か、それでは頼む」

そう陽村が言うと、魁魅ではなく詩月が立ち上がる

「では鬼焚部部長である私から、報告します」

詩月は特に資料も無く話し始める

「まず新入部員が2名、一人は転入生である2年1組 霧海統司、そしてもう一人が、つい先ほど転部した1年5組 篠森月裏、新規部員は以上です」

そして一呼吸して続けて話始める

「そして活動報告ですが、今年に入ってから活動がやや多く、満月の日は必ず活動し、暴走者一名を更生してます、また新年度の会議説明しましたが、活動の内4月初めの活動では、まだ部員でも転入もしていない時の転入生、霧海統司を被害者の一人として巻き込んでの活動となりました、人質となりましたが幸いにも怪我は無く、無事更生完了しました、以上で鬼焚部の活動報告を終わりにしたいと思います」

詩月は座り、報告を聞いた陽村が少し頭を抱えて喋る

「ふむ、今年は多いな…、何か未然に対策が出来れば良いのだが、この土地柄の問題だからな…、“粛清者”が出ない事を祈るだけだ…。」

そう呟くように言うと顔を上げ、詩月に向き直る

「報告ありがとう、これからの活動もよろしく頼む」

そういうと会議は続いていった。

 

 

「前はどっか部活に入ってたの?」

帰り道、恵は篠森に話しかける

「部活はオカルト研究会に所属していました」

『オ、オカルト…』

篠森は淡々と返し、それを聞くと恵はうろたえる

「所属と言っても、最近は行かなくなりました、今では学校以外ではいつも自宅にいます」

『そ、そうなんだ…、どうして?』

「それは単純です、つまらないから、…あんな場所にいる位なら家で引き籠った方が遥にマシです」

「どうして…つまらないの?」

「誰も彼も、趣味で見ている様な心霊の映像を、ただ見ているだけです、論争をすることも無く、ただ既存の物をひたすら見てるだけ、加えて鬼人の話、分かり切った存在のものを、これ以上話す事は実に不毛です」

篠森は淡々と話しているが、どこか呆れた様子も感じる

恵は発言にややビクついている、“怖いもの”が苦手なのだろうか

「なぜ、外の存在にも目を向けないのですか…これだからこの地域の住人は…」

篠森は俯いて、すごく小さな声で呟く、統司だけはその言葉を聞き取った

「ん、何か言ったかな?」

『…いえ、気のせいです、それでは先に失礼します』

「あ、うん、じゃあね篠森さん」

そう言うと篠森は、そそくさと帰っていき、その様子に恵は深く溜息をつく

その背後から蒼衣がゆっくりと、静かに詰め寄る…そして

「わっ!!」

恵の両肩に勢いよく手を置き、大声を出して脅かす

「ヒャアッ!!」

驚いた恵は鞄を振りかぶって後ろを向く

そして鞄の角が、凄い勢いで蒼衣の頬に激突する

「ぐおお…、ち、調子に乗ってスイマセンっした…」

蒼衣は顔を押さえながら恵に謝る

「もう、脅かさないでよ!」

統司は「自業自得だよ」と蒼衣に言うと、蒼衣を置いて恵と共に帰るが、その後すぐに蒼衣は走って追いつく

 

夜…病院の資料室

水内は、昨日統司から聞いた事を調べている

横には幾つもの調査書と資料が積まれており、

読み終わったものと分けていくうちに、テーブルの上は資料などで囲まれている状態になっている

手慣れた手つきで、資料を次々と目を通してはページをめくる

そして、何かに気が付き、手が止まる

「…あ、みつけた…、でもこれは…」

そう呟きながら表紙を見る、ボロボロの本で題名は一筆書きで書かれており、更には擦れている為、“鬼”という字以外は読み取れない

「これは…、私から話す事ではないわね」

そう言うと、椅子に座ったまま背筋を伸ばし、読み終えた方へと退かす

そして僅かに残っている資料に目を通すと、再び背筋を伸ばし、幾つも積まれている資料を片づける

深いため息をついた様子から、大した収穫は無かったようだ

 

