快傑ネコシエーター30
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146、妖子はスレンダーな体形に拘る

 

妖子は四方音について変化を学んでいたがあと一歩の所で自在変化が出来なかった。

年齢調整の変化も微妙な感じであった。

妖子は妖艶な大人の女性の姿になることに妖子自身の暗い過去から大きな拒絶反応があり、

どうしても今の容姿より幼くなろうとするものの却って変化の難易度が高いので変化後の

姿が殆ど変化しているのかわからなかった。

スリーサイズが微妙に変化して1年前、2年前位前に戻っているもの全く外見上分らなかった。

四方音も銀から妖子の暗い過去をそれとなく聞いていたが妖子に悟られ無いように細心の

注意をして妖子のモチベーションを維持出来るようにしていた。

美猫は妖子が四方音に自在変化や年齢調整の変化を教わっていることに全く気が付かなかった。

美猫は妖子の変化が何か引っかかっているような印象を感じ、

妖子の暗い過去を振り切る様に思い切って妖子に変化の修業について提案してみた。

「妖子ちゃん、思い切って銀ねぇぐらいの妖艶なお姉さんに変化してみたらどうかな。」

「妖子ちゃんは運動神経がいいんだから剣術や護身術の手ほどきを受けて強くなれば、

男性恐怖症も無くなって嫌な思いもしなくなると思うんだ。」

「美猫さん、私強くなれますか?」

「大丈夫、あたしだってデミバンパイアから逃げるだけで必死だったのが初めは銀ねぇ

に剣術の手ほどきを受け、みやちゃんの仕事を手伝うようになってから実戦を重ねて

修行を積んで何とか足手まといにならない様に必死になっていたら、いつの間にか

アシスタントとして何とか半人前ぐらいは務まる様になったんだよ。」

「今だって、デミバンパイアと1対1じゃ敵わないから逃げるだけだけど、相手の戦力

や弱点を分析してからみやちゃんに任せればみやちゃんも楽に退治できるから怖がらず

冷静に逃げているんだよ。」

妖子は少し考えてから美猫に尋ねた。

「私が美猫さんの様になる事なんて出来るでしょうか、私はとても臆病ですよ。」

「臆病なことは用心深さに繋がるんだ、とても大事なことだと思うよ。」

美猫は妖子の不安を打ち消す様にまず男性恐怖症の克服を勧めた。

妖子の男性恐怖症は性的な目で妖子を見る男性に限られており、そういう目で見ない

雅、大和警部補、鉄、源さん、侯爵などには全く恐怖を感じないことから、

妖子の誰も傷つけない優しい性格を美徳であると思い大事にした上で、せめて性悪な狒々ぐらいは

撃退できれば克服できると美猫は考え、護身術の基本と剣術の基本を妖子に教え始めた。

美猫は妖子の運動能力がずば抜けていることに気付き、さらに難易度の高いものも教えて

みることにした。

銀と四方音はこっそり二人の様子を見ていた。

「妖子姉様は流石に逆髪師輔、逆髪天子夫妻の愛娘だけあって才能は折り紙つきですね。」

「美猫の手に負えるかどうか不安だわ。」

「妖子ちゃん、本来の力は今でも既に私なんかよりも数段上の実力なのにあの過去の

トラウマとお婆ちゃんの霊裳様が本来の力を封印して災いが及ばない様にしていたから

本当の自分の力がどのぐらいなのか分らなくなっているのよね。」

「美猫姉様の実力ももっと評価してもいいと思いますよ、銀姉様。」

「昔の銀ちゃんそっくりですよ。」

妖子の動きが美猫の速さについて行けるようになって銀直伝の太刀筋を妖子に伝授して

剣術の腕前はやがて美猫以上の実力となったがどうも美猫に対して遠慮のようなものを

美猫は妖子から感じていた。

美猫は大和警部補直伝の小野派一刀流免許皆伝の太刀筋に変化させて妖子の反応を見て

みた。

妖子は困惑せず自然に変化についてきた。

美猫はそのまま太刀筋の変化まで妖子に教え、

本人にその気があれば昔の銀位の事が出来るようになっていた。

妖子本人が自信を持てるようになれば自然に実力を発揮できるようになっていった。

