魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百三十五話 ロリロリな猫、そして飛縁魔との再会
[全2ページ]
-1ページ-

 「勇紀よ…私のこの姿、どう思う?」

 

 「……ロリロリだな。しかも巨乳の」

 

 今日は日曜日。

 何か優人に呼ばれたから天河宅にお邪魔しているのだが、リビングに案内された俺を出迎えたのはロリ巨乳の女の子であり、第一声が自分の容姿についてだった。

 

 「…で、優人よ。俺を呼んだのは何なんだ?後、この子誰?何で俺の名前知ってんの?お前が教えたとか?」

 

 「ああ……実は、お前に調べて貰いたい事があってな。それとその子は緋鞠なんだ」

 

 「そっか、野井原か………………ん?野井原?」

 

 優人に言われ、ロリっ娘をジッと見る。

 日本人らしい綺麗な黒髪、先程の古風めいた言葉遣い、どこか面影のある顔…

 

 「……マジで?」

 

 「マジだ」

 

 思わず聞き返した俺は優人に視線を向けるが、優人は深く頷いて答えた。

 

 「……何で小っちゃくなってんの?」

 

 「その原因を調べて貰いたいんだけど…お前、あまり驚かないんだな」

 

 「まあ…こういう事には慣れてるし」

 

 てかこの世界のアルフさんだって以前は今の俺達位の年齢の容姿だったけど、今は子供形態だしな。

 禅と一緒に来たアルフさんは大人形態だが。

 

 「それと……((アイツ等|・・・・))は一体どうしたよ?」

 

 今度はリビングの隅に目を向ける。

 

 「ロリ担当は私…なの。ロリ担当は私…なの。ロリ担当は私…なの。ロリ担当は私…なの。ロリ担当は私…なの。……なのなのなのなのなのなのなのなの……」

 

 「何よコレ……ロリはまだしも巨乳って何よ。チビッ娘になったせいか余計に胸が大きく見えるじゃないの。世界は私に何の恨みがあるのよ……巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳……」

 

 そこには体育座りをしながら濁った瞳で呪詛を呟く様に同じ言葉を繰り返す静水久と九崎がいた。

 あまりにも低い声で呟くので若干恐怖を覚える。

 

 「無様な負け犬の姿じゃな」

 

 「「キシャーーーー!!!」」

 

 あ、吼えた。

 

 「ま、まああの2人は置いといてだ。緋鞠がこんな姿になった原因を調べてくれ」

 

 「構わんけど、その姿は自分の意思でなった訳じゃないよな?」

 

 「無論じゃ。誰が好き好んでこの様な姿に。……もっとも若殿が気に入ったというのなら、このままでいても私は良いのじゃが?」

 

 ……だ、そうですよ優人君。

 

 「「……………………」」

 

 リビングの隅っこにいる2人も優人を濁った瞳で見詰めている。

 

 「そ、それよりホラ!早く緋鞠が小さくなった原因を調べないと!勇紀、お願いします!」

 

 …野井原の問いには答えず、原因を調べてくれと急かす優人。

 ここで『そのままの姿で…』みたいな答えだったら指先に妖力で集めた水の弾丸を優人に向けている静水久と、釘バットをいつの間にか手にしていた九崎に襲われる事は目に見えているからなぁ。

 命拾いしたな優人。

 ま、それはさておき野井原が小さくなった原因ねぇ…。

 

 「うーん…」

 

 こういうのは大抵何かしらの力の影響でも受けたと見るのが妥当か。

 けど魔力っぽいものは感知しないし

 

 「野井原の妖力が何らかの変調をもたらした…っていうなら納得出来るんだが」

 

 俺に妖力を感知する事は出来ない。

 

 「その線は無い…なの。もし猫の妖力が暴走や変質でもしていようものなら同じ妖でもある私が気付かない筈が無い…なの」

 

 静水久の言葉で俺の回答は白紙に戻された。

 

 「なぁ…この一件、他の人には知らせていないのか?」

 

 「他の人って?」

 

 「くえすとか飛白さんとか…」

 

 後は那美さんかな。

 野井原が妖って事を考えると今言った面々の方が原因を追究出来そうだし。

 飛鈴ちゃんはアレだ。飛白さんに言えば必ず耳に届くだろう。

 

 「…俺、その面々は若干苦手なんだがなぁ」

 

 ん?そうなのか?

 まあ、同じ鬼斬り役同士でも仲が良いとは限らないか。

 優人は家の電話の受話器を手に取り、番号ボタンを押そうとしてその動きを止める。

 どうしたんだろうか?

 ゆっくりとコチラを振り返る優人一言…

 

 「俺、くえすの番号も各務森先輩の番号も知らない」

 

 「って、知らねーのかよ!?」

 

 普通に受話器取りに行ったからてっきり知ってるものだとばかり思ってたぞ!

