英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜ケルディック・礼拝堂〜

 

「ふう、何とか無事に運び込めたな。」

礼拝堂に設置したピアノを見たリィンは安堵の溜息を吐いた。

「これが双龍橋にあったというピアノなんですね。ふふ、とても立派と言うか。」

「うん、地下に放置されていた割にかなりしっかりしているようだ。」

「もしかして誰かが手入れをしていたのかしら……?」

ロジーヌの言葉にラウラは静かな表情で頷き、ゲルドは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「あはは、これなら問題なくいい音を出してくれそうだね。やっぱり”リーヴェルト社”製はさすがだよ。」

「リーヴェルト社……」

エリオットが呟いた言葉を聞いたリィンは複雑そうな表情をし

「帝国に昔からある有名な楽器メーカーよね。亡くなった父様が、そのメーカーのオルゴールをいくつか持っていたわ。」

アリサは懐かしそうな表情をした。

 

「うん、オルゴールもかなり人気があるんだよね。僕の使っているバイオリンもリーヴェルト社製なんだよ。」

「貴族の間でも人気が高いと聞いたことがあるが。」

「有名メーカー……そういうことか。音楽に詳しくない私も何となく聞き覚えのある名前だと思ったが。」

「あれ……?クレアさんも確か同じ苗字じゃなかった……?」

ユーシスの話を聞いたラウラが納得している中、ある事に気付いたゲルドは不思議そうな表情で首を傾げ

「あ…………」

「クレア・リーヴェルト―――そんなフルネームだったわね。」

「た、確かにそうでしたね……」

ゲルドの指摘を聞いたエリオットは呆け、サラ教官は静かに呟き、エマは戸惑いの表情をした。

 

「ふむ、もしや何か関係があるのか……?」

「(……クレア大尉の過去はさすがに話す訳にはいかないな……)―――それよりもまだ演奏会の準備は残っている……協力してすませてしまおう。」

「あはは、それもそうだね。」

「うん、急いで準備を進めるとしよう。」

ラウラが考え込んでいると目を伏せて黙り込んでいたリィンが仲間達を促した。その後気を取り直したリィン達は準備を再開し、しばらくしてようやく演奏会の準備を整えた。その後、各地の奏者とカレイジャスに待機する吹奏楽部にケルディックまで来てもらい……軽い打ち合わせとリハーサルのあと、ついに演奏会を開始したのだった。

 

 

「こ、この音は……?」

「講堂の方から……」

「そう言えば礼拝堂のほうで何かやるとか言っていたっけ……」

怪我人たちの看病をしていた市民や商人達は講堂から聞こえて来た演奏会による音楽に気付いた。講堂ではメアリー教官やアムドシアス、そしれエリオットやリィン達の知り合いである旅の演奏家―――アンドレによる最初の演奏が始まっていた。

 

「綺麗な音色……」

「ああ、何だかほっとするね……」

「……ハハ、心の痛みも和らいでいくような……」

「…………ん…………」

「ね、姉ちゃん!やっとまた目が覚めたんだ!?」

「……うん………」

「ふわああ……なんだろ、このオンガク。」

「ジェイクも……!」

講堂から聞こえてくる音楽によって見舞いの市民達や怪我人たちは癒されていた。

 

(……………!あ………)

リィン達と共に演奏会を見守っていたゲルドの脳裏にはまるで封印が解けたかのように次々と失われていた記憶が蘇った!

 

 

あの、こんにちは。

 

 

 

おじいちゃん、いるかな?

 

 

 

来たか。爺さん達はやらせねぇぜ!行くぞ、マイル、ミッシェル!

 

 

 

うん!レオーネさんはここは僕達に任せてその娘と一緒に僕達が撃退するまで家の中で待っていてください。

 

 

 

また会えるといいですね。お元気で。

 

 

 

ゲルド…………お前が……幸せの一生を歩む事を………私はあの世でも祈っているよ……………

 

 

 

なぜ……なぜ、そんなに優しくなれる…………肉体を捧げ、そしてまた、魂を捧げ……この世界がお前に何をしてくれたと言うのだ…………

 

 

………………

 

 

私、わかるような気がする。

 

 

…………?