モノクロなセピア色の世界、統司の夢の中…

そしていつも見る、小さな巫女の姿

口元しか顔は見えないが、彼女は悲しげ表情をして、人里の中に立っていた

そして巫女の目先には、人型ではあるが、人間の二倍はある大きな怪物が、…“鬼”が暴れていた

辺りには複数の人が倒れていた、死んでいる者か、かろうじて生きている者か、恐らく鬼に殴り飛ばされたのだろう、その様子は災害ともいえる

すると一人の人間が鬼に掴まれ、強い力で握られたのだろうか、悲痛な叫びを上げる

巫女は思わず手を伸ばす仕草をする…が、暴れる鬼には近づけるものではなく、悲しさに唇を噛みしめる

そして鬼はその手の人間を地面にたたきつける、地面を跳ね、僅かに転がっていく

視界はその後を追わないため、生死は定かではない、分かる事は無事では済まないことだけ

鬼は巫女の存在に気付いたのか、巫女の方へ振り返る

巫女は何かの決断をしたのか、悲しげな表情のまま、唇を噛みしめたその口の力を緩める

そして巫女の周囲を渦巻くかのように、澄んだ空気が静かに流れていく

巫女は、胸元で組んだ手を緩め、右手の平を静かに開く

開いた途端に、手のひらから真っ白い炎が現れ、静かに揺らぐ

その炎は、鬼火だった

巫女はとても悲しそうな表情になり、手のひらを鬼へと向ける

手のひらを向けた途端、白い鬼火はもの凄い速度で鬼へと飛んでいき、鬼の身体へと衝突する

衝突した瞬間に、鬼は白い炎に全身を包まれる

しかし鬼は、炎を振り払おうと火の熱さからもがこうとせず、静かに膝をつく

まるで、その火は熱さを持っていないかのように、鬼は炎に身をゆだねる

その炎の熱が、風を通してこちらにも感じるが、不思議と辛さを感じない、寧ろ心地よく感じるような感覚

そして火が静まると、鬼は人の大きさに戻っており、静かに倒れた

その身体は炎で焦げた様子は、全くなかった

ただ…眠っているかのように、死んでいた

巫女は静かに、鬼だった者へと近づき、膝をつく、そして鬼に触れ死んでいる事を確認すると、その手を引っ込める

巫女の頬筋からは、涙が伝って零れ落ちていった…

 

ハッと、統司は目が覚める

しかし視界が霞む、統司が起き上がると大粒の滴が零れ落ちる

夢の影響か、泣いていたようだ

「夢…か…」

統司は顔を拭うと、拭った手首から涙が垂れてゆく

枕元は案の定、大きく濡れていた

そして統司は、とても悲しい表情をする

まるで巫女本人であったかのような…

 

新入部員が入ってきて数週間後、月は変わって6月

季節は梅雨へと変わり、外は雨が降り注いでいる

学校では衣替えとなり、男子生徒は半袖のワイシャツで授業を受けている

無論、女子生徒も衣替えは同様であり、半袖で薄い生地のセーラー服に変わっている

統司は授業を受けながら、ボーっと外の様子を眺めている

後は相変わらず雨が降っている

恐らく今日は活動日だろう、何故なら今日は、“満月の日”だから

ふと前に向きなおし、黒板の字をさらさらとノートに書き写し、再びボーっと外を眺める

そして今日の夢を思い返す、…が、あまりよく思い出せない

いや、思い出したくはないのだろうか、しかし思い出さないといけない気もする

そう考えながらも、結局ははっきりと思い出せないでいた

統司の表情は悲しげなものだった

恵はふと、統司の方向を見る、そして統司の悲しげな表情を見て疑問を感じたが、教師に指名され、すぐに姿勢を向き直し、問題に答える

 