 

 「すまん勇紀。代わりに掛けてくれないか?」

 

 「しゃーねえなぁ…」

 

 俺は携帯を取り出し、まずはくえすに連絡を取る。

 電話を掛けて1コールもしない内に向こうは出てくれる。

 

 『もしもし!ゆうちゃんですの!?』

 

 「ちーッス。相変わらず出るの早いな」

 

 くえすには何回か電話を掛けた事あるけど、ホント早いわ。

 

 『電話相手を待たせるなんて失礼ですもの』

 

 別にそこまでして早く出る必要無いと思うんですけどねぇ。

 

 『そ、それで今日は何の御用ですの?』

 

 「実は今、優人の家にいるんだが野井原が大変な事になっててな」

 

 『………猫?』

 

 あ、何か声のトーンが下がった。

 そういやくえすと野井原ってそんなに仲良くなかったっけ。

 

 『何で貴方が猫の心配なんてしているんですの?』

 

 「だから野井原が突然幼くなっちまって、その理由が分からないからくえすに診て貰いたいんだよ」

 

 『そんなの、2〜3日も放っておけば元に戻りますわ』

 

 「いや、風邪じゃないんだから…」

 

 そんな投げやりな返答はどうなのかと。

 

 『術を掛けた私が言うのですから間違いありませんわ。だから気にしなくても問題有りません』

 

 「それでもなぁ………………ん?」

 

 今、とんでもない事口走ってなかったか?『術を掛けたのが自分だ』とか。

 俺は聞き間違えたかと思い、くえすに聞き返してみたのだが

 

 『いえ、聞き間違えてませんわ。猫…緋鞠が縮んだのは私が使った術の効果ですわ』

 

 「お前が犯人かい!!」

 

 「「「「っ!!?」」」」

 

 俺が突然大声を上げた事でビクッと身を小さく震わせた優人達だが、それは置いといて

 

 「何でこんな事したんだよ」

 

 くえすが野井原を縮めた理由を尋ねる。

 

 『ちょっとした実験ですわ』

 

 実験?

 

 『得物が無いと猫も困るでしょうから』

 

 くえすが何をしたいのか理解は出来んが

 

 「本当に野井原に害は無いと?」

 

 『えぇ』

 

 少なくとも野井原が縮んだという以外に害が無いなら安心して良い…のかな?

 

 「分かった。ありがとな」

 

 『いえ、それよりもゆうt…』

 

 俺はすぐに携帯を切る。

 ただ、くえすが何か言おうとしてた様な気がしたが、今は先程までの会話の内容を目の前の連中に言う事の方が先決だ。

 

 「野井原が縮んだ原因が判明した」

 

 「「「「マジで!?(本当か!?)(マジか!?なの)」」」」

 

 一斉に俺の方に近寄ってくる4人。

 

 「実はかくかくしかじかで…」

 

 「……つまりくえすの奴めが私をこんな姿に…一体何の嫌がらせだ?」

 

 「実験って何するつもりなのかしら?」

 

 俺が説明すると野井原は表情を歪ませ、九崎は頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げていた。

 

 「魔女がする事なんてロクでも無い事に決まってる…なの。別に猫がどうなろうとどうでもいいけど…なの」

 

 「ま、くえすだしなぁ…」

 

 静水久も優人も呆れ顔で言う。

 ホント、あの魔女さんは何がしたいんだろうねぇ………。

 

 

 

 次の日…。

 

 「…ま、当然野井原は休みだわな」

 

 「あの格好で学校来させる訳にはいかんからな」

 

 学校に登校し、予鈴が鳴るまでの間、教室で俺と優人は野井原の席を眺めながら会話していた。

 とりあえず理由は『風邪』という事で学校には連絡してるらしい。

 

 「じゃあ家で大人しくしてるのか?」

 

 「どうだろう?」

 

 「案外呑気に外出してるんじゃないの?何たって猫なんだし」

 

 コチラにきた九崎も会話に交じる。

 

 「おはよー!」

 

 「おはようございます」

 

 「おはよ」

 

 更に遥、神無月、葉月といった面々が登校してくる。

 

 「おはよー……っておい優人!!野井原さんはどうした!?」

 

 続いて登校してきた泰三は野井原の空席を見てすぐに優人に詰め寄ってきた。

 

 「今日は休みだよ。風邪なんだ」

 

 「何だと!?」

 

 ガーン、といった感じでショックを受けている。

 何でそんなにショックを受けるんだか。

 

 「馬鹿野郎!!クラスに在籍してる美少女の1人が欠席なんだぞ!!」

 

 「そうだ!!これは重大な問題だぞ!!!」

 

 「俺達にとっちゃ美少女は目の保養そのものなんだよ!!!」

 

 「イヤオオオォォォォォォッッッッッ!!!!!!」

 

 何時の間にやら他の男子達も騒ぎ始めている。

 野井原がいないだけでそこまで騒ぐ程の事なのか?

