繰り返しながらも新たなる外史[旅]!?〜帰還の章〜・第六話
[全7ページ]
-1ページ-

凪たちが戦線に加わったことにより、形勢は一気に逆転した。

最後だが、配置はこんな感じ。

 

舞台は燃え尽き、残ったのは混乱によって戦闘能力を無くしたネオ黄巾党のみ。

そのネオ黄巾党の右上を抑えるように『予定通り』来てくれた、凪、沙和、真桜の隊がいる。この3隊は近くの村に屯っていた討伐に出たため兵数こそ少ないが、凪たち自身が一騎当千の武将な為、問題はない。

 

『予定通り』の意味はそのまま。運任せの5つ目の策、『凪たちが間に合ってくれる』こと。

文醜たちの最初の防戦一方は、弓兵を隠すためだけじゃい。

『時間稼ぎ』の意味もあったのだ。

いつ来てくれるかは分からなかったが、出来るだけ間に合ったもらう為の、防戦一方でもあった。

けど、間に合ってくれて助かった。もし間に合わなければ負ける可能性が残ってしまったから。

 

そして、左方、及び後方を抑えるは顔良、将A、将B、顔良と同じ隊にいて目立たなかった将C。………ちなみに名前を聞いてないから、勝手にアルファベットをつけさせてもらった。………ごめん。

 

 

 

─────────べ、別に、女じゃないから興味がないって訳じゃないんだから!!

 

 

 

………いや、なんでもない。

話を戻そう。

 

前方を抑えるのは文醜の隊。

結構移動してもらったな…悪い。

 

そして、最後の左上は………「お伝えします!」

戦況を分析していると、一人の伝令兵。

「続けてくれ」

「文醜殿より伝令!『予定通り』とのことです!」

「…………そうか」

 

 

─────『存在してはならない6つ目の策』が発動したか……。

 

 

 

「じゃあ、君は下がって……いや、待ってくれ」

伝令兵を休ませようとしたが、呼びとめる。

「は、なんでしょう」

「なにか書くもの…ないか?」

「書くもの、ですか?墨と紙、でよろしいでしょうか?」

「いや、書くものはあるから、紙だけでいい」

制服の中にボールペンがあったからな。

 

─────ん?制服?俺、とっくに卒業してるぞ?なに?補正?

 

「は、畏まりました!では、少々お待ち下さい!」

俺が自分の格好を疑問に思っていると、兵はいつの間にか、天幕の方へ向かっていった。

「うん、頼む……。…………………ま、いいか」

 

 

まぁ、何でもアリだしな、この世界。

 

 

────そう思いつつ、既に終局を迎えつつある戦場を見る。

-2ページ-

 

「ごめんなさい。俺、自惚れてました」

 

 

自惚れっていうのは、『凪とだって打ち合えるかもしれない』と言ったこと。

無理。あれは無理。戦場での凪は強すぎる。たぶん、前より強くなってる。何度か組み手したけど、あれは手加減されていたんだな、うん。

それに、氣弾一発で10人ぐらいぶっ飛ばしてるんだぜ?無双だよ?

 

…それどころか、沙和にだって勝てない。沙和も強くなってる。

もちろん沙和だって武将として前線にいたわけだし、弱いわけではない。

……けど現実に戻って一生懸命鍛えて、沙和よりも強くなった自信があった。

でも、精一杯の虚勢を張っても、『何合か打ち合える』ってぐらいしかいえない。

 

真桜に関しては、螺旋槍がヤバい。

前の螺旋槍は紐を引っ張って紐が戻るまでの間だけ廻ってるものだった。

…けどあの螺旋槍、紐引っ張ってないよな?自動だよな?