昼休み、昼食を摂り終えた直後の統司に、恵は近づき話しかける

「統司君!」

「ん?」

統司は恵の方を向くが、夏服になった恵を見て、体のラインが結構分かる事に気付き、表情を変えずに咄嗟に視線を少しずらす

恵はその変化に気付くことはなく、構わずに話し続ける

「今日は活動するから、部室に集合…って水内先生からの伝言」

『ああ、分かった』

「あ、そういえばさっき思いつめてた様な表情してたけど…、どうかした?」

『さっき?』

「ほら、3時間目の時、…なにか悩んでるんだったら」

相談して…と、恵が言っている最中に統司は答える

「ああ、ちょっとね、昨日見た夢の事を思い出してた」

『夢?…そういえば前に言ってたね、不思議な夢を見るって』

「まぁそんな所かな、ただの夢だから安心して、何も心配することはないから」

『そう…、なら良いんだけど…』

しかし恵の表情は心配したままだった

恐らく統司が転校した理由の、療養の事でもあるからだろう

恵のその表情に気付いた統司は、明るい表情で答える

「だから大丈夫だって、ただの夢なんだし、…ってか、結局あまり思い出せなかったしな」

恵は統司の様子をみると、いつもの明るい表情に戻る

「…そう?じゃあ…伝言は伝えたし…」

話し続けている恵の後ろから、城乃咲が静かに近づき、恵の両肩にするりと手を置き、思わず恵は「ひゃあ!」と小さく声を上げる

「霧海〜、あんまりうちの恵を困らせないで頂戴よ〜?」

『もう、キノ!脅かさないでってば!』

「あはは、まさか今ので本当に驚くとは思わなかったよ」

『分かっててやってるでしょ!?全くもう…』

そう言いながら恵は城乃咲と共に統司の席から離れて行った

「どうした霧海?」

学食から帰って来た藤盛が近づく

「いや、部活の呼び出しだよ」

『ふーん、まぁお疲れさん』

実は藤盛も、統司の悲しげな表情を見ていたが、聞こうとはしなかった、単に忘れただけかもしれないが

 

放課後…

荷物を纏めた統司は、イヤホンをつけ音楽を聴きながら、伝言通りに部室へ向かう

部室には蒼衣以外集まっていた、恵も剣道部に連絡し終わったのか、丁度部室に来たようで、「ふぅ」と軽く溜息をしていた

篠森も既に椅子座り、分厚い本を読書をしている

そして最後に蒼衣が来る、ブツブツと呟きながら、露骨にめんどくさそうな顔をしていた

それもそうだろう、今日は雨が降っているのだから、外に出る気はしない

 

水内が目撃の連絡に来るまでは待機となる、来ないまま夜になれば活動は終了となるが、恐らくそんな“月”が来ることは無いだろう

統司はふと、篠森の呼んでいる本が気になった

ただ分厚いだけでなく、表紙は紫色で、細かい字が紙にズラッと書かれていた

篠森は淡々とこの本を読んでいたが、暗い雰囲気の様なものを感じる為、まるで魔術師の様な雰囲気だった

統司が話しかけるよりも先に、蒼衣が篠森に話しかける

「篠森…だっけか?何の本を読んでるんだ?」

蒼衣が話しけてくるが、篠森は淡々と、静かに言い放つ

「読書の邪魔をしないで下さい、人の邪魔をするなんて、先輩にはマナーというものが無いんですか?」

淡々と放った言葉は、蒼衣に突き刺さり蒼衣は固まった

「なっ!?」

「一応、質問には答えておきますが、今呼んでいる本は『ソロモンの72柱』です、まぁ先輩には分からないでしょうけど」

蒼衣が嫌いなのか、放つ言葉は次々と蒼衣へと刺さっていく

その様子は他の皆が見ても、なんだか哀れなものである、しかし助け船を出す者は誰もいないが

蒼衣は構わずに、答えた言葉に無理矢理に食いつく

「ソロモンってあれだろ?確かどっか外国の…」

蒼衣のテキトーな言動に、篠森は本と向かい合ったまま、表情を僅かに険しくして、蒼衣に言い放つ

「全然違います、先輩は一度図書館に行って、休日を丸1日読書に費やして知識を増やしたらいかがですか」

もはや散々である、蒼衣は活動前に精神をすり減らして燃え尽きてしまった

「俺…あいつとコミュニケーションを取れる気がしねぇよ…」

しかし…“ソロモンの72柱”?