 

 「おはようございます。教室の外まで声が響いてましたけど、何かあったんですか?」

 

 「……五月蠅い」

 

 取田姉妹も教室に姿を見せた。

 姉のテスラは笑顔を崩さずにいるが、妹のナインは表情を歪めて煩わしそうに男子達を見ていた。

 

 「朝から何の騒ぎよコレ…」

 

 「おはよう勇紀君。何かあったの?」

 

 「…朝から元気よね」

 

 アリサ、すずか、テレサも仲良く登校してきたみたいだ。

 

 「3人共おっはー。男子達が騒いでるのは今日、野井原が休みだからだ」

 

 「「「……………………」」」

 

 言葉も出ず、呆れた表情になる3人。

 

 「???フローリアン姉妹がいないわね」

 

 「あの2人も休み。理由は野井原と同じで風邪だ」

 

 ま、本当の理由は風邪ではなく、アミタもキリエもグランツさんのメンテを受けるため休んだ訳だが。

 忘れてはいけないが、あの2人は『ギアーズ』と呼ばれる存在であり、戦闘機人と似通っている。

 身体の中の機械のパーツに劣化、摩耗してる物があれば交換しないとエラい事になるからな。

 

 「「「「「「「「「「フローリアン姉妹も!?ガッデム!!ガッデーーーーーーーーム!!!!」」」」」」」」」」

 

 「「うるせえよ!!!」」

 

 俺と優人は教室で吼える男子達に抗議するが、全然聞いちゃくれねぇ。

 

 「モチョ…」

 

 ポン、と俺と優人の肩に手を置き、『苦労しているな』といった感じで見つめてくるモチョッピィ。

 マジ苦労するわこのクラス。

 小、中学校の時といい、この世界の俺達世代ってこんなんばっかりなのかねぇ………。

 

 

 

 放課後…。

 今日は俺が夕食の当番なので食材を買って家に帰る途中だった。

 

 「長谷川勇紀、丁度良い所で出会った…なの」

 

 「んあ?」

 

 背後からフルネームで呼ばれたので振り返ったらそこには天河家に居候のロリ妖、静水久と背の高い俺よりも年上っぽい男性がいた。

 

 「静水久じゃんか。何か用?」

 

 「お前にも少し手を貸してもらいたい…なの」

 

 「んん?」

 

 静水久の手伝いとな?

 一体何だろうか?

 

 「優人が攫われた…なの」

 

 「…………はあっ!?」

 

 攫われたって…学校終わったのが小1時間程前なんだが…。

 帰宅途中にでも襲われて攫われたのかな?

 

 「野井原はその事知ってんのか?」

 

 「猫は既に優人の元へ向かってる…なの。けど今の猫じゃあ、本来の実力を出せない…なの」

 

 縮んでるもんねぇ。

 

 「私がいれば充分…と言いたいけど、優人が人質にされたら面倒…なの。だから隙を見て優人を助けるのを手伝ってほしい…なの」

 

 成る程ねぇ。

 携帯の時計を見ると時間はもうすぐ16時30分を回るってところか。

 本当は早く帰って夕食の準備したいが、親友の危機とあらば見過ごす訳にはいきませんな。

 

 「優人の救助は引き受けた。…ところでそちらの人は?」

 

 さっきから気になってるんだよなぁ。

 見た目クールっぽい人だけど、優人の知り合い?

 

 「俺の名は影月。((静水久|コイツ))と同じ妖だ」

 

 あ、妖さんでしたか。人じゃなかったんだ。

 

 「長谷川勇紀、お前の事は静水久から聞いているぞ。天河優人と同じで我々妖に対して積極的に事を構えようとする気は無いという事をな」

 

 「俺、鬼斬り役じゃないッスからね〜。家族や友人に危害加えなけりゃ敵対する理由も無いし」

 

 「それにお前がいれば神宮寺家の鬼斬り役も動く事が無いしな。敵対する奴が少ないのは我々にとっても益になる」

 

 くえすねぇ。あれは『妖=悪』みたいな図式で考えてる節があるからなぁ。

 世の中全ての妖が悪い訳じゃ無いんだから無駄な殺生は相手に憎まれる原因にもなるし。

 ま、俺や優人がくえすを説得したので、妖を見掛けても即座に攻撃する様な事は無くなったが。

 優人はともかく、俺がくえすを説得した理由は久遠に被害がいかない様にするためだけどな。

 久遠に手を出そうものなら例えくえすが相手でも容赦しねぇ。俺が扱えるあらゆる魔法や技、果ては宝具を使っての1人フルボッコの刑だ。

 

 「もう良いか?なの」

 

 オーケーオーケー。とっとと優人の救助に向かいましょう。

 てか優人何処にいるか知ってんの?

 

 「さっき河原の方から妖力を感知した…なの」

 

 河原か。ここからだと歩いて向かえば15分程の距離だな。

 走って向かえば10分切る程度、魔力で身体強化したり『剃』使えば5〜6分程、空飛ぶか『月歩』なら1分以内…。

 けど人目を考えると『剃』、『月歩』、飛行魔法は却下だから身体強化を用いて走るか。

 人目が無いのを確認して俺は買い物袋を宝物庫に仕舞う。

 突如荷物が空間に吸い込まれていく様を見て目を見開く静水久と影月。そういや俺のレアスキルは優人の関係者には見せた事無かったっけ。

 

 「じゃあちゃっちゃと行きますか」

 

 呆けている静水久と影月の意識を戻し、早く行くぞと促す。

 河原の何処にいるかは静水久に先導して貰わないと。俺は妖力を感知出来んし。

 優人の奴、無事だといいんだが………。

 

 

 

 〜〜優人視点〜〜

 

 「ん……」

 

 「ぐ……うぅ……」

 

