真・恋姫†無双〜比翼の契り〜 二章第九話
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「し、ば、ろ、う? しば……司馬っておまっ!」

 

 ここにきてようやく合点がいったのだろうか。

 色々と言いたいことがあるんだろうが、一気に色々と出てきたせいで中々上手く口に出せないようだ。

 口をパクパクさせる姿はある種金魚に見えなくもないな。

 失礼だから口に出すことはしないが。

 

「ってことは本当にこれは司馬朗さんが出したの?」

 

「その通りです、北郷殿。商人から見聞きしたこと、袁紹軍の行軍らしき跡から注意を喚起する使者を送らせて頂いたのは事実です」

 

「……そこまで分かっていて、なぜ詳しい内容を載せなかったのですか」

 

 当然、そこに突っ込まれることは分かっていたさ。

 理由もちゃんとある。表向きの、だがな。

 

「私がこの目できちんと袁紹軍を確認したわけではありません。見つけたのは馬の蹄の跡、らしきもの……。あくまで推察の域を出ないのですよ、関羽殿。そして、何の証も無い者が太守様に直接会うなど到底無理な話。取り合ってもらえるかどうかも分からないと思い、私の印を使いました。そのせいで公孫賛殿にはいらぬ疑念を抱かせることになってしまったようですが……」

 

「だっ、誰だってそう思うだろ! 数ヶ月前までは敵だったんだぞ!」

 

「……だがしかし、そのお陰で『もしも』の準備が間に合い、我らはこうして生きている。非難するのはさすがに筋違いだと思うが?」

 

 趙雲の一言に、関羽と公孫賛は何も言い返せなくなった。

 どうやら趙雲は俺の味方をしてくれるらしい。丁度合った目がそう語っていた……ように見えた。

 

「……まぁ、なんだ。その、さっきのことは謝るよ。それと間接的にだけど、助けてくれて感謝する」

 

 場の空気が悪くなったのを感じ取ったのか、公孫賛は趙雲に倣うかのように素直に謝辞を述べた。

 変にへりくだっても収拾がつかなくなるだけだ、こちらも素直に謝罪を受け止める。

 これで公孫賛との一件はひとまず落ち着き、改めて彼女達から話を聞く流れに戻った。

 

 

 その後、一通りの事情を話し終えた公孫賛は安堵のあまり気を失った。

 劉備に受け入れてもらえるまで安心できなかったのだろう。逃亡生活を続け、ようやく落ち着けたのだ仕方あるまい。

 倒れた公孫賛を張飛に、軽微ながらいくつかの傷を負っていた趙雲の介抱を半ば強引に愛李に任せ四人は退出した。

 ……さて、残る問題は袁紹だ。

 今まで、袁紹には北方の抑えとして公孫賛がいた。南下しようにも後ろを取られていたのだから、大きく領土を拡大出来ずにいたのだ。

 それが今、公孫賛を滅し後顧の憂いを絶った。

 これで袁紹は冀州に続き幽州をも手中に治めたことになる。

 幽州の制定が終わればまたどこかを攻めるだろうことは想像に難くない。

 次に攻めるのはどこか。冀州のすぐ南に位置する青州か、洛陽擁する司州か。

 青州を攻めた場合、次に攻めるのはここ徐州になる、か。

 どちらにせよ袁紹が徐州を攻めてくるのは明らかで、あるのは時間の問題だけだと思っていた。

 

 

 公孫賛が劉備の傘下となり、趙雲は公孫賛の客将から劉備の客将へとなっていた。

 公孫賛は己と共に劉備の傘下に加わると思っていたらしくひどく驚いた様子であったが、当の本人は素知らぬ顔で「大陸広しと見て回り、色々な人物をこの目で見てきましたが、まだ見極める必要のある者がいる」と言い、公孫賛の懇願を丁寧に断っていた。