技のキレもヤバいしね。

 

 

 

「4年、か……」

近くにいる兵に聞こえぬよう呟く。

長い。……4年って長いな。

…そりゃ、そうだよな。俺が元いた世界は平和だけど、ここは戦がある世界なんだよな。天下三分が成ったとはいえ、盗賊、野党の類は出るだろうし、あの五胡だっているんだ。彼女たちが強くならない筈がない。

 

──────それに『将軍』になってるしな。

 

彼女たちは北郷隊の『小隊長』ではない。『将軍』なんだ。

彼女たちは力を認められて、将軍になったんだ。

 

「ちょっと、『ぬるま湯』に浸かり過ぎたかな…」

鍛える『場』が違うのがここまで大きいなんて…。

 

「やっぱり………」

 

…正直これは嫌だ。

けど……。

 

 

「北郷様!こちらでよろしいでしょうか!」

紙をたのんだ兵が、紙を数枚持って近づいてくる。

「ああ、ありがとう。…………そろそろかな」

「は?」

おっと、聞こえないように言ったつもりだったんだけど、彼には聞こえたらしい。

「いや、最後の策のことさ」

「………あのような形で、本当によろしいのですか?」

この策が信じられないと言いたそうな顔で見てくる兵。

「んー、まぁ、大丈夫だろう。伝令も頼んでおいたしな」

「なんと?」

「いや、まぁ、ダメ押し、かな?」

たぶんこれが最後の決め手になる。

「?…よくわかりません」

言葉が少な過ぎたかな?…こいつ、何言ってんの?って感じで見られてる気がする…。

「気にしないでくれ。あとで聞いてくれ」

「はぁ、わかりました…」

渋々、といった感じで頷く兵。

「助かる。それでさ…」

「はい」

聞きたいことがあったので、紙とボールペンを持ちながら兵に問い始める。

そして、兵にいろいろ教えてもらいながら、ある方向を見て呟く。

 

「勝てよ、お前ならやれるって信じる」

-3ページ-

 

 

────戦場から離れたところに2つの騎影アリ。

 

「くそ!くそ!魏の奴らめ!舐めたマネを!!」

一人は、馬の頭を返し、戦場へ向かおうとする。

「いい加減にしろ!ここで戻っても勝てるわけがなかろう!」

もう一人は戦場へ突撃しようとする男を止めようとする。

 

─────波才と張曼成。2人合わせて『波曼』と名乗る、ネオ黄巾党の実質的な指導者。

 

「しかしこれだけの事をされて、おめおめと引き下がれというのか!?」

波才の言うこれだけ、とは火計のこと。

「…っ!…私とて腹が立っておらん訳がなかろう!だがあの状況で戻って勝てる見込みは残っておらんだろう!」

あの状況とはネオ黄巾党を全面方位した状況のこと。

この2人はその状況で、文醜の部隊と、将Aの部隊の間が運良く開いていた為、その間を抜けてきたのだ。

「…くっっっそぉぉ!絶対に許さん!平和ボケした国の兵などに我らが負けるとは!!」

波才は馬から降り、剣を地面に、何度も何度も叩きつける。

「確かにな。三国からも精兵と呼ばれるまでになった我らが、あそこまで圧倒的な差でとは…」

歯を軋ませながら戦場を見る。

 

圧倒的な差。

それは間違いなく残りの兵数だ。

ネオ黄巾党の被害は一刀の策の弓兵による混乱で2000程。更に、火計によって10000の兵の損失。ダメ押しとまでに凪たちの登場によって攻撃の意思を持つ者など、ほとんど存在しなかった。

対して魏軍は、ネオ黄巾党が混乱に陥る前は常に防戦一方だったため、被害はゼロ。火計に至るまでは約500。そして、戦意を無くしたネオ黄巾党に対して反撃を食らうはずもなく、死者は1500にも満たない。

 

長にとってここまで屈辱的なことはないだろう。

文字通り、なす術も無かったのだから。

「…なぜ、負けた?」

地面への八つ当たりで少し落ち着いたのか、張曼成に問う。

「…敵の策のせいだろう。それが我らの鍛錬の上をいった。それだけだ」

「…斥候の報告では、ろくな将はいない筈だった。楽進たち将軍職のやつらは我らの駿馬隊に釣られて居なかったしな」

「…………軍師がいたのではないか?」

「…っ!」

張曼成の発言に頭がきたのか、波才が張曼成の胸倉をつかみ上げる。

「そのような報告があったか!?斥候の報告に間違いがあったと!?軍師がいただと!?……思ってもないことを言うな!」

波才の態度に嫌悪を示しながらも、張曼成は、波才の手を振り解きながら答える。

「……私に当たるな!…確かに思ってもおらんさ。…だが、負けたことは事実!そう考えてしまうのも仕方なかろう!」

張曼成のいうことも最も。

三国の兵たちを何度も撃退してきた彼らだ。軍師もいないのにこのような大敗は信じられないのだろう。

ならば負けた理由は、自分たちの知らない鬼才の軍師でもいたのではないかと考えてしまうのも仕方ない。

 