 俺は現在、身体を動かせず仰向けで倒れている。

 そんな俺に覆い被さり、チュウチュウと音を立てて俺の首筋に噛み付き、血を吸い取ってる奴がいた。

 飛縁魔の明夏羽…。

 夏休みに緋鞠に連れられ、野井原の実家に帰った時に俺達を襲ってきた妖の1匹。

 普段なら緋鞠が傍に居るのに今は……。

 

 「(くえすぅ〜……)」

 

 俺の脳裏には『おほほほほ』と笑う鬼斬り役の顔が思い浮かぶ。

 緋鞠に余計な事したくえすを恨めしく思う。

 そんな俺の心中を知らない明夏羽は俺の血を吸い取る事に夢中になっている。

 

 「(何とかして逃げ出したいけど…)」

 

 さっき明夏羽の目を直視した時に掛けられた妖術のせいで、身体を動かす事が出来ず、声も出せない。

 この辺り一帯も人払いの結界を妖術で張っているらしいため、人が通る事も無い。

 ……もしかしなくても俺、詰んでる?

 

 「ん……ぷはぁ……」

 

 血を吸っていた明夏羽が首筋から口を離し、上半身を起こす。

 

 「これが鬼斬り役の血……あは♪思っている以上に上質じゃない♪」

 

 明夏羽の頬はほんのりと赤く染まり、小さく身を震わせる。

 

 「それに私の中の力が高まるのを感じるわ♪」

 

 明夏羽は目を閉じ、悦に浸っている。

 

 「(うぅ…)」

 

 体内の血が吸われて減ったせいか、献血した後の様な気怠さを感じる。

 

 「もう少し、吸っても大丈夫よね♪」

 

 明夏羽が再び俺の首筋に噛み付こうと顔を近付けてくるが

 

 ザバアッ!!

 

 川の方から水飛沫が上がり、((何か|・・))が水面下から飛び出してきた。

 

 「ちっ…無粋な」

 

 舌打ちした明夏羽が視線を向け、睨みつけた先には…

 

 「飛縁魔か…なの」

 

 静水久だった。

 高く跳躍した静水久に対し、自らの腕を伸ばして攻撃する明夏羽。

 しかしその腕が静水久に触れた瞬間、バシャッという音がして静水久の身体が弾ける。

 アレは……静水久の水分身か!

 攻撃を外した明夏羽は腕を戻し、ゆっくりと俺の上からどいてくれる。

 これで身体が動いてくれたらなぁ…。

 

 「お前が沙砂の言ってた蛇ね。何?化け猫からボディーガードの座を奪ったの?」

 

 「お前には関係無い……なの」

 

 静水久も地面に着地し、明夏羽と対峙する。

 

 「…確かに関係無いわね。空気も読めない様なヤボなロリヘビは引っ込んでな」

 

 「低俗め……なの」

 

 笑みを浮かべる明夏羽と無表情な静水久。しかしどちらも俺でさえ感知出来る様な明確な敵意を滲み出している。

 

 「邪魔してしまったのか。悪い事したなぁ」

 

 「「っ!!?」」

 

 静水久がいる方向とは真逆の方向から声が聞こえた。

 明夏羽が慌てて振り返り、俺も目を動かして視線だけを向けると学生服を着た1人の少年の姿があった。

 

 「(ゆ、勇紀か!?)」

 

 それはまぎれもなく、俺と同じ学園に通う親友の長谷川勇紀本人であった………。

 

 

 

 〜〜優人視点終了〜〜

 

 うーん……。

 優人が攫われたと聞いて静水久と共に、妖が張ったと思われる結界内に静水久の力で侵入したのは良いけど、まさか優人が殺されそうになってるどころか妖とお楽しみ中だったなんて。

 

 「これで俺は立派なKYか…」

 

 俺はガクッと肩を落とす。

 お楽しみでヨロシクな展開中だと分かってればもうちょい時間をズラしてから来たものを。

 結界の外で待機してる影月と一緒にいれば良かったよ。

 

 「〜〜っ!!〜〜っ!!(別にお楽しみじゃないから!!助けてくれ勇紀!!)」

 

 そんな肩を落とした視線の先には優人が必死に呻いている。

 

 「どうした優人?」

 

 「〜〜っ!!〜〜っ!!(明夏羽の妖術で喋れないし動けないんだ!!)」

 

 大人しく仰向けで寝転がっている優人。

 何かを伝えようとしてるみたいなんだが…。

 

 「勇紀、優人は妖術で身動きを封じられている…なの」

 

 「あ、そういう事ね」

 

 通りで一言も発さずに視線を向けて訴えてくる訳だ。

 KYの称号を得ずに済んだぞ。良かったー。

 ホッと一息吐いてから俺はすぐさま自らの((能力|チカラ))を1つ行使する。

 

 「((唯我独尊|オンリーワンフラワー))」

 

 あらゆる異能力を無効化するレアスキルを展開する。この辺り一帯に張られてる結界のみ、効果の対象外に調整して。

 その効果によって優人に掛けられてたという妖術は解除され、優人に自由が戻る。

 

 「うぅ……すまん勇紀、助かった」

 

 …そういう割には起きようとする素振りを見せない優人。

 アレか?自分の側に妖がいるから『妖術解けたけど動けません』てな事をアピールしてんのか?