 北郷などは「また放浪でもするのか」と問うていたが、趙雲は曖昧に応えるだけ。

 以前にも似たようなやり取りがあったのか、劉備と関羽も仕方ないという顔をして了承していた。

 ……勘の良い者は気付いているかもしれない。趙雲が誰を見極めんとしているのかを。

 俺がその言葉の真意を理解したのは翌日だった。

 

 常にそれを感じている本人からすれば、気付かないほうがおかしいとさえ思ってしまう。

 俺以外で最初に気付いたのは愛李だった。気配に鋭い彼女らしいと思える。

 次いで茉莉。ほんの数時間程度の差だが、午前はあまり共に仕事をしていないというのによく気付いたと思う。

 それから最近積極的に身の回りの世話をし始めている月に、鍛錬を共にすることの多い烈蓮、なぜか想愁に華煉と、旧董卓軍(華雄は除く)の面子は全員それに気付いたようだ。

 それもそのはずか。

 朝の日課である鍛錬。鍛錬を終え朝食を食べ、与えられている執務室への移動。仕事中はさすがにないが、昼食を食べに街へ出た時。午後からは茉莉と共にいることが多いからか、彼女から感じる視線が消える。

 四六時中と言わないまでも、自由行動が許されている時間のほとんどで趙雲を見かけたり、視線を感じることがあれば誰でもあの言葉の真意に気付くだろう。

 ……自惚れでなければ、どうやら趙雲は俺のことを見極めようとしているらしい。

 向こうも俺が気付いていることに気付いているだろうに、止めないということはそういうことなんだろう。

 

 諸葛亮と鳳統は何度かその現場を目撃しているから気付いていると思う。

 そのせいか前から話しかけづらい雰囲気を醸し出していた二人だが、殊更に警戒されているように感じられる。

 劉備陣営は一枚岩だと思っていたが、そうじゃないのかもしれないか……。

 俺の主観だけで今後の判断を下すつもりは毛頭ない。最終的な決定権を握っているのだとしても、皆との話し合いは尊重すべきものだ。

 今夜にでも話し合いを行おうと愛李に手配を頼んだところで、諸葛亮が放っていた細作が緊急事態の知らせを運んできた。

 

 早馬を走らせてまで伝えにきた緊急事態とは、袁紹の滅亡。

 あの兵力だけならば大陸一と劉備達に言わしめた袁紹と、覇道をひたすらに突き進む曹操が激突したのだ。

 これが官渡の戦いと呼ばれるものだったのだろうか。

 結果、曹操は袁紹が治めていた冀州、幽州を併合。さらに軍の規模を拡大させた。

 ここまではある意味で順当だったといえる。

 

 想定外だったのは袁紹の保護だ。

 戦いに敗れた袁紹は文醜、顔良というお共と共に徐州の、それも劉備の本拠地であるここ下?城に潜伏していたところを張飛に発見された。

 曹操に突き出せばいくらか時間を稼げただろうに、そこまでするのは可愛そうだよという理由で劉備は袁紹を保護することにした。

 公孫賛も思うところはあっただろうに、ぶつくさと小さな文句は口にするものの反対することはなかった。

 俺達を客将として迎えた時点でなんとなくこうなることは予想出来ていたが、 曹操に見つかれば絶好の大義名分を与えることになる。……バレないことを祈るばかりだ。

 

 

 曹操が北方で着々と軍備を強化している最中、袁術が徐州にちょっかいをかけてきた。

 宣戦布告の使者から勧告されたのは、なぜか袁紹の身柄の解放。

 俺達には何が狙いなのか見当も付かなかったが、張飛の一言で劉備達は何かを納得したようだ。

 『袁術は袁紹の従姉妹』か。反董卓連合のときの袁紹の行動も謎であったし、袁術もその類なのだろうか。

 どこで袁紹の情報を手に入れたのかは分からないが、このご時世、間諜などいくらでも紛れ込んでいる可能性がある。北郷は更なる警戒の強化を指示し、使者には袁紹の存在など知らぬ存ぜぬを突き通した。