────だが、それは違う。

この度の敗戦は一刀が鬼才だったから、というわけではない。

ネオ黄巾党の敗因は、『慢心』、『無知』の2つ。

『慢心』は、何度も戦に勝っている自分たちが、今回、ただ警備についているだけの魏軍に負ける筈がないという、過信。

『無知』は、顔良と文醜が元袁家の2枚看板だと知らなかったこと。

そして、一刀の正体に気づかず、一刀がこちらでいう『天の知識』を持ち、更に、少なからず戦を知る人間であったこと知らなかったこと。

 

そして、この2つは『油断』を生んだ。

この油断がなければ、兵数が少ないことにも気付く筈であるし、舞台に塗られた油にも気付いた筈だった。

これが、ネオ黄巾党の敗因だった。

 

「くっ!…すまない、少し混乱していたようだ」

波才は、張曼成の言葉に幾分か落ち着きを取り戻した。

「………よい。それよりこれからどうするかだな」

「…ふん、張角たちの信者たちをまた集めればいいだけの話だ」

当然とまでに言う。

「それはかなりの時を必要とするぞ?」

「要領は分かっているんだ、一年もあればなんとかなる」

「…ふむ、それもそうか」

割とあっさり納得した。

 

「…まぁ、すぐに集める必要もないだろう」

 

くくっ、と笑いながら言う。

「…………………なぜだ?」

その言葉は張曼成にとって意外だったようで、波才に問う。

「折角極上の女を手に入れたのだ。すぐに信者共にくれてやる必要はない」

汚れた笑みを浮かべながら答える。

「…くくっ、それもそうかもしれんな。我らは信者ではないが、張角の胸などはなかなか美味そうではある」

波才に同意し、張曼成も下衆な笑いをする。

「くっくっくっくっくっく。…ああ、次の信者を集めるまでに、精々俺らの慰み者になってもらうさ。壊れるまでにヤってやるさ!」

波才の低劣の笑いがその場に響く。

 

 

「─────────下衆が」

 

 

-4ページ-

ザシュッ!!

 

 

「ぐあっ!!!!」

「……っ!?波才!?どうした!?」

突然聞こえてきたのは、地面に蹲りながら呻く声。張曼成が声の方を見ると、背中に切創があり、血を流す波才がいた。

「…ぐっ!だ、誰だ!」

波才は背中を抑えながら立ち上がり、己を斬った相手を探す。

 

「…義理堅き将と聞いていたが、ただの小悪党…、犬畜生ではないか。…チッ、胸くそ悪ぃ…」

 

波才を斬ったのは、魏の将であり、真桜隊の副将で、『完全武装韓浩』の異名を持つ、韓浩。

「…誰だ、貴様」

張曼成は威嚇しながら、剣を抜く。波才もそれに習う。

「…下衆に名乗る名などない」

韓浩は一刀と話しているときとは全く違う態度で、そう言い放つ。

「俺たちが下衆、だと…」

「他に誰かいるか?お前たちはその辺に転がっている糞と同じだ。…いや、それ以下か」

韓浩は波才らを、人としても見ていないような眼で見ている。

「きっさまぁ!私たちを侮辱するか!!」

「侮辱?…冗談だろ?侮辱っていうのは人を見下したり、馬鹿にしたりすることを言うんだ。俺はお前らを人として見ていないんだぞ?………そうだな、むしろ褒めているだろう、糞と同列でみるなんて」

韓浩は本気でキレている。本来彼は温和な性格にも関わらずだ。

なぜか?それは彼が一刀と同じタイプの人間だから。女性を愛し、大事にし、壊れもののように扱う彼だからこそ、波才たちが許せない。

 

