真・恋姫†無双 刀蜀・三国統一伝 第九節:漢王朝の守護者。そして、一刀に潜む者。
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まえがき コメントありがとうございます。はてさて、四獣の彩鈴ちゃんたちも加わり、一層賑やかになった一刀さんのハーレム事情。一刀さんは小さい女の子にも優しいだけで、ロリコンではないのですよ・・・はい。ロリコン属性はあるかもしれませんが(笑)お姉さんにはたじたじなのです。しっかし・・・こんなに増えると一刀の隣で寝られる女の子は一日二人ずつでローテーションを組んでも・・・月一くらいか?毎回じゃんけんなんてしてたら日が暮れそうです。いや、暮れますね。補足程度にですが、うちの四獣ちゃんたちはマスコット的存在ですので、あまり戦争には加担しません。・・・あまり!一度加わったら・・・以前の五胡戦の様になってしまいそうですね。それではごゆっくりしていってください。

 

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 俺、北郷一刀が聖園(俺命名)に着いて三日ぐらい経った。ぐらいというのは・・・ねぇ。だって日が落ちないんだもん!俺でなくとも時間の感覚は狂うってものだ。で、時間の把握については白琥ちゃんたちがお昼寝するタイミングでどうにか補っている。いや〜、気持ちよさそうに眠ってるからさ、俺もついつい昼寝しちゃうんだよね。皆可愛い寝顔だから寝るのがもったいない気もするんだけどさ。

 

「一刀! こっちこっち〜!!」

「白琥ちゃん・・・ちょっ、ちょっと休憩させて・・・。」

「また〜〜〜? さっきも休憩したのにぃ!」

「さっきって・・・二刻前だよね。 はぁ、はぁ・・・ふぅ。」

 

 二日前、静空さんが母さんたちの下へと戻ってから、白琥ちゃんと雛羽ちゃんが暇ということで俺の提案した鬼ごっこ。始めたのは良いんだけど、彩鈴ちゃんはかくれんぼ感覚で・・・気配がないからまず鬼にならない。白琥ちゃんと雛羽ちゃんは逃げ足がとてつもなく早い。というか、白琥ちゃんが俺の手を引いて逃げるから彼女の足の速さに合わせなければならないわけで。とまぁ、それは別に良いんだ。然したる問題ではない。肝心の鬼である茶々ちゃんはと言うと・・・

 

「・・・。」

 

 既に物言わぬ屍である。鬼になってから約五刻。もともと比較的体力の少ない茶々ちゃんに相手が俺、彩鈴ちゃん、白琥ちゃんに雛羽ちゃん。それに鈴・・・無理な話だよなぁ。たまに俺が変わろうとして逃げるペースを緩めるんだけど、それを察してか俺のとこに来なくなるんだ。まぁ、こっちに近づいてこようものなら白琥ちゃんが全力で逃げるから、あっという間に距離が離れることになる。

 

「茶々ちゃん、大丈夫?」

「(ふるふる)」

 

 ひょっこり出てきた彩鈴ちゃんが茶々ちゃんに近づいても、返事をせず首を横に振るだけ。言葉を発せないあたり、物言わぬ屍同然である。流石の彩鈴ちゃんもこの有様には苦笑いしか浮かんでこないみたい。

 

「まったく・・・茶々ちゃんはだらしないわねぇ。 もうちょっと鍛えたほうがいいわよ?」

「うぅ・・・雛羽ちゃんたちと一緒にしないでよぉ〜〜〜。」

「だが、雛羽の言うことも間違ってはいない。 いざという時に逃げられるくらいの体力がなくてはな。」

「さ、流石に五刻の間ずっと鬼は茶々ちゃんでなくともきつい気がするんだけど・・・。」

「せめて漆程度はないとな。」

「・・・漆ちゃんは元気の塊みたいなのに、鈴様の程度が漆ちゃんなら私なんて・・・。」

 

 がっくしと肩を落とす茶々ちゃん。体力が尽きるは体力面で駄目出しされるはで・・・踏んだり蹴ったりだな。

 

「鈴も全力で逃げなくてもいいのに。」

「? 一割も体力は消費してないぞ?」

「その無尽蔵な体力を少しは茶々ちゃんに分けてあげたら?」

「ふむ、直々に稽古をつけてやらんでもないが・・・おそらく、一刻と保たんだろうな。 茶々の場合、我より零あたりが最適だろうよ。」 

「零ちゃんですかぁ。 鍛錬より、考えてることが読めなくて苦労しそうですね〜。」

「そっかなぁ? 私は結構分かりやすいと思うんだけど。」

「白琥ちゃんは昔から零ちゃんと特に仲良かったもんね。」

「うん♪ 同じ西方守護者だからか分かんないけど、何かと気が合うんだよね〜。」

 