後は実戦を積んで勝負度胸を付けるだけであったが、美猫は妖子に考える猶予を与え護身

の範囲を超える実力を身に付けるか否かは本人に決めて貰うことにした。

まだ妖子は自分の実力がよく分かっていなかったが街の与太者程度なら出刃包丁一本で

撃退できる余裕が持てるようになった。

ただ、今の規格外の体形をさらにセクシーダイナマイツにすることには抵抗があり、

やはり、美猫のようなスレンダーな体形を理想にすることを頑なになっていった。

美猫に剣術の稽古をつけて貰ううちに美猫の身のこなしの美しさに魅了されますます美猫

大好きになってしまい美猫の体形が頭から離れなくなってしまった。

さて、四方音に変化の稽古をつけて貰い、年齢調整の変化をするものの方向が逆に幼く

なって11歳位に若返って変化してしまうようになった。

これは年齢調整の変化では返って難易度が高いものであったが本来21歳に変化する

ところなので四方音も困ってしまった。

妖子自身はスレンダーな体形に変化出来て満足なのだがそれでは稽古にならないのである。

「妖子姉様が文字通り妖子ちゃんになってしもうた。」

「四方音様やっぱりこれではだめでしょうか。」

「年齢調整の変化は21歳に変化して気力体力の充実した姿に変化するのが

目的なんじゃ、逆に幼くなってしまったら、不利な状態になってしまうじゃろう。」

四方音は困惑して妖子に告げた。

 

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147、人形師は悩み試行錯誤する

 

雅は夢に出てきた人形たち自身のリクエストに悩みつつ比較的難易度の低かった撫子の

猫又verの構想に取り組んでいた。

普通の人間を猫又化して可愛くデフォルメすることは比較的簡単だったがなんとなく

現実の本人に内緒で作るのに罪悪感があった。

多分本人が見たら大喜びするだろうと美猫は言っていたが実際に作るのは雅であった。

撫子の猫又は三毛猫をイメージして着物猫耳猫尻尾を作ってみた。

問題は年齢設定であった、16歳のまま作るべきか、いっそのこと21歳verで作っても

良いかなと思っていた。

しかし、上品で清楚なイメージを堅持しないと撫子らしさが出ないであろうと構想して

いたら、撫子と母親の一葉が混じったようなものになってしまった。

母娘が似るのは当たり前なのだがよく考えてみると実に姉妹のような母娘なのだ。

雅は作ってはみたものの、この人形は一葉さん猫又verといっても分らない、撫子と一葉の

差が出てこないので撫子人形としての特徴を付けないといけないと悩んでしまった。

美猫が雅の書斎に入って来て机の上の人形を見て、

「撫子ちゃん、一葉さん?」

とやはり区別がつかなかった。

「ネコ、撫子ちゃんと一葉さんって年齢以外に何か区別するための特徴ってあったっけ。」

「何か思い浮かばないかな。」

「えぇっ、そういえばあたしも年齢以外だと服や髪型ぐらいでしか区別できないかもしれない。」

「実はこの人形は撫子ちゃん21歳猫又verなのだけれど、どう見ても一葉さんにも見えて

しまうんで悩んでいるんだ。」

「みやちゃん、そこで21歳verと猫又verを混ぜるのはどうかと思うけど、

21歳verを作るとなるとどうしても避けられない問題として浮上するね。」

「撫子ちゃんって普段年齢以上に落ち着いてかなり年上の様に見えるけど、燥いでいる

時は年齢相応だよね。」

「一葉さんも普段は年齢相応に落ち着いているけど、燥いでる姿はかなり若いというか

幼くみえるしねぇ。」

「いっそのこと名札を付けて撫子ちゃんであることを強調するしかないんじゃないの。」

「あっ、そういえば撫子ちゃんの左目の下に泣き黒子があって、一葉さんは左の口元に

黒子があったっけ。」

「なるほど、ありがとうネコ、それで区別をつけることにしよう。」

とりあえず撫子21歳猫又verは完成した。

 