 まあ、立ち上がった瞬間に襲われたらどないしようも無いわな。

 その時は静水久の行動に同調して優人の身柄確保を優先しよう。

 

 「は…はは……」

 

 ん?

 

 「あはははははははは!!」

 

 え?何々?

 いきなりあの女性の姿をした妖が俺を見て笑い出したんだけど?

 優人も静水久も突然の事で『何だ何だ?』といった感じだ。

 

 「まさかこんな所で再会するとは思わなかったわ。けど、日本中探し回る手間が省けたわね」

 

 ビシッと人差し指を俺に向けて言う妖。

 

 「あの時より成長していてもこの匂い、決して忘れた事は無かったわ」

 

 「……………………」

 

 「パワーアップした今の私なら確実に勝てる!!だからリベンジマッチよ!!クソガキ、アンタの血を根こそぎ吸い尽くしてやる!!」

 

 「……………………」

 

 バリバリに敵対意識を向けられて宣言される俺はどうしたら良いのだろうか?

 てかさぁ…

 

 「アンタ誰?」

 

 やたらと敵意を持たれてるみたいなので気になって仕方なかったから聞いてみた。

 

 「……………………」

 

 すると目の前の妖はまるで凍り付いたかの様に固まった。その際、空気がピキッと音を立てた様な気がするのは幻聴か?

 待つ事10数秒…

 

 「あははは……そう……私に事なんて一切合財覚えてないってわけ……」

 

 「いや、何かすいません」

 

 今の台詞から察するに、どうやらあの妖さんと俺は以前に知り合った事があるらしい。

 けど俺はどうやら忘れてるっぽいので乾いた笑い声をあげる妖さんにとりあえず謝っておく。

 

 「…決めた。もう謝っても許さないから」

 

 許すも何も血を根こそぎ吸い取るとか言ってた時点で俺に慈悲を掛ける気なんて無いよね?

 

 「余所見するとは良い度胸…なの」

 

 水に妖力を混ぜ、自らの手に纏わせた静水久が攻撃のモーションに入る。

 

 「心配しなくても周囲の警戒は怠ってないわよ!!」

 

 静水久の声と行動に反応し、腕を伸ばす妖。

 静水久より遅れての動きにも関わらず、伸ばした腕がグングンと迫るので手に纏わせた水を障壁の様に前方に展開して攻撃を防ごうとする。

 妖力を混ぜた水なので、液体状でもそれなりの強度があるとみたのだが

 

 バシャッ!!

 

 簡単に水の障壁は破られ、静水久の脇腹に強烈な一撃が入る。

 

 「がっ!」

 

 「静水久!!」

 

 そのまま吹き飛ばされた静水久に優人の悲痛な叫びが飛ぶ。

 静水久は地面を何度かバウンドした後、結界の端にぶつかりようやく止まる。

 

 「げほっ!げほっ!(しまった…なの。アイツ、優人の血を吸って…)」

 

 「ふふ……悪いけど今の私ね、ビンビンに火照ってるの♪それこそ何回でも、何時間でもヤレちゃうぐらいにね//」

 

 ……台詞だけ聞いてたらエロいっすねー。

 しかし((唯我独尊|オンリーワンフラワー))の範囲内にいるため、あの妖の妖力は封じている筈なんだが…。

 

 「(優人の血を吸った事で基礎的な身体能力も増幅されてるって事か)」

 

 魔力や妖力を直接使っての身体強化ならともかく、吸血での身体強化には((唯我独尊|オンリーワンフラワー))も意味を成さないか。

 

 「(ま、静水久に注意が一瞬でも向いてくれたおかげで準備は整ったけど)」

 

 俺はパチンと指を鳴らす。

 すると妖の側にいた優人の姿が消え、俺のすぐ背後に現れる。

 転移魔法による転移のおかげで、優人の身柄を取り戻せた。これで優人を盾代わりに使われたり、コチラの攻撃に優人を巻き込む心配も無くなったので遠慮無く攻め込めますな。

 念のため、優人を包み込む様に半球体状のバリアタイプ防御魔法、ディフェンサーを使って優人を保護しておく。

 

 「さてさて……次は俺が相手させて貰おうかな」

 

 静水久が受けたダメージは意外に大きそうだ。

 本来優人を護衛するべき筈の野井原が未だにこの場に現れない以上、戦えるの俺しかいないし。

 バリアジャケットを即座に纏って戦う準備をする。

 

 「服が変わった!?」

 

 俺が魔導師として戦うための姿、バリアジャケットを優人の前で纏って見せるのも初めてだな。

 

 「その服……忘れ様が無いわ。やっぱりあの時のクソガキね」

 

 うお!?

 更に妖からの敵意が増した!?

 そこまで怒るなんて…俺、そんなに酷い事したっけ?

 うーん……思い出せん。

 

 「勇紀……明夏羽の事知ってるのか?」

 

 「どうなんだろ?俺は正直覚えてないんだよなぁ」

 

 「…ひょっとして俺が夏休みにアイツと出会った時に言ってた『リベンジしてやりたいクソガキ』ってお前の事なんじゃ…」

 

 リベンジねぇ…。

 

 「《ユウ君気付いてないの?あの妖さん、ユウ君と戦った事あるよ?》」

 

 「《マジで!?》」

 

 ダイダロスの念話を聞いて俺は驚いていた。

 

 「《小学生の時、レヴィちゃんと山にピクニックに行った時に出会った妖さんだよ》」

 

 レヴィと?