「…見下しやがって!許さんぞ貴様!」

波才は剣を構え、臨戦態勢に入る。

「…何度言ったら分かる?見下してなどいない。眼中にすら入っていないものを見下す必要はないだろう?」

「っ!死ねえええ!」

その言葉にいい加減我慢の限界が来たのか、波才が突進してくる。

「…ふん」

 

波才の突進はかなりの速さだった。

だが、韓浩はそれを静かに迎え撃ち、そのすれ違い様に、肩に戟を当て、籠手で波才の剣を受け、そのまま太刀で太ももを裂き、小刀で腹を刺し、弩で耳を打ち抜く。

「………………………ぐがぁあああああ!!!」

波才は始め何が起こったのか理解できず、声すら出していなかったが、自分の体の異変に気づくと、高い悲鳴をあげる。

「…隊長の『あれ』は必要なかったな。ここまで雑魚とは思わなかった」

転がりまわる波才を見ながら呟く。

 

────隊長の『あれ』。

『あれ』とは、一刀が韓浩のテンションを上げるために、波才らを討ち取ったの褒美として用意するものだ。

 

────それは一刀の家宝中の家宝、桂花が一刀を『一刀さん』と呼んでデレているときの写真。

この写真は、精神が入れ替わったときに真桜が、始めは気を失っていたが、比較的早く意識を取り戻し、これを好機とみて、他にも『兄様』と呼ばれたきの写真を一刀に(高額で)売りつけていたのだ。

 

───さすが関西弁を使うだけあって、商売上手な真桜である。

 

話を戻そう。そしてこれを、

『これは世界で1枚だけの写真だ。見事討ち取ったときにだけ上げるよ』

と伝令に伝えさせ、その人和の精神が入っているの時の写真を韓浩の褒美として用意した。

 

──────余談ではあるが、これが世界で1枚だけというのは、一刀の嘘。

実は一刀は、元の世界に戻った時に『色々』な写真を焼き増ししており、もしもの時のための『布教用』としての写真を用意してある。当然マスター(保存及び、鑑賞用)を持っているのは一刀である。

 

閑話休題。

 

「……もう一度聞こう。お前は何者だ?波才は呉の甘寧と本気で打ち合い、生き残った男だぞ?名の知れぬものが勝てる相手ではない」

張曼成は、ゆらゆらと剣を揺らしながら、下に構えている。これが張曼成の構えなのだろう。

「…は、生き残ったぐらいで自慢になるか。どうせなら勝って自慢しろ。…まぁ質問に答えてやろう。李典軍副将、韓浩だ。」

今回は答える韓浩。

「あの完全武装韓浩とかいう将か…。確かにお前の言う通りかもしれんな。勝てなければ何の自慢にもならんか…」

「当たり前だ。…さて、次はお前の番だな」

槍を真正面に構え、太刀を腰に差す形で構える韓浩。

「…そう、だな。もう一つ答えろ。なぜ、ここに我らがいると分かった?戦場に残っているとは考えなかったのか?」

「…お前らは文醜殿の横を抜けてきたのだろう?」

「…………なるほどな。罠だったか」

張曼成はその意味をすぐに悟ったらしく、苦虫を噛み潰したかのような顔をする。

「そういうことだ」

 

 

これが一刀の言っていた『存在してはならない6つ目の策』

 

───義理堅き将と言っていたが、本当に義理堅いやつなら自分の死を偽るか?

 

───…まぁ考え方が変わったってこともあるかもしれないけどさ。

 

───……けど、己の死をあっさり作る連中だ。負けそうになれば誇りを捨てまた逃げる可能性がある。あくまで可能性な?