次は妖子21歳verを作るべく雅はスケッチを描き構想を考えていた。

しかし困った問題があった、妖子本人がセクシーダイナマイツに成長した妖艶な姿を

嫌がっている点であった。

しかし、21歳verを作る上では避けられない問題であった。

更に本人が雅の書斎にやって来て雅の人形を鑑賞して癒されていることであった。

妖艶で大人びたセクシーダイナマイツな妖子人形を見て不快な思いを

させたくは無かったのだ。

出来れば、本人に充分魅力的であることを自覚してもらい自信をつけ成長した自分を

受け入れてもらいたかった。 

美猫のセクシーダイナマイツな21歳verを先に作ってもその姿に魅力を感じなければ

やはり結果は同じであった。

かつて、銀が美猫の巨乳verに変化した時、下品とバッサリだった妖子にその魅力を伝える

事が出来るのか、かなり疑問であった。

そこへ四方音がやって来た。

「雅兄様聞いて下さいな、妖子姉様ったら変化して21歳verになる予定が11歳verに

変化するんですよ、成長した妖子姉様はとても妖艶で充分に魅力的なのにその姿に

成りたがらないのです。」

「何か自信を持たせてあげる方法は無いでしょうかねぇ。」

「雅兄様の妖子姉様21歳verの人形で何とか自信を付けさせて21歳に普通に

年齢調節の変化が出来れば問題ないのですよ。」

「氷刃猫姫の木像だ。」

ふと雅は古宮慧快の彫った木像を思い出した。

「妖子ちゃんの21歳verを普通に作ってからさらしを巻いて胸を隠し、着物の着付けを

きっちりと清楚にした人間verの人形を作ってみましょう。」

「それならば、21歳に変化することに抵抗を感じなくなるでしょう。」

「おぉ、流石雅兄様。」

「その人形の姿を見れば妖子姉様も自分の21歳の姿に嫌悪感がなくなるのう。」

雅は思いついたアイデアで早速妖子21歳verを仕上げてみた。

果たして妖子はどういう感想を言うかどうか興味深々であった。

 

キジコがMr.オクロを連れて雅の書斎にやって来た。

どうやらMr.オクロも自分の縫いぐるみが見てみたいようだった。

雅は、狼少女吹雪とキジコ猫又人形を並べてみせるととても満足そうに眺めていた。

ニャー、ニャー。

どうやら、自分の猫又人形を作って欲しい様だった.

果してその夜の雅の夢枕にMr.オクロの美少年猫又が立ち、人形の作成依頼をしていった。

 

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148、雨宿り時次郎

 

