桜雨天風(おううあめのかぜ)その4?思いを紡ぐ?
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 下での話し声が聞こえた。

 

「……絶対に吸わないでよ。……だからね。」

「はいはい、わ……すよ。」

 

 壁にかかっている時計を見た2時5分前ってことは、良司かな。

 

『コツ…コツコツ…コツ』

 

 階段を上ってくる音がした。

 

『コツ…コツコツ…コツ』

 

 この独特のリズムは間違いなく良司だ。独特な歩き方をする特徴のある足音。そう思いながら階段がある方へ目を向ける。ボサボサの頭が見えた、こっちを見たと思った瞬間Uターンして階段を下りようとしていた。どうしたんだろうと思っていると、同じ席にいた亜輝が

 

「アッ来た。コラなんで帰ろうとするかな。」

 

 とがめるような口調で呼び止めた。亜輝も良司が上ってきてたのに気づいていたみたいだ。なんだかばつの悪そうな表情で良司は私たちのテーブルに近寄って来た。

 

「よっ、文も来てたんだ。調子は……って良いわけないか」

 

 私の顔を見ながら言い良司は席に着いた。

 亜輝はあの事を伝えなかったのかな、良司は何も知らない感じだ。

 

「大丈夫だよ、だいぶ落ちついた。」

「本当か?なら、いいけど。でも一人であまり抱えんなよ。分かち合うもんだからな。悲しみや喜びってもんは、」

 

 やっぱりあの事知っているのかな。それとも私は顔に出やすいのかな。

 だとしたら、何か恥ずかしい。そう思いながら少し下を向いていたら

 

「あんたは、よくそんな恥ずかしい事を平気で口にできるね。」

 

 亜輝が呆れたようなさめた口調で良司に言った。

 

「まぁ、これが俺のアイデンティティだからしかたない。」

「はぁ?やぱり、あんたバカ。25にもなって。」

「年は関係ないだろ、お前はそんなんだから彼氏がいつまでもできないんだよ。」

「なんですって、もう一回いってごらんなさい。」

「あ、良司は何飲むの。コーヒー?。」

 

 二人のいつもの口喧嘩が始まりそうだったので慌てて会話に割り込んだ。

 私がテーブルの呼び出しボタンを押そうとしたら

 

「さっき下で佳織に注文しといた。」

 

 そう言いながら良司は、手を胸ポケットに当てて何かを探し始めてた。

 

「あんたね、ここ禁煙。」

 

 その意味に気づいた亜輝が注意した。

 

「そうそう、なんで禁煙席なんだよ。俺がいるときは暗黙の了解で喫煙席だろ。そんなに俺をいじめて楽しい?。」

「ごめ…」

「そりゃ、楽しいに決まってるでしょ。私のストレス発散方法なんだから。」

 

 答えようとしたら亜輝の声にかき消された。

 

「俺にM気は全然ないの、早いとこそういう趣味の彼氏をみつけてくれぃ。」

「あんた私をなんだと思っているの。」

「女王様。」

 

 亜輝が何か言い返そうとしたとき、良司が聞いてきた。

 

「で、文さっきなんか言いかけてたけど何?」

 

 私が話そうとしていた事に、気づいていた。

 

「あ、うん。禁煙席にしたのは私の希望。だからごめんね。」

「ん別にいいよ。吸わないとどうにかなるってわけじゃないし。でも、どういう事。今まではそんな事なかったよな。」

「それはね、今日、良に来てもらった事と深く関係してるんだ。」

 

 良司はよくわからないと言う感じで亜輝を見て、そしてどういう事?と私に視線を戻した。

 

「文、いいの?私が話すつもりだったんだけど」

 

 亜輝が心配そうな声で聞いてきた。

 

「大丈夫。もう迷ってない。」

 

 私はそこで一息ついて続けた。

 

「良、まず、途中で怒って帰らないで最後まで話し聞いてくれるって約束してほしい。」

 

 私は良司の目を見据えた。

 

説明
 どこかで起きていそうで、でも身近に遭遇する事のない出来事。限りなく現実味があり、どことなく非現実的な物語。そんな物語の中で様々な人々がおりなす人間模様ドラマ。
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小説 桜雨天風 

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