 

───そこで、全ての策が完成したあとに文醜の隊の横に大きい隙間を作ってもらいたい。

 

───韓浩、お前にはその先で待機してもらいたい。

 

───万が一『波曼』が逃げたら、討て。

 

───これは本来『存在してはならない6つ目の策』だ。俺は『波曼』に『将』でいてもらいたいからな。

 

───その万が一が来た時は、…………頼む。

-5ページ-

「…お前らはあの方の期待を裏切った」

「………ん?あの方?期待とはどういうことだ」

「……お前らが知る必要はない」

余計な事を言ってしまった、という感じで苦い顔をする韓浩。

「…まぁいい。……死んでもらおう。我らは止まらぬ、漢王朝に終わりが来るまで!」

張曼成の突出。

張曼成は勢いに乗ったまま、韓浩の左の首筋を狙った薙ぎ、それを韓浩は槍で受け、腹に前蹴り、それを張曼成は足で受けそのまま肩当てに剣を当て────裂く。

「───くっ」

韓浩は一度距離を取り、もう一度構えなおす。

 

恐らく、張曼成の腕は波才より上。先程の波才は挑発に乗り、普段の実力が出せていない。

だが仮に波才が絶好調だったとしても、張曼成には敵わない。

それが韓浩には分かった。

「ふむ、威勢が良い割には────弱い」

余裕の表情で韓浩を見る。

「……………仕方ない、か」

軽くため息。

「くく、もう諦めるのか?随分と潔いではないか」

勝った、と確信したかのような笑い。

「あ?阿呆か貴様。仕方ないから本気を出してやると言ってるんだ」

「何?……くっくっくっく、ではなんだ?先程までは本気で無かったと?負け惜しみか?」

韓浩の言葉がおかしくなり、腹を抱えて笑う張曼成。

「…いや、本気だったさ。…ただ俺の本気は武器が違うというだけさ」

そう言って、腰に巻いていた『ベルト』のような棒を抜く韓浩。

それは棒が鎖でいくつも繋がっている武器。

「…なるほど、多節根か。だが、多少、間合いが伸びた…ところ……で……」

 

そう、それは多節根。多節根には三節根、九節根などある。だがこれは十二節根。長さは二丈(約6.6m)。韓浩の身長の3倍以上ある。

ちなみに張飛の蛇矛は一丈八尺(約5.45m)だ。あの蛇矛よりも1mより長い。

 

「………その長さには少々驚いてしまったが、逆に長すぎるだろう。そのようなもの懐に入れば使えんであろう」

「…………試してみるか?」

韓浩は右手だけでなく、左手にも籠手をはめ、多節根を張曼成に向かって構える。

「…良かろう。その武器を選んだことをあの世で後悔するがいい!」

張曼成は剣を肩に構え、韓浩の左から斬り込んでくる。

「ふっ」

韓浩はそれに動じず張曼成に向け、斜めに振り下ろす。

「甘い!…これで終わりだ!」

それを剣で受け、弾き飛ばそうとする。

 

 

だが─────

 

「ぐがぁああ!」

その場に響くは張曼成の叫び声。そのまま持っていた剣を投げ捨てその場に蹲る。

「…………残念だったな。この鋼鉄で出来た『超熱節根』は少々特殊でな」

その張曼成にゆっくりと近づいていく。

「……がぁああああああ!な、なんだそれは!?なぜ熱い!?」

張曼成の手には火傷。

「この多節根には油が流し込める仕組みになっている。『入』を押せば、火がつく仕組みだ」

「…熱を帯びているのか、その武器は!だが、何故貴様は耐えられる!?剣を通る熱を持った武器を持っていて耐えられる筈がなかろう!」

「…だからこの籠手をしたんだよ。この籠手は、泰山の麓に生える樹の樹脂を原材料としていてな。熱を通さないんだ」

「そんな出鱈目な!」

「出鱈目だろうがなんだろうが、今ここに存在している。それで十分だ。……む、そろそろこいつも終わりか。…………まぁいい、どうせ使い捨ての武器だ」

『超熱節根』は熱を帯び、紅く染まっていく。その『超熱節根』を張曼成の頬のすぐ傍へ近づけていく。

「ひっ!…ま、待て!私を殺しては張角の居場所が分からんぞ!」

「…命乞いか?」

『超熱節根』が止まる。

「そ、そう取ってもらっても構わん!張角たちの幽閉場所は私と波才しか知らぬ!このまま殺せば張角たちはかえってこんぞ!」

「…………………」

しばし無言。

「わかっただろう。だk「嘘だな」…なんだと?」

助かったと思った張曼成は怪訝な顔。

「いや、嘘ではないのかな?…だが、近くにいるのは間違いないだろう」

「…なぜそう思う」

「士気の問題だ。天和殿たちが近くにいれば、『見てくれている』と思い、兵たちの士気が上がるのは当然だろう。今回の巡業では約1万5千の兵が護衛として来ている。見つからないと思うか?」