 零ちゃんは・・・う〜ん、俺の場合は近くに恋がいたからなぁ。口数が少なくても視線と若干の表情の変化でなんとなく分かると思うんだけどね。

 

「ということは、雛羽ちゃんは燼と仲良いの?」

「良くはしてもらってるわね。 ずっと子供扱いされるのはちょっと気にしてるところだけど・・・。」

「燼の気持ちも分かるよ。 雛羽ちゃんは可愛いからなぁ。」

「ばっ!!!?? ////// ふ、ふん!! おだてても何も出ないんだから! ///」

 

 そっぽ向いても頬が真っ赤になってるあたりが可愛いんだってば・・・。ついついかまってあげたくなるもんなぁ。隣にいる彩鈴ちゃんもくすくすと笑っている。反対側にいる白琥ちゃんはやれやれと肩を竦めている。

 

「雛羽ちゃんも素直になればいいのに〜。 お兄さん、嬉しいです〜♪って。」

「べ、別に嬉しくなんて・・・ない、もん。(簡単に素直になれたら苦労しないわよ・・・はぁ。)」

「お兄さん、こんな風に素直になれない雛羽ちゃんだけど、嫌いにならないであげてね。」

「嫌いになるわけないって。 まぁ、雛羽ちゃんの本音を聴ける日を気長に待つよ。」

「一刀・・・。」

「お兄さんも優しいねー。 けど、雛羽ちゃんの恥ずかしがり屋さんは筋金入りだよ? 大丈夫?」

「問題ないな。 こいつのお人好しの方が何倍も筋金入りだ。 もはや鋼鉄入りと言っても過言ではない。」

「そんな大袈裟な・・・。」

「本当にそう言えるか?」

「・・・なんか素直に頷けないなぁ。」

「とまぁ、一刀のお人好しな部分はまたの機会にするとして。」

 

ほっといてください。

 そんなわけにはいかんだろう。

 私も一刀さんの色んなこと知りたいです!

 ・・・お好きにどうぞ。

 やた♪

 

「稽古の話まで遡るが、我としてはお前に稽古をつけてやりたい。だが、無意識に手加減してしまいそうだからやらん。」

「機会があったらお願いするよ。」

「うむ。」

 

そんな感じで、まったりと過ごしながら時間が経っていった。・・・茶々ちゃんはまだ野原に伸びているままだ。

 

・・・

 

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「ようやく寝付いたか。」

 

 枝乃の茶を飲んだ後、一刀も含め白琥たちは木陰に入り昼寝し始めた。彩鈴だけは我の隣で枝乃の林檎を味わっている。これで三つ目だが・・・気にしまい。茶々が半分寝ているような状態で茶を飲んでいたからな。仕方あるまい。

 

「まったく・・・休養も兼ねて戦線から外させたと言うに、全力で遊ぶやつがどこにいつか。」

「しかし黄竜様、言葉と表情が一致していませんよ。」

「ふむ・・・そうか。」

 

 白琥と雛羽に膝を貸している一刀の頭が我の肩に乗っかっている。

 

「御使い様と言えど、寝顔は普通の青年なのですな。」

「我らと違い、こいつはこの世に生を受け、まだ十七年しか経たぬのだ。 生きた時間だけで言えば、雛羽や漆たちよりもずっと短い。 たまに、それ以上に幼く見えるがな。 だが・・・こいつの価値観は特殊だ。 大を救う為に小を犠牲にするのではなく、大切な物を守る為に自分の命すら天秤に掛けかねん。・・・我らが見ていてやらねば、次はどんな無茶をしだすか・・・分かったものではない。」

「ですが、どんなに無茶無謀でも貴女は手を貸すのでしょう?」

「当然だ。」

 

 一刀の頭を軽く撫でながらふと考える。こいつの肩にはどれだけの「もの」が乗っかっているのかと。我であれば四竜の漆や零たち、四獣の雛羽や白琥たち。それに彩鈴に一刀と言ったところか。

 