 確かに2人で山にピクニックに行った事あったなぁ。

 そういや、その時に妖と出会って1バトルやらかしたっけか。

 

 「…………おぉ!」

 

 そこまで記憶を掘り起し、ようやく思い出した。

 今対峙してる妖があの時の妖の姿と一致してる。

 

 「そうだそうだ。確かに俺が小学生の時に出会ってたわ。明夏羽だったっけか?久しぶりー」

 

 いやー、あの時は巫女服っぽいの着てたよな明夏羽って。

 正直容姿より服装の方が印象に残ってたわー。

 その事を口にしてしまうと明夏羽は口元を引き攣らせていた。

 

 「ふ…服?服の印象に負けたっていうの?」

 

 次いで『あははは…』と乾いた笑い声が耳に届く。本日2回目の乾いた笑い声だ。

 

 「勇紀ぃ…流石にソレは酷くね?」

 

 「……否定出来ない」

 

 今回は俺が全面的に悪いと自覚してるさ。

 

 「アンタは人の神経を逆撫でするの上手いわねぇ」

 

 『人じゃなくて妖じゃん』ってツッコんだらまた荒れそうなので黙秘しておく。

 

 パキイイィィィンッ!

 

 「っ!?」

 

 ん?

 いきなり明夏羽の表情が変わった。

 

 「(結界が破られた?しかも強引に切り裂いて……)」

 

 コチラから視線を外した途端に新たな影が割って入ってくる。

 明夏羽は軽く跳んでその場から離れた。

 新たな影…それは口で匕首を加えた野井原だった。

 

 「やはり現れたか化けね……こ……?」

 

 明夏羽の目が丸くなる。

 何となく理由は分かるけどね。

 

 「……何その姿?幼児プレイ?」

 

 「やかましい!!好きでこの姿になってる訳ではないわ!!」

 

 明夏羽の言葉に憤怒する野井原。

 

 「飛縁魔…性懲りも無くまた若殿の命を狙いに来たか」

 

 「命?そりゃ無いわね。アイツの血は私の妖力を増幅させてくれる上質なモノだもの。殺すのは勿体無いわ」

 

 「良かったな優人。お前、殺される事は無いみたいだぞ」

 

 「嬉しくねえ!殺されない理由が全然嬉しくねえよ!!」

 

 「そんでアッチのクソガキも殺すのは勿体無いから私の奴隷にでもしてやるわ」

 

 「良かったな勇紀。お前、殺される事は無いみたいだぞ」

 

 「嬉しくねえ!殺されない理由が全然嬉しくねえよ!!」

 

 餌に奴隷……どっちも人間としては扱って貰えない。

 てか俺は根こそぎ血を吸われて殺されるのか奴隷として生かされるのかどっちなんだ?どっちも俺としては御免((被|こうむ))るけど。

 てか明夏羽のターゲットが俺から野井原に変わってる。

 ……俺、何のためにバリアジャケット纏ったんだか……。

 

 「ぐっ!」

 

 野井原と絶賛バトル中の明夏羽の様子が一変し、苦しそうに呻く。

 

 「アイツ、優人の血が馴染む前に力を酷使したせいで身体にとんでもない負担が掛かり始めた…なの」

 

 おおぅ!?

 静水久、何時の間に優人の側に?

 ひょっとして川の水の中を泳いでコッチに?

 

 「負担って…」

 

 「このまま戦い続けると自滅するのは確実…なの」

 

 おいおい…。

 

 「流石にそんな状態に陥ったんじゃあ、野井原に討ち取られるのは時間の問題だろ」

 

 余程の苦痛なのか、明夏羽は痛みを堪えている表情を隠そうともせず、動きも精細さをどんどんと欠き始めている。

 あのままだと野井原が一撃入れれば勝負有りだな。

 

 「……勇紀、静水久、頼みがある」

 

 「…言わんとする事は何となく分かるけど、良いのか?今後も餌としてお前の血を狙われる事になるかもしれないんだぞ?」

 

 「私や猫が常に傍にいるとは限らない…なの。それに飛縁魔が本当に優人を殺さないという保証も何処にも無い…なの」

 

 「分かってる。けど、アイツには話が通じる気がするし、何より緋鞠に戦いなんていう負担を掛けさせたくないんだ!!」

 

 優人の表情は真剣そのものだ。

 自分の血が狙われると分かっていながらも尚、助けようとする。

 

 「…甘いよなぁ優人は」

 

 「降り掛かろうとする火の粉は払って当然…なの」

 

 「うぐ…」

 

 小さく呻く優人だが

 

 「「でも…それでこそ優人らしい(優人らしい…なの)」」

 

 俺も普段は無表情が多い静水久も苦笑する。

 親友の頼みを受けるために視線を野井原、明夏羽の方に戻すと体勢を崩した明夏羽に対して、振り上げた匕首を振り下ろそうとする野井原の姿があった。

 ……って、オイイイィィィィィィッッッッッッ!!!!?