「くっ」

悔しそうな顔をする張曼成。

「…ずいぶんと浅い男だったな。…ねお黄巾党の兵の多くは火計で死んだ。ならば指揮官のお前も火で死ぬがいい」

再び『超熱節根』を近づけていく。

「ま、待「待たねぇよ」…ぐああああああああああああああああああ!!」

『超熱節根』を頸に押し付け、肉を焼いていく。張曼成はそれに耐えきれず、絶命の悲鳴を上げる。

 

が、

 

「……こんなもんか」

死ぬ一歩手前で『超熱節根』を離す。

「隊長に感謝しろよ?一応生かしとけ、だとさ。…まぁ頸を刎ねられるのは間違いないだろうがな。しかし……」

そう言って地に伏している波才に目を向ける。

「…やっぱり死んでるか。一応、張曼成は気絶で済んだみたいな。…って、やば!」

溶け始めた『超熱節根』を投げ捨てる。

「んー、これもっと改良しないとダメだな」

 

────余談ではあるが、後にこれは『ハイパービームサーベル』と一刀に名付けられる。

……………剣ではない。

 

「………まぁ、それはまた後日だ。それよりも天和殿たちを探さねばならんな。……見つけてこなかったら、また隊長に苛められる気がする」

全身を震わせる韓浩。

「…あれ絶対、荀ケさまを苛めているときの曹操さまの顔してたって!…やっぱり魏の種馬は男には容赦ないのか?」

一刀が見ていないと結構失礼である。

「やばいやばい!とにかく探そう!………………あった!この馬の蹄の跡を辿っていけば天和殿たちがいるだろう。行k「韓浩様!」…なにさ」

蹄の跡を見つけ、歩き始めようとした韓浩を呼びとめたのは、先程一刀と話していた伝令兵。

「は、隊長から『ふつおた』です」

「………………ふつおた?」

聞きなれない単語。

「は、普通の書状、通称『ふつおた』だそうです」

「…………天の国の言葉か?」

「おそらく」

「たぶんこれは、深く突っ込んではいけないものだと理解した」

「は?」

「いや、なんでもない。それでその書状は?」

「は、こちらです」

『ふつおた』が韓浩の手に手渡され、それを広げる。

 

 

 

※日本語に変換しております。

 

『チョリーッスo(*^▽^*)o~♪かずピーだよー♪元嗣元気―(‐^▽^‐)?かずピーは超元気ッス!!『波曼』くんたち、ちゃんと生かしておいたー?…殺ってたらMK5なんですけどー?…それは置いといてー、えっとねー、お願いがあるんだけどー、聞いて《ビリッ!ビリッ!ビリリリリッ!》』

手紙を無表情で破る韓浩。

 

 

 

「…韓浩様?」

「……はっ!やっちまった!」

書状を破ってしまったことに気づく韓浩。

「…大丈夫ですか?」

少しだけ息の荒い韓浩を心配そうに見つめる伝令兵。

「な、なんなのだあれは!?あれは人の言葉か!?いや、それよりも隊長からの手紙を破ってしまった!ど、どうすれば…」

破いた手紙の欠片を集めようとする。

「あ、大丈夫です」

「なにが!?」

「本当の書状はこちらだそうです」

懐からもう一枚出てくる。

「…じゃあ、なにか?最初のはおふざけで、隊長は俺が破ることまで予想していたわけか?」

「はい、間違いなく」

大きく頷く。

「なに考えてんだあの人!?一応貴重な紙だよ!?分かってるのか?」

怒りつつも手紙を受け取り、また広げる。

 

───だから韓浩、君は泣いていい。

 

 