「誰にでも優しく出来てしまうというのも・・・考えものだな。 市井の子供じゃあるまいし。 女に対して警戒心がなさすぎるとも言えるか。」

「あ、あはは・・・。 ですけど、私は一刀さんのお優しい心遣いに救われました。 私の抱いていた恐怖心もいつの間にか氷解していましたし・・・。」

「我が言うのも何だが、気がついたら一刀から離れられなくなるぞ?」

「大丈夫ですよ。 離れるつもりはありませんので。」

 

ふふっと笑みを浮かべる彩鈴。我らですら説得に匙を投げた彩鈴の人間に対する恐怖心・・・一刀にかかればものの数刻で解決するとはな。一刀よ、私はお前が思っている以上に、お前を頼りにしているのだぞ。我ら四竜、四獣以上の者たちは一人で生きていかねばならん。一人で何事でも解決できるよう・・・少し前まではそれが当たり前だと考えていた。今では・・・お前なしの日常など考えられん。隣にお前がいることが当たり前になってしまった。私たちの依代としてしまったお前への負担を増やしてしまったのかもしれぬが、そこは私が助力するから・・・見逃してくれぬか?

 

「・・・ふふっ、負担を増やしておいて頼って欲しいか。 我ながら、浅ましいものだな。」

「黄竜様が恋する乙女ですか・・・時が経つのは早いものですね。 私がこちらに来た頃は先代様の代でしたか。」

「そうだな。 あの頃はまだ彩鈴たちも幼かったか・・・。 今と比べてお転婆で、白琥と茶々は今とあまり変わらんが。」

「雛羽ちゃんは昔と比べて恥ずかしがり屋さんになりましたね。 隠し事は相変わらず苦手みたいですけど。」

 

 あははと苦笑いする彩鈴。確かに雛羽は自分の内面を隠すようになったな。まぁ、ただの照れ屋だったのだが、隠しきれないところが愛らしいところだ。

 

「麒麟様は昔と比べてだいぶ落ち着きましたね。 幼い頃は誰にでも懐いて・・・御使い様に興味を持たれたのはその頃の名残でしょうか。」

「一刀は・・・特別だもの。 興味があったのは確かだけど・・・//」

「青春ですねぇ。 盤古様ではないですが、孫を嫁に出す祖父の気分とはこのようなものなのでしょうね。」

「そんな・・・お嫁さんなんて/// 枝乃さんは気が早すぎるわ//」

「そうか? 我は出会って二ヶ月ほどで求婚したがな。 我の気が早すぎるのか?」

「それは早すぎるんじゃ・・・そこは恋仲になって、お互いのことをよく知ってからですね。」

「?? 恋仲も何も、三国同盟が締結したら一刀から改めて求婚すると言ってくれたからな。 おそらく、一刀の心中では彩鈴たちもそれに含まれているのだろう。」

「えぇ〜〜!?」

「そんなに驚くことか? 一刀の守護者になり神門を繋げた時点で、求婚まで兼ねたものなのだと我は考えていたのだがな。 あそこまでやったということは、一生をこいつと添い遂げるのではないか?」

「・・・はぅ〜〜〜//」

 

気付いていなかったんだな。お前の隣で寝ている男も大概の鈍感だから深くは考えていないだろうが。そう言うどこか抜けていると言う点でも彩鈴と一刀は気が合うのだろう。

 

「おや、あれは・・・。」

「よりにもよって・・・面倒な者がやってきたな。」

 

・・・木陰で涼んでいる我らの下に、見覚えのある影が一つ降りてきた。

 

「女狐、何用だ?」

「別に貴女に用事があって来たのではないわ。 そこの坊やに用があるの。」

「九尾様。 こちらまで訪ねられるのは珍しいですね。」

「珍しいお客さんがいるのだもの。 それはここまで足を運ぶわよ。」

「枢(クルル)さん、お客さんとは一刀さんのことですか?」

「それ以外に誰かいるかしら?」

「それもそうですけど・・・枢さんが王朝の皇帝様以外で興味を持たれるとは思わなかったので。」

「その皇帝様絡みだから興味を持ったのよ。」

「え?」

「そこでのんびりお昼寝している彼は漢王朝の皇帝を預かっている人なの。」

「ふむ、そうだな。 預かっているというよりも、匿っているに近いと思うが。 で、あの娘らとお前に何の関係がある?」

「さっきも言ったけど、私は漢王朝の守護者よ。 男にかまけてボケてしまったかしら?」

「ほう、喧嘩を売っているのなら買うぞ?」

「鈴さんも枢さんも落ち着いてください。 一刀さんたちも今お休み中ですし・・・。」

「それもそうだな。 この女とやり争って一刀の休息を妨げるのは、我としても避けたいところだ。」

「相当入れ込んでいるのね。 昔の貴女からは考えられないわ。」

 