 

 

きっと、この世界とか異界とか……わけて考えちゃいけないのよ。

 

 

どちらかが助かればいい……そんな解決の仕方なんて、きっと………ウソなんだ。

 

 

この最後のチャンスをゲルドは信じていたのね。

 

 

(全て…………思い出したわ……っ!レオーネお爺ちゃん…………フォルトお兄ちゃん……ウーナお姉ちゃん……アヴィンお兄ちゃんにマイルお兄ちゃん……………ミッシェルさん……デュルゼルさん…………ジュリオ……クリス……どうして……私が生きているのかわからないけど……………………私は今、”幸せ”だよ…………)

全てを思い出したゲルドは一筋の涙を流しながら自分の記憶にある人物達の顔を思い浮かべて微笑みを浮かべていた。

 

こうして奏者達は予定していた曲目を次々と演奏していった。やがて外にいた人たちや、目を覚ました怪我人たちまでもが音楽を聴きに来てくれ……ケルディックの人々に僅かだが確かに光が戻っていくのを、リィン達は実感できるのだった。そして最後の演奏が終わるとその場にいる全員が拍手をした。拍手が鳴りやまない中ゲルドが静かに前に出てきた。

 

「え…………」

「ム……?」

「ゲ、ゲルド?一体何を――――」

突如自分達の前に出たゲルドの行動にエリオットは呆け、アムドシアスは眉を顰め、リィンが戸惑いの表情で声を掛けようとしたその時

「―――――♪」

ゲルドは礼拝堂全体に聞こえる程の澄んだ声で歌い始めた。

 

「綺麗な歌声…………」

「……ああ…………俺が今まで聞いたことがある歌の中で……一番だと思える歌だ…………」

「……心に響く……不思議な歌ね………」

「まさかゲルドにこんな特技があったとはな……」

ゲルドの歌を聞いていたアリサやユーシスは聞き惚れ、サラ教官とラウラは静かな笑みを浮かべ

「ううっ…………」

「何で……勝手に……涙が……」

市民達の中には感動のあまり泣き出す者も現れ始めた。

(………私……いえ、この場にいる全員に活力や霊力(マナ)が…………セリーヌ、この歌ってまさか……!)

(ええ……”子守唄”を始めとするヴィータが得意としている魔術的要素が込められている”唄”ね……でも、アタシ達が知る唄にはこんな”唄”はないわ…………ましてやこんな大勢の人々の活力や霊力(マナ)を回復する凄まじい唄なんて、ヴィータでも無理でしょうね……)

一方自分や礼拝堂内にいる人物達全員の活力や魔力が回復し始めている事に気付いて驚きの表情をしたエマはセリーヌに視線を向け、セリーヌは真剣な表情で歌い続けるゲルドを見つめ

「〜〜〜〜〜♪」

その場にいる全員に注目されているゲルドは臆することなく、全てを慈しむかのような穏やかで優しげな微笑みを浮かべながら歌い続けた。

 

その後ゲルドの歌が終わると大喝采が起こり……去り際にゲルドにお礼を言う者達も少なくなく……演奏会は大成功に終わった。

 

 

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既にお気づきと思いますがゲルドの記憶が復活したので以前の予告のステータスにあったSクラフトも習得し、更に他のクラフトやSクラフトも習得したのでゲルドは真の力を取り戻した状態になりました!ちなみに歌のSクラフトの時だけモーションが違い、アビスのティアの第2秘奥義のカットシーンで片手を差し出している部分を両手に差し出している部分のモーションをイメージしてください。

 

説明
外伝〜癒しの演奏会〜後篇
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コメント
本郷 刃様 能力UPというかクラフト習得ですねw K'様 思いついたならしても構いませんがゲルドの歌の魔法はある理由があって攻撃魔法はできませんから、回復系になってしまうんですよねぇ ジン様 いや、さすがにそんな超展開はないです(汗)(sorano)
次回はリィンへの愛の歌かな?(ジン)
どうせなら音楽繋がりでエリオットとコンビクラフトしてもいいのでは?(K')
なるほど、ここでゲルドが記憶を取り戻すのですか・・・能力UPは違いないですね(本郷 刃)
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