突然の夕立だった、空が突然暗くなりざぁーと強い雨が降って来た。

仕事を終え慧快と別れて帰宅するべく山の麓の塒に向かって帰る途中だった。

「弱ったなぁ、この雨の中をつっ走っていくのには距離があり過ぎるしなぁ。」

とりあえず、大きな樫の木の下で雨宿りをしていた。

ふと、いやな予感がして出来るだけ樫の木から遠くへ離れた。

がらがらがっしゃーんと樫の木に雷が落ち、雨の中炎を上げて燃え上がっていたが

やがて、火は消え燻って焦げ臭い臭いをさせていた。

「危なかったなぁ、いくら俺が雷獣白鼻芯とは言えあんなのを真面に食らったらお陀仏

だからなぁ。」

ずぶ濡れに成りながらもどこか雨宿りできる所に行って一心地付きたかった。

大雨の中廃屋のような所で、とりあえず屋根があり雨が少しでも凌げる所を見付け

中に入って雨宿りをすることにした。

気候は神無月の終わりに近く、晩秋というより初冬の冷たさであった.。

時次郎は中に人の気配を感じなかったので安心して囲炉裏に火をくべ、漸く着物が乾き、

やがて体が暖まって来た。

時次郎は体が温まってくると仕事の疲れもあってか眠くなってきた。

普段用心深い時次郎であったがこの時はなぜか何も考えず眠り込んでしまった。

バタバタバタと何者かが時次郎の一時の宿に駆け込んできた。

「おやっ、先客がいるようだけど火に当らせてくれないかね。」

時次郎は気配で亜人で女であることが分かったのでその申し出を聞くことにした。

「薪ならたくさんあるから火が弱い様ならくべるといいよ。」

「いやー酷い雨だよ、この寒い時に全く堪らないよ。」

「悪いけど、着替えるからこっちを見ないでおくれでないかい。」

「あぁ。」

時次郎の耳に衣擦れの音が聞こえた。

雨脚がさらに強くなり、雨漏りのしているところもあったが屋根があるだけまだましで

このままここで夜を明かした方がいいと思い、時次郎は女が着替え終わるのを待ってから

話し掛けようと思った。

「ところでなんだってお前さんこんなところで雨宿りなんかする羽目になったんだい。」

時次郎はここで初めて女の顔を見た、器量好しで美人の25歳位の若い女だった。

時次郎はこの女の顔を見て不吉な予感がした。

このあたりは若い女の来るようなところではなかった、誰かに追われて迷い込んだか、

人を襲う変化かどっちにしても物騒なことに巻き込まれそうだった。

「そんなことより、酒でも飲んで体の中から暖まらないかい。」

女は徳利の酒をグイグイあおっていた。

時次郎は酒に弱いわけではないが酒を飲まなかった。

酒に溺れて不覚を取ったら恥ずかしいと思い禁酒を守っていた。

「俺は酒はやらないんだ。」

「あんた、つまらない人生を送っているねぇ、酒も女も興味が無いのかい。」

「あぁ、命が惜しいからね、つまらないことで自分の命を捨てたくないんだ。」

女は酒をさらにグイグイとあおり、時次郎に話しかけてきた。

「あんた、こんなところに若い女が一人で逃げ込んでくるなんざ怪しいって思って

いるんじゃないかい。」

「あんたの推測通り人に追われてこの雨の中を逃げていたんだ。」

「大きな落雷に紛れて追っ手を振り切ってここに辿り着いたんだよ。」

「あの山の峠を越えちまえばこっちの物でうまく逃げ切れるって寸法さ。」

時次郎は追っ手について聞くと自分の命も狙われかねないと思い敢えて聞かなかった。

女はさらに酒をグイグイとあおっていたがどうやら気持ちを落ち着けるつもりの様だった。

「蟒蛇か?」

時次郎は女の正体を推測した。

そのうえで見逃すことにした、ここでこれ以上関わり合いにはなりたくなかった。

やがて、女は安心して気が緩んだのか居眠りを始めた。

時次郎は一睡もせず女の様子を観察した。

変化の解ける様子はなかったが、隙を見せず襲われることの無いように見張っていた。

やがて、朝になった、雨はすっかり止んで青空になっていた。

外は、冷え込んでいるようであったが時次郎は後ろから襲われる事の無いように気を付け

ながら、廃屋から立ち去り塒に戻ることにした。

女が後を付けてこない様に注意して道を変えたり方違えをして自分の塒に戻った。

 

竜造寺銀は大蛇の変化を追っていた。

人の生血をたくさん啜った凶悪な奴であった。

昨日見失った落雷で丸焦げになった樫の木のあたりを中心に探していた。

人が立ち入った形跡のある廃屋を見付け用心深く中を窺がった。

火の消えた囲炉裏の前に怪しい女が居眠りをしていた。

安心しきって酒をがぶ飲みしたようで少しの物音では目が覚めない位深く眠っていた。

銀はだまし討ちされないよう用心深く観察した。

昨夜は誰かと一緒に酒でも酌み交わしていたのか誰かほかの人物の形跡が残っていた。

銀は安全を確認すると聖別された銀の細身のナイフを女の額に思い切り突きこんだ。

そして光明真言を唱えると女は何が起こったのか分らない内に痙攣し絶命して塵に

なって崩れていった。

 

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149、荒野吹雪に春が来た

 

塗仏の鉄に新たな悩みが増えていた。

吹雪の態度がどうもおかしい。

狼族の習性からボス狼に忠誠を尽くすのはいいのだが吹雪のそれは尋常ではなかった。

まさか色気づいて自分に気でもあるのではないかと思わせるほどであった。

「大体俺みたいな中年オヤジにあんな若い娘が惚れたりするなんてことがあってたまるか。」

鉄も昔の大和警部補同様危険な職業に就いているから家庭を持たない主義だった。

ただ、今の大和警部補の幸せな家庭生活を見ているとやはり羨ましくなっているのは事実

だった。

大体今までのパターンからすると雅に惚れるのがお約束ではないかと思っていた。

だが吹雪は雅とは仲がいい友達関係で今までの娘達と違う感じであった。

実は鉄は恋愛沙汰に非常に鈍かった。

吹雪の一途なアピールに半分以上気が付いて居なかったのだった。

 