 ふむ・・・こいつにまでそう思われるあたり、あまり実感が沸かんが相当変わったのだろうな。

 

「それはおいといて、あなたたちは朝廷に潜んでいる陰のことは知っているかしら?」

「お前の言っている陰と同一の者かまでは分からぬが、左慈と于吉とかいう術師共が何やら陰謀を企んでいるということは把握している。」

「そう。 そこまで噂が巷まで流れているのね。 まぁそこはいいわ。 で、王朝の皇帝を殺めた陰の手がその娘たちに伸びる前に、その芽を摘んでしまおうと思っていた矢先・・・妹は自らの意思で城を離れ、姉は何者かに連れ去られた。」

「・・・。」

 

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貂蝉と卑弥呼が百合を拉致してきた時のことだな。 しかし、妙なところで鼻が効くこいつのことだ。 居場所を既に突き止めてられていても何ら不思議はない。 ・・・というよりも、突き止めていなければ現にこうして我らの前に姿を見せてはおらぬか。

 

「で、私としては皇帝を立て続けに失うわけにはいかないから。 彼女らの微量な気を追って様子を見に行けば・・・この子の下へと行き着いた。」

 

 枢の視線が一刀へと向けられる。まるで、摩訶不思議な物を見るかのような・・・。

 

「悪しき者であれば秘密裏にでも私の手で消そうと考えていたんだけど・・・彼女たちの笑顔を見たらそんな考えも霧散したわ。 朝廷の劉家・・・皇帝家は立場上、息の詰まる環境に常に身を置いている様なもの。 陰謀が渦巻き、政では操り人形扱い、邪魔だと思われれば命を狙われる。 そこに人間の尊厳なんてものは存在しない。 そんな中で生活していれば、笑みが絶えることだって頷ける。 そんな彼女たちを彼は救ってくれた。 迂闊に出しゃばれない私の代わりに。」

「確かに、お前が出しゃばるときは皇帝自身が悪政を敷くときだからな。 周りの者に屑が混ざっているのは今も昔も大差ない。」

「そうね。 けど、私が気にしたのは何も朝廷の劉家に限ったことではないのよ。 四神である貴女が何故人里に降りているのか・・・。 しかも男と一緒にいるなんて。」

「我が一刀の気の呼び寄せに応じたのだ。 仲間を救いたいという純粋なまでの祈り。 その祈りには一点の曇りもなかった・・・ただ仲間を救いたい。 大切な者を失いたくないと言ったほうが一刀らしいか。 まぁ、我が興味本位で近づいたと言っても過言ではないがな。」

 

 今思えば、我が近寄らずとも我ら・・・四竜の誰かが呼応していただろう。一刀の心戸の内を知った今思えば何ら不思議ではない。

 

「ふぅ〜ん・・・まぁ、あなたや四竜、四獣の子たちが興味を持つのも分からなくはないわ。 この私もその一人だもの。 この子・・・劉家の気を持ち合わせている。 しかもとても純度が高い。 あなた、何か知らないかしら?」

「そのことか。 一刀の親は光武帝だからではないか?」

「光武帝・・・懐かしい名ね。 ・・・は? 光武帝の息子?」

「こいつの母親が自分で言っていたものだ。 偽りではないだろうて。」

「けど・・・。」

 

 事情を知らぬこやつからしてみれば、信じられぬ話であることは我でも理解できる。だが、真実であるからな。このことについて我の口から話して良いものか・・・。

 

「ふぉっふぉっふぉ。 納得のいかぬといった顔じゃな、九尾よ。」

「老師・・・。」

「お主の言いたいことは分かる。 じゃが、黄竜の言こそが事実じゃ。 それは儂が保証しよう。」

「・・・老師のお言葉なら信じるしかなさそうね。」

「この者は数奇な運命に身を置いておる。 我らとこうして邂逅していることだけでも分かることじゃが、親が光武帝にして祖母が項羽・・・武帝と武神に愛された者。 それともう一人いるようじゃな。」

「・・・? もう一人?」

「おい、盤爺! それは・・・」

「なんじゃ? もしや隠しておったのか?」

「一刀はあの存在に気付いておらぬ。 一刀の心門で彼女に出会い、本人から彼女の存在を口外せぬよう口止めされていたのだが・・・。」

「そうか。 それは悪いことをしたのぉ。 悪しき気の持ち主ではなかったのでな。 北郷殿の中に潜んでいる者なら周知のものと思っておったわい。」

「まったく・・・少し待ってろ。」

 