 このままじゃ頼み事を完遂する前に明夏羽が斬り伏せられる。

 俺はすぐさま『剃』で野井原と明夏羽に割って入り、俺の前にイージスを展開して野井原からの一撃を防ぐ。

 

 「なっ!?」

 

 流石に俺が明夏羽を庇う行動に出たのが意外だったのだろう。野井原は大きく目を見開きながら攻撃を弾かれた反動を利用して空中で回転し、華麗に地面に着地する。

 

 「どういうつもりじゃ勇紀!!何故その飛縁魔を庇う!?」

 

 野井原が憤怒して言うのも当然ですよねー。

 

 「野井原には悪いけど、これは優人の頼みなんだ。((明夏羽|コイツ))を討ち取るのは勘弁してくれ」

 

 「若殿が!?」

 

 野井原が俺と明夏羽の後方にいる優人、静水久の方に視線をやっていた。

 俺も軽く振り返ると顔の前で両手を合わせ、『ゴメン』のアピールをしている優人がいた。

 で、俺は再び野井原の方に向き直る。

 

 「そういう訳だk……」

 

 ズドドドドドッ!!!

 

 俺の言葉は途中で遮られた。

 いきなり頭上から柱が複数本降り注いできたからだ。

 幸いにもイージスを解いてはいなかったので俺と明夏羽の真上に落ちてきた柱は弾かれる。

 ただ…

 

 「緋鞠!!」

 

 優人の悲痛な叫びが周囲に響く。

 野井原はイージスの範囲外にいたので柱の雨に巻き込まれる。

 

 「優人、心配はいらない…なの」

 

 静水久は特に慌てた様子も見せずに言葉を発する。

 

 「何奴じゃ!?」

 

 声が聞こえてきたのは上方。

 上を向くと降り注いできた柱を全て回避し、その内の1本の上に立っている野井原の姿があった。

 

 「両者それマデー!」

 

 次いでこの場にいる誰のものでもない声色が俺達の耳に届いた。

 おそらくこの柱の雨を降らせた張本人なんだろうが、一体誰だよ?こんな無差別攻撃をかましてくれたのは。

 

 「何やってんのよアンタは!」

 

 今度は俺の知るクラスメイトであり、優人の幼馴染みでもある一般人の声。

 土手の上で九崎が隣にいた子に拳骨をかましていた。

 

 「痛っ!?酷いヨ凜子!何デ殴るのォッ!?」

 

 「無差別に攻撃してどうすんのよ!!」

 

 「む、無差別ジャないヨ。ちゃんト皆に当たらない様ニ調整したヨ」

 

 嘘だ……絶対嘘だ。

 もし当たらない様にしたのなら俺のイージスに柱が当たる訳無いし、野井原だって回避行動を取る必要はなかったんだから。

 

 「お主、一本ダタラじゃな!!主も若殿の命を狙いに来たというのなら斬り捨ててくれる!!」

 

 「ぴぃっ!!」

 

 あ、九崎の後ろに隠れた。

 てか一本ダタラ?妖なのか?

 

 「(何で九崎と一緒にいるんだ?)」

 

 そもそも海鳴に一本ダタラがいるってのは聞いた事ないし。

 九崎と一本ダタラがコチラに近付いて来たと同時に、もう柱が降り注いできそうには無いので俺もイージスを解く。

 

 「沙砂…一体どういうつもり?」

 

 沙砂って、その一本ダタラの事か?

 名前で気安く呼ぶって事は明夏羽の仲間と見て良いよな。

 

 「凜子がおナカイッパイにしてくれタから、お礼にヒトツだけお願いキイテあげたノ。『争いをトメて』っていうお願いヲ」

 

 「ふふ……おかげで私の懐は火の車……」

 

 …哀愁漂う九崎を見て思わず涙を流しそうになった。

 いくら財布から消えたんだろうか?

 

 「……………………」

 

 明夏羽の視線が沙砂と呼ばれた一本ダタラから九崎へと移る。

 視線を向けられた九崎は哀愁を引っ込め、明夏羽を真っ直ぐ見返しながら言う。

 

 「アンタ達妖ってのはどうしてこう、すぐに命のやり取りすんのかしらねぇ」

 

 溜め息を1つ吐いた九崎の気持ち、よく分かるわぁ。

 

 「優人は((争いなんて|そんなこと))絶対望まない。例え敵でもね。緋鞠も緋鞠で今は身体がおかしいんだから自重しなさい」

 

 「そうは言うが若殿はヌルいからのぅ。その分従者の私が((しびあ|・・・))にならねばならん」

 

 「ぬ、ヌルいッスか…」

 

 「うむ。ヌルヌルじゃ」

 

 柱の上から降り立った野井原と、コチラの会話を聞き、ディフェンサーの中で肩を落とす優人。

 優人、そう落ち込むな。その甘さが優人らしいんだからよ。

 俺がディフェンサーを解くと立ち上がった優人は静水久、影月と共に歩み寄ってくる。

 …さっきまでいなかった影月が今いる理由……野井原が強引に結界を破ったからか。

 

 「…どうやら一件落着みたいですね」

 

 「うんうん。大事にならずに済んで良かったよ」

 

 「「「「「「「っ!!?」」」」」」」

 

 俺以外の皆が一斉に反応する。

 この声…

 

 「あ、那美さんに飛白さん」

 

 巫女服を着た2人の女性…退魔師の那美さんと鬼斬り役の飛白さんがいつの間にやら。

 那美さんの傍らには子供形態の久遠もいる。

 何しに来たんだ?

