おにむす!F
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薄暗い路地裏、振り出した雨の中でアリスは声を張り上げていた。

「あんたが珍しく協力的だからやらせて見たけど、いきなり人の本名名乗るってどういうことだよ!あたしがこの仕事してるのがそんなに気に食わないか!!!」」

携帯電話を耳に当て、拳で壁をガシガシと殴りつける。

「おかげでコードネーム名乗る羽目になったんだよ!どこの世界にいきなり本名とコードネーム晒すエージェントがいるんだよ!?」

しかし帰ってきた返答は冷静なものだった。

「はっ?偽名を使え?」

知られたくないなら偽名でも使えばよかったのだ、コードネームなんかは個人を特定する材料になり得ない。

「と、とにかく!!あんたがあたしに対して非協力的であるのは間違いないんだ、当面『出してやらねぇ』」

乱暴に携帯の電源を切る・・・ふりをした。

ディスプレイは真っ暗で始めから電源などついていなかった。

 

「くそッ・・・、何なんだよあれ」

矢崎は倒れた秋穂を自宅兼任のオフィスまで運んだ。

いつも通りの質素なベッドに秋穂を寝かせ、自身もベッドの縁に腰を掛ける。

(アリスと名乗った女、秋穂の異常・・・)

このまま行けばとんでもないことになる。

矢崎の直感がそう告げていた。

「おとう・・・さん」

秋穂の声が小さく聞こえた。

見やると、うなされた様子で手を虚空へと伸ばしてる。

矢崎はその手をとろうと手を伸ばしたが、触れる直前で思いとどまってしまう。

(この手を取る資格が俺にあるのか?何も知らない俺がこいつを守れるのか?)

頭の中をぐるぐると感情が蠢き出す。

(何も知ろうとしないから、何も得られない)

(知ろうとしないから今までの仕事も失敗が続いたんだろう?)

(そんな事はわかってる!知ろうとすれば秋穂も傷つくんだ!)

(自分が傷つきたくないだけだろう?)

頭のなかに知らないやつが居ついたみたいな感覚が矢崎を襲った。

伸ばした腕を引っ込める事もできずに硬直している。

不意に指先にひんやりとした感触があった。

秋穂の指が触れていた、その指は矢崎の手を見つけると指の先を強く握った。

(あぁ、分ったよ、こうなりゃとことんやってやる!!)

冷たい指先が矢崎に冷静さを取り戻させた。

そして空いた手で寝ている秋穂の頭をそっと撫でた。

(そういや、今まで一回も頭だけは撫でさせてくれなかったんだよな・・・)

指先に違和感を感じた。

(なんだ?)

旋毛に程近い髪に隠れた部分に出っ張りがあった。

「角・・・!?」

 

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オリジナルの続き物 今回でタイトルの由来が分りますwww
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