 ・・・

 

・・・

 

「一刀との事情は話したはずだが?」

「我としては問題ないと思うぞ。」

 

 一刀の心門の最奥・・・そこからこいつは動こうとしない。

 

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「一刀が特別な存在であることは黄竜ともあろう者なら分かっているだろう?」

「当然。 一刀は彩鈴と同じ“仁”と“聖”と“誠”で構成された真域の持ち主だ。 人間とは“正”と“負”の感情が真域を渦巻くもの。 一刀にはその概念が通用しない。」

「そう・・・この子には“負”の感情の捌け口がない。 だから私が“負”の捌け口を担っている。 私が表に出ればどんな影響が出るか分かったものではない。」

 

 負の捌け口・・・か。彼女が己で納得しているのならそれで問題ないのだろうが・・・。

 

「二人とも、何辛気臭い顔してるのよ。 一刀の心門であまり暗い話をしないでくれる?」

 

 門の入口から誰か入ってきたかと思えば・・・、

 

「やはり貴様か、美桜。」

「あら、私がここにいる事に驚かないのね。 期待して損したわ。」

「事前にそれとなく話を聞いていたからな。 それに・・・お前の中には心門が存在しない。 それだけでもここに入って来られるのは頷けることだ。」

「あら、そこまで分かっているのね。 半分は当たりよ。」

「・・・どういう事だ?」

「あなたは私の神戸を感じ取っているから・・・私が人間ではないと、その答えに行き着いた。 そこまでは当たり。 けどね・・・心門が存在しないという答えはハズレ。 だから半分よ。」

「何を世迷言を・・・」

「向こうに答えがあるから行ってみるといいわ。 もっとも、あなたは既に会っていることがあるとは思うけど。」

 

 美桜の指差す先・・・一刀の真域の最奥はここだと思っていたが、まだ先があったか。

 

「黄竜ともあろう者がこの先に潜んでいる者の気配に気付かぬとは。」

「仕方ないわ。 私と彼女とで内側と外側から結界を張っているもの。 万が一侵入者が入ってきた時の保険よ。 というよりも、一刀に気付かれないようにしていたのだけど・・・麒麟ちゃんが一刀にここの事を教えてしまったから、聞かれたら本人に明かすわ。」

 

 一刀の真域にこいつ・・・ヴリトラの気配には気付いてはいたが、まさかもう一人いたとはな。気配を殺していたか、もしくは・・・

 

「さぁ、開けてみればいいわ。」

 

 ヴリトラのいた場所からさらに先へと足を向ければぽつんと佇む小さな扉。中央に桜の紋様が刻まれている。

 

「ふむ・・・扉自体が結界となっているのだな。」

「この先の気は外に漏れさせるわけにはいかないのよ。 だから私とヴリトラと彼女の三人で管理しているわけ。 まぁ、一刀がここの開放を望んでしまえば私たちではどうしようもないけど。」

 

 ・・・さて、何が出てくるか。ほんの少しの興味を抱きながら、我は扉へと手を掛けた。

 

・・・

 

・・・・・・

 

「・・・。」

「ようやく観念したか。」

「・・・ちっ。」

 

 美桜のしてやったり顔がやけに癪に触る・・・私でなくともあいつらでどうにか出来るなら早く言えと言うものだ。

 

「鈴さん、お帰りなさい。 あの、そちらの方は・・・」

「あぁ、こいつはヴリトラ。 一刀の真域で心門側を守っていた者だ。」

「・・・? 心門側?」

「・・・。」

 

 しかし・・・一刀とこうして正面から顔を合わせるのも十二年振りか。

 

「・・・大きくなったものだな。」

 

 今だ夢の中にいる一刀へと視線を向ける。寝顔は私の記憶にある一刀の面影が残っているな。懐かしい記憶に浸っていると、閉じられていた双眼がゆっくりと開かれていく。

 

「・・・? ・・おねえちゃん?」

「っっ・・・」

 

 寝起きの焦点の定まっていない瞳で・・・彼の口から紡がれた言葉に、はっと息を飲んだ。

 

・・・忘れられているものだとばかり思っていた。それでも仕方ないと。私が覚えていればそれで良い・・・いや、忘れられるものか。一刀に居場所を与えられたと言っても過言ではない。