 

 「突如、この辺り一帯に結界が張られたので調査に来たのですよ」

 

 「私と久遠は散歩中だったんだけど、感じた妖気は私達の知らない妖気だったからね。気になるのは当然だよ」

 

 そういう事ッスか。

 てっきり優人を拉致った明夏羽を退治しにきたのかと思った。

 

 ジーーーーー……

 

 「……何?」

 

 明夏羽を見つめるのは久遠。

 どうしたんだ?

 しばらく見つめた後、久遠は笑顔を浮かべて明夏羽に抱き着く。

 

 「明夏羽ーーーーーーーー♪♪♪」

 

 「がはあっ!!?」

 

 ……訂正。抱き着くのではなくロケット頭突きですなアレは。

 久遠に突撃された明夏羽は勢いを殺せずそのまま河原に押し倒され、同時に後頭部をゴンッと打ち付ける。

 ……痛いだろうなぁ。

 

 「「く、久遠!?」」

 

 俺も那美さんも久遠の突然の行動に驚いている。

 てか久遠、明夏羽の事名前で呼んでたよな?まさか知ってる仲なのか?

 

 「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」

 

 明夏羽はたまらず声を上げる。

 身体の負担は相当なものみたいだ。

 

 「久遠落ち着け。とりあえず離れてあげよう、な?」

 

 久遠を明夏羽から引き剥がす。

 それでも悶絶中の明夏羽。

 ……治療魔法使ってあげた方がいいかなぁ?

 

 「久遠、その妖さんと知り合いなの?」

 

 「くぅ♪」

 

 那美さんの問いに嬉しそうに頷く久遠。

 

 「うぅ…痛たたた……」

 

 「明夏羽、久しぶり♪」

 

 「それはコッチの台詞よ。久しぶりね久遠」

 

 明夏羽も久遠の名を呼ぶ。本当に知り合いだったのか。

 

 「てか何で小っちゃくなってんの?何?今はロリ妖がブームなの?」

 

 「くぅ?コレ、久遠の省エネモード」

 

 省エネモード……言い得て妙過ぎる。

 てか本当どういう関係の知り合い?

 

 「昔、久遠が神社壊して全国回ってる時に明夏羽、助けた事があるの」

 

 「あん時はホント助かったよ。腕の立つ退魔師に滅ぼされる寸前だったからね」

 

 『神社滅ぼして』とかサラッと言うかね。

 見なさい。他の皆も頬を引き攣らせてるじゃないか。

 てか久遠の神社襲撃ってアレだよね。『とらハ3』で弥太君が殺された後の出来事だよね。

 

 「それから明夏羽のケガが治るまで久遠と一緒に行動してたの。その時に久遠と明夏羽、友達になった」

 

 成る程ー。

 それからしばらく久遠と明夏羽の語る思い出話に耳を傾け、最終的には優人の頼みと久遠のお願いで今回の明夏羽襲撃には目を瞑る事になった。

 野井原は納得がいかなかったみたいだけど、他ならぬ優人の頼みを断れる訳も無く自分が折れる事になっていた。

 俺?俺は久遠のお願いに2つ返事でOKしたよ。俺にとっちゃ『可愛いは正義』というよりも『久遠そのものが正義』だからな。

 明夏羽も久遠の良さについては理解してるみたいだし。

 久遠のお願いのもと、海鳴市の国守山に新たな妖が住みつく事になったのだが、結局今日は明夏羽のリベンジマッチを受けられなかったなぁ。

 まあ、俺は逃げも隠れもしないし、予定が無ければいつでも相手になるとは言っといた。

 ただ、俺を奴隷にする事だけは諦めて下さい………。

 

 

 

-2ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 新年明けましておめでとうございます。本年も原作介入共々よろしくお願いいたします。

 今年の目標は『Sts本編に入りたい』。この一点に尽きますね。

 ……入れたらいいなぁ。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
19435 17173 15
コメント
頑張ってください。応援してます。@もうオリ主(笑)君は登場しないのでしょうか?結構いいキャラしてるので好きです(かませ犬として)(恋姫夢想)
モチョッピィサイクロンは来ないのかな(わく惑星)
あけましておめでとうございます、今年もできる範囲で頑張ってください、@以前の自分のコメントのことは気にしないでください(ガアット)
明けましておめでとうございます。今年も無理の無い範囲で執筆がんばって下さい。応援してます。(プロフェッサー.Y)
勇紀を奴隷にって、良く言えるなそんな事。久遠が知ったら雷撃が来ると思うぞ、明夏羽? 大人しく沙砂と一緒に勇紀のハーレムに加われば良いのに。(俊)
ロリ巨乳だと!? あとは早く主人公誰かマジバトルやらんかな(ttt)
タグ
魔法少女リリカルなのは 多重クロス ハーレム 原作ブレイク オリ主 転生者 恋愛 おまもりひまり 

カルピスウォーターさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com