「……………………」

手紙を一通り見返し、真面目な顔で静かに閉じる韓浩。

「…あの、どうかされました?」

先程までと違い真剣な表情をしているのが気になるらしい。

「……天の国とこちらでは時間の進み方が違うのか?」

「え?」

「…隊長が姿を消して、どれくらいの年月が経った?」

「…え、と、『1年』です」

「そう『1年』だ。だが、隊長の手紙には『俺が消えて4年』と書かれている。…これは時間の進み方が違うと考えるべきだろう」

「……かもしれませんね」

「それに、だ………」

「…なんでしょう」

「隊長は気付いてしまったのかもしれん」

「何にでしょうか?」

「最近、魏の上層部の方たちと一緒にいる、顔に包帯を巻いた男にだ」

「……確か、曹操さまの真名を呼んでいる男ですか?」

「そうだ。バレていないと思っていたが、私とのわずかな会話で気付いたのかもしれん」

「…何者なのでしょうか?あの男。一月前にふらりと現れたこと思ったらいつの間にか魏の上層部の方々の真名を呼んでいるでしょう?」

「分からん。…とにかく、それを考えての行動なのだろうな」

「書状にはなんと?」

 

「………『力』を求めて旅に出るそうだ。そこで曹操様たちには隊長が帰還したことを伝えないでほしい、だとさ。他の将にも伝えているらしい」

「旅、ですか?」

「ああ、おそらく三国を回って、『武』なり、『智』なり、何らかの力を手に入れようとしているのだろう」

「…隊長にそれが必要とは思えませんが…」

「私もそう思う。………だが、これはいい機会かもしれん」

「なぜですか?」

「……三国には、今だに確執が残っているのは知っているな?」

「…………はい、上層部の方々にはほとんど残っていませんが、兵や民には…」

「そうだ。だが隊長ならそれをどうにかしてくれるかも知れん。『天の御使い』と呼ばれる隊長だったらな」

「『白き流星と共に天よりの御遣いが大地へ降り立ち、動乱の世を太平へと導くであろう』でしたっけ?」

「ああ、隊長ならもしかして、だがな…。」

「なるほど…」

「隊長…」

一刀がどこに行ったかは分からないが空を見上げ呟く。

「隊長、いえ北郷様。…よろしくお願いします」

そして、ゆっくり頭を下げた。

 

───ちなみに、書状の中には写真が入っていて韓浩は発狂したらしい。

-6ページ-

「勝ったな」

ネオ黄巾党の兵が投降しているのを遠くから見つめる。

「…天和たちは元嗣に任せよう」

あいつは信用できる。

「えーと、凪、真桜、沙和、天和、地和、人和、…ごめんな、今は会えない」

そう言って、その場から歩きだす。

 

「『最近覇気が戻り始めた』、か…」

それは、覇気の戻る『原因』があるということ。…まぁ、吹っ切れた。というのもあるだろうが。

けど、あのときの元嗣は焦っていた。じゃあそれは、俺にとって都合が悪いことってことだ。

そこで考えられるのは『新しい男』

「………考えたくなんかないさ。けど、4年なんだ、4年もすれば新しい恋が始まるのは普通だ」

それに王、いや偉い地位の人間ならば、後継者って奴が必要になってくる。

だから、華琳たちは正しいのかもしれない。

「だけど、諦めるつもりなんか全くない」

華琳たちが認めるってことは、立派なやつなんだろう。…たぶん、俺とは比べモノにならないぐらいな。

「ならば俺はそれに勝つ『力』を手に入れる」

『武』か?『智』か?『徳』か?それとも別のなにかなのか。

「待っててくれ、華琳。いつか必ず君の元へ帰る。だからそれまで、元気でな。」

そう言って、少し早足でその場から去る。

 

 

 

 

 

 

 

「───────さーて、どこに行こうかな?」

この旅、少し楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───帰還の章・完!  旅始の章へと続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………『白き流星』って隊長の精○のことなんだろうと俺は思ってる」

 

「韓浩様、それ隊長が帰ってきたら報告しておきますね」

 

「いや、やめて!?」

-7ページ-

〜あとがき〜

 