統司にはその言葉が引っかかった、というよりもその話に関して少なくとも多少なりとも話せる気がした

「72柱って、ソロモン王が封印した悪魔…悪魔達の事だろ?」

その言葉に篠森は態度を変え、本を読む事からこちらを向いて話してきた

「霧海先輩は、蒼衣先輩よりは物を知ってるみたいですね、…ソロモンに関して他に知ってる事は何ですか」

『いや、正直知ってるのはこれだけだ、幾つか悪魔の名前だけは覚えてる位だよ』

「そうですか、…それでは先輩の専門は何ですか?」

『せ、専門?…そうだな…得意分野としたら“都市伝説”…かな』

それを聞くと篠森は本に顔を戻し話し続ける

「そうですか、でしたら今度から、“そちら”の話を中心として話しましょうか」

篠森はそう言うと、再びページをめくり、引き続き読書へと戻った

どうやら少なからず、篠森からの信頼感は得られたようだ

「あ、そうだ」

突然月雨が口を開く

「霧海君 霧海君、あ、月裏ちゃんもだね」

突然のちゃん付けに、篠森は眉をピクリと動かす

「えっとね、活動中の連絡の為に、携帯の番号を交換して欲しいんだ、出来れば全員と」

「あ、はい、わかりました」

統司は返事をすると携帯を取り出す

篠森もちゃんと話を聞いているようで、無言で携帯を取り出す

「じゃあ私から、これは絶対ね、情報を回すのに私から一番連絡する事になるから」

月雨と番号を交換する、登録名称は、フルネームに“先輩”と追加して登録する

そして統司は詩月、魁魅の順で携帯の番号を交換する

なぜか魁魅は、とても手慣れた手つきで携帯を操作していたが、特に気にする事でもないだろう

恵と蒼衣とは、既に交換してある為、省略

そして最後に、篠森と携帯番号を交換する

…が、特に話すことはなく、作業の如く番号交換をした

 

少しの間待っていると、コツコツと早い足音が聞こえてくる

それを聞くと皆の顔が引き締まる、もちろん蒼衣も“回復”して椅子に座りなおし待機する

篠森もその雰囲気に感付いたのか、読書を止め、本を閉じて鞄にしまう

そして…

 

「全員いるか!?暴走した者が目撃された、場所は公園広場だ、直ぐに準備してくれ」

水内がそう言うと、皆自分のロッカーに向かい、準備を始める

今回は統司もロッカーが用意されている為、ロッカーに荷物を仕舞い、木刀を取り出す

そして首から下げたイヤホンを耳に付ける

少しだけ、統司はワクワクとした興奮感が湧いてくる

篠森はただ荷物を入れただけで、大した準備はしていない

恵から木刀を持つように促したが、武器もいらないと、本人は断った

「皆準備は出来たか?」

水内がGO サインを出そうとする前に、月雨が声を上げた

「今日は雨が降ってるから、くれぐれも携帯の扱いに気を付けて!落としたりしない様にね!」

その言葉に蒼衣は「あっ」と声を出し、顔が引きつる、雨が降っている事を忘れていたからだろうか

月雨が話し終えるのを察すると水内が声を上げる

「よし、それじゃあ活動開始だ!」

そして月雨を残して、部員は部室を飛び出して行った

 

学校の玄関…

外見ると、昼間より少し雨の勢いが増し、視界が遮られている

そして時間は夕方であり、夜の様な暗さになっている

その様子に蒼衣は見るからにめんどくさそうな顔つきで

「うへ…、めっちゃ降ってるじゃねぇか…、濡れるとか かったるいな…」

…とぼやいていたが

「そんなこと言ってる時間など無い!すぐに探すぞ!」

と詩月に叱られると、蒼衣は「すんません」と言いながら、だるそうに外へ出る

 

統司にとってはまだ知らない土地である為、先を走る恵達の後を追って着いてゆく

そして目撃された場所へ着くと詩月が指示する

「よし、ここを中心に散会、雨の為視界も悪い、注意深く探すぞ!」

詩月の言葉で各々に別の方向へ散って行った

篠森は恵と共に捜索しに行った

そして今回、統司は一人で捜索する事になった

やや不謹慎とは思っているが、この緊迫感がすこし楽しく感じる

少し路地を走って行ったが、全く知らない地形であるため、立ち止まって周辺を探すことにした

 

魁魅は雨であることにお構いなしで、慣れた様子で敵を探しているが、敵の気配を感じる事はない

 