「大和さん、雅さんお願いがあるのです、鉄さんの好みの女性のタイプを教えてください。」

吹雪の必死の頼みに二人は唖然としていた。

「あたしが一生懸命求愛しているのに鉄さん全然気が付かないんです。」

「いや、鉄さんは僕よりも多分ずっとそういうことに鋭いと思ったけど。」

雅は困ったように吹雪に答えた。

「あの黒坊主の奴、格好つけて危険な稼業についているから

家庭なんか持てないとかいっているんじゃないのか。」

大和警部補は自分のことは棚に上げて鉄の美意識を皮肉っぽく言った。

「ところで吹雪ちゃん、鉄のどこがいいんだ多分容姿ではないと思うが。」

「はい、その通りです。」

「優しい性格、冷静沈着な分析能力、部下の管理能力、度胸、腕力の強さ、用心深さ、

堅実さボス狼として理想の資質に惚れました。」

吹雪は鉄について行けば食い逸れないという冷静な目で見ていた。

「吹雪ちゃんはまだ実年齢は16歳だろう、だからこれから時間をかけて21歳ぐらい

までに鉄に自らプロポーズさせるように仕向けたらいいんじゃないか。」

「多分、今の時点では鉄は結婚に全く興味が無いから、吹雪ちゃんが猛烈にアタックし

続ければ、何れ陥落するから焦らずじっくりと攻めたらいいと思うよ。」

「幸い他に手強いライバルもいないことだし。」

大和警部補は鉄が吹雪と家庭を持つようになったら面白いと吹雪を応援した。

この一言が吹雪を勇気づけ今に至るのだった。

最近鉄は吹雪と二人きりになる機会が多く、やたらと意識させていた。

実は吹雪がそういう風に仕向けていたのだった。

そうとは知らぬというか気が付かない鉄は変に吹雪が気になっていた。

「鉄さん。」

「はぁあいぃ。」

鉄は突然の吹雪の呼びかけに驚いて声が裏返った。

「鉄さんは危険な稼業についているから家庭を持たないって聞いたんだけど本当。」

吹雪は鉄の目をじっとうるうるした目で見つめていった。

「いや、そうなんだけど、そうだったんだけど、最近そうでもなくなったみたいで。」

鉄はかなりうろたえながら出来るだけ吹雪に誠実に答えていた。

「じゃ、家庭を持つ気があるんだ。」

吹雪は嬉しげに言った。

「じゃ、どんなタイプの女性が好みなの。」

「芯の強い女かな。」

「美猫さんみたいなタイプ。」

「冗談じゃないよ、いつも見ているだろ、あれに飛び蹴りを食らわされて

虐待されている俺の姿を。」

「仕事のパートナーとしては最高の人材だがあれと家庭を持つなんて度胸は無いぜ。」

鉄は即座に否定した。

「じゃ、あたしは。」

吹雪はここでド直球を投げ込んできた。

「まあ、いいんじゃないかな。」

鉄は顔を赤らめながら出来るだけそっけない様子で答えた。

鉄にとって精一杯の誠意のある回答であった。

吹雪は狼少女に変化して鉄に抱き着いてきた。

「わぁっ、一体何を。」

「美猫さんからこうすれば男の人が喜ぶって教えられたんだ。」

「かなり、間違って…はいないけど、人に見られたら恥ずかしいぞ。」

「わかった、俺の負けだ、吹雪ちゃん5年後を目標に俺の嫁に来てくれ。」

「今の吹雪ちゃんと直ぐに家庭を持ったらロリコン親父とかいろいろと言われかねない。」

「それまでは、なるべく今まで通りに内緒にして欲しいんだ、やっぱり恥ずかしいから。」

「少しは花嫁修業もして欲しい、可能な範囲でいいから。」

結局鉄は吹雪にとても甘かった、相思相愛だったようだ。

こうして吹雪は鉄を陥落させ、5年後の鉄との幸せな家庭を夢見るようになった。

鉄も吹雪をなるべく危険な任務につけない様に情報屋の内部の作戦会議で活躍するよう

にして吹雪と情報屋事務所を盛り立てていた。

 

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150、平坂四方音リトルワールドを席巻する

 