この作品を呼んでくださる方、及び支援をしてくだる皆様方、ありがとうございます。作者です。

と、いうわけで長い長いプロローグが終わったわけですが、いかがだったでしょうか?ていうか、一話ごとが長い気がしますね。…すみません。

SSを書くのは恋姫が初めてな為、稚拙な文章で申し訳ありません。

なんと魏アフターなのに、魏の誰にも会わずに旅を開始するという荒行に出てしまいました。……すみません。

 

次からいよいよ、一刀さんが『力』を求めて旅をします。この『力』は無印の頃から持っていないことに疑問を感じていたものです。

それはなにか?一刀さんの事をよく考えれば出てくると思います。(少し遠回りですが)

まぁ、しばらくお待ちください。

 

突然ですが、皆様に質問がございます。

 

1.韓浩にはこれからもスポットを当ててもよろしいですか?(mobのつもりだったのですが、書いているうちに好きになってしまったので…)

 

2.次に出てくる女性キャラは誰がいいですか?

 

A・紫苑

 

B・黄忠

 

C・飯田空さんが声を当てているキャラ

 

D・璃々の母

 

E・性欲魔乳

 

この5つの中からお選び下さい。

 

では、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 

でわでわ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜NGシーン〜

 

「だけど、諦めるつもりなんか全くない」

華琳たちが認めるってことは、立派なやつなんだろう。…たぶん俺【の】とは比べモノにならないぐらいな。

「………やっぱり俺のよりデカイのかな」

説明
学校が休校中なため、かなり早い投稿となりました。
駄文ですが、よろしくお願いします。
あと、サムネいじってみました。

オリキャラ注意(これずっと書いていなかった)

誤字、脱字等ありましたら、ご指摘願います。


前話⇒http://www.tinami.com/view/74192
第一話⇒http://www.tinami.com/view/62158
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
10551 7958 87
コメント
おねがいですっ!一刀!写真の、写真の焼き増しを私にも〜〜〜!!!(水上桜花)
一刀ぉぉぉおおおおおお写真の焼き増しくれぇぇぇええええええええ!!(明夏羽)
皆様、コメントありがとうございます。票を計算した結果、Eになりました。(Fの未亡人を失念していました、すみません)韓浩はたまに出します。学校の方が明日より始まりますので、また少し更新が遅くなるのをお許しください。でわでわ〜(つよし)
AからEまでどれ選んでも同じ人じゃねーかwww(真紅郎)
すんません追加。E!!(りばーす)
韓浩すげぇ怖いですね・・・。んで写真見て発狂しているとは・・・。なんて破壊力の写真。是非とも見せてくださいまし!!(りばーす)
一刀のポジションに他人が入っているというのは普通にショックでした……… 1.OK! 2.ALL OK!!! 次回も楽しみにしてますw(フィル)
1、鋭いツッコミ待ってます2、すいませんEでお願いしますwww(ブックマン)
1.Yes 2.EでFA(トウガ・S・ローゼン)
一話が長くても全然OK。1当て下さい 2Dお母さんしてる紫苑で P.S寝取られ? 次作期待(クォーツ)
@どんどん出していいと思います! かなり良いキャラのようですし、俺の好きになりましたよw Aに関してはCですね! ん〜関西なら十分に気をつけてね! さてさて、この旅が一刀を成長させてくれるか凄く愉しみです!(Poussiere)
Cで・・・・てかどんだけネタ詰め込んでんのww(ルーデル)
ふつおたとその内容に吹きましたwww(brid)
E! E! E!!!!!!!!!!!!(零壱式軽対選手誘導弾)
つづき楽しみにしています(ゲスト)
続き楽しみにしてます。作者さんは関西ですか?だとしたら一緒ですね(笑)(ヒロキ)
ここはあえてEを選たk・・・・・パタ つ・・続きを楽しみにしています・・・(toto)
NGだわw  1、掘られやk……ごめんなんでもないよ!?  2、あえてのEw(混沌)
タグ
真・恋姫†無双 恋姫 魏アフター 繰り返しながらも新たなる外史[旅]!? 

つよしさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com