一方蒼衣は、金属バットを担ぎながら、歩きながら適当に探していた

不機嫌そうな表情でブツクサ呟いていると、

前方の路地裏から ガタン と物音がする

「そこにいんのか!?」

バットを構え走り出すが、そこには誰もおらずポリペールが転がっていた

恐らく風で動いた表紙に倒れたのだろう

「なんだ、何もねぇじゃねぇかチクショー」

そう言うと蒼衣は再び適当に探し始める

…路地裏の真上に敵は隠れていた、敵は素早く降りると蒼衣の反対方向へと走り去って行った

その足は素早く、足音も小さい、その足音は雨によってかき消されてしまった

しかし仮に蒼衣が足音に気付いたとしても、この視界では敵を見つける事は出来なかっただろう…

 

詩月は、魁魅と同様に慣れた様子で探しているが、これも魁魅と同様に敵の気配を感じない…が

詩月の後ろの方で何かが通り過ぎて行った、その距離はかなり遠くのものだったが、詩月は振り返る

「…気のせい…か」

もはや視界に入る事のない距離であっても感づくのは、満月時の鬼の血の影響か

 

その頃統司は、木刀を持ったまま走って敵を探していた

しかし走っていると雨が目に入ってくるため、視界が非常に悪い

少し息を整える為にも、統司は少し立ち止まる

その瞬間、統司は既視感を感じた、全く知らない土地だが、何か近い雰囲気の様な物を感じた気がした

気を取り直して、息を整えながら顔を拭うと、遠くの方に何かチラつく存在がある

現在の視界ならば、全く分からない程の距離にいる存在だが、何故か統司にはそれを感じる

統司が目を凝らすと、それは“黒い人影のようなもの”に見えた

そして“それ”は少しずつ近づいてくる

“それ”がようやく視界に入ってきて、統司はようやく人の姿として認識する事が出来た

そして相変わらず近づいてくる存在が、何なのかを感づくと、統司は木刀を構える

 

それは暴走した鬼人の少年だった

少年は、長めの髪を茶色に脱色している外見だ

そしてお互いが、敵がこちらを認識した瞬間、こちらに向かって走って来る

統司が一人きりで戦うのは、これが初めてである

その危険さを覚悟すると、統司は敵を迎え撃つ

向ってきた少年を木刀で切り払うが、敵はそれを避け統司の背後に回り込む

統司は振り返ろうとするが、それよりも早く敵は回し蹴りをして、統司の背中に直撃する

「グフッ!?」

直撃した統司は、かなりの勢いで飛ばされるが、地面を擦りながら受け身をとる

そして統司は再び近づいてきた敵に、木刀を切り上げる

すると敵の首筋と顎にかすめるように当たる

敵は思わず飛び退いて間合いを取る

今回の敵は、全開と違ってただ暴れる様な奴ではなかった、その証拠に敵はうめき声を出さず、ただ静かにこちらの様子を窺っている

恐らくかなり手ごわい相手だろう

相手の方から向かわないため、統司は自分から向ってみる事にした

統司は木刀を片手で構え、敵に向かい走っていく

そして間合いに入ったと感じると、素早く木刀を振り、連撃を繰り出す

数回木刀を振るうが、敵はそれを避け、飛び退いて間合いを取る

そして間髪いれずにこちらへ向かってくる

統司は体制をすぐに直し、向ってきた敵に木刀を振るう

木刀は胸元を直撃するが、敵はそのダメージを耐える

そして統司の腹部に拳が入る

「ウグッ!?」

統司は思わずのけぞり、その隙に 敵は続けて統司の胴体に蹴りを繰り出し、統司は吹っ飛んでいく

統司は一応、反射的に受け身を取ったが、多くのダメージが入ったため、素早くは立ち上がれない

敵はその様子を見ると、立ち去ってしまう

「ゲホッ、あ、クソッ待ちやがれ!」

待つ訳が無いのは分かっているが、思わず言ってしまう、言わないと気が済まないものだ

統司は息を整え少し落ち着くと、携帯を取り出し月雨へと連絡する

「あ、もしもし、霧海です」

『うん、どうしたの?』

「えっと、敵と遭遇して交戦しました、ゲホッ、…が逃がしました、敵は…すいません場所が良く分からないのでどちらに行ったか分かりません」

『それじゃあ、今の場所と方角を教えて?』

そう聞くと、統司は電柱に書かれた住所を見つけ、おおよその向った方角を答える

「はい、それじゃあ引き続き後を追います」

そう言うと携帯を閉じ、敵の後を追う

 