 曹操に対抗するために兵の練度を上げ、軍備を整えていた俺達に、袁術は真っ向から挑んできた。

 時折ひやっとする戦略眼を魅せられるが、兵力差はあれど兵の練度はかなり高くなっていた劉備軍に袁術は次第に押され始め、戦端が開かれてから五日目の朝、早々に撤退の様子を見せた。

 だが、その動きは鈍い。

 好機とみた諸葛亮が背後からの追撃を指示し、見事に袁術軍を撃退せしめたが肝心の袁術は激しい戦いの中で行方をくらました。

 後で知ることになるが、なぜ撤退の動きが鈍かったのか……それは袁術達の本城が武装蜂起した孫策によって落とされていたから。

 水関の一戦で孫策に懐柔の意志はみられなかった。袁術はその事に気付いていなかったのだろうか。

 攻めては敗北し、帰ろうにも場所がない。袁術にとってはまさに踏んだり蹴ったりだろうが、俺達も笑ってはいられない。

 

 北に曹操、南に孫策。

 あっという間に、二つの非常に大きな強国に挟まれる形になった。

 劉備軍だって多少なりとも苦難を潜り抜け、なかなかの勢力になってきたといえるだろうが、この二つの勢力には劣る。

 それでも毎日を無駄にせず自分の国を自分の手で守れるよう努力をしていた。

 だが天は、平和な時間を拒むかのように、劉備達と俺達を激動の渦へと巻き込んでいった。

 

 ある日……公孫賛が保護を求めてきた時とはまるで違う、瀕死の重傷を負った兵士が一人駆け込んできたのだ。

 国境を守っていたその兵士は息も絶え絶えだったが、その報告だけは声高に上げた。

 

「も、申し上げます! 北方の国境に突如として大軍団が出現! 関所を次々に攻略し、我が国へと押し寄せてきております!」

 

 それは紛れもない、覇王曹操からの宣戦布告だった。

 

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【あとがき】

 

 そろそろあとがきなんて廃止してもいいかな〜と考え始めてます

 あ、こんにちはですね

 九条です

 

 あとがき書くのに30分掛けるとかウマシカなんじゃないのか!

 なんて思っている次第なだけなので、上記のことは無視しといて下され

 楽しみにしている奇特な方(失礼)が居たらアレですけどね……

 

 え〜っと、今回は(も?)前半を除いて説明回となりましたm(_ _)m

 二章は群雄割拠編ということで群雄さん達に割拠してもらうための処置なのですが、

 如何せん文字数が多かった……

 それでもなんとな〜く星の道筋やら、劉備の進む道などをチラ(モロ)見せできているんじゃないかと

 そういった意味では作者的にはおkな回になりました

 

 近々、新キャラ(?)も出す予定なので、こちらは乞うご期待

 実は烈蓮さんが…………これ以上は内緒ですー

 

 恋ちゃんの抱き枕カバーはたぶん買います

 それと詩乃のブランケットも

 今まではそこまでじゃなかったんですけど、最近歯止めが……

 あれ? これってもうこっちの世界にドップリ?(手遅れ感

 

 

 そんなこんなで今週は1週間以内に更新できなかったのだけが悔やまれる!

 原因はネトゲ! 精神力の弱さがはっきりわかんだね……

 それでも継続して読んで下さっている方々、ありがとうございます!

 さらにお新規様も、こんな自分をこれから宜しくお願いします!

 

 

 さてさて、ここいらであとがきは終わりにしておきますね

 また次回で(#゚Д゚)ノ[再見!]

説明
二章 群雄割拠編

 第九話「袁家の末路」
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コメント
>観珪さん はてさてどうなることやら……。おししょーさんも気になりますねぇ(すっとぼけ(九条)
桃色さんたちは史実通りに益州へと向かうことになるのか、それとも曹操軍を撃退して徐州にとどまるのか。 司馬&旧董軍もいますから、兵数さえなんとかなれば撃退もできるでしょうし、楽しみですねー(神余 雛)
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