「雅さん、雅さん起きてください。」

雅はキジコ猫又人形に起こされた。

「雅さんありがとうございます、おかげでこの世界で初の男の子になりました。」

Mr.オクロの美少年猫又人形が雅に深々とお辞儀をした。

「おっ、いたいたMr.オクロ殿。」

平坂四方音がやって来た。

「ついにこの世界に美少年爆誕だな。」

「よかったのう、キジコ殿。」

「知りません、四方音様。」

キジコ猫又人形は顔を赤らめてふくれっ面で嬉しそうに答えた。

「女心は複雑よのう。」

「さて、雅兄様この世界の創造主として現状を把握しておいた方がいいのではないか。」

「普段は雅兄様がいない状態で結構みんなやりたい放題やっているからのう。」

と言っている傍から美猫猫又人形がさつき人形に理不尽な暴力をふるっていた。

「こらっ、ネコなにをしているんだ、さつきちゃんは既に気を失って居るだろ。」

「だって、みやちゃんさつきの癖に生意気なんだもん。」

「そんな理由で半殺しにしたら可哀想だろう、仮にも友達なんだから。」

美猫猫又人形は不満そうな顔をしつつ、さつき人形への折檻を止めた。

雅は美猫猫又人形を呼んで思い切り抱きしめ、優しく髪を撫でて話し掛けた。

「ネコ,こんな綺麗な着物を着せているのに乱暴なことをしたらよくないよ。」

「もう少し、おしとやかに振舞って御覧。」

美猫猫又人形は満面の笑顔を浮かべて喉をゴロゴロ鳴らし、雅の忠告を聞いていた。

「うん、わかったもう少しおしとやかに振舞うよ。」

そこへ銀猫又人形17歳ver&25歳verがやって来た。

「美猫ばかり狡いです、私も寵愛して下さい。」

雅はいきなり困ってしまった、調子に乗って美猫を可愛がり過ぎたので

銀達が焼餅を焼いたようだった。

「でどっちが先に寵愛してもらうつもりかな。」

四方音が助け船を出した。

「当然若い私からです。」

銀猫又人形17歳verが言った。

「いえ、女としての完成度の高い私からです。」

銀猫又人形25歳verが言った

銀猫又人形17歳ver&25歳verが順番を争って同士討ちを始めた。

「多分、同一人物同士決着はつくまい、放っておこうぞ。」

四方音はケラケラと笑いながら、雅を連れてその場を離れた。

「雅さ〜ん。」

と撫子21歳猫又ver人形が手を振って駆け寄って来た。

「雅さんありがとうございます。」

「私の猫又verをつくって下さって、それもアダルトな21歳verなんて本当に嬉しいです。」

撫子21歳猫又ver人形は弾けるような笑顔を浮かべて喜んでいた。

「そこで、お願いがあります、あの逞しいお父さんの猫又(半人半猫ver)を是非是非、

よろしくお願いします。」

撫子21歳猫又ver人形はこの世界の破綻を招くような恐ろしいことを相変わらず希望していた。

「まあ、そのうち皆の要望が多い様じゃから順番が来たら多分雅兄様も頑張ってくれるじゃろう。」

四方音は雅が誤魔化し切れないだろうと思って気をきかせてうまく誤魔化した。

「雅さん。」

妖子人形21歳verの鋭い声が響いた。

「これが、私の21歳verなのですか、銀さんの25歳verよりセクシーダイナマイツな

体じゃないですか、さらしを巻いて胸を隠したり着物の着付けをきちっとして清楚に

見せているようですけど中身がこれではあんまりですよ。」

妖子人形21歳verは不満そうであった。

やはりスレンダーな体形の方がいい様なのだけどこればかりはしょうがないのであった。

雅は言い訳に困っていた、四方音の方を見ると何か考えがある様なので任せることにした。

「妖子姉様、そのセクシーダイナマイツな体で困ることがあるのですか。」

「えっ、そ、それは、・・・。」

「美猫姉様から護身術、剣術を習い不心得な与太者位包丁一本で捌き切る事が出来るほど

強くなったのだから別に困ることはないと思いますよ。」

「雅兄様も妖子姉様が自信を持つようにと思って作られたのです。」

「妖子ちゃんが銀さんみたいに綺麗で魅力的な女性になると思って作ったんだ。」

妖子人形21歳verは俯き加減で雅に照れながら答えた。

「私、銀さんみたいになれるのでしょうか。」

「大丈夫、きっとなれると思うよ。」

その時後ろから不満そうに美猫猫又人形が問いかけてきた。

「みやちゃん、あたしの21歳verの人間体人形はいつ作ってくれるの、ねぇ、ねぇ。」

「あの〜、できれば私の21歳verもお願いします。」

いつの間にかさつき人形が遠慮気味に頼んできた。

「こら、さつきのくせに生意気だ。」

美猫猫又人形はさつき人形に思い切り飛び膝蹴りを放った。

 

 

 

説明
146、妖子はスレンダーな体形に拘る
147、人形師は悩み試行錯誤する
148、雨宿り時次郎
149、荒野吹雪に春が来た
150、平坂四方音リトルワールドを席巻する
あらすじ世界観は快傑ネコシエーター参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定は快傑ネコシエーター2参照
魔力の強弱は快傑ネコシエーター3参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定2は快傑ネコシエーター4参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定3は快傑ネコシエーター5参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定4は快傑ネコシエーター6参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定5は快傑ネコシエーター8参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定6は快傑ネコシエーター9参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定7は快傑ネコシエーター10参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定8は快傑ネコシエーター11参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定9は快傑ネコシエーター26参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定10は快傑ネコシエーター27参照
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