恵と篠森は、一定の距離を保ちながら敵を探していた

「ふぅ、なかなか見つからないなぁ」

そう言いながら濡れた顔を拭う

その様子をみて篠森はジッと見つめる

「うん?どうしたの?」

そして篠森はこう告げる

「あの…、私もそうなのですが、雨に濡れたことで制服がぴったりと肌にくっついて、尚且(なおか)つ…、その…服が僅かに透けております」

その発言を聞くと、僅かに顔を赤らめて、凄い勢いで胸を隠す…が、篠森だけしかいない事にすぐに気付き、隠していた腕を戻す

「はぁ…どうしようかな、着替えるにしても…着替えもないしな…」

悩む恵に篠森は促す

「その問題は後にして、今は対象の捜索に専念しましょう」

『…うん、そうだね、まずはこの問題を先に片づけるのが先決だね』

恵がそう言い終わると、すごい勢いで何者かがこちらに近づいてくる

その気配に感づくと、篠森に気を付ける様に指示すると、恵は木刀を構える

敵は恵達の存在に気付くが、速度を緩めずにそのまま向っていく

そして間合いに入ると、恵は木刀を振るう

…が、木刀は空を切る

敵はギリギリ数センチで避け、そのまま突っ切っていく

しかし恵はすぐに頭を切り替え、篠森に「追うよ」と、伝えると走り出す

篠森はこの指示にコクリとうなずき、後を追って走り出す

恵は走りながら携帯を取り出し、月雨に連絡を取る

「もしもし北空です、敵と遭遇しましたが逃げられました、現在追っている途中です、敵はデパートの裏側方面から北の方角に向かっています、それでは」

 

部室にて…

統司が月雨に連絡をし終えたところだろうか、月雨は地図を広げ行先を調べる、そして月雨が情報を回そうとした瞬間、携帯が鳴りだす

…しかし鳴ったのは水内の携帯だった

そしてその様子を月雨は見守る

「はい、水内です、暴走した少年について?」

そう言うと、いきなり真剣な表情へと変わる

「はい、はい、…そうですか、わかりました、では、伝えます、はい、はい…」

そして水内は携帯を閉じた

水内は月雨に伝えようとしたが、再び月雨の携帯に電話がかかる

今度は恵からの電話だった

恵からの連絡を聞き、地図を見て、新しい情報を詩月と魁魅、蒼衣に連絡する

そして水内が真剣な面持ちのまま月雨に話しかける

「月雨、いいか、…連絡する情報がある」

 

敵を追っていくと、広い原っぱへと出た

その中心に敵は棒立ちになっている

まるで待っていたかのように…

そして鬼焚部メンバーは全員、敵の前に合流する

雨はより一層強くなり、雷鳴が聞こえてくる

武器を構えて向かい合っている中、雨音に混じって無機質な着信音が聞こえる

詩月の携帯が鳴っていたのか、詩月が携帯に出る

「月雨か…どうした?」

そして連絡を受けている途中、詩月の表情が険しい顔へと変わる

「そうか…わかった」

そして詩月は電話をしまい、声を上げる

「ここは俺一人で行く」

表情とその発言に、恵と魁魅は感づき、悲しさと悔しさの混ざった表情になる

そして立った一言だけ詩月は言う

「粛清…だ」

その言葉で、統司と蒼衣もようやく察した

篠森はいつもの表情で、詩月の行動を見つめている

もしかしたら、篠森はこうなることを、既に分かっていたのかもしれない

詩月はゆっくりと近づくが、敵は走って向ってくる

敵は素早い速度で、大柄な詩月のふところへ潜り込む

そして胴体に蹴りを繰り出す…が、詩月はビクとも動かない

それもそのはず、その蹴りは片手で受け止められていた

詩月はもう片方の手で少年を抑え、掴んだ足を手放す

そして間髪いれずに、空いたその手で胴に拳を入れる

「ガハッ!」

敵は仰け反るが、詩月が押さえている為、吹っ飛ぶ事は無い

詩月はその掴んだ手に力を入れる

そして、地面に投げつけるかの様に押し倒す

その衝撃に敵は再び呻き声を上げる

詩月は地面に倒れた少年の上に、馬乗りになる

少年は暴れ狂うが、その大きな体格の詩月は動く気配が無かった

…詩月は覚悟を決め、両手で少年の首を抑える

少年は苦しそうに呻き声を上げるが、暴れなくなっていた

詩月はその両手に、静かに、ゆっくりと力を込めていく

しかしだんだん声も途切れ、力が途切れてゆく

そして少年は、“安らかな”表情で力尽きて逝った…

空には雷が明るく降り注いでいた

これが…粛清…。

 