 

「・・・この子の中にはあとどのくらいの”者”が潜んでいるのかしら? まさか西国の竜が潜んでいるとは思わなかったのだけど。」

「ふぉっふぉっふぉ。 儂が感じ取った気はこの者の気のみ。 もう出てこぬじゃろ。」

「あらあら、随分と顔を見ないうちに耄碌したわねぇ♪ 」

「項羽・・・お主じゃったか。」

「うちの一刀が世話になってるみたいじゃない。 一応、礼を言っておくわ。 それにしても・・・あなたが私の気すら感じ取れないなんて、衰えたものねぇ。」

「つい先ほどまで完全なまでに気を殺しておって・・・よう言うわい。」

「・・・おい、そこのおちびちゃんがお前の姿を見てぽかーんとしているぞ。 説明してやらなくていいのか?」

「あ、あらあら、ごめんなさいね。 決して悪い人ではないのよ?」

「いえ、疑ってはいないのですが、突然のことに驚いてしまって・・・。」

「私は美桜。 そこで寝ぼけてる一刀のお婆ちゃんよ。」

「あ、えぇと・・・私は麒麟の彩鈴です。 一刀さんのお婆様・・・ですよね?」

「そうよ?」

「お婆様やお爺様は盤古さんのような皺皺の方がほとんどだと思っていたのですが、私の認識が間違っていたのですね。 お婆様がお綺麗だったので。」

「皺皺・・・。」

「ありがと♪ 彩鈴ちゃんも可愛いわよ。」

 

 しょぼくれた爺さんはどうでもいいとして、私としての一番の問題は目の前の一刀だ。

出来ればすぐにでも抱きしめたいが・・・触れたら何か壊してしまいそうという恐怖感が私を躊躇させる。

 

「おねえちゃん・・・杏おねえちゃんだよね? えっと、久し振り・・・で、いいのかな? 」

「っ・・・!! やはり、覚えていてくれたのか・・・。」

「う、うん。 お姉ちゃんの黒髪に黒と紅の戦装束、小さな頃に一度会った限りだったけど・・・忘れたことはなかったよ。 んぐっ。」

 

 私の心がここまで高鳴ったのは何時振りだろうか。誰かに自身を覚えていてもらえて嬉しいと・・・名前を呼ばれて幸福感にすら包まれたように思えるのは初めてかもしれない。

 

「一刀・・・立派に育ったな。 見違えたぞ。」

「杏お姉ちゃんは相変わらずの美人さんだね。 優しい表情なんかはちっとも変わってない。」

「おだてても何も出んぞ。」

「お二人さん、感動の再会のとこに水を差すようで悪いんだけど、そろそろ私も話に入れてもらえるかしら?」

「もう少し待て。」

 

 皆の視線を受けながらも、しばらくは一刀への抱擁を止められなかった。

 

「ところで、儂が察知出来ぬ気がもう一つあるようじゃが・・・。」

「いずれひょっこり顔を出すわよ。」

 

・・・

 

「くすくすっ、やはり一刀さんの周りは賑やかな方々がたくさんいますね〜♪」

 

 

 一刀の真域の最奥、神戸から外の光景を覗かれていることなど、美桜以外誰も知る由もなかった。

 

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あとがき あけましておめでとうございます!! 年が明けてもう半月経ったんですねぇ・・・早すぎぃ!! 更新が随分ずれ込んでいますが、どうにか生きてます。

 今回からの参戦は九尾の枢(くるる)さんとヴリトラの杏(アン)お姉ちゃんですね! 九尾の枢さんは伊達眼鏡がよく似合う軍師ポジ。杏お姉ちゃんは槍使いですね。 ・・・一刀の真域が魔窟になっていく・・・。四獣に四神に項羽・・・四次元ポk(自重)

それでは次回:赤壁戦の顛末、お転婆戦女神顕現 でお会いしましょう。

 

説明
何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。
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コメント
もはや一刀がいなければ、恋姫の世界とは思えない程の面々ですな。とりあえず赤壁の結末に期待。(mokiti1976-2010)
一刀これはもう負ける要素がないですな〜w邪神とかでてこない限りw(nao)
陣営がさらにキチガイにwww今回の敵はすごく強大なんですか?(Fols)
・・・よし、3女神も追加で行こうか。ロキとかトールとか女体化でカモン!(ユウヤ)
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真・恋姫†無双 一刀 美桜 彩鈴  

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