詩月は、少年の亡骸を抱え、無言で戻っていく

部員は全員、ただひたすらに無言だった

 

水内によると、丁度水内が部室に来た時だろう

暴走した少年は道路の真ん中に立っていて、乗用車が少年に向かって突っ込むが、急ブレーキをかけた時には少年はいなかった

いや、本当はいた、ボンネットによって見えなかっただけだった

少年はその車を持ち上げ、対向車線へと車を放り投げた

その際に乗用車は逆さまのまま地面へと落下し、そして対向車の車に衝突した

投げた車の中には家族3人、父・母・息子が乗っており

父は死亡、残った二人も重傷であった

衝突した車の運転手も共に重傷であり、3人が病院に運ばれ、一人が死亡という事だった

その事実が判明した事により少年は“粛清”とされた…

 

翌日…

相変わらずの雨の中、鬼焚部の部員は葬式へと出席していた

本来は授業中であるが、昨晩の出来事から、出席することになった

正確には葬式とは別のものだが、統司は葬式に出た経験など1度も無いため、違いなど分からない

部員は部屋の隅で正座で座っていた

統司を含む、皆が悲しさと悔しさが混ざった表情で延々と座り続けている

特に蒼衣が、悔しさで一番表情を歪ませている

恐らくは、過去に自分が暴走した事と重ねているのだろう

一つ間違っていれば、自分もこんな状況になっていたのだ

大切な姉に、悲しい表情をさせる事になったのかもしれない…

式が終わり、水内の指示で立ちあがる、

統司は足がしびれているが、それを顔に出すことは全く無い

蒼衣は座ったままであることに気付いた統司は、蒼衣に近づく、すると蒼衣が呟く

「へへ…、悪い、立てねぇや、手ぇ貸してくれるか…」

統司は手を貸すと「すまない」と、蒼衣は礼を言う

蒼衣の表情は、とても複雑なものだった…

そして一人の女性が鬼焚部の部員たちに近づく、恐らく少年の母親だろうか…

「この度は、息子がご苦労掛けてしまって…、ところで…最後に息子に…手を…下した方は…」

泣きながらも必死に声を出す

そしてその問い掛けに詩月が名乗り出る

「私です、最後に…手を下したのは」

問いに答えた事に女性が気付くと、歩み寄る

「貴方は…詩月さんの息子ね…、最後が貴方で良かった…、ありがとう…ございます…」

泣きながらも女性がお辞儀する

「頭を上げてください、寧ろ謝るのは私です、最善を尽くしましたが、息子さんを救う事が出来ず…申し訳ございません」

詩月は深く頭を下げ、女性にお詫びをする

水内から原因を聞いて、自分たちに非が無いと分かっている筈だが、それでも詩月は謝った

その様子に皆胸が痛くなる

 

式は終わり、部員は学校へと戻っていく

その帰り道、篠森は独り言だろうか、小さな声で呟く

「全く…これだからここの住人は…、掟に縛られて命を簡単に捨ててしまうのだから…」

その言葉が聞こえた蒼衣は逆上し、篠森の胸倉を掴む

「嗚呼!?この状況でよくそんな事が言えるなてめぇ!てめぇが女であろうと…」

そこで魁魅が蒼衣を篠森から放す

「よさないか!辛いのは…お前だけではないんだぞ」

そして蒼衣は、暗い表情のまま冷静になる

「…わりぃ、俺どうかしてたわ、…いきなり掴みかかって…すまない」

『私も、こんな状況にも関わらず、軽率な発言をしてしまって、…申し訳ありません』

そして沈黙が訪れ、無言のまま学校へ着く

鬼焚部の面々は、授業が頭に入る事は無かった

統司も授業に身が入らずに、窓から外を眺めていた

これが鬼焚部の活動、粛清という活動

…これが、認められ、任された者の責任

押し潰されそうな重い責任に、統司の心は揺らいでいた

 

 

 

第4話  終

 

説明
鬼の人と血と月と 